FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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シヴァによって、絶望の中から救い出されたユッケ
そんなユッケにミナに関する思わぬ事実が告げられる
しかし、今のユッケはもう下を向くことはなかった。


戦況と打開

 

雑踏が騒がしいテントの中、ユッケ達は隅の方のテーブルに集まり、テーブルに広げられたミッドガルドの地図を見ながら相談していた。

 

「まずは我々の状況からですね。」

ラスターがテーブルに集まっている面々の顔を見ながら話し始めようとしているところだった。

 

ラスターはアポニス部隊の集めた情報と、ミッドガルドの人達から聞いた情報。ミッドガルドで行動していた別部隊からの情報を元にアースカンドの軍が作成した地図を更新して、ユッケ達に今のミッドガルドにおける戦況を説明してくれた。

まず、ミッドガルドにおけるアースカンド軍の侵攻としては、ミッドガルドの中心であり、最も攻略が最優先とされた「光の塔」周辺に部隊が展開しているという事。最初のゲートは光の塔の北に10kmの地点に展開され、フォッカ少将が指揮する13万前後の部隊。最初の猛攻を仕掛けたが、バハムートが集めた守護獣の群れと交戦して8万以下に部隊を減らしていた。

次に塔から北東5kmの地点にベロニキ中将が率いる8万の部隊が2日後に展開。フォッカ部隊を支援すべく、交戦するが予想以上の猛攻に遭う。次に塔から南東7kmの地点に展開されたロッテント少将が指揮する10万前後の部隊が最初のゲートから1週間後に展開し、フォッカ少将の支援とベロニキ中将の救出、別働隊による攻略を開始。こちらも守護獣とミッドガルド人による抵抗で1万人弱を前線から失い、均衡状態が3週間以上続いていた。その間にベロニキ中将のゲートはミッドガルド人に破壊され、フォッカ部隊とロッテント部隊が分断される形となった。

 

「アグニス大佐は親交の深いロッテント少将に会いに行かれました。フォッカ少将はゴコーレ中将との関係が深く、何より軍にハディを紹介した張本人ですので・・・。」

ラスターがアースカンド軍の動きを分かりやすく地図で示しながらユッケ達に教えてくれた。

 

「・・・ていうことは、そのフォッカっておっさんが元凶?」

ユッケが右手で顎を触りながらラスターに尋ねた。

 

「元凶がどうかは分かりませんが、この戦争の道筋に大きくかかわっている事は間違ってないと思います。フォッカ少将は悪い噂の耐えない方ですし、出世欲の強い方でも有名です。アグニス大佐を幽閉するように根回ししたのもフォッカ少将ではないかと・・・。」

ラスターが深刻な顔をしながらフォッカ部隊のいる地点に指を置きながら話す。

 

「攻めた我々が言うのもなんですが、ベロニキという方はどうなんですか?」

ニコニコしながらレオンが尋ねる。

 

「いえいえ、レオンさんやミッドガルドの方々は侵攻された側なのでかしこまられると我々としては・・・・・・ベロニキ中将は大変真面目なお方です。群れるのを嫌う方なので大体は中立な立場の方ですが、余り自分から意見を言わない方なので今回の事をどう思っているかは分かりません。しかし、幸か不幸かロッテント少将の方に逃げ延びたようなので、アグニス大佐が直接説得にあたると思います。アサッシュ大将閣下とは旧知の仲と聞いています。アサッシュ大将閣下の書面があれば、何も言われないと思われます。」

ラスターがレオンにベロニキ中将についての丁寧な返答をした。

 

「ちゅぅことは、俺達の敵っていうのはここにいるフォッカって馬鹿野郎だけだなっ。」

シドがフォッカ少将のいる地点を指でグリグリしながらニヤけて言った。

 

「・・・簡単なようで難しいです。」

ミューレがその場所を見ながら呟く。

 

「・・・・・・ミナが現れたのはフォッカのいる前線なのよ。」

悲しそうな顔をしてシヴァが続いて呟く。

 

「・・・・・・しかも、フォッカ少将は大型陸上母艦を使われています。陸上になりながら空母のように前線基地としての機能もある我が軍の最新鋭の移動要塞です。フォッカ少将の息のかかった部隊が8万の内にどれだけいるのか?どれぐらいが抑えられるのか?で戦況は大きく変わってきますね。」

ラスターが漏れのないようにミューレとシヴァの呟きにさらに刺激的なスパイスをまぶした。

 

「ロッテント部隊の説得はうまくいきそうなのかね?」

ラムウが髭を触りながらラスターに尋ねる。

 

「正直、成功する見込みは大きいと思いますが、1日2日はかかるかもしれません。」

ラスターが忖度なく話す。

 

「今、前線はセレス様とティア殿が居ります。防衛に専念するなら持つかもしれませんな。」

レオンがニコニコ腕組みをしながら話す。

 

「・・・バハムートは?」

ユッケがその名を呟くと場の空気が変わった。

 

「・・・・・・。」

押し黙るミッドガルドの面々。

 

「バハムートといいますと巨大な飛竜ですよね?前線ではあまり目撃されておりません。」

バハムートと関わりの薄いラスターが軽快に話す。

 

「・・・なんじゃ、あやつおっちんだか?」

ラムウがミッドガルドの面々を見て、軽いジョークのように言葉を吐いた。

 

 

「・・・いなくなったのよ・・・。」

 

 

シヴァがうつむいてそう呟く。

 

「・・・バハムート様は初日の猛攻の後、姿を消されました。メテオで受けた傷もありながら懸命に戦っておられたのですが・・・。」

レオンの顔から笑顔が消える。

 

「・・・・・・私達だけで十分と思われたのでしょうか?」

今にも泣きそうな悲しい顔でミューレが言葉を零す。

 

「・・・どこに居るかも分からないの?!」

思わぬ状況に驚きを隠せないユッケ。

 

「・・・・・・分かるわ・・・・・・。」

シヴァが切なそうに言葉を発する。

 

「どういうことなの、シヴァ?」

訳も分からずシヴァに詰め寄るユッケ。

 

「・・・・・・居場所は分かるの・・・でも、そこから動こうとしない・・・本当に分からないの・・・バハムートが何を思っているのか・・・。」

ユッケが詰め寄るも目を合わせずに答えるシヴァ。

 

「怖気づいた奴なんてほっとけばいいだろっ。」

シドが片手を振って素っ気なく言う。

 

「いや、だめだ・・・あいつにそんな資格はないっ。」

怒りを込めた瞳でジッと地面を見つめて言葉に感情をのせるユッケ。

 

「シヴァは分かるんだよね?あいつの居場所っ。」

ユッケが再びシヴァをジッと見つめる。

 

「・・・えぇっ。」

今度はユッケを見つめ返して答えるシヴァ。

 

「連れてってよシヴァ、あいつの所へっ。」

ユッケはシヴァの手を掴み促す。

 

「ユッケ殿、どうなさるんですか?」

レオンが心配そうに尋ねる。

 

「レオン達はセレスさん達の所で待ってて。俺はあいつに言いたい事がある!会って引っ張り出してくるよっ!」

シヴァの手を掴んだ手とは反対の方の手でガッツポーズを作り、答えるユッケ。

 

「ユッケ君、私達はどうすれば?」

ユッケの行動に雲を掴む想いで尋ねるラスター。

 

「ラスターさん達もレオンについていってセレスさんに状況を説明して下さい。きっとセレスさんの助けになる・・・俺も必ず行きますっ。」

ラスターの不安を吹っ飛ばすように活き活きとした口調で答えるユッケ。

 

「・・・あぁ、わかった・・・。」

ラスターはユッケの言葉の圧でそれ以上何もいえなかった。

 

「フォッフォッフォッフォッ、面白そうじゃな。ワシはユッケについていくとしよう。」

ラムウが悪戯な笑みを浮かべながら言う。

 

「その弱虫バハムートって奴を見てみたいな。俺も付き合うぜっ。」

ラムウと同じく興味本位だけでシドが続く。

 

「僕とチョコは残るクポポッ。」

チョコの上に乗っかって様子を伺っていたモグッチが流されないように言葉を置いた。

 

「クェッ!クエクエッ!!」

モグッチの言葉に何やら反抗的なチョコ。

 

「えぇっ?!自分もついていくクポッ?!!・・・分かったクポ。僕も行くクポッ。」

居る場所を明らかに間違えたと悟ったモグッチがうな垂れた。

 

「よしっ、じゃぁ・・・みんな、必ずミナとこの世界を取り戻そうっ!」

ユッケが元気良くそう言葉を投げかけて、右手を前に突き出した。

 

 

「オゥッ!」

 

 

ユッケの行動に促されて、それぞれが片手を出して、ユッケの合図に合わせて声を出した。その瞬間、一瞬だけ雑踏が止み、皆の想いが湧き上がるのをその場の全員が感じた。

 

 

 

 

 




ミッドガルドとアースカンドの戦争の中、
姿を消したバハムートに会うべく
シヴァについて行く事にしたユッケ達
そこで見たバハムートは・・・。

次回、「明日へ」
青年よ、明日に向かって拳を掲げよ!(千葉繁さん風)

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