闇の民ハディは着々と自分の目的のために動いてた。
そこは暗い暗い場所だった。ぼんやりと苔のようなモノやキノコが光を発していたが、それ以外に光はなく、殆どを闇が支配する世界だった。
〔パキッ、パキンッ〕
その暗い闇を迷うことなく正確に歩く者がいた。
暗い暗いこの世界を迷いなく歩くその者は・・・そう、他の誰でもない闇の民ハディだった。
右にはディアボロスが浮かんでついて来ており、左にはパンデモニウムも浮かんでついて来ていた。そして、ハディの後ろには白いローブを身にまとったミナが虚ろな目をしてついて来ていた。
「ここで奴らと決着つけてもよかったんじゃないの?」
ディアボロスが陽気な声でハディに尋ねた。
「・・・ミナとクリスタルが両方手に入る絶好の瞬間を逃すわけがないだろ。」
ハディがバッサリとディアボロスを言葉で斬って捨てる。
「バハムートはアルテマクリスタルのことばかりで頭が一杯だったのが助かった。あいつはミナの存在の大きさをまったく気にしていなかったからな。」
ハディはそう言いながら横目で後ろに控えているミナを見る。
〔パキンッ、ポキンッ〕
ハディ達が歩く度に地面から音がする。ハディも虚ろな目のミナもその音にはまったく気にも留めない。
「・・・ここにある闇のクリスタルの力を安定させれば、いよいよアルテマクリスタルの無限の力が完全になる。アルテマクリスタルが無限の力でクリスタルをコントロールしているかのように感じているが、それは半分正解で半分間違いだ。クリスタル達は相互関係。アルテマクリスタルが無限の力を生み出すのは本当だが、火・水・土・樹・風・光・闇、7つのクリスタルの力を安定させて、始めて力の循環が完成する。」
ハディが首に掛けたクリスタルを手ですくって眺める。
「その循環が安定して始めて無限の力が最大限となるアルテマクリスタルが復活するのだ。」
クリスタルをニヤリと見ながらハディが話す。
「・・・すると、ミナの使い道が分からないが・・・。」
ディアボロスが素直な疑問をハディにぶつける。
「・・・ふんっ。ミナは腐っても巫女だ。巫女があってこそ、クリスタルの循環機関が発動する。発動してからは不要だが、それまでは大事な鍵だ。これはアルテマクリスタルだけがあったとしても成し得ない・・・。」
そう話しながらハディは歩き続ける。
〔パキンッ、ポキン、パキンッ〕
ハディとミナが歩く度に音を立てる地面。
「・・・それにしても、良く平然と歩けるものだなハディ。」
堪らずパンデモニウムが口を挟む。
「んっ?何の事だ?」
ハディがパンデモニウムの言葉を尋ねる。
「わざわざ、屍の上を歩く必要があるのか?」
パンデモニウムがハディ達の出す音の正体を口にした。
そう、ハディ達が歩いている地面には人骨が埋め尽くさんばかりに広がっていた。それを平然とハディは踏みつけて歩いていたのだった。
「・・・ふんっ。パンデモニウムも優しい所があるんだな。」
〔ガシャンッ!〕
ハディはパンデモニウムにそう言うと、足元にある人骨を思いきり踏み砕いた。
「・・・こいつらに情など一切湧かん。」
蔑んだ目で地面の人骨を見るハディ。
「・・・・・・。」
虚ろな目をしたミナは完全に自分の意識がないのか。ただ、ハディの歩みに合わしているだけでハディが止まっていれば、そこに立ち止まってゆらりゆらりと身体を黙って揺らしているだけだった。
〔パキンッ、ポキンッ、パキンッ〕
人骨を踏み砕きつつ、進んでいくと立派な神殿が視界に入ってきた。
「おぉ、愛しの我が家ッ!」
ディアボロスが空中で踊りながらおどける。
「さぁ、さっさと済ませようか?」
ハディはそう言うとミナに手招きをして神殿の中へと入ってく。
「・・・はい・・・。」
ハディの合図に応えるかのようにミナが言葉を呟き、ハディについていく。
〔ギイィィィィィーーーーーッ〕
重い大きな扉を開けるとそこには真っ暗な広い空間に淡い弱い光を放ちながら大きな黒いクリスタルが浮かんでいた。これこそ、まさに闇のクリスタルだった。
闇のクリスタルは部屋の真ん中に浮かんでおり、黒いクリスタルの全体からぼんやりと光を放っていた。部屋はその光しかないので薄暗く見通しの良いものではなかったが、明るくなくて正解だったのかも知れない。クリスタルの間には通ってきた道以上に人骨が山のように溢れていて、クリスタルに続く道以外は足の踏み場のないほどだった。
「さぁ、ミナ最後の仕事を頼むよ。」
ハディはミナに道を開けると闇のクリスタルまでの道を腕を上げて指し示した。
「・・・はい・・・。」
虚ろな目のミナはハディに命じられるとゆっくりと歩き出し、祈りの言葉を口ずさんでいった。
その祈りの言葉がクリスタルに届いたのか。闇のクリスタルは共鳴するかのように輝きを少し強める。回転をゆっくりと始めて、ミナを待ち侘びていたようだった。
ミナがゆっくりと歩きながら祈りの言葉をクリスタルに届ける。その言葉を受け取ったクリスタルは回転をゆっくりと上げて行き、それに伴って発する光も強くなっていく。
「オッ?!」
ディアボロスがハディの胸元の光に目をギョロギョロさせる。
「・・・・・・。」
ハディはその光を気にも留めず、ミナの様子を伺う。ハディの胸元ではアルテマクリスタルも共鳴して強い光を発していた。
「・・・・・・。」
パンデモニウムもハディと同じようにクリスタルの様子だけを見ていた。
ミナが闇のクリスタルの近くまで来ると、クリスタルの輝きが最大限になる。回転も速くなり、一回転する度に大きく光を放つ。そして、それを飲み込むかのように闇が包み込む。フラッシュのような光と闇の競演が激しくなり、最後にはクリスタルの光を飲み込むかのように闇が部屋全体からあふれ出し、光を食べていくように支配していった。そして、
光は完全に食べられて、部屋が完全に闇に支配された。ハディのアルテマクリスタルもそれと同時に輝きをなくし、静かになった。一時してから、闇のクリスタルの淡い光が戻り、ミナがその場に倒れた。
「・・・終わった?」
ディアボロスがミナに近付き、様子を伺いながら呟く。
「あぁ、ミナの役目ももう終わりだ。」
腕組みをして踏ん反り返りながらハディがそう告げる。
「じゃぁ、もう殺すの?」
ディアボロスが無邪気な子供のように軽く言う。
「・・・いや、必要なくなったが、もう一仕事してもらう。」
ハディはミナをそのままにして部屋から出ようとしていた。
「パンデモニウム。フォッカに伝えろ。道具をやるから有効に使えと・・・な。」
部屋の出入り口の前で立ち止まり、パンデモニウムの方を向いてハディがそう告げた。そして、ハディはそのまま部屋を出て行った。ディアボロスはハディの後を追って部屋を出て行く。
「了解した。」
パンデモニウムは返事をすると、ミナの方へと近付き、抱きかかえた。
「・・・哀れな巫女よ。」
抱きかかえて、ミナにそう言葉を零す。ミナは気を失って腕をダランとしているだけだった。
闇の民ハディが闇のクリスタルの安定化に成功する
そんな中で、ユッケ達は?
次回、「帰還」
青年の思いは次元を越えるか?!(千葉繁さん風)