絶望の中で父の友人と言うシドに出会い
か細い糸にすがるように希望に向けて歩き出す
最初の一歩はユッケの家に行く事になるのだが・・・。
「・・・・・・。」
玄関から家の中に入り、変わり果てた我が家の姿に言葉を失うユッケ。
「・・・こりゃ、間違いなく軍の奴らの仕業だぜ。」
家の中を歩きながらシドが言う。
「これはこれは、ひどい有様じゃの。」
家の惨状を見たハモウが言葉を零す。
「・・・軍もヒロヨシを見つけられずにイライラしておったのかもしれん。」
ラムウも家の様子を見ながら見解を話す。
「・・・お茶どころじゃないクポッ」
疲れ果てたモグッチが肩を落としながら言葉を搾り出す。
「・・・いや、大丈夫かもしれない。」
ユッケはそういうと家の奥へと進んでいった。
「ホントクポッ!」
ユッケの言葉にやっと少し元気を取り戻したモグッチがユッケの後をついて行く。
「ここは父さんの書斎なんだけど・・・。」
〔ギィ~~~〕
家の中の一室、父親の書斎の扉を開けるユッケ。
そこには大量の本が散乱していた。本棚の棚と言う棚から本が床に投げ捨てられていた。おびただしい数の本で部屋の床が埋め尽くされ、足の踏み場が文字通りなかった。
「こっち、だった、よ・・・な。」
本の海を踏み分けてユッケが部屋の奥へと進む。
「クポ~ッ、こんな所で本当にお茶が飲めるクポ?」
モグッチは空を飛びながらユッケの後に続く。
「・・・・・・あったあった。」
ユッケは部屋に無数にある本棚の特定の場所で立ち止まる。
〔パカッ・・・ピッ、ピピッ、ピピッ・・・ピピーーッ〕
〔ガコンッ、ズズズズズズズッ〕
ユッケは本の置いてない空の本棚で何かをしていると、機械音と共に本棚が動き出した。そして、そこに地下に通じる小さな階段が姿を現した。
「おいおい、すげーなッ。」
機械音に誘われて、シドがその様子を見て驚いている。シドの後ろにはついて来ていたハモウとラムウの姿も見えた。
「ほほ~~~っ、これはこれは。」
ハモウが秘密の階段を見て、同じく驚いていた。
「こういうのは年甲斐もなくワクワクするのぉ~。」
ラムウがウキウキしながら我先にユッケの元へ行こうとする。
「おいおい、待て待て俺が先だ。」
ラムウに置いて行かれまいとシドも急ぐ。
〔ガチャッ、ギィ~~~〕
地下に降りると扉があり、その扉を開けるとそこには広い部屋が姿を現した。
〔パチンッ〕
部屋に備え付けてあった電気のスイッチを入れるユッケ。電気はどうやらまだ生きていたようで、秘密の部屋全体を照らし出した。
「おおおおおおおおおおおおおおっ。」
その部屋を見て、シドとラムウが感動して歓声を上げた。
上の家の惨状とは違う荒れ方はしているが、これは荒らされたと言うよりも片付けていないと表現した方がいい有様だった。部屋には長いテーブルが4台あり、それぞれに化学で使われるガラス製の管やらビンがあり、壁には本棚に本がビッシリと並べてあった。一番奥にもテーブルがあり、そこには本が両脇に山積みになっていた。どうやら、ここで調べモノや書きモノをしていたのだろう。
「こっちにたぶん・・・。」
ユッケは目の前に広がる部屋には目もくれず、右手の方に行き、そこにある部屋に姿を消した。
「・・・あぁ、ありました。食べ物はありませんが、お茶は出せそうです。」
「クポポッ。」
ユッケの声がする方へとモグッチが行ってみると、そこには小さな小部屋があり、流し台と冷蔵庫、コンロに奥の方にもう一つ扉が見えた。
「・・・あぁ、そこはトイレとお風呂だよ。」
モグッチの目線に答えるようにユッケが説明した。
「なんだなんだ、秘密の隠し部屋とはあいつもシャレてるじゃねぇかっ。」
シドがあちこち歩き回り、トイレと風呂場を覗いてウキウキしながら感想を言った。
〔カチカチカチカチッ、シュボッ〕
「・・・ここは誰にも邪魔されないようにって作った部屋なんです。」
ユッケがコンロでお湯を沸かす準備をしながら答える。
「・・・父が母と一緒に研究していたって教えてくれました。」
お湯を沸かしながらユッケがボソリと呟く。
「・・・そうか。」
シドがバツが悪そうに相槌を打つ。
「・・・食べ物ないクポか・・・。」
空気を読まずにモグッチがお腹を摩りながらうな垂れる。
「ごめんよモグッチ。後で何か探してくるからさ。」
苦笑いでモグッチに謝るユッケ。
「ユッケよッ!」
そんな時、研究室の方からハモウがユッケを呼ぶ声がした。
「お茶は俺が入れてやるから行って来いよ。」
シドが自分の汚名を晴らすべく名乗り出た。
「ありがとうございます。」
ユッケは小さく会釈をしてシドに任せた。
「なんですか?」
ユッケは給湯室から出て、ハモウの呼ぶ声に答えた。
「・・・・・・。」
ハモウが黙って一冊の本を持って、こっちにくるように手招きしていた。
「・・・どうかしましたか?」
ユッケはハモウの指示に素直に従って近付き尋ねた。
「・・・お主の父親の日記じゃ。」
ハモウはそう言いながら日記をユッケに手渡した。
「・・・・・・。」
ハモウから日記を渡されて、黙って受け取るユッケ。
「ヒロヨシは律儀じゃの・・・ずっと日記をつけていたようじゃ。」
ラムウがそう言いながら一冊の日記を読んでいた。
日記は母と出会って、アルテマクリスタルやマテリアルの研究を始めた頃から付けられていた。
研究の進行度を記す事も兼ね備えていたのかもしれない。
母と研究を始めた頃は、楽しそうに字が踊っていた。楽しそうではあるが、困難な問題に直面している事が伺えた。何年も目覚しい進展がないながらも二人で一生懸命研究していた事が書かれていた。そして、母リア、つまり妻リアが死んでから字が淀むように落ち着いた。マテリアルの研究は進んでいるもののアルテマクリスタルの研究が一行に進まない事に対しての苛立ちが文面に見え隠れしていた。ユッケが寝ている間にアルテマクリスタルを調べようとしたが、強い力に阻まれたとも書かれており、悩んでいた事が伺えた。
「・・・父さん・・・。」
父の焦りと苛立ちを感じ取ったユッケの口から思わず言葉が零れ落ちた。
そして、一人で研究をしていた父がついに日記にこう漏らしていた。
「息子の顔を見るのが辛い」
「今日も研究は思ったように進展しない。最近、息子の顔を見るのが辛い。忌々しいクリスタルのせいでどうしてこうも悩まされなければならないのか?リアと出会えたのはクリスタルのおかげかもしれないが、そのクリスタルのせいで息子がいつ私の前から消えてしまうかと思うと気が狂いそうになる。一刻も早く、息子の元からアルテマクリスタルを引き離したいが・・・どうすればいいのか・・・見当もつかない。」
ユッケは父が自分を余り見なくなったのがこの辺りだったのではないかと思い出す。思い返せば、父が自分を見る目が、胸が締め付けられるように辛そうだったように思う。
それでも、父は一人で研究を続けている。何年も何年も日記を書き続けていた。
いつしか、アルテマクリスタルを「あいつ」と呼び始めていた。それほど、行き詰っていたのだろう。
「あいつに息子を奪われてなるものか!」
「あいつはなぜ協力してくれないのか?」
「あいつさえ居なければ。」
何年も苦悩している日記が続くが、日付が新しい最近になってから事態が変わり始めた。
思えば、父が家を開ける日が多くなり、家を出て行くと言っていたのを思い出すユッケ。
「あいつのことは相変わらずだ。だが、マテリアルについての利用方法とあいつを追い出す方法に目処がつきそうだ。軍や政府とやり取りしていた中で、『スコ』とかいうミッドガルド人を紹介された。この世界とミッドガルドを繋げる研究を手助けしてくれると快く申し出てくれた。いっその事、あいつを差し出そうかと思ったが、リアの『闇の民』と言うのが頭を過ぎったし、信用できない相手にベラベラ言う事でもない。あいつの事はとりあえず隠す事にする。第一、あいつは息子から離れようとしない。息子を危険な目に合わせるわけにはいかない。しかし、スコはどこか背筋が冷たくなる印象がある。何処か信頼してはいけない人物だ。気をつけよう。」
「・・・スコって誰でしょう?」
ユッケが日記に書かれていたミッドガルド人の名前を口にする。
「ゲートの研究を手伝うと言う事は闇の民の仲間ということじゃろ?」
ハモウが髭を弄りながら推測する。
「・・・でも、こいつだぜ。俺が言ってた派手な鎧来たミッドガルド人は。」
いつの間にかシドがお茶を入れ終えて、モグッチと一緒にお茶を飲みながら聞いていた。しかし、お茶は二人が飲んでいる分だけだった。
「・・・と言う事は、スコっていうのは偽名でこいつはハディ、闇の民自身だってことですね。」
ユッケがシドの話を聞いて見解を述べた。
「アースカンドでも偽名とは用心深い奴じゃな。」
ラムウが髭を弄びながら言う。
「マテリアルの研究は順調だ。スコが大量のマテリアルを調達してくれた。軍や政府にも話を通してくれると言う。だが、スコの口からアルテマクリスタルについて聞かれた。いつも鎧と兜を着ていて素顔を見たことないが、その時ばかりは兜の奥で光る目にゾッとした。息子には絶対に近づけてはいけない人物だと分かった。しかし、あいつを送り返すためには研究しなければならない。金も場所も用意してくれるスコからいつまで隠し通せるか・・・。」
「・・・闇の民はだいぶ、アルテマクリスタルに近付いていたのかもしれませんね。」
ユッケは日記の日付を見て、ゾッとした。ユッケが次元の歪みに落ちて、ミッドガルドに行く数ヶ週間前だった。もし、ミッドガルドに行かなければ、アースカンドでハディに殺されていたかもしれなかった。
「・・・この感じだと、薄々気付いてたのかもしれねぇな。」
お茶を飲みながらシドが言う。
「・・・シドよ、わしらの茶は?」
ラムウがやっとシドにツッコミを入れた。
「お湯なら沸いてるぜ。」
シドが親指で給湯室を指差して答えた。
「間に合わなかった。あいつの、あいつと息子の反応が消えた。機械の故障かと思って調べてみたが問題なかった。久しぶりに家に帰る。シヴァの名を呼んで探すもシヴァも見当たらない。もう少し、もう少しであいつを戻せたのになんていうことだ。リアとの約束を守れない。大事な息子との思い出も作らず、頑張ってきたのにこの仕打ちはなんだ!・・・いや、これは罰かもしれない。私は息子から逃げていたのかもしれない。父親として接しながら研究は出来たはずだ。神よ、罰なら甘んじて受ける。だから、どうか息子の無事だけは、どうか・・・。」
日記はその日で終わっていた。
日記を読み終えて熱い父の想いで胸を締め付けられた一同
そんな父が最後に息子に託したものとは?
次回、「アルテマウェポン」
青年は神の力の片鱗を見るのか?!(千葉繁さん風)