ユッケ達と離れて、自身の闘いに身を投じていたレオン。
相対するゼッドとの最終決戦が始まろうとしていた。
〔ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!〕
レオンとゼッドの二人の脇をミッドガルドの本隊が駆け抜けていく。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
その中で、二人は黙って臨戦態勢を取り、静かに時を待っていた。
〔ドドドドドドドドドッ・・・・・・〕
ミッドガルドの本隊が二人を通過して、遠ざかって行く。
〔ザッ・・・ドンッ!〕
待ってましたとばかりに二人は距離を一気に詰めて、レオンは距離を詰めるや否や瞬時にしゃがみ込んで右アッパーをくり出す。それに対抗して、ゼッドはしゃがみ込んでいるレオン目掛けて、右拳を振り下ろした。レオンの拳とゼッドの拳は互いの右頬を掠めて行く。そして、互いの上腕二頭筋がぶつかり合った。
「ヌンン~~~~~ッ・・・。」
「ハァァ~~~~~ッ・・・。」
下からゼッドを右腕一本で持ち上げようとするレオン。
そうさせまいと、全体重でレオンを地面にめり込ませんとばかりに力を右腕に乗せるゼッド。
〔ミシミシミシッ、ボコンッ〕
肉と肉がぶつかりキシみ合う。レオンの足が地面に勢い良く数cmめり込んだ。その時だった。
「ハアアアアアアアアアッ!」
「ッ?!」
レオンの気合と共にゼッドの身体が大地から離れた。しかし、そのレオンの動きを利用して、ゼッドは透かさず左手でレオンの右拳を掴み、そこを基点にレオンの顔面に右ヒザを放った。
〔ドガッ、ガシッ〕
レオンはゼッドの右ヒザの攻撃を左腕で防ぐ。それと同時にゼッドの左手首を掴み、ゼッドを地面に叩きつけようとした。
〔ダンッ!〕
「ッ?!」
叩き付けたと思ったゼッドが掴まれた左腕を基点に身体を回転させて、両足で見事着地を決める。その事に驚くレオン。それも束の間、今度はひねった事でレオンが掴んでいた左腕が自由になったゼッドがしゃがんだ状態からレオンの足目掛けて、回し蹴りの足払いを放つ。
レオンはそれを後方にジャンプして寸でで交わし、二人の距離がまた開いた。
「準備運動は十分かい、レオンッ。」
ゼッドがニヤリと口角を上げながらレオンに尋ねた。
「良い感じに温まって来ましたねっ。」
いつも通りニコニコとレオンが答える。二人の右頬に細い一筋の血がゆっくりと垂れて行く。
〔フュージョン〕
「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
二人のフュージョンを合図にそれぞれの後方に守護獣が現れる。
ゼッドの後方に業火の火柱が立ち上り、イフリートが雄叫びを上げながら火柱から姿を現し、光となってゼッドを包み込んだ。
〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!〕
レオンの後方からも地面からゴーレムが沸き上がり、その岩の巨躯を見せ付けると光となってレオンを包み込んだ。
「そんじゃ、本番と行きますかっ!」
「望む所っ!」
ゼッドとレオンはフュージョンし終えると、互いに声を掛け合って、さっきとは比べ物にならない速度で距離を詰めた。
〔ドゴオオオオオオオオオオオオンッ!〕
フレイムナイトとグランドナイトとなった二人の拳が今度は真正面からぶつかり合った。
先ほどはレオンがパワーでゼッドを持ち上げたが、今度は二人とも一歩も譲らない。拳と拳がぶつかり合ったまま、二人の足元の地面が悲鳴を上げる。
〔メキメキメキメキッ〕
二人のパワーの逃げ所になってしまった足元の地面。とてつもないパワーに攻め立てられて、二人が互いに地面に沈み込んでいく。
〔ザッ、ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!〕
ほぼ同時に今度は二人の右のハイキック交差する。
想像を絶するパワーのぶつかり合いで生じたソニックブームが周りの木々をなぎ倒さんばかりに揺らしていく。
〔ドガドガッ、ドゴンッ、ドガンッ、バギャンッ〕
ハイキックからお互いがさらに距離を詰めて、高速で拳を交換していく。
ゼッドが右フックを放てば、それをレオンが左腕でガードして、今度はレオンがコンパクトにレオンとゼッドの狭い間に右アッパーをねじ込む。ゼッドがそのアッパーを上体を傾けて紙一重で交わし、左ボディを放つ。その瞬間にレオンは右腕を透かさず引いて、ゼッドの左ボディを右腕で受け止める。その動作を利用して、今度はレオンが右ヒザを放つ。ゼッドはその右ヒザを左手で逸らして、開いたレオンの顔面に右ストレートを放った。それをレオンは左肩でギリギリ受けてクリーンヒットを免れた。が、その右ストレートの衝撃で数m後方に身体を持っていかれた。
〔ザザザザザザザザアアアアアアアアアアアーーーッ〕
その間、僅か数秒にも満たない時間。遅れてやってきた荒れ狂う暴風となった二人のパワーのぶつかり合いが、周りの木々をセメぎ立てる。
〔地獄の火炎〕〔ゴゴゴゴゴゴオオオッ、ゴバアアアアアアアアアアアアアーーーーッ!〕
ゼッドの右ストレートを左肩で受けた事で体勢を崩していたレオン。そのレオンのスキを歴戦の猛者であるゼッドが逃すはずもなく、最大級の技をぶつけて来た。
〔アースウォール〕〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
ゼッドの攻撃を予期していたのかレオンはゼッドの最大級の攻撃に対して、最大級の防御技で対抗した。
アースウォールが発動されるとレオンの守りたいと思った方向に太く分厚いゴーレムの右腕が地面から迫り出し、ゼッドの地獄の火炎を受け止めた。
〔ドガガガーーーーーーンッ!ガバーーーーンッ!〕
アースウォールはゼッドの攻撃を防ぎきったかに思われたが、ゴーレムの大きな右腕は粉々になり、その場に炎をマトッたゼッドが立っていた。
レオンは防ぎきれない事も予想していたのか。アースウォールが稼いだほんの一瞬のスキにさらに後方に下がり、直撃は免れた。が、所々、身体から焼けた匂いと煙を立ち上らせていて、ノーダメージというわけにはいかなかった様だ。それに比べて、ゼッドは悠然と仁王立ちでレオンを見て、まさに王者として、チャレンジャーを迎え撃っているとばかりの姿を見せた。
「どうした、レオン・・・まだまだ、これからだろ?」
ゼッドは姿勢を一切崩さずにレオンに言葉を投げる。
「・・・・・・。」
レオンはその言葉を返すことなく、黙って臨戦態勢を整える。ゼッドもレオンも気付いている。お互いの力量の差を。途方もない差ではないが、その僅かの差が二人の勝敗を分けるだろうということも・・・。
しかし、レオンの中に諦めという文字はない。今までゼッドと対峙して戦ってきた中で、ゼッドという強大な壁はレオンの中で確かに強大なままだったが、それでも登れないという、乗り越えられないという絶望感はなくなっていた。
「・・・レオン、そろそろ終わりにしようか・・・。」
そう言いながら強大な壁を背後に浮かび上がせたゼッドが堂々とレオンに歩み寄っていく。
「・・・・・・。」
レオンはジッと強大な壁を見据えている。
〔ジャリッ・・・ドッ!〕
ゼッドが踏み鳴らした微かな音を合図に動き出したのはレオンだった。物凄い速さでゼッドとの距離を詰める。
〔サッ・・・ドガッ、バカッバキッドンッ、ズバッ、ボヒュンッ、ドンッ、ボッ〕
レオンの先制打の浅く沈み込んでからの右ストレートがゼッドの右頬を掠める。それを合図に互いの拳や蹴りが相手目掛けて飛んでいく。僅かな瞬きの間に何十との攻防の争いが繰り広げられる。互いに決定打は未だにないかに思われた。
〔ズドンッ!〕
一瞬のスキ・・・針を通すにも、たじろぎするほどの僅かな穴。それを当然とばかりに通してくる男。そう、戦闘センスの固まりのゼッドに取っては容易なことだった。ゼッドの左ストレートの蹴りがレオンの腹部にするりと入る。
「ぐっ・・・」
レオンは直撃の瞬間に腹部に力を入れて、最低限のダメージに抑えようとした。
「・・・・・・。」
ゼッドはレオンが防御に専念したその姿勢を見逃さない。ゼッドの瞳から光が消えた。獲物だけを見据えるその眼はここだということを見ている誰もがわかるように指し示した。
〔ダンッ!!〕
ゼッドはレオンに放った左足を勢い良く地面に叩きつける。
軸足良し!
ゼッドの左足が地面にめり込んでそこを始点に地面が大きく凹む。
〔地獄の火炎〕〔ゴゴゴゴゴゴオオオッ、ゴバアアアアアアアアアアアアアーーーーッ!〕
今日二発目のゼッドの最大の攻撃。さっきと違うのは、ゼッドが確実にレオンをここで仕留めると確信して放つ一撃という事。レオンの至近距離で膨らむ業火の火球。みるみる大きくなり、レオンを飲み込まんとばかりに火球がスローモーションで動き出す。
ハイライトが消えたと思われたゼッドの右眼にギラリと一筋の光が蘇る。
死闘を繰り広げるレオンとゼッド。
その二人の闘いに終わりの幕が下りようとしていた。
次回、「レオンとゼッド」
青年よ、刹那の終を見届けよ!(千葉繁さん風)