命を無駄に散らすのか?ユッケの運命や如何に??
「駄目えええええええええっ!」
ミナが悲痛な表情を浮かべながらユッケに手を伸ばす。
その手がユッケには届かないことを知っていたが、そうしないわけにはいかなかった。ミナの脳裏に走馬灯のようにユッケのこれまでの仕草が駆け巡る。
「ガハハハハハッ、生身でこのギルダンク28号に向かってくるとは。ミンチにしてくれる!」
拡声器からギルガメッシュが高らかに笑っている。しかし、
傍から見たら、一見無謀に見えるかもしれないが、勝算までとはいかないものの、十分相手をひきつけて時間を稼ぐ考えはユッケにはあった。
(戦車を知らないやつからしたら、無謀に見えるかもしれないけど。キャタピラ走行なら)
ユッケの作戦は、複数の車輪をベルトで包み込むようにつなげたキャタピラ戦車なら、そうそう速度が上がるものではないと確信していた。現にギルダンクは加速距離が短かったため十分な速度は出ていない。ただ、生身の人間が戦車に体当たりすれば負けるのは必死だった。が、
「ここだ!」
ユッケはすかさず、ギルダンクへと両手を広げて、大きくジャンプした。
「なんじゃ?!」
その光景に面食らうギルガメッシュ。
ユッケは突進してくるギルダンクの砲身に飛び掛り、見事砲身へとしがみついて見せたのだった。
「親びん、まずいでやんす!」
「親びん、小僧はどこに行ったでがんす?」
拡声器からギルガメッシュとは別の声が聞こえてきた。どうやら他にも仲間が乗っているらしく、相当慌ててる様子だった。
「バカやろう、お前達は操縦に集中しとけっ!」
ユッケの行動が大いにギルダンク内のかく乱に成功し、拡声器からは困惑の色を隠せないギルガメッシュの上擦った声が響いてくる。突然飛びつかれ、視界からユッケが消えたことで混乱し、ギルダンクはその場で動かなくなり、砲塔をグルグル動かしているだけだった。
(第一段階成功!)
ユッケはというと、砲身にしがみ付き、動きを止めたギルダンクを見て、隙を見て砲身から車体へと降りていた。
ユッケの姿を見つけられないギルダンク内部、
「あのガキ、どこ行きやがった、こうなったら!」
しびれを切らしたギルガメッシュの声が、ギルダンクの上部にあるハッチの向こう側からこもった声で聞こえてきた。
(きたっ!)
拡声器から聞こえたギルガメッシュからの合図。グルグル動く砲身をかいくぐり、ユッケは戦車上部についているハッチへ向けて、静かに・・・しかし、素早く動き出した。
チャンスは今しかない。ユッケは腰に下げた剣に手をかける。
「直接、スパナでドタマかち割ってっ?!」
「はぁっはぁっ、こうもうまくいくとは思わなかったよ。」
視界の狭い戦車の中からではラチがあかないと痺れを切らしたギルガメッシュが、ハッチを開けて顔を出したところに剣を向けてユッケが待ち構えていた。
「こっ、このガキィ~~~っ。」
頭から湯気が出るのが分かるぐらい怒るギルガメッシュ。しかし、身動きは取れない。喉元にユッケが剣を構えているからだ。
「どうなってんの?」
「ユッケ、やるじゃない!」
ユッケの行動に困惑するもホッとするミナと、ガッツポーズを作るティア。
「お前、なぜギルダンクの性能についてくわしいんじゃ?」
鉄の塊に矢で対抗していたティアを見る限り、ミッドガルドでは戦車は珍しいものだろう。それにユッケは臆することなく体を投げ出し、ギルガメッシュを手玉に取ったのだからこの発言は頷けた。
「さぁ、なんでだろうね?」
ユッケ自身も確かなことは言えないのが事実。これが戦車だと分かってはいるが、なぜ理解しているのかは謎だった。ただ、頭の中に動画で戦車の動く様が横切り、それに伴い戦車の知識が頭に浮かんできただけなのだから。
「このギルダンクをここまで追い詰めたのは褒めてやろう。だが、これで終わりではないぞ!」
追い詰められて尚、不適に笑いだしたギルガメッシュ。
「おじいちゃん、無理すると身体に毒だよ。」
笑みを浮かべるギルガメッシュににこやかに笑みで返すユッケ。
挑発するように笑うユッケにギルガメッシュの言葉が降りかかる。
「・・・お主、人を殺し慣れておらんじゃろ?」
「?!」
ギルガメッシュの言葉に無様にも体が硬直し、動きを止めてしまったユッケ。
生きた人間を殺す。
そんなこと、たしかにユッケはした事なかった。そこを見透かしたギルガメッシュ。ユッケが隙を作ってしまった。その時、
「今じゃっ!」
ギルガメッシュが大声で合図を出す。
〔ギュルギュルギュルギュルッ!!!!〕
ものすごい回転をするギルダンクの車輪。その動きにユッケが乗っていた車体が揺れ動く。
ユッケは猛烈なギルダンクの振動に体の体幹を狂わされる。
「しまったっ!」
ユッケは堪らず、ギルダンクの上でバランスを崩してしまった。
「もらったっ!」
バランスを崩したユッケを見て、スパナを振りかぶるギルガメッシュ。
〔ドゴッ!〕
「ブヘッ!」
ギルガメッシュがスパナを振りかぶった瞬間。
車体が大きく左に動き、その勢いでハッチの枠にわき腹を強打するギルガメッシュ。ユッケはギルダンクの動きに耐えかねて、ギルガメッシュが落としたスパナと共に地面に転げ落ちた。
「親びーーーんっ!」
「ばっ、ばかやろう。突然、車体を動かすやつがあるかっ!?」
「痛いでやんすっ!」
急に動き出したギルダンクだったが、ハッチを閉めた中で何やら揉めていた。
ギルガメッシュ達が体勢を立て直す瞬間、ティアもすかさず動く。
「ユッケ、一旦戻ってきなさい!」
ティアがそうユッケに叫び、回避行動をユッケに促す。
「あいててっ・・・。」
しかし、尻餅をついて動けないユッケ。
「ガハハハハハッ、今度は逃がさんぞ、小僧!」
拡声器からギルガメッシュの声が聞こえる。それに連動するかのように砲身の脇にある機銃の口がユッケへと向けられた。
「すばしっこいネズミは機銃でバラバラにしてくれるわ!」
「親びん、準備完了でがんす!」
銃口がユッケにバッチリ合う。
「ユッケっ!」
ミナの悲痛な声がユッケの名を叫ぶ。
「やらせないっ!」
矢を放ちながらティアがギルダンクへと走り出す。
〔カンッカンッ〕
矢を弾く装甲。
「ファイアっ!」[ゴオオオオオオォォォォッ]
立て続けにバスケットボール大の火球を手から出す魔法で攻撃するティア。
「ガハハハハハッ、そんな低級魔法。このギルダンクにはまったく効かんわっ!」
けん制しながら急いで距離を詰めようとするティア。
「撃てっ!」
拡声器から勝利を確信したギルガメッシュのカチドキが上がった。
(・・・終わった・・・。)
「やめてえええええええええええっ!」
人生の最後と諦めて目をツブるユッケ。涙を流しながら叫ぶミナ。
「だめええええええええええええっ!」
大声を上げてユッケの元へと向かうティア。
〔ダダダダッ・・・!〕
機銃から放たれる弾丸。その時だった。
「ノブヒデッ!」
どこからともなく、誰かの名前を呼ぶ美しい声が神殿広場に木霊した。
ギルダンクに果敢に攻め立てて優勢を勝ち取ったかに見えたユッケ。
しかし、ギルガメッシュの気転で形勢が逆転。
絶体絶命のピンチに!
そこに届く女性の声・・・。
次回、「氷の女神と融合(フュージョン)」
青年は戦場の華と咲ク!(千葉繁さん風)