吉報と共に希望の光をもたらしたユッケ。
いよいよ、戦況が大きく動こうとしていた。
砲撃により、所々ヒビが入ってしまっているクリスタルの間。光のクリスタルが浮いている下にある玉座にできる限り綺麗に身なりを整えたセレスが、自分の目の前に控える人々を見回していた。
「ミッドガルドを敵の手から守ろうと奮起して下さった皆さん。これより、我々は最後の抵抗を侵略者に行います。」
強い口調と鋭い眼差しで人々を見回しながらセレスが言葉を放つ。
控える人々はその一言一言を聞き逃すまいと真剣な眼差しで耳に全神経を集中させていた。
「我々に賛同して下さるアースカンド人も現れました。アルテマクリスタルは我々を見捨てておりません。我々は我々の世界を守るのですっ!」
セレスは背筋を伸ばして、右手でガッツポーズを作る。
「光のクリスタルに誓いましょうっ・・・我々はこの地を守ってみせるとッ!我々は必ず勝利を挙げて見せるとッ!」
セレスは握った右の拳を開き、高らかに頭上に上げた。
〔ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!〕
今まで黙っていた観衆が一斉に高らかに拳を天に突き上げて歓声を上げた。
「すっ、すごい・・・。」
歓声に耳を塞ぎながらその熱狂に圧倒されるユッケ。
「・・・・・・。」
この場にいて、冷たい目で見られ続けていたラスター含むアポニスの隊員達はその歓声を全身で受けて、真っ直ぐセレスを強い眼差して黙って見ていた。
「こりゃ、負けるわけにはいかねぇなっ。」
ウズウズした面持ちのシドがニヤニヤしながら周囲を見回している。
「フォッフォッフォッフォッ、どれどれ、もう少し老体に鞭を打つとするかっ。」
ニコニコしながら髭を触るラムウ。
「これはこれは、ラムウ様と一緒に戦えるとは光栄です。」
ニコニコと微笑みながら胸を物理的に弾ませるレオン。
「わっ、わたし絶対に負けませんっ!」
鼻息荒々しくガッツポーズで臨むミューレ。
「頑張りましょうね、ミューレ。」
意気込んでいるミューレの肩にやさしく触れて微笑むシヴァ。
シヴァはフュージョンがシヴァとしか出来ないミューレについていく事になった。最初はユッケの存在もあってミューレは遠慮したが、ユッケの説得に納得してこの形に収まった。
「ねぇねぇ、あなたそれで戦うの?」
ティアがシドの大きなレンチをマジマジと見ながら尋ねる。
「おぅよ・・・銃も悪くねぇが、俺にはこれがあれば十分よっ!」
そう言いながらレンチをティアに見せ付けるシド。
「・・・どうして、僕はここにいるクポッ・・・。」
元気に翼をバタつかせているチョコとは対称的にモグッチが壮絶に落ち込んでいた。
「ラスターさん達はシドさんの護衛をお願いします。俺達は自分達で何とかなりますので。」
ユッケがラスターにそう伝える。
「了解しました。本当は貴方も守るべき対象なんですが、ランツでの闘いを目にしたら、どっちが足手まといか分かりますしね。ですが、無理はしないで下さい。貴方に死なれたら、大佐にどやされます。」
ラスターはユッケの申し出を快く了承して、最後に苦笑いした。
「分かってます。そう易々とやられませんよっ。」
にこやかにラスターの不安を跳ね飛ばすユッケ。
「ユッケ、本当に無理しないでね。」
不安一杯のシヴァがユッケに近付き、そう声をかける。
「なんだよ、シヴァまで。俺とラムウさんのフュージョンなら大丈夫だよっ。」
シヴァの不安も笑って弾き返すユッケ。
「それでは、我々を勝利に導いてくれる戦士達を紹介します!」
セレスがユッケ達を見て、そう観衆に叫ぶ。
ユッケ達は打ち合わせた通りにその声に答えるように玉座の方に上っていき、観衆に姿を見せた。
「皆さんも知ってのとおり、これまで我々の待ち望んできたクリスタルを安定化・・・それに尽力してくれたアルテマクリスタルのガードナーの戦士達です。」
セレスは左右にユッケ達を立たせて、大きく手を広げて観衆を炊きつける。
〔ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!〕
これまでの巡礼を見て、聞いてきたモノ達にとって、セレスの言葉は容易に胸に刺さった。
「・・・そしてっ・・・。」
セレスの思わせぶりな言葉に歓声を上げていた観衆は息を呑む。
その言葉に従うかのようにユッケが一歩前に出て観衆の注目を一手に浴びる。
「この者こそ、我々の希望。闇の民の襲撃により、一時失われたかに思えたアルテマクリスタル。そのクリスタルを我々の世界に戻し、巡礼において、アルテマクリスタルを守り、ここまで導いてくれた者・・・。」
セレスの言葉に観衆の注目がさらにユッケに注がれる。
「この者は、闇の民の襲撃で亡くなられたとされたアルテマの巫女リアの子供。アルテマクリスタルに選ばれし、申し子ユッケッ!」
「・・・・・・・・・。」
突然のユッケの成り立ちに観衆は理解が追いつかず、互いに顔を見合わせて黙ってしまう。
「我々の勝利にアルテマクリスタルがもたらした戦士ユッケです!」
セレスはここぞとばかりに声を張り上げて両手を広げて観衆を導く。
ユッケはその言葉に導かれるようにラムウとフュージョンをして、ライトニングナイトとなり、高らかにアルテマウェポンを掲げた。
〔ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!〕
その光景にクリスタルの間に集められた観衆達は大歓声をあげる。
ラムウは確かに守護獣ではあるが、世界を束ねるクリスタルの正当な守護獣ではない。信心深い者にはより強烈にその事実が刺さる。そして、用意された光景に密室の熱気が全体を支配していった。熱狂が熱狂を呼び、士気はこれまで以上に高まる。
「・・・誰が先陣を切るか、決まってしまいましたなっ。」
にこやかにしてはいるがレオンが悔しそうにそう言葉を零す。
「あらあら、先陣云々よりもユッケと戦いたくてウズウズしてるんじゃない?」
ティアはレオンの胸の内を見透かすように言葉を投げる。
「分かりますか?」
「もちろんっ。」
阿吽の呼吸ともいえる受け答えで準備運動をする二人。
「行くぞオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
光の塔の門がゆっくりと開く中、ユッケの声が闇の中から木霊す。
ライトニングナイトとなったユッケが誰よりも先に門を潜り駆け出した。
その後にはマグマのように熱せられたミッドガルドの兵士達と守護獣達が今か今かと飛び出すのを待ちわびていた。
〔ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!〕
ユッケの掛け声と共に光の塔に集まっていた戦士達が雄叫びを上げて、シャイナールの街中を猛進して行く。
シャイナールの街の中で待機していたミッドガルドの兵士達がその光景を見て、驚き、それと同時に胸に熱いモノを宿して行く。
それはさながら、マグマが森の中を流れ抜けていくようで、次々と森の木々がマグマに触れ、その度に燃え上がるような光景だった。
そして、シャイナールの街を抜け切ったユッケ達は止まることなく、目標となる包囲待機していたアースカンド人の陣営目掛けて迷い無く突っ込んでいった。
ユッケの左右にフュージョンをしたティア、レオン、ミューレがそれぞれ付き従っている。
突然現れた巨大な波にアースカンド人達は武器を持ったまま一時的にフリーズしてしまっていた。
先陣を切って突き進むユッケ。
目的はもちろんフォッカの居るであろう
『大型陸上母艦ビッグブリッヂ』
しかし、その前に立ちはだかる男が一人。
次回、「立ちはだかる漢」
青年よ、漢の拳を信じるときが来た!(千葉繁さん風)