FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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大切な肉親や友を失って、失意と絶望の中にいたユッケ
そんなユッケを助けようと
その元に懐かしい面々が集まろうとしていた。


再会と再開

 

「ノブヒデッ!!!!!!」

 

闇の中にどっぷりとふさぎ込むユッケに途方にくれていたテント内の面々。そんな面々を驚かせる大きな声でユッケの名を呼び、テント内に入ってきた女性がいた。

 

「・・・・・・。」

声のする方向を見るユッケだったが、視界がカスんでいて、その人物を判別する事は出来なかった。

 

「ノブヒデッ!!!!」

女性はテントの低い天井付近を飛びながら物凄い勢いで人を飛び超えて、ユッケに近付き、ユッケに近付くや否やユッケの胸に飛び込んでユッケを力強く抱きしめた。

 

「・・・シヴァ?」

弱りきっていたユッケには懐かしい匂いでそれがシヴァではないかと頭に浮かんだが、最早、それすら正確に判断できる力も失っていた。

 

「ノブヒデ・・・本当によかった・・・あなたが生きていて、本当に良かった。」

シヴァはユッケの胸に埋めていた顔を離して、優しくユッケの頬に両手で触れ、涙で腫らした瞳でしっかりとユッケを捉えて離そうとしなかった。

 

「・・・・・・・。」

シヴァの姿を見て、レオンは黙ってその場から少し離れ、アグニスの肩に触れて合図を送り、さらに距離を取るように後退りした。

アグニスもそれに答えるように同じ行動をとり、周りの人間もそれに続いてユッケとシヴァから距離をそれぞれ離した。

 

「・・・・・・シヴァ・・・なんだね?」

おぼろげな視界の中でも分かるように顔を近づけてくれたシヴァに精一杯の笑顔で答えようとするユッケ。しかし、その笑顔はロウソクの火が消えそうなほど弱々しい。

 

「・・・えぇ、そうよ・・・。」

涙でグシャグシャな顔でも必死に微笑み返そうとするシヴァ。

 

「・・・・・・父さんも・・・いなくなっちゃったんだ・・・。」

力ない言葉で必死にシヴァに届けようとするユッケ。力なく流れるたった一筋の涙が絶望を伝えた。

 

「・・・・・・・。」

シヴァは何も言わずに優しくユッケを自分の胸の中に導き、全てを包み込んだ。

 

「・・・・・・俺は弱いね・・・。」

シヴァの胸の中で絶望に打ちひしがれるユッケ。

 

「・・・・・・大丈夫、大丈夫よノブヒデ。私がまだ、私が傍にいるわ。」

優しくユッケの頭を撫でながら母のように子を癒すシヴァ。

 

「うぅっ・・・うわああああああああああっ・・・・・・・。」

セキを切ったかのようにユッケが泣き叫ぶ。

 

ゲートを潜ってこちら側に来てから、ユッケは涙を流さなかった。涙は人間にとっての一種の防衛本能。泣く事で精神を保っている事もある。が、絶望の中にいたユッケには防衛は必要なかった。しかし、シヴァという存在が絶望の中に温もりを取り戻してくれたおかげで、ユッケの中で自身を守ろうとする意識が蘇ったのだった。

 

「・・・ユッケ・・・さん・・・。」

シヴァに遅れる事少しして、ミューレがユッケ達の前に姿を現した。

 

綺麗好きなミューレのはずが、今の姿はそうではなかった。髪は痛み、服もあちこちが破けていて、肌も所々、黒い汚れが目立っていた。

 

「ミューレ殿、忙しい中こちらに来てもらって、すみません。」

レオンは持ち場を離れて、こちらに来てくれたミューレにニコニコと普段通りの笑顔でお礼を言った。

 

「・・・いえ、ユッケさんが無事だったと聞いて、シヴァ様も皆も、私だって会いたいに決まってますから・・・。」

ユッケとシヴァの様子を見ながら少し涙を溜めた目でミューレがしっかりと言葉を繋いだ。

 

「・・・そうですね。」

レオンがミューレの目線に合わせて、ユッケとシヴァを見て呟く。

 

「・・・大佐、そろそろ。」

メラーニがユッケ達を眺めているアグニスの背後から声を掛ける。

 

「・・・・・・そうか、わかった。」

ユッケ達の方を見ながらメラーニに答えるアグニス。

 

「行かれるのですか?」

レオンがアグニスの方に顔を向けて、にこやかに尋ねた。

 

「・・・はい。こちらに来ている部隊の中にも我々に友好的、協力的な者も少なからずおりますから、その者達に直接会って説得してきます。」

ニコリと微笑み返してアグニスがレオンに答える。

 

「それはありがたい。」

レオンが少し会釈をして、礼を述べた。

 

「・・・いえ、元々はこちらの落ち度。自分達の失態を挽回するためです。」

アグニスがレオンの会釈に返すように深く頭を下げる。

 

「・・・ここで譲り合っても仕方ありませんね。全ては闇の民の策略。今度会ったときはお互い想いをぶつけてやりましょうや。」

レオンは拳を作ってアグニスに見せ、力一杯の笑顔を向けた。

 

「・・・はい。」

アグニスが負けじと笑顔を作り、返事をして、会釈をし、その場からメラーニと共に雑踏の中へと姿を消した。

 

「ユッケさんは大丈夫なのでしょうか?」

涙を溜めた目で心配そうにレオンを見るミューレ。

 

「大丈夫ですよ、人一倍頑張り屋さんのユッケ殿です。まだ守るべきモノがあると改めて見つければ、きっと我々が肩を貸さなくても立ち上がりますっ。」

100%の自信を持ってレオンがミューレに言葉をぶつける。

 

「はいっ!」

レオンの言葉に引っ張られて笑顔で返事をするミューレ。

その視線がユッケとシヴァに再度向けられた。

 

 

 

「・・・落ち着いた?」

 

 

 

シヴァがユッケの頭を優しく撫でながらササヤく。

 

「・・・うん。」

シヴァに身を委ねたまま目をツムり、ユッケが静かに答える。

 

ユッケはもう絶望の中にはいなかった。失ったものの悲しみを吐き出して、それを全て包み込む温もりに心を絆されて、ユッケは元気を取り戻しつつあった。

 

「・・・皆、貴方の帰りを待っていたのよ。」

シヴァが優しい口調で語りかける。

 

「・・・レオンには会えたけど、みんな無事?」

ユッケがシヴァから身体を離して、シヴァの目を見ながら尋ねる。

 

「・・・ミナ以外は・・・みんな、元気よ。」

シヴァが言葉を選ぶように慎重に答えた。

 

「えっ?!」

シヴァの言葉に驚きを隠せないユッケ。

 

「・・・今、戦ってる敵は・・・アースカンド軍とミナさんです。」

ミューレが恐る恐るユッケ達に近付き、静かにシヴァに続いてユッケに答えた。

 

「・・・・・・。」

レオンがミューレの後ろで口を真一文字にして黙って立っている。

 

「貴方がハディにディメンションを受けた後に、ミナは連れ去られたの・・・。」

胸を締め付けられた悲しい顔をしながらシヴァがユッケに話す。

 

「バハムート様がハディのメテオにやられながらも皆で力を合わせて、一度は敵を押し返したのですが、最近になって、ミナ殿が前線に姿を現すようになり、こちらは混乱の中で形勢は悪くなるばかりでして・・・。」

苦笑いしながらレオンがユッケに詳しく説明する。

 

「ミナ様がどういうお考えかは分かりませんが、別人のように強くなられて、守護獣共々攻めあぐねています・・・。」

ミューレもウツむきながら続く。

 

「・・・そんな、まさか・・・。」

ユッケがそれでも信じられないと困惑の色を隠さない。

 

「・・・バハムートもあれ以来前線に姿を見せなくなって・・・。」

シヴァも暗い顔になりながら話した。

 

「・・・・・・取り戻さないと・・・。」

ユッケはそう言いながら自分の力で立ち上がろうとした。

 

 

「っ?!」

 

 

ユッケは立ち上がろうとしたが、立ちくらみで少し足元が覚束ない。その様子を見て、周囲の皆がトッサに手を差し伸べようとする。その手をユッケは左手を出して制し、壁に手を突きながらも己の力で成し遂げようとした。

 

「・・・大丈夫・・・もう大丈夫だから。」

ユッケは自分の力でしっかりと立ち上がり、皆に笑顔を向ける。

 

 

「そろそろ、よいかの?」

 

 

「っ?!」

空気を読んで身を潜めていたラムウが輪の中に入ってきた。そのラムウの姿を見て、シヴァとミューレは驚く。

 

「ラムウ、あなたどこに居たの?!」

「ラッ、ラムウ様?!」

ユッケにしか目がいかなかったシヴァ達が、ラムウという衝撃の存在に初めて気付いた瞬間だった。

 

「フォッフォッフォッフォッ、久しぶりじゃのうシヴァ。もう何十年も会っとらんかった。」

ラムウが驚く二人の顔を悪戯な笑みを浮かべながら見て話す。

 

「向こうで偶然助けてもらって・・・。」

ユッケがラムウとの経緯を話そうとする。

 

「実に数奇な運命じゃわい。」

ラムウがニコニコしながら振り返る。

 

「・・・シヴァ、ハモウさんにも会ったんだよ・・・。」

悲しい顔でシヴァを見ながらハモウの名を口にするユッケ。

 

「えっ?!」

ユッケの顔を見て、何かを悟るシヴァ。

 

「ハモウはワシらを守り、己が使命を全うした。」

ラムウが古き良き友に餞別の笑顔を送って、シヴァに短いながらも事のてん末を告げる。

 

「・・・そう・・・。」

全てを悟り、シヴァがハモウを思いながら、遠くに目線を移す。

 

「ハモウ様・・・お会いしたかったです・・・。」

大賢者と名高いハモウの名を聞いて、ミューレが率直な意見を述べる。

 

「アグニスさんに伺いましたが、見事な最後だったと・・・。」

レオンが悲しい笑顔で誇らしく語る。

 

 

「もう元気になったか、ユッケっ。」

 

 

「シドさん。」

ラムウに続いて、シドも輪の中に入ってきた。ユッケは苦笑いを浮かべながらシドの名を口にする。

 

「・・・すみません、迷惑掛けたみたいで・・・。」

ユッケはシドに軽く会釈をして謝罪した。

 

「ホントだぜ、まったく・・・もう少しでぶん殴ってでも正気に戻す所だったっ。」

右の拳を左手で包みながらシドがニヤケてユッケに悪態をつく。

 

「シドさん、貴方もユッケを助けてくれたのね・・・ありがとう。」

シヴァが初対面のシドに女神の微笑でお礼を言った。

 

「・・・こっ、これはこれはとんでもない美人に・・・。」

目のやり場に困りながらシドが答える。

 

「・・・ユッケ君、アグニス大佐も動き出している。辛いだろうが我々も何か行動を起こさなければならないんだが・・・。」

ラスターが申し訳なさそうに輪に入ってきた。

 

後ろには数名のアポニス部隊員もいる。どうやら、アグニスはユッケ達の方にも部隊を分けてくれたようだった。

 

「・・・すみません。俺のせいで色々ご迷惑をかけたみたいで・・・。」

ユッケはラスターたちに深々と頭を下げて謝罪した。

 

「・・・いや、いいんだよ。それについては大佐から伝言もあるんだ。」

「えっ?」

ラスターの思わぬ言葉にユッケは固まる。

 

「大佐はヒロヨシ博士の件について、必ず責任を取ると・・・。」

ラスターが顔を曇らせながらユッケに告げる。

 

「・・・そんな。大佐は何も悪くありません。アポニスの人達は俺達のために最善を尽くしてくれました。俺はこの目でちゃんと見ていました。今も大佐はミッドガルドのために頑張っています。責任を取れだなんて言いません・・・。」

ユッケはラスターの目をジッと見て、熱い想いを言葉に乗せた。

 

「・・・大佐は責任感の強いお方なので、納得しないかもしれません。その時は、ユッケ君が直接大佐にそのお気持ちをお伝え頂きたい。」

ラスターが弱い微笑でユッケに自分の本音を混ぜて話した。

ラスターとしても、大佐はこの先も重要な道標。その大佐がどのような責任を取るかを気にしていた。

 

「・・・もちろんです。」

ラスターの不安を一掃するように熱い目と言葉でユッケが答える。

 

最早、ユッケの周りに絶望はなかった。絶望にカマけるよりも今はしなければならない事がたくさんあることに気付いたからだった。

 

 

(・・・まずは、ミナを救わないと・・・。)

 

 

ユッケは己の握り締めた拳に誓いを立てて、自分を奮い立たせた。

 

 

 

 

 




絶望の中からユッケはシヴァのおかげで立ち直った
しかし、そんなユッケにミナの近況が伝えられる。
ミッドガルドとアースカンドの戦いはいよいよ終盤戦に入ろうとしていた。

次回、「戦況と打開」
青年よ、その迷い晴れた歩みで再び道を突き進め!(千葉繁さん風)
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