FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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最後の死闘を繰り広げるレオンとゼッド。
死線で互いに交差する漢の拳と拳。
その闘いにもいよいよ終わりが訪れようとしていた。


レオンとゼッド

 

 

〔アースウォール〕〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕

 

 

レオンもさっきと同様、ゼッドの攻撃を予期して、今度も透かさずゼッドの技を迎撃せんと放った。

大きな大きなゴーレムの手が密着したレオンとゼッドの間を縫って、火球を受け止めんとばかりにゼッドに目もくれず迫る。

 

 

〔ドガガガーーーーーーンッ!ガバーーーーンッ!〕

 

 

二つの技がぶつかり合い激しいソニックブームを起こして、周囲を襲う。もう二人の近くにまともに立っている木は一本のなかった。その衝撃は次の獲物を狙わんとばかりにさらに外の木々に襲い掛かる。その中で、ゼッドはその場から動かずに、重心を低くして、自分達が放った技の爆心地とも言える場所に突っ込もうとしていた。

 

 

(レオン、あんたとの勝負はなかなかおもしろかったぜ。)

ゼッドは口角を少し上げながら、レオンとのこれまでの勝負を振り返る。

 

 

今まで、ゼッドはアースカンドで様々な敵とリングの上で戦ってきた。もちろん、リングの上だけではなく、場所をゼッドは選んだ事はない。それでも、ゼッドに勝てる者は一人も居なかった。刃物や飛び道具を出される事もあったが、ゼッドの胸を踊らせて、刺激するほどではなかった。そんな世界に飽き飽きしていたゼッドの前に現れたのが、闇の民ハディだった。ハディにとてつもない衝撃を受け、興味を持ったゼッドは、ハディの異世界への同行の申し出に二つ返事でついていく。ハディと闘いたいと思ってついて来てはいたが、そんな事を忘れさせるような運命的な出会いがゼッドに訪れた。それがレオンだった。レオンはゼッドの前に堂々と立ちはだかり、何度も対峙してきた相手。今まで、これほど互いを高めあうような存在をゼッドは知らなかった。ハディにはとてつもない強さを感じていたが、高めあう関係と思った事はなかった。そんな好敵手と呼べる存在となったレオンはゼッドの飢えを満たし、さらに貪欲にむさぼり付きたくなる極上の獲物へと昇華させて行った。

こんなに満たされて充実した闘いは今までのゼッドの人生にはなかった。

今までどれほど望んだ事か。だからこそ、

 

 

(・・・なんだか悲しくなってくるな・・・。)

 

 

ゼッドはそう思いながら爆心地へと身体を持っていく。その先に逃げたレオンが体勢を立て直そうとしていると思い。さっきの攻撃でレオンはこの攻撃を防いでもノーダメージではない事は分かっていた。この至近距離ならさらに大きなダメージを負っているはずだとゼッドは思った。レオンは逃げるような男ではない。なら、

 

(・・・・・・っ。)

ゼッドがそう思った瞬間だった。

 

 

〔ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・〕

 

 

ゼッドの前に大きな大きな壁が爆心地の煙の中から姿を見せようとしていた。

 

(そうだ・・・あいつは逃げたりしない・・・。)

ゼッドに油断があったわけではない。闘いにおいて、ゼッドはいつも勝利を渇望して、そこに最短最速の道を進んでいく。誰よりも負けず嫌いなゼッドに抜かりはない。そこに抜かりがあったとするならば、たった一つ・・・、

 

 

経験

 

 

今までゼッドが対峙してきた相手にレオンのように大きなモノを背負って、命を掛けて、真っ直ぐな気持ちで向かってきた者がどれほど居ただろうか。愚直に武を極めんとする者。守るべきモノと信じるべきモノをまっすぐに見据えて、背負い、確実に着実に自分の道を進んできた者。

 

レオンという男は今までで唯一ゼッドを満たした者で、そして、唯一何度も対峙してきた男。

 

「・・・・・・。」

レオンは無言でそこに存在していた。

 

二人の強者の大技の爆心地。

とても無事ではいられないと思われる場所。

 

現にレオンの身体はあちこちが焼け焦げていた。所々アースウォールが砕け散ったイシツブテも受けた痕も見える。相当なダメージを受けたはずだった。だが、レオンは誰よりも信じていた。

 

ゼッドが自分を確実に仕留めに来る。と、

 

(貴方に勝つにはこれしかないっ。)

レオンの眼光が鋭く相手を見据えて光る。

 

「ハッ・・・。」

ゼッドは笑った。

 

ゼッドが気付いてレオンの方を見たときには、そこにあったのはレオンの渾身の一撃だった。左足を軸にもうゼッドの身体は前方に向かって全体重をかけていた。後方に下がって体勢を立て直そうとしているであろうレオンに向かって襲い掛かろうとしていたのだ。

しかし、そこにあったのは、

 

 

レオンの全体重を乗せた大きな大きな右拳だった。

 

 

〔・・・・・・・・・・〕

 

 

確かに世界には音が存在していた。

が、二人の間は無音だった。

 

ゼッドの顔面に大きくめり込むレオンの右拳。

今までなかったレオンの会心の一撃だった。

ゼッドの身体は大きな衝撃を全身で受け止めてそのまま地面へとめり込んでいった。ゼッドの身体を中心に大きく地面が凹む。直径にして100mは超える大きなクレーター。そのパワーをゼッドは己が身一つで全て受け止めた。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

ゼッドは無言で空を見上げていた。フュージョンはもう既に解けている。鼻からは大量の血が噴出して、口の中も鉄の味がした。ピクリとも身体は動かせない。左側の視界が完全になくなっていた。レオンの一撃で左目は潰されたのだろう。

 

「・・・・・・。」

レオンは黙って静かにゼッドを見下ろしていた。

 

「・・・・・・俺は・・・負けたのか・・・。」

ゼッドが力を振り絞って、言葉を口から吐き出す。

 

「・・・良い闘いでした。」

レオンは真剣な顔でゼッドを見て、ただ一言、そう言った。

 

「・・・・・・とどめを・・・。」

「再戦を楽しみにしていますっ。」

ゼッドが言おうとした事を無視するかのようにレオンが言葉で覆い隠す。

 

レオンはそう言い残して、その場を離れて行った。

ゼッドはその時のレオンの顔を忘れない。清々しい顔をして、自分の帰るべき場所を見据えたその眼を。

 

「・・・・・・・。」

ゼッドはまた空を眺める。

 

他人は拳を交じ合え良い勝負をすれば、その後はノーゲーム。お互いをタタえ合って抱き合い、尊敬し合える素晴らしい関係がそこに生まれると誰もが口にする。

だが、ゼッドの中にはそんな感情は一切湧いてはこなかった。ただあるのは、渇望。勝利を、相手を見下す光景を。自分が比類なき存在である事の証明を。今まで、人に見下された事のないゼッドの中にはどす黒い欲望しかなかった。そんな想いが涙となってゼッドの右目から静かに一筋流れた。

 

「・・・・・・。」

レオンが去った後、イフリートが静かに姿を現して、ゼッドを静かに見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに拳闘士達の死闘の決着がついた。
その頃、もう一つの死闘も終わりが見えようとしていた。

次回、「シドとギルガメッシュ」
青年よ、仲間との絆で道を切り開け!(千葉繁さん風)
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