一時優勢に立ち回ったかに見えたユッケ。
しかし、ギルガメッシュの気転により形勢が再逆転
再びピンチに陥ったユッケだったが、
そこにどこからとも無く美しい女性の声が聞こえてきた。
果たして、その正体は?!
ユッケの死を覚悟した一同。皆がそう思った瞬間だった。
「ノブヒデッ!」
美しい声が誰かの名前を呼んだかと思うと、
〔ドドドーーーンッ〕
〔ガガガガッ・・・!〕
ユッケとギルダンクの間に大きな氷の壁が地面から突然せり上がり、ギルダンクの機銃を防いだ。
「ノブヒデはやらせない!」
美しい声に導かれるようにユッケは目を開ける。
「・・・えっ?!」
ユッケは驚いた。
そこにはユッケを守るようにギルダンクに立ちはだかる美しい薄着の女性が立っていたからだった。まさに絶世の美女。肌は透き通るように白く、少し青みがかっているようにも見えた。服装は踊り子のようで、大事な部分だけを隠し、それ以外は不要とまで主張するような妖麗な姿。髪の毛はショートで短く、剣山のように立っていた。が、その髪は美しく張りつめた氷のように透き通っている。
「大丈夫、ノブヒデ。」
その女性はギルダンクに正面を向けながら、流し目でユッケの身を案じた。
聞きなれない言葉に目をテンにするのはユッケ。
「・・・ノブヒデ?」
ユッケは女性の発した言葉に困惑する。その女性が自分の顔を見ながらノブヒデと言っていた。闘いの最中でありながら、ユッケは自分が何者なのかという混乱で頭がいっぱいになった。
困惑するユッケに一つの解答を告げる言葉がその場に響く。
「・・・シヴァ・・・様。」
困惑するユッケを余所にティアがそうつぶやいた。その美しい女性の名はどうやらシヴァというらしい。ティアが敬称をつけるのだから、とても位の高い女性なのだろうことがユッケにも分かった。
ティアやその場にいるミナ達の反応を他所にシヴァの眼中にはユッケしかないようで
「どうしたの、ノブヒデ・・・私が分からないの?」
シヴァはもはやギルダンクに背を向け、ユッケの目線に合わせてしゃがみ込んでしまった。
ユッケの目の前にいるのは、薄着の絶世の美女。
「・・・・・・。」
少し潤んだシヴァの瞳に吸い込まれそうで言葉が出ないユッケ。健全な青年ならば仕方ないことだろう。
「ノブヒデ、ごめんなさい。あなたとはぐれてしまって・・・もう大丈夫よ。」
優しい言葉でユッケに語りかけるシヴァ。それは怯える子供に語りかける母親のようだった。ゆっくりとシヴァの手がユッケの頬に触れる。その手は少し冷たかったが、シヴァの暖かい心が伝わってくるのが分かった。
まさに、その時だった。
「・・・シヴァ・・・。」
ユッケの頬にシヴァの手が触れ、シヴァの想いがユッケに流れ込んだ瞬間。今まで忘れていた自分の記憶がすべて蘇った。
母と過ごした森の小川。
仕事に没頭して家庭を顧みない父。
母が死んでから寂しく過ごす食卓。
寂しさから逃げるように入り浸った思い出の小川。
そこでチョコと出会い、ゴブリンに襲われた。
その時、初めてシヴァと出会い。
シヴァの助けを借りてチョコを救出。
その後、シヴァから聞く母の思い出と異世界ミッドガルドの事。
ミッドガルドに懐かしさを感じていたのは母の生まれ故郷だったからだった。そして、ずっと側で見守っていてくれたシヴァ。しかし、突然開いた次元の歪みに巻き込まれ、ミッドガルドへ・・・。
その代償か、記憶を失い。ユッケとして今、ここに居た。
「もう大丈夫だよ、ありがとうシヴァ。」
ノブヒデはそう言うと頬にあるシヴァの手に優しく自分の手を重ねた。
「・・・よかった。」
シヴァは目に涙を貯めていた。
感動の再開が展開されるフレビア、火のクリスタル神殿広場。そこに水を差す者あり。
「お前ら、わしを忘れとりはせんかっ!!!」
拡声器で大きな声で叫ぶギルガメッシュ。いつのまにかユッケことノブヒデ達から距離をとり、砲身を向けて準備万端で構えていた。
「まさか、守護獣シヴァが現れるとは思わんかったが、いい力試しじゃ。守護獣も凌駕するこのギルダンクの力をその目に焼き付けろっ!」
ギルガメッシュはそう言い放ち、ユッケ達を攻撃する気満々だった。黙ってそうしなかったのは、それほど自身の兵器への信頼だったのかは不明。
「ノブヒデ、いけそう?」
シヴァは立ち上がりギルダンクへと身体を再度向けた。
「あぁ、大丈夫だよ。」
シヴァに少し遅れながらノブヒデも立ち上がる。
「くらえっ!」
〔ドゴーーンッ!〕
〔ドガーーーンッ!〕
ギルガメッシュの合図と共にギルダンクの砲身から放たれた弾がノブヒデ達に着弾する。
「ッ!?」
シヴァが現れてから状況を掴み切れない一同。そして、弾が着弾して土煙が上がる中、一同はまたしても度肝を抜かれた。
「なっ、なんじゃ。あれはっ?!」
最初に口を開いたのはギルガメッシュだった。
「まさか・・・『融合(フュージョン)』。」
その場で戦っていた全員が手を止めて目を奪われ、ハディがそうつぶやく。ノブヒデとシヴァが立っていた場所には一人の人物が変わりに立っていた。白い鎧で身を包んだ戦士。太陽の日差しで氷が乱反射するように輝いていた。ギルダンクの砲撃を受けながらもまったく微動だにせず、傷一つ付いてる様子もない。
「さぁ、行こうか。」
(えぇ。)
鎧の戦士からノブヒデの声が漏れ出す。鎧に身を包んだノブヒデの頭の中でシヴァの声が優しく響く。その合図と同時にノブヒデが動き出した。大地を滑る様に走り抜け、みるみるギルダンクと距離を詰める。
「機銃じゃっ!」
「アイアイサッ!」
〔ダダダダッ!〕
高速で迫り来る弾丸。しかし、今のノブヒデの速度には付いてこれない。ジグザグに滑るように進み、機銃はそれを追うので精一杯だった。
「アイスソード」
ノブヒデがそう言うと何もない右手にキラキラと氷の粒が集まりだし、それが一つになると見事な氷で出来た一振りの剣が現れた。
瞬く間に距離を詰めたノブヒデは軽やかに宙を舞い、
〔スパッ〕
一振りでギルダンクの砲身を切って捨てた。
「親びーーーんっ!」
「まずいでがんすっ!」
「やかましいわっ!」
さっきとは別人の戦士を前にギルダンクの内部は大混乱だった。
〔スパンッ〕
動かないギルダンクを前にノブヒデはアイスソードを再び振り切った。
〔ギギギギギギギッ〕
右上から切れ目が走り左下へと流れ、ギルダンクの車体がその切れ目に沿って滑り落ちていく。
〔ドガガーーーーンッ〕
「覚え取れ、小僧ッ!!」
「悔しいでやんすっ!」
「お腹減ったでがんす・・・。」
ギルダンクはその場で大爆発を起こし、ギルガメッシュ達は爆風に巻き込まれ、遠い空の彼方へと飛んでいった。今までの苦戦が嘘のように、勝負は呆気なくついた。
(まだ、2回目なのに、だいぶ動きがらしくなってきたわね。)
(シヴァのおかげだよ。)
頭の中でお互いを称え合うノブヒデとシヴァ。
光の下に悠然と立つ戦士ノブヒデを遠目でうかがっていた男。
「あっちはなかなかおもしろくなってんじゃん。」
ノブヒデの姿を見て、革ジャンの男がニヤケていた。
絶体絶命のピンチだったユッケことノブヒデを助けたのは
あの氷の女神シヴァだった。二人の間にある絆がギルダンクを倒す。
うって変わって、戦場でにらみ合う二人の男。ゼッドとレオン。
二人のファイターが相見える時、何かが起きる!
次回、「炎と大地のファイター」
青年は戦場の男達をその目に焼き付ける!(千葉繁さん風)