ユッケの掛け声と共にアースカンド軍に最後の特攻をしかえる!
そこに現れた者とは・・・。
〔ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!〕
ミッドガルドの戦士達は雄叫びを上げて、敵に突っ込んでいく。
「うっ、撃てエエエエエエエエエエッ!」
目の前に迫り来る敵に向かって、アースカンド軍の指揮官が完全に思考停止していた兵達に迎え撃つように叫ぶ。
〔ダダダダダダダダダダダダダッ!〕
〔ドドンッ、ドンッ、ドドドンッ!〕
〔ババババババババババッ!〕
その場にあった火器を使って狙いなど定めずに無我夢中で攻撃するアースカンドの兵士達。
「今よッ!」
ティアが待ってましたと言わんばかりに声を上げる。
〔ギャオオオオオオオオオオオンッ!〕
それに答えるかのように大型の守護獣達がユッケ達を追い越して、アースカンド軍の前に立ちはだかる。守護獣達はその身体の大きさを利用して、戦車の役割を果たす。その身体には予め、プロテスやシェルなどの防御系の補助魔法を使い強化していた。多少ダメージを受けてしまうが、今のアースカンド軍の攻撃を防ぐなら十分な盾となった。
ミッドガルド陣営の思惑通りに、アースカンドの兵士達は突然現れた大きな的に無我夢中で銃口を向けて攻撃し出す。
そして、待ってましたと言わんばかりにその大きな身体を縫うように足の速い者達がアースカンド軍との距離を詰める。
先頭に立っているのはもちろんミューレ。
アイスナイトとなった機動力を活かして、機動力のある守護獣達を従え、瞬く間にアースカンド軍の前線に潜り込む。
「ダイヤモンドダスト」〔ビュオオオオオオオオオッ、パキパキパキッ〕
「連続魔法 ブリザガ」〔パキパキパキッ、ドドドドーーーンッ〕
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
ミューレの急襲に混乱するアースカンド人達。
「ファイアッ!」〔ボオオオオオオオオオオオッ〕
ミューレに続いて、今度は大きな守護獣の間を縫って、無数の火の玉が陣営を襲う。
これは攻撃だけが目的ではない。
「なっ、なんだ?モヤがっ?!」
冷やされた空気や氷が急激に熱せられ溶かされて、一時的に辺り一帯を白いモヤが包み込む。
〔ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!〕
そこにやっと距離を詰めてきたミッドガルド陣営の本隊がアースカンドの前線届いた。
アースカンド陣営は視界を奪われて、対応が遅れてしまい、ミッドガルド人の波に呑まれて乱戦状態へと持ち込まれてしまった。
こうなってしまっては、銃火器に頼っていたアースカンド陣営は、同士撃ちを恐れてしまい、対応が後手になる。
〔ドガガーーーーンッ!ドガーーンッ!!〕
「なっ、なんだ?!どうしたっ?」
偶然か必然か、タイミング良く左右に展開していたアースカンドの部隊の方から爆発音が聞こえる。それに驚き戸惑う指揮官。
対応が遅れだしたアースカンド陣営を嘲笑うかのように事態はさらに混迷していく。
「わっ、分かりませんっ!突然、予備弾薬が爆発したと報告がっ!」
完全に状況に慌てている部下がそれでも必死に仕事をこなそうとする。
「ロッテント少将の部隊が降伏したぞっ!」
どこからともなく兵が叫ぶ。
「ベロニキ中将の部隊がやられたっ!」
続いて、誰かが叫ぶ。
「フォッカ少将が俺達を置いて撤退するぞっ!」
あらゆる方向から誰かが叫んでいる。その内容は統一されていないように思えるが、全部がその場にいる兵士にとってネガティブなものばかりだった。視界を奪われて、乱戦になり、悪い方向ばかりに動かされていたアースカンドの兵士達は大いに混乱し、軍の混迷にさらに拍車をかけた。
「何を言っているっ!そんな情報など聞いていないぞ!」
指揮官があることないこと叫ぶ声に反論する。
「見つけましたッ。」
いつのまにか指揮官の目の前まで来ていたレオンがそう言いながら襲い掛かる。
「ナッ?!」
それが指揮官の最後の言葉だった。あっという間にレオンにやられて糸の切れた人形になる。
アースカンドの前線は完全にコントロールを失っていた。計算されつくした先制打。予め準備された陽動と扇動。視界と指揮を失った集団ほど格好の餌食となる。
そこからの闘いは近代兵器を持っていたアースカンド人とは思えないほどモロいものだった。熱耐性も冷気耐性もあらゆる備えをしていた兵士達だったが、それを全て無効化され、逃げ惑うのが精一杯となった。前線を崩壊させたユッケ達は相手に態勢を立て直させる暇を与えることなどさせないとばかりに怒涛の電撃戦を続ける。アースカンド陣営は前線の崩壊を立て直す暇がなく、次々と敗走していく。ミッドガルド人はその背中を襲おうとはしない。自分達の倒すべき敵が分かっているからだった。
しかし、その中で、その背中を撃つ者もいる。
アポニス隊の隊員達だ。
陽動や扇動に動いていた隊員達は、ここぞとばかりに政敵となりえるフォッカの息のかかった部下達を乱戦に紛れて、的確に消していっていた。これこそがラスター達が前線に来た本当の目的だった。もちろんラスター含む数人はシドの護衛をしているが、その中でも、連携をしっかり取り、排除していっていた。
そして、いよいよユッケ達の目に目的のモノが姿を現す。
『大型陸上母艦ビッグブリッヂ』
その大きな標的を目の前にして、ユッケ達を待ち構えていた者がいた。
「ヒャッハアアアアアアアアアッ!」
「ムンッ!」
〔バキッ〕
先陣を切っているユッケに誰かが殴りかかる。それを分かっていたとばかりに迎え撃つレオン。その者はユッケの死角から確実に集団の勢いを止めるべく、狙いを定めて物凄い速度で襲い掛かってきたが、レオンに阻まれ弾かれる事を利用しながら、ユッケ達の進行方向の方に飛び上がり距離を取った。最早、ビッグブリッヂまでにアースカンドの兵士達の姿はマバらしかない。しかも、戦意は殆どなくなっている者ばかり。その中で、一人だけ意気揚々とする者。その者の目前にはミッドガルド人達が徒党を組んで迫ってきていた。それでも尚、ニヤケながら、敵を見据える男。その男とは、他の誰でもない、ガードナーの能力を持ちながら、闇の民に組みする火のガードナー『ゼッド』だった。
「さすがだな、おっさんっ。」
ゼッドはレオンの行動を賞賛して軽く拍手をしている。
レオンは丁度、ゼッドとユッケの間ぐらいに身構えて、ゼッドの動きに注視する。
「ゼッドっ。」
ユッケがレオンに続かんとばかりに臨戦態勢を取り、迎え撃とうとする。
「・・・ここは私一人に任せて下さいっ。」
レオンがゼッドを見据えながらニヤリと口角を上げて胸を張る。
「ちょっと、大丈夫なの?」
ユッケの後方に控えていたティアが心配そうに声をかける。
「・・・今の私は誰にも負ける気がしないんですよ。」
レオンはゼッドをニコニコ見たまま自信満々にそう言い放った。
「・・・おっさん・・・その言葉は聞き捨てならないな・・・。」
ここに来て、ニヤケていたゼッドは少しイラついた表情になる。
「頑張って下さい、レオンさんっ。」
レビテトで浮き、少し上空からミューレがガッツポーズを作ってレオンを鼓舞する。
「・・・お任せ下さい。」
ミューレの方を見ずにゼッドだけを見据えて答えるレオン。
〔ブウーーーーーーーーンッ〕
ユッケ達がゼッドに気を取られているその横を一台のジープが後方から通り過ぎる。
「な~~にグズグズしてんだっ!置いてくぞっ!!」
何処かで拾ってきたジープに乗ったシドがラスター達を乗せて走り去って行った。
〔ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!〕
ミッドガルドの本隊もユッケ達のすぐ後ろまで迫ってきていた。
「任せたよ、レオンっ。」
右拳をレオンに突き出して、ユッケが声をかけて、シドの後を追った。
「・・・えぇっ、必ず勝って、すぐ追いつきます・・・。」
静かに臨戦態勢を取るレオン。
〔ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!〕
ミッドガルドの本隊がレオン達を飲み込み、追い抜いていく。暗黙の了解が事前に交わされていたが如く、誰もゼッドを攻撃しようとはしない。それどころか、そこが進入禁止と言わんばかりに隊がレオンを基点に半分に割れながら進んで行っていった。ゼッドをちら見して行く者は多々居たが、皆が皆、ゼッドにそれ以上興味を惹かれることなく、ユッケという旗を追って走り抜けて行く。これはもちろん、レオンの並々ならぬ、覚悟と姿勢に無意識にミッドガルド人達が触れて、共感したからだろう。
「・・・本気で行くぜ・・・。」
ゼッドもレオン以外の誰にも目もくれず、独自のファイティングポーズを取る。
張りつめたその場の空気が『竜虎がついに雌雄を決する時が来た』と静寂の中、確かに告げていた。
『大型陸上母艦ビッグブリッヂ』に迫るユッケ達。
その事に焦りを隠せないフォッカ。
その中で不敵に笑う男あり・・・・・・。
次回、「ビックブリッヂで待つ者」
青年よ、覚悟持って挑め!(千葉繁さん風)