その凄まじい強さに追い詰められるユッケ達
そんな中、ユッケ達を励ます父ヒロヨシの声が戦場に響き渡る
そして、ある男が動き出す
「ユッケ、お前は世界を守りたいんじゃなかったのかッ?!」
拡声器から息子に激を飛ばす父親の声がゲート広場に木霊した。
「・・・やれやれ、今度は父親の方か。」
ゲート管理室の方を見上げながらハディが声を吐き出す。
「何をしているっ!ゲートを確保だッ!!」
ゲート管理室がある建物から大きな声を出して、アグニスが飛び出してきた。
「サッ!!!!!」
親愛なる者の言葉に今まで固まっていた兵士達が己を奮い立たせる為に大きな声で答える。
そして、全員が一人の男に銃を構えた瞬間、
「一騎打ちじゃっ!」
その場にいた全ての人間の動きを止める声が響き渡った。
「・・・ハッ・・・ハモウッ・・・さん・・・。」
ユッケは焦げてダメージを負った身体で立ち上がり、声を発した人物の方を見据えた。
(・・・・・・。)
ラムウが何かを感じ取っていることが無言でもユッケには伝わってきた。
「・・・一騎打ち?・・・フッ、面白い。」
ハディはハモウの突然の提案に笑って答えた。
「アグニス殿、ユッケ君を連れてゲートに行けっ。」
ハモウは決意の眼差しを大佐に向け、指示を出した。
「・・・・・・。」
アグニスはハモウの意志に圧されて、無言でその指示に従う。
アグニスとメラーニ、そして、一緒にいた兵士達はユッケの所に向かい、立っているのがやっとのユッケを抱えてゲートの方に急いだ。
「闇の民よ、ワシと決着をつけようぞ。」
ハモウはゆっくりと広場の中央に歩き出す。
「フフフフッ、老いぼれが・・・忘れてないぞ。あの日の屈辱・・・。」
ハディも中央にゆっくりと歩いていく。
「覚えていてくれて、ワシはうれしいぞぃッ!」
「ッ?!」
ハモウが中央でハディと対峙したその時だった。ハモウは大きく両手を天に突き出し、ハディを凝視した。その行動に違和感を覚えたハディだったが、
〔ディメンション〕〔ブウウウウウウウーーン〕
「ぁあっ・・・あぁぁぁっ・・・。」
ユッケの目に見たくない光景が広がってしまった。
「なっ・・・お前・・・っ?!」
ハディが気付いたときには遅かった。自分が得意とする魔法の闇が足元に広がり、その闇に足を取られて動けなくなってしまっていた。
「ゴハッ・・・ヒョッヒョッヒョッ・・・どうじゃ、自分の得意な魔法を食らうのは?」
ハモウは闇に呑まれながら、吐血し、鮮血に染められながらも悪態をついた。
「オマエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」
いつかみせた鬼の形相でハモウを見るハディ。闇に少しずつ少しずつ身体が沈んでいく。如何に得意として扱っていようとも、ハディにとっても食らってしまっては回避する術はなかったようだった。
「ハディッ?!」
「来るなッ!」
影で身を潜めて、様子を伺っていたパンデモニウムがハディを助けようと飛んで近寄ろうとした。しかし、それを片手を向けて制止するハディ。
「・・・心配ない。仮にもディメンションを扱う闇の民。俺に使った所でどうという事はない。」
鬼の形相ながらもハディは口角を上げてほくそ笑む。
「ゴホッゴホッ・・・知っとるよ・・・時間稼ぎにしか・・・ゴホッ・・・ならんことはっ。」
さらに吐血しながらハモウが口角を上げて対抗する。
「ハモウサアアアアアアアアアアアアンッ!」
フュージョンを解いた姿で涙を滝のように流しながらユッケがハモウの名前を叫ぶ。
「ヒョッヒョッヒョッヒョッ・・・ハディよ・・・お主は過信が過ぎる所がある・・・そこに付け入る・・・ゴハッ・・・隙がある・・・ブフッ・・・命がけ・・・じゃがなっ・・・。」
ハディにさらに悪態を突きながら笑ってみせるハモウ。
「・・・覚えておこう・・・大賢者様っ。」
口角を上げながらも苦虫をかみ殺した表情でハモウを見るハディ。
「ハモウサアアアアアアアアアアアアンッ!!」
アグニスやメラーニに抱きかかえながらも暴れて、ハモウを助けに行こうとするユッケ。
(ヒョッヒョッヒョッヒョッ、短い間だったが、ワシにも孫が出来たようでなんとも良い気持ちじゃったわい。リアの子ノブヒデよ。お主の未来に幸があらん事を願っておるよ。)
ハモウはニッコリとおじいちゃんが孫を見守るような微笑を向けて、闇へと静かに沈んでいった。
「・・・・・・。」
ディメンションの闇が地面に吸い込まれて消えた瞬間。ユッケはその場所だけを見つめて動かなくなった。にっくき敵ハディと親しき友ハモウを飲み込んだ闇はその場所に元から存在していなかったかのような静寂を残して彼方へと消えた。
「・・・奴らしい最後じゃったっ。」
ラムウが消えた友の姿を瞳に映してそう呟く。
「ラムウさん、あの空に浮いている化け物は大丈夫なんですか?」
アグニスが感傷に流されず、冷静に次の行動を取れるように情報提供をラムウに願った。
「・・・問題ないようじゃ・・・奴も戦う気はないとみる。」
ラムウが空中に漂うパンデモニウムを見て答えた。
「博士、準備は大丈夫ですか?」
メラーニが透かさず、通信機でヒロヨシと連絡を取る。
「大丈夫です。ゲートは調節しました。急いで下さい。」
拡声器からヒロヨシのGOサインが出る。
「ちょっとちょっと、お父さん置いて逃げちゃうの?」
「っ?!」
拡声器の中から、聞き覚えのある人間ではないものの声が聞こえてきて、固まっていたユッケの視線がそこに奪われた。
「おっ、お前はっ?!」
拡声器のスイッチをONにしたまま、管理室の声が広場に漏れ出す。
「フフフフッ、ハディが闇の中に消えちゃったけど、僕もいるんだよねぇっ。」
管理室の中でヒロヨシとディアボロスが対峙する。
「・・・・・・・。」
ヒロヨシは悪魔を見据えたまま動かない。正確には動けない。ヒロヨシには戦う術がないからだ。
「ユッケく~~~ん、お父さん置いて行っちゃ・・・もう会えないよ?」
拡声器に繋がっているマイクに向けて悪魔が言葉を紡ぎ出す。
「やめろおおおおおおおおおおおおっ!」
ユッケがアグニスの腕の中で再度暴れて、悪魔に叫ぶ。
「ユッケッ!お前のするべきことを忘れたのかっ?お前は私を守る為に戦ってるわけじゃないだろッ!自分の目指すモノを見失うんじゃないッ!!」
悪魔を見据えながらも息子に必死に道を示す父。
「あらあらあらあら、泣けちゃうなぁ・・・親子の愛って奴?」
人間では有り得ない口の裂け方で微笑む悪魔。
「・・・ユッケ、迷うなッ!」
悪魔に必死に抗う父。
「・・・選びなよ、ユッケ君・・・。」
悪魔はゲートのスイッチを押して、ゲートを起動させる。
「・・・・君が選ぶんだ・・・どっちを取るか・・・。」
悪魔がヒロヨシをニタニタ見つめながらユッケに選択肢を投げかける。
「・・・仕方ない・・・打ち合わせ通り行動しろ。」
アグニスが通信機で部隊に指示を出す。
「そっ・・・そんな・・・父さんは?」
ユッケが絶望の眼差しでアグニスを見る。
「・・・心配ない・・・わたsッ・・・。」
「大佐、私との約束を必ず守って下さい!」
拡声器から大佐の決意を消し去るようにヒロヨシが叫ぶ。
「アポニスの皆さんも同じです!大佐の指示に従って行動して下さい!」
ヒロヨシは釘を刺すように立て続けに叫ぶ。
「なんだよ約束って・・・僕知らないんだけど・・・。」
悪魔が少し悔しそうに声を出す。
「・・・・・・皆よく聞け。一度しか言わない・・・我々は各自事前に打ち合わせた行動に間違いなく従え・・・いいなっ!」
アグニスが唇を噛み締めながら声を振り絞って通信機の向こうの部下達に命令を出した。
「サッ!!」
通信機の向こうから部下達の返事が乱れなく聞こえる。
「・・・そんな・・・嘘だ・・・おれが・・・。」
「ユッケ君、私はウソツキでも構わない。君に恨まれたって良い・・・私は男だ。私には違えられない約束がある!」
ユッケが呆然としている中で、アグニスはユッケの顔を両手で掴み、焦点が定まってないユッケの目を見ながら自分のすべき事を告げた。そして、
「うっ・・・。」
ユッケの腹部に不意打ちでパンチを叩き込みアグニスはユッケの意識を絶った。
アグニスは気を失ったユッケを抱きかかえ、管理室のある建物に敬礼して、ゲートへと向かった。
「・・・ありがとう。」
管理室の窓から大佐達の姿を見て、ヒロヨシは感謝の言葉を窓の向こうに投げた。
「・・・・・・男の約束?・・・気持ち悪い・・・。」
悪魔がそう言いながら、微笑を消して、ヒロヨシをその大きな目で覗き込んだ。
「・・・理解しろなんて言わないさ・・・お前の好きにするがいい・・・。」
ヒロヨシは大佐達がゲートに消えていくのを見終えて、悪魔に正面から向き直し、そう笑った。
「・・・じゃぁ、そうするよ。」
悪魔はそう告げて、この世でもっとも暗い闇の顔をして、ヒロヨシの顔を見下しながら覗きこんだ。
難敵ハディを退けたのも束の間、
今度はディアボロスがその悪魔の顔を覗かせた。
我が子を守るために父は悪魔へと立ち向かい・・・。
次回、「接触と再会」
青年よ、別れを乗り越えて、強くなれ!(千葉繁さん風)