FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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両陣営の思惑が交差する中、
ユッケ達はバハムートの所から光の塔へと戻ってきていた。


光の塔を死守せよ

 

 

光の塔のクリスタルの間。

多くの神官や兵士が慌しく動く中、

セレスは大きなテーブルに広げた戦況を記した地図とニラめっこしていた。そんな中、

 

 

「セレス様っ!ユッケ殿が戻られました!!」

 

 

雑踏をカい潜って一人のミッドガルドの兵士がセレスの元に吉報をもたらした。

 

「本当ですか?!すぐ通して下さい!」

セレスはテーブルの地図から目を離して兵士に満面の笑みで指示を出した。

 

「ハッ!」

兵士もセレスの笑顔に笑顔で元気良く返事をして、雑踏の中へと姿を消した。

 

「・・・本当に・・・本当に生きてたんだね・・・。」

セレスの隣に控えていたティアが目に一杯涙を溜めて、片手で口を隠しながら言葉を噛み締めた。

 

「セレス様っ!アースカンドは我々の町のすぐ外で左右に展開を始めました。」

雑踏の中から別の兵士が姿を現して、今度は敵の戦況を伝えに来た。

 

「・・・わかりました。今は防衛に専念する為に様子を見るように伝えて下さい。」

セレスは真剣な顔で兵士に指示をする。

 

「ハッ!」

兵士も険しい顔で返事を返して雑踏へと消えていった。

 

「・・・いよいよね・・・。」

ティアが涙を拭きながらセレスに重い声で言葉を搾り出す。

 

これまで、セレスを中心に精一杯抵抗してきたミッドガルド人達。ゲートを一つ壊す事には成功したが、その代償は大きいもので、多くの兵士と守護獣達を失っていた。その後、追い討ちをかけるようにミナも敵として現れて対応が後手後手になり、一時は膠着していた前線もジリジリと後退させられ、数日前から光の塔への砲撃も始まっていた。その結果、シャイナールの街に安全な場所はなくなり、逃げられる住民はシャイナールから離れて、周辺の町や村に非難する事に。逃げられないものは光の塔で身を寄せ合っていた。避難民を抱え込む事になった光の塔は食料の備蓄も危険水域に入っており、ここで包囲されてしまってはもう手も足も出ない状況だった。包囲されるのを黙って見ているわけにはいかないのだが、そのために使える兵士は無く、防衛で手一杯で兵士の士気も落ち始めていた。

セレスもティアもロクに休まずに前線の兵士達を鼓舞してきたが、それすら、気休め程度にしかならない現状に中央で指揮している面々も頭を抱えている時に、闇の民に襲われて、やられたと思っていたユッケの帰還の一報は、兵士達には届かなくとも、セレスやティアにとってはこれ以上ない希望でもあった。

 

「・・・なんでだろうね・・・ユッケがくれば、なんとかなるような気がする。」

ティアがテーブルに目を落としながらにこやかに話す。

 

「・・・えぇ、不思議な方ですね・・・。我々の戦っているアースカンド人のはずなのですが。」

微笑みながらセレスがティアを見る。

 

連戦に次ぐ連戦。ティアはガードナーでフュージョンも出来る猛者。休む暇もなく、前線と言う前線を飛び回り、綺麗好きだった女性とは思えないほど、服は汚れ、傷み、髪もボサボサだった。セレスも精神的支柱から鼓舞して回っていた為に前線に立っていたティア程ではないが、服は純白を保てずボロボロになり、美しい髪も傷んでくすんでいた。

 

 

「ティアッ!セレス様ッ!」

 

 

そんな二人をこれ以上なく元気付ける声が雑踏の中から聞こえてくる。

その声の主は雑踏を掻き分けて、大きく手を振りながらにこやかにこちらに近付いてくる。

その姿はとても歴戦の雄には見えない男だが、ティアとセレスには太陽を担いできたかのような光を放っていた。

 

「ユッケッ!」

「ユッケさんッ!」

 

満面の笑みでユッケを見て名前を呼ぶ二人。

ユッケの後ろには前線を離れていた面々とラスター達も控えていた。

 

「ユッケ君、頼むよっ。」

ラスターがセレスたちを確認すると待ってましたと言わんばかりにユッケを急かした。

 

「あっ、うん。分かったっ。」

ラスターの慌てぶりにユッケも少し焦りながら答える。

 

「来て早々ごめんセレス様。こっちにいるのはアースカンドのアポニス隊の隊員でラスターっていう人なんだ。時間がないみたいだから、とりあえず、先に話を聞いてほしいんです。」

ユッケが自己紹介も簡潔にラスターに話を振る。

 

「えっ・・・あっ、はいっ、分かりました。」

急いでいる空気に圧されてセレスに緊張が走る。

 

「申し訳ございません、セレス様。フォッカ少将の部隊の動きもありますので、大佐の話を聞き、早々に手を打たねばなりませんのでっ。」

ラスターはそう言いながら、機械をテーブルの上に置き、数人のアポニスの隊員が急いで準備を進める。

 

「・・・ジジィッ・・・ジィッ・・・こち・・・ニス、応答せよ・・・こちら、アグニス応答せよッ。」

機械はどうやら通信機のようで、アポニスの隊員達はその準備をしていたようだった。手際の良い隊員達のおかげで、通信機を設置してからモノの1分足らずで通信機の向こうにいるアグニスの声が鮮明に聞こえてきた。

 

「大佐ッ、クリーンです。」

ラスターが通信機の向こうのアグニスに通信状況を伝えた。

 

「了解・・・ラスター、良くやってくれた・・・セレス様、まずは自己紹介させて頂きます。私はアースカンドの軍に所属しているアグニスという者です。階級は大佐になります。後、まずはこのような形で初対面ということを謝罪させて頂きたい・・・申し訳ありません。」

アグニスが通信機の向こうで頭を下げる。

 

「いっ、いえ・・・状況が状況ですので・・・致し方ありません・・・。私はミッドガルドのクリスタル守護者統括をしております。セレスです。よろしくお願い致します。」

突然の通信機の登場で面食らっているセレスだったが、必死に頭の中で状況を整理している。

隣では、初めて見る通信機に目を輝かせたティアが色々な角度から見て回っていた。通信機の状況を常に正常に保とうとしていた隊員達はどうティアに対応しようかドギマギしている。

 

「おい、なんだ。あのねぇちゃんはっ?」

通信機をキョロキョロ見ているティアを見て、ちょっと引いた感じのシドがユッケの耳元で小さな声で尋ねる。

 

「アハハッ、ティアって言って、俺達の仲間だよ。好奇心が旺盛でね・・・。」

頭を掻きながらユッケが簡潔にティアの事を教える。

 

 

「セレス様。時間がありませんので、単刀直入に話を進めさせて頂きますが、アースカンド人の大半はこの戦いを望んでおりません。このような状況でいうのもおかしいと思われますが、我々はミッドガルド人と平和的な交渉をしたいと考えております。ですが、現状、強硬派の勢いを止める事が出来ず、ミッドガルドの人々に多大な犠牲を出せている事が現状です。謝っても、失った命を取り戻せることはできません・・・難しいとは想いますが、それを理解していただきたい。」

アグニスはまずはセレスに対して、友好的であるということを言葉に乗せて伝える。

 

「・・・貴方の言葉を我々全員がどれほど信頼できるかは定かではありません。しかし、ここにいるユッケさんが貴方を信じているのであれば、私達だけでも信じたいと思っています。貴方の言うようにミッドガルド人の多くは拭えない憎しみをアースカンド人に持ってしまいました。ここから友好的にどこまで出来るかはお約束は出来ません。が、友好的に交渉出来るのであれば、私も願わずにはいられません。」

セレスはアグニスの言葉を真摯に受け止めて、真正面から向き合って言葉を交わす。

 

「・・・・・・ユッケ君の言うとおりのお方で安心しました。とても誠実な方だとお見受けします。たしかにここから我々を信じてくれというのはおこがましいと思います。ですから、その心に報いる為に我々はできる事を最大限させて頂きたい。マイナスからの交渉ですが、我々は必ずプラスにさせられるようにして見せますっ。」

アグニスも己の現状を誤魔化すことなく、自らの立場を受け入れた上でセレスと向き合い、話を続ける。

 

「我々はミッドガルドの地で勢力を二分しています。今、光の塔に向かっている勢力だけが強硬派だと言う事をまずはお伝えしたい。それ以上の部隊は我々側、つまり、ミッドガルドとの交戦をこれより一切行いません。ここまでは宜しいですか?」

アグニスが大切な事を丁寧に説明していく。

 

「・・・承知しました。私達の敵は正面だけと言う事ですね。」

アグニスの言葉を聞き逃さないように通信機に顔を近づけてセレスが真剣な顔で答える。

 

「そうです。そして、その敵の中にも我々の味方はいます。ミッドガルド人の方々をサポート出来る様に陽動をしかけて、戦力をさらに分散させます。そちらに少数ではありますが、私の信頼できる部下も送りました。現状、我々にできるのはここまでです。後は御武運を祈るだけな私をお許し願いたい。」

アグニスはそう悔しそうに言葉を締めた。

 

「・・・いえ、大変勇気付けられる言葉でした。それに貴方方はそれ以上に私達に希望をくれました。」

そう答えてセレスはユッケを見て微笑む。

 

「ッ?!・・・・・・。」

突然セレスから微笑を受けたユッケは最初に左右を見回して、自分に向けられていると確認してから照れくさそうに頬を人差し指で掻いた。

 

「・・・・・・我々にとっても、ユッケ君は希望です・・・・・・まだまだ、話したい事はありますが、これで通信を終わります。戦いが終わった後にお会いできるのを楽しみにしております。」

アグニスは通信機の向こうで微笑むかのように言葉を踊らせて通信を終えた。

 

「私もお会いできるのを楽しみにしております。」

そう通信機に微笑むセレス。

 

 

「・・・皆さんっ!これからお伝えしたい事があります。出来る限りのモノを集めて下さいッ!」

 

 

セレスはアグニスとの対話を終えると真剣な目で周囲に大きな声で指示を出した。その瞬間、雑踏は波のようにセレスを中心に静寂を広げ、また、波のようにセレスの言葉を伝えていった。

その波を抜けたミッドガルド人達の目には小さな光がそこかしこで輝き広がり始めていた。

 

 

 

 




セレスたちと再会したユッケ達。
ここから反撃の狼煙をあげるべく、
ミッドガルドの兵士達を鼓舞するセレス。
セレスの言葉に燃え上がるユッケ達は・・・。

次回、「先陣を切れ」
青年よ、燃え上がる闘志を解き放て!(千葉繁さん風)
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