FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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アグニスが根回しをしている中、
対極に位置する男が頭を抱えていた。


思わぬ誤算

 

 

 

「フォッカ少将、ロッテント少将からの入電で後退して立て直すときていますっ。」

ある場所のある一室でイライラしているフォッカの耳にまたしても苛立ちが募る情報が入ってくる。

 

〔バーーーンッ!〕

 

 

「・・・ふざけるなっ!」

 

 

ミッドガルドの地図を広げたテーブルに両手を叩きつけるフォッカ。

周りの兵士達はその行動にビクリッと身体を縮こまらせて見ない様に目をそらしている。今のフォッカと目が合えば、どんな八つ当たりをされるか分からないと理解しているからだった。

フォッカという男は少将という大きな肩書きとは違って、小柄で細身、鼻は高いが被っている帽子も少しブカブカで、とても軍人としては理解しがたい人物だった。このフォッカという男がどうして、少将にまで上り詰めたのかは考えるに難しくはない。人脈と情報、太鼓持ち、軍人の中では忌み嫌われる行為を平然とし、敵と見定めた者は容赦なく排除して行く執念深さ、人間の別の面での強さがこの男をここまで押し上げていた。

フォッカが今、後ろ盾にしているのはゴコーレとハディ。そして、何よりも消さなければならなかったのはアグニスだった。しかし、アグニスはヒロヨシとの人質交換で生還。フォッカの思ったとおりに自分の邪魔をしてきていた。

 

「今、攻め込まずにしていつ攻め込むと言うのだっ!アグニスがこちら側に来て、コソコソしているのは知っている・・・あいつめ、スカしたイケ好かない顔をまたニコニコさせているんだろうがっ。」

フォッカは思い通りにならない全ての事をアグニスに押し付けて地団駄を踏んでいる。

 

フォッカにとって、アグニスの存在と行動は想定内だった。しかし、ここに来ての誤算とはユッケの存在だった。人質交換に対してのヒロヨシの協力的な事。ミッドガルドに来てからのミッドガルド人達との信頼関係の構築の早さ。フォッカやハディにとっての取るに足らないと考えていたテーブルの上にも駒として存在しないユッケの存在が、今のフォッカの苛立ちの元凶だとはこの時はフォッカ自身も分かっていなかった。

 

(なぜ、こうもスムーズに奴が事を進めれるのか?確かに奴の人脈も侮れない。駒も揃って入るだろうが予想よりも進展が早すぎる。ロッテントはともかくとして、ベロニキのじじいまでも賛同しているのはどういうことだ?それだけの確証が向こうにあると言う事なのか?)

 

フォッカはイライラのストレスから身を守る為に無意識に爪を噛むが、今日に限ってはそれが止まりそうもなかった。10本の指と言う指の爪がガタガタになっている。

 

(ハディにしても、ここ数日パッタリと連絡が取れなくなった。そもそも、あいつがここまで俺を乗せておいて、今更梯子を外すとはどういう考えだ?・・・もしかして、今の段階で和平に持っていって・・・・・・いやいや、もうあの娘のおかげで勝利は目前、ここで我々が下手に出てどうする・・・・・・しかし・・・・・・。)

 

フォッカは想いを巡らせながら一定距離を行ったり来たりして、自分の世界に閉じこもっていた。兵士達は「触らぬ神にタタリなし」と我関せずを決めて、自分の仕事だけに集中していた。

 

「閣下っ!前線部隊が新たに防衛線を突破し、光の塔の街の手前まで到達したとの事ですっ!」

ここに来て、フォッカの気持ちをやっと違う方向に向けることの出来る情報が入ってくる。

 

「・・・よし、そのまま前進させろっ。ゆっくりだ・・・慌てず、ゆっくり展開させて、部隊を分けて街を包囲するようにしろっ。」

フォッカは動きをピタッと止めて、伝令を持ってきた兵士を睨み、次の指示を与えた。

 

「ハッ!」

兵士は言われた事を聞き終えるとビシッと敬礼をして、部屋から速やかに消えた。

 

(・・・・・・アグニスの邪魔でロッテントとベロニキが下がった今・・・ピンチに見えて、我々は圧している・・・・・・これはチャンスだっ。ここでミッドガルド人の象徴とも言えるあの塔を制圧する事が出来れば、我々に有利に和平に持っていける。アグニスもきっと和平を結ぶ方向に考えているはずだ・・・私が先に有利に交渉して和平を結べば、それを邪魔したとして奴の首を完全に取れるぞっ。ハディにしてもそうだ・・・前々から怪しい奴だった。これを機に奴との関係を清算して、軍がミッドガルドとの利権を掌握すれば・・・フヒヒヒヒッ、なんだ私は追い詰められてはいないじゃないか・・・それどころか、神は私に微笑んでいるっ!)

そこまで考え終えるとフォッカは右手を硬く硬く握り締めて、口角をニヤリと高らかに上げた。

 

「・・・ロッテント殿に後退を了承したと伝えよ。支援は引き続き要求し、我々に前線は任せて大丈夫だと添えてな。」

フォッカはニヤニヤしながら伝令兵に新たな指示を与える。

 

「ハッ!」

伝令兵は指示を聞くと一目散に部屋から姿を消して、役割を果たしに行った。

 

「ハディとはまだ連絡はつかんのか?ゴコーレ閣下はどうされている?」

部屋の兵士の誰に向けてではなく、分かっている者に聞くような形でフォッカが言葉を発する。

 

「ハッ!ハディ少佐とは未だに連絡は取れておりません。ゴコーレ中将閣下からはランツゲート基地の暴動は収まったがゲートは完全に壊されて機能回復に時間がかかるとの事です。」

一人の兵士が透かさずフォッカに情報を伝える。

 

(・・・あの豚野郎が・・・役に立たん・・・椅子に座ってるだけで基地の一つも守れないとは、みすみすアグニスに出し抜かれる始末。ベーコンにして、共食いさせてやりたいわっ。)

苦々しく奥歯を噛んで募るイライラを心に溜め込むフォッカ。

 

「あの娘は今どこにいる?」

フォッカがまた、部屋の中の兵士に返答を求めた。

 

「ハッ!今は我が母艦「ビックブリッヂ」の一室にて待機しております。」

先ほどとは別の兵士が即座にフォッカに返答する。

 

「・・・よし、そのまま待機させろ。奴がわれわれの切り札だからな・・・。」

フォッカはミッドガルドの地図に目をやりながら返答してきた兵士に指示を返した。

 

「ハッ!」

兵士は敬礼をして、また即座に姿を消していった。

 

(ハディが最後に渡してきたあの娘。厄介ごとではないかと思っていたが、フタを開ければ、なんとも使い勝手のいい駒。最後にここだけはあいつに感謝しないとな・・・。)

フォッカはニヤニヤが止まらず、不敵に笑いながらこれからの自分の輝かしい未来に目を向け始めていた。だが、フォッカを含めて、ユッケ達ですら

 

 

これから自分達の眼前で行われる死闘とそれに伴った互いの代償を知る由もなかった。

 

 

ミッドガルドで行われたアースカンドとの戦いはいよいよ最終局面へと突入していく。

 

 

 

 

 

 




両陣営の思惑が交差する中、
ユッケ達が光の塔へと帰ってくる。

次回、「光の塔を死守せよ!」
青年よ、光と共に舞い戻れ!!(千葉繁さん風)
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