怒りの余り単身ハディに挑むユッケだったが、
そこで思わぬ力を発揮してラムウとフュージョンしてハディを驚かせる
(フォッフォッフォッフォッ、なんとも驚きじゃわい。ワシがフュージョンしてしまうとは。)
ユッケの頭の中でラムウの声が響く。
(俺も驚きですよ。フュージョンさえ出来ればと思っていたら、ラムウさんとしてたんで。)
ユッケが頭の中でラムウと会話をする。
(フュージョンとは元来、クリスタルの守護獣と守護者に選ばれた絆の深い者同士が成せるガードナーとしての究極の技なんじゃがな・・・。)
ラムウが不思議がりながらもニヤニヤしているのがユッケに伝わってくる。
(俺も実際、シヴァとしかしたことなかったので・・・。)
ユッケもモヤモヤとした気持ちをラムウに伝える。
そんな二人のやり取りを知る由もない男が、
「・・・お前は一体なんなんだ・・・。」
当然の疑問を言葉にした。
ハディは有り得ない現象を目の辺りにして、驚きを隠せなかった。
「・・・さぁね・・・俺も不思議だよ。けど、願ってもない。」
ユッケのニヤケ顔が仮面の下でも十分伝わるような声でハディに言葉を投げる。
「・・・フッ・・・フフフッ・・・アルテマクリスタルを手にした俺に、油断するなとでも忠告したいのか・・・。」
のけぞった体勢から直立へと戻し、ユッケの方を向きながら、別の次元の誰かに向けるようにハディは言葉を発する。
「・・・忠告ですめばいいな・・・。」
ユッケがアルテマウェポンを構えてハディに少しにじり寄る。
(フュージョン出来たのは良いけど・・・勝てるのか?)
怒りでハディに切りかかり、運よく?フュージョンという強力な武器を手に入れることに成功したとは言え、ラムウとの会話で冷静さを取り戻したユッケだったが、そんなユッケに待ち受けていた現実は予想以上のものだった。
(フュージョンをしたとは言え、この状況はどう見ても5050というわけではなさそうじゃな・・・まったく隙がないぞいっ。)
ユッケの中から様子を伺うラムウも置かれた状況を冷静に分析していた。
ユッケから見たハディは武器を持っていないにも関わらず、恐ろしいほど付け入る隙がなく、
武器を持って、優位に立っている事が罠とさえ思えてくるほどだった。
「・・・猪の様に考えなしに突進してこない事は賢明だな。」
ハディが普通に何事もないかのように歩いてユッケに近付いていく。
「・・・・・・。」
ハディが近付いた分、後退りで距離を保つユッケ。
「おいおい、君が逃げてどうするんだ?」
ユッケの行動を見てハディが苦笑いする。
〔ヘイスト〕
その場の人間全てがハディの放つ気配に息を呑み、動けない中で果敢に行動した者がいた。
「・・・ハモウさんっ。」
自分に掛けられた魔法に驚きながらも掛けてくれた本人に目線だけ向けるユッケ。
〔ヘイスト〕
ハモウの補助魔法に対抗するかのようにハディが自分で自分に補助魔法を掛けた。
〔プロテス〕
〔プロテス〕
〔シェル〕
〔シェル〕
ハモウの魔法の動きに一切遅れることなくハディも動く。
「・・・・・・・。」
一連の補助魔法を掛けて、ハモウがハディに両手を向けて、そこで動きを止めた。
「・・・もう終わりか?」
ハモウの動きを見て、ハディが問いかける。
〔シュバッ〕
ヘイストを掛けてもらったユッケが、人間の目でやっと追える速度でハディに切りかかる。しかし、その一撃は予め打ち合わせされていたかのようにハディが綺麗に交わした。
〔シュババッ、シュンッ、ビュバッ〕
ユッケは休むことなくハディに切りかかるがハディはその攻撃を難なく交わしていく。アルテマウェポンに追加された雷の属性も計算に入れて、掠る事すら許されない攻撃をいとも簡単に距離を完璧に測り、ハディは余裕を持ってステップを踏んでいった。
〔サンダガ〕〔バリバリバリッ、バチョンッ〕
ユッケとの攻撃の連携でラムウも魔法で攻撃をする。しかし、
「・・・・・・。」
ラムウの魔法攻撃さえ、想定内のハディはそれさえも予測して後方に飛んで無言で回避した。
(・・・なんちゅう化けもんじゃ・・・。)
ラムウが全ての攻撃を交わしたハディに賞賛を送る。
(・・・ありえない・・・。)
ユッケの手に汗が噴出す。
「・・・即席とは思えない連携だな・・・。」
ハディが何事もなかったかのような直立になり、ユッケを見据える。
「・・・お主達は手を出すな。邪魔じゃ・・・下がっておれ。」
ハモウが近くに居たシドに険しい表情と厳しい口調で言い放つ。
「・・・・・・。」
シドやラスター達は無言でハモウの指示に従うしか出来なかった。
その闘いは1分にも満たない攻防だった。それだけで、その場にいた人間は誰しも思った。
『この闘いに自分は足を踏み込んではいけない』
まさにそれは人智を超えていた。
人間のあらゆる尺度が足りない。幽霊がその場にいるから正確に身長を測ってみろと言われるが如く、尺度という概念がそもそも間違っているとさえ思わせた。
その中で、動けるのは2人。
ユッケとハモウだけだった。
ハディの恐ろしさが一瞬の時間で伝わる。
アポニスの兵士達もユッケ達は守るべき存在だと頭では認識しているものの、銃すらハディに向けれる者はいなかった。
「・・・もう来ないのか?」
ハディの冷たい目がユッケのみに注がれる。
〔連続魔法 サンダガ〕〔ズギャゴンッ、ズギャゴンッ、ズガガガガガガッ、ズガーーンッ〕
口火を切ったのはまたしてもハモウだった。誰しもが恐れる相手に果敢に挑む老体。
〔シュバンッ、スインッ〕
ハモウの攻撃を避けるハディの隙を突くユッケの斬撃。
〔連続魔法 ブリザガ〕〔パキンッ、パキパキパキッ、ガシャシャシャアアアアンッ〕
ハモウの怒涛の攻撃がハディの動きを予測しながら襲い掛かる。
〔シュンッ、シュオンッ〕
ユッケも先を読んでハディに斬りかかるが虚しく空を斬っていく。
〔連続魔法 サンダガ・ファイガ〕〔ズギャゴンッ、ズガーーーンッ、ブゴオオオオオオオッ〕
〔シールド〕
突然のハディの反撃だったが、咄嗟の判断でハモウは防御魔法を自分に掛ける。
「グワアアアアアッ!」
ハディの反撃を食らってしまったのはユッケだった。ハモウの補助魔法の範囲から外れているハディの目の前なのだから当然だったが、ユッケも苦し紛れに後ろに飛び直撃は避けた。
ハディの繰り出す業火に焼かれて焦げながら避けた先で転がるユッケ。身体にマトわりついた炎は辛くも消す事が出来た。
「・・・・・・。」
ユッケが攻撃に苦しむ中でもハモウはハディから目を離せなかった。急いで、ユッケに駆け寄り回復魔法を掛けるべきなのは重々承知はしているがハディの存在がそうはさせなかった。
(なんという男じゃ。ユッケの攻撃を交わし、繰り出してきた反撃は連続魔法で対象者を分けて、しかも属性の違う魔法じゃと・・・。)
ハモウはハディの底知れる強さに驚愕していた。
(・・・ハモウと連携しても手も足も出んぞい。ありゃ、人間の範疇を超えとる。)
ラムウの驚きがユッケにも痛いほど伝わってくる。
「・・・それでも・・・どんな相手でも・・・負けられない・・・。」
超える事の出来ないような壁を目の前にしてもユッケには負けられない思いがあった。
母の人生を狂わせ、師の命を目の前で奪った男に負けを認めるわけにはいかなかった。
「・・・あのときよりもさらに動きに磨きがかかっている・・・悪くない。」
強者の余裕。ハディが放った言葉はユッケなど眼中にないという宣言だった。
「くっ・・・くぅぅぅぅぅ・・・。」
ハディの打ち下ろされたその言葉にユッケは反論の言葉が出てこなかった。
「ユッケ、お前が諦めてどうするっ!」
「ッ?!」
苦しむ息子に天から父の声が降り注いだ。
厳密には、ゲートを管理する管理室に繋がっていた拡声器から発せられた声だった。ゲート管理室はユッケ達が戦っていたゲートがある広場を見下ろす位置にあり、ヒロヨシはそこからユッケに話しかけていた。
数刻前、
「むうぅぅぅぅぅっ・・・。」
ある一室で腕組みをして、前方に立っている二人を見る小柄な老兵が唸っていた。
「・・・如何ですか、アサッシュ大将閣下?」
アサッシュといわれたその小柄な老兵に二人のうちの一人の男が優しい声で問いかけていた。
「恐れながら閣下。こちらには交渉材料が大いにあります。お互いに遺恨はあるでしょうが、十分解消し、尚且つミッドガルドとの戦闘を行わずにマテリアルを供給できるように話を持っていけます。」
先にアサッシュに話しかけた男の脇に立っていた女性が続けて話す。
「・・・アグニス大佐やメラーニ少佐の言い分も十二分に分かる。ワシとしても、無益な闘いで兵を失うわけにもいかん。ハディ殿とゴコーレ中将の話では容易に事が成せるということだった。今の状況から戦闘ではなく、交渉で丸く収まるのであれば、それにこした事はないが・・・ここまでコジれてしまったものが、うまくいくのかね?」
腕組みをしたままアサッシュはアグニス、メラーニを見ながら率直な意見を言った。
「そもそも、ハディという男は怪しすぎます。こちらの集めた情報によれば、ハディという男はミッドガルドでは『闇の民』と恐れられ、厄災を振りまく男として敵視されているのです。」
アグニスがアサッシュの目を鋭い眼光で見ながらハディについて説明する。
「・・・しかも、ゴコーレ中将は私腹を肥やすことを目的とし、国の利益や兵士の生命を軽んじている恐れがあります。」
メラーニもここが攻め時と言わんばかりに畳み掛ける。
「・・・・・・。」
アグニス達の口撃にアサッシュは目を閉じ、黙り込んだ。
「このままハディという男の口車に乗って進めば、確かにマテリアルは手に入るかもしれませんが、それ以上に失うものが大きすぎると思われます。」
メラーニはさらに詰め寄ってアサッシュに進言する。
「・・・アサッシュ大将閣下。こう考え頂きたい。我々が態勢を立て直す時間を稼ぎます。交渉が成功すれば、そのまま軍を動かさずに済みますし、交渉が失敗したときに再度攻め込む事が出来ます・・・如何ですか?」
メラーニとは裏腹にニコニコしながらアグニスがアサッシュに接する。
「・・・まったくもって、君には適わんな・・・。どうして、その地位に留まっているのかが不思議でならん。君がしっかり上に上がっていれば、もう少し動きやすかったのではないか?」
アサッシュは腕組みをやめて、椅子にもたれ掛り、優しい目をしてアグニスを見ながらそう話した。
「・・・確かにそうかもしれません・・・しかし、何分私にも捨てられない守るべきものがありますので・・・。」
そういうとアグニスはメラーニの肩に手を置いてニコリと微笑んだ。
「・・・・・・。」
メラーニはアグニスから目を離すことが出来なくなった。
〔ズガアアアアアアアアアアアアアアンッ、ボボボボオオオンッ〕
話がまとまったその時だった。
応接間の部屋の中にまで響く大きな雷が落ちた音が聞こえてきた。
「・・・君達、少々やりすぎではないか?」
アサッシュが苦笑いしながらアグニスに尋ねる。
「・・・ハハハッ。」
アグニスも苦笑いで返すしかなかった。
「・・・話はまとまったようですね。」
応接間のソファでアグニス達の話を聞いていたヒロヨシが声を発した。
「・・・博士。ゲートの方は大丈夫でしょうか?」
呆けていたメラーニが正気を取り戻し、冷静にヒロヨシに尋ねた。
「・・・大丈夫です。といいたい所ですが、最終チェックもあります。自分が操作してご案内しましょう。それで宜しければ?」
メラーニの問いに丁寧に受け答えしてニコリと笑うヒロヨシ。
「博士、ご協力感謝します。」
アグニスが握手を求めた。
「ノブヒデの・・・ユッケの事、頼みます。」
ヒロヨシはソファから立ち上がり、アグニスと握手をして、息子のことをアグニスに託した。
「それでは参りましょう。ミッドガルドへっ。」
アグニスが片手を扉の方へと流して導いた。
「アグニス大佐・・・成功を祈って居るよっ。」
アグニスを信じきった目で見ながらアサッシュは微笑んだ。
「・・・・・・。」
アグニスは何も言わず、ニコリと笑顔を部屋に残して出て行った。
〔ドドドドドドドッ、パラパラパラパラッ、ドンドンドドンッ〕
「やれやれ、これから骨が折れるわい。」
アサッシュは椅子から立ち上がり、窓の外を見ながらそう呟いて腰を軽く叩いた。
ユッケ達が難敵ハディと戦っている中
アグニス達は根回しのために動いていた
しかし、ユッケ達の前に立ちはだかるのはあの闇の民ハディ
ユッケ達はこのピンチを乗り越えられるのか?!
次回、「ハモウという賢者」
青年よ、先駆者達の指し示す道を進め!(千葉繁さん風)