そして、ユッケの力によって、
強敵ギルガメッシュを退けた一同
その死闘の先にシドが見たものとは?
〔ギャオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーンッ〕
格納庫でギルダムを倒したユッケ達の耳に聞き覚えのある声が届く。
「・・・バハムート?!」
ユッケはその声の主の名前を自然と口にした。
「バハムート様、帰って来てくれたのね・・・。」
涙を一筋流しながらティアがビッグブリッヂの厚い天井の向こうから聞こえる声のする方を見る。
「でも、この方向は・・・。」
ミューレがバハムートの声のする方向に疑問を持ち、それを素直に言葉にした。
確かに、バハムートが戦場に帰ってきたのは確かのようだが、バハムートの声が聞こえたのはユッケ達が攻め上がって来たビッグブリッヂの前方ではなく、間違いなく後方からだった。
「・・・もしかしたら、フォッカ少将がビッグブリッヂをいち早く捨てて、後方に下がったのを見つけたのでは?」
ラスターが推測ではあるが、フォッカの行動を分析してユッケ達に話す。
「・・・でも、どうしてバハムート様がそれに気付いたのでしょうか?」
ミューレが当然の疑問をラスターに尋ねる。
「・・・・・・ミナだ・・・。」
そのミューレの疑問に答えたのはラスターではなく、ユッケだった。
なぜ、そう思ったのか。なぜ、そう確信したのかはユッケ自身にも分からなかった。だが、ユッケは天才が過程を飛ばして、突然答えを導き出すように自然とそう答えた。
「ユッケッ?!」
ユッケは呟くや否や、バハムートの声の方へと走り出してしまった。それに驚き、ティアはユッケの名前を呼ぶが、ユッケは当然見向きもせずに先へといってしまう。
「待って下さいッ、私もッ。」
ミューレが止まらないユッケを見失わないように滑り出す。
「・・・ちょっ・・・っ。」
ティアはシドの方とユッケを見ながら困惑している。
「・・・俺の事はいいから行ってくれ。俺はこれ以上は役に立てそうもないし、俺には俺でやることがある。」
困惑するティアの背中を押すようにシドが微笑みながら話した。
「ティアさん、ここは大丈夫です。お任せを・・・。」
ラスターも笑ってティアの背中を言葉で押す。
「・・・ありがとう・・・あとからレオン達も来るだろうからよろしくねっ。」
ティアは笑ってサムズアップをしながらシド達を置いてユッケ達を追いかけた。
「・・・・・・。」
シドはティア達を見送ると、今度は黙って倒れているギルガメッシュの方へと近付き、目をツムッたギルガメッシュの隣に静かに座った。
「・・・どうなさるつもりですか?」
ラスターがシドの傍に近付いて、シドとギルガメッシュを見下ろしながらシドに尋ねる。
もちろん、ラスターはいつでも敵に止めをさせる予備動作に余念はない。
「・・・わからねぇ・・・ただ、じじぃの傍に居なくちゃいけねぇきがしただけだ。」
シドはギルガメッシュをジッと見ながらそう独り言のように話した。
「・・・うぅっ・・・。」
そうこうしているとまだ息のあったギルガメッシュが目を開ける。
「・・・よう、元気か天才。」
シドは熱い眼差しを向け、ニヤリと口角を上げながらギルガメッシュに言葉を投げた。
「・・・なんじゃっ・・・皮肉か・・・・・・。」
もう立つ事もできないギルガメッシュは仰向けのまま弱弱しく口角を上げてシドに噛み付く。
「・・・あんた、すげぇな・・・二足歩行ロボットもそうだが、独立してなかったとは言え、小型かも成功させるなんてよ・・・俺も、色々試行錯誤してたがバランスがな・・・。」
シドは科学者としての素直な気持ちをギルガメッシュにぶつける。
「・・・確かに・・・二足歩行・・・は、バランスが・・・難しいのぅ・・・。」
ギルガメッシュがシドに科学者として答える。
「あんたはすげぇ・・・あんたの元で研究したかったぜ。」
シドは憧れの眼差しでギルガメッシュを見た。
「・・・・・・へっへっ・・・授業料は・・・高いぜっ・・・。」
精一杯の皮肉でシドに答えるギルガメッシュ。
その時だった。
「オヤビーーーーンッ!」
「オヤビ~~~~ンッ!」
どこからともなく、何者かの声が聞こえてきた。
〔カチャッ〕
「・・・・・・。」
「おい、やめろっ!」
ラスターがいち早くその者達を視界に捕らえて、臨戦態勢を取るが、ギルガメッシュが何か伝えようと精一杯伸ばした手が座っていたシドのヒザに届く。それに気付いたシドが慌ててラスターを止めた。
「・・・警戒は解きませんよ。」
ラスターは声の主達の方に銃を構えたままシドに答えた。
「・・・・・・。」
銃を向けられていることに気がついた声の主は震え上がってその場で足を止めた。
「・・・あいつ達を・・・ここへ・・・呼んでくれ・・・。」
力を振り絞ってシドに願いを伝えるギルガメッシュ。
「・・・・・・おいっ!お前達、安心しろっ!親分がお呼びだぞっ!急げッ!」
シドはギルガメッシュの望みを叶えるべく、据わったままの状態で声の主達に大きな声でこっちに来るように促した。
「ッ?!」
声の主はシドの言葉に驚き、ラスターにビビりながらも駆け足でシドの方へと近付いてきた。
「オヤビンッ!」
「オヤビンッ!」
声の主はシドの方に近付くや否や、シドを無視してギルガメッシュに抱きついた。
「いてててっ・・・馬鹿野郎っ・・・逃げろっていったじゃろうが・・・。」
突然抱きつかれたので全身に痛みが走ったが、それでもニヤリと微笑みながら声の主達に声をかけるギルガメッシュ。
「アッシ達は行く所がオヤブンの所以外ないでやんすっ!」
細身の歯の少しガタガタの男が大粒の涙を流しながらそう答える。
「オヤビン、いつも一緒なんだなっ。」
小太りな男も涙を滝のように流しながらギルガメッシュに答える。
「・・・ヤム、ドマ・・・わがままばっかり・・・言うんじゃねぇ・・・よっ。」
最後の力を振り絞りながら、ギルガメッシュはヤムとドマに微笑む。
「ッ・・・。」
ドマはギルガメッシュの微笑みに答えようと笑顔を作ろうとするがうまくいかない。
「・・・オヤビンを・・・オヤビンを助けて下さいッ!」
ヤムは床に頭を擦りつけながら土下座をしてシドに頼み込んだ。
「ッ。」
ドマもヤムに続いて、床に頭を叩きつけて土下座した。
「・・・・・・。」
シドは無言でヤムとドマを見る。
「・・・天才・・・シド・・・・・・やいっ。」
ギルガメッシュが神妙な顔をするシドに声をかける。
「・・・・・・。」
シドはギルガメッシュの方に静かに顔を向けた直した。
「俺は・・・もう、お前に教えてやれそうもない・・・が、こいつ達には・・・俺の全てを・・・叩き込んできた・・・覚えは悪いが・・・基礎は出来てる・・・・・・連れて行ってやってくれねぇか・・・・・・手を汚したのは・・・俺のせいなんだよ・・・こいつらは・・・根っからの悪い奴じゃ・・・ねぇからよ・・・。」
ギルガメッシュがシドのズボンを精一杯掴みながら懇願した。
「・・・・・・。」
シドはギルガメッシュをジッと見ている。
「・・・頼むよ・・・天才科学者・・・シド・・・。」
ギルガメッシュはこのままでは死んでも死にきれないと言わんばかりにシドに訴えかける。
「・・・ギルガメッシュ・・・科学者が手を汚すとか、汚さないとか関係ねぇよ。どんなに平和の為にとか言っても科学技術は軍事転用されちまう・・・確かにあんたの歩んできた道は汚れた道かも知れねぇが、科学者として歩んだ道を俺は否定はしねぇよ・・・。」
シドはギルガメッシュと正々堂々と向き合いながら言葉を紡ぐ。
「安心しなっ、天才科学者ギルガメッシュ・・・あんたの意思は確かに受け取ったっ。」
シドはそう言うとギルガメッシュの手を強く握って笑った。
「・・・・・・。」
ギルガメッシュはそのシドの顔を見て、静かに目を閉じた。
「オヤビンッ!」
「オヤビンッ!」
目を閉じてしまったギルガメッシュを起こそうと抱きつき懸命に揺さぶるヤムとドマ。
しかし、もう二度とギルガメッシュが目を開ける事はなかった。
「・・・・・・。」
シドは黙って、立ち上がるとまだ足掻いている二人から背を向けて距離を取った。
「・・・・・・。」
ラスターは黙ってシドを見ている。
「・・・マッドサイエンティスト。」
「ッ?!」
シドがラスターの顔を見ながら呟く。その言葉に驚きを隠せないラスター。
「へっへっ・・・俺がマッドサイエンティストに見えるか?」
ラスターの困惑した顔を悪戯な微笑で見るシド。
「・・・あっ・・・いえっ・・・その・・・。」
頭の中が混乱しているラスターは即答できない。
「・・・いいんだよ・・・俺もギルガメッシュも同じ様なもんだ・・・俺にはラムウのじじいがいて、ヒロヨシがいただけだ・・・。」
目を閉じてウツムきながら微笑んでシドが言う。
「・・・・・・。」
ラスターは何も言えない。
「・・・時代が科学者を利用するのか、科学者が時代を利用するのか・・・どっちなのかはあの二人を見たら、分かった気がするぜ。」
シドがヤムとドマを見て笑って呟いた。
「ラスター殿っ、シド殿っ!」
しんみりとした空気を破るようにシド達に声を掛けるものがいた。
「おうっ、レオンじゃねぇかっ!」
シドが声の主の方を見て、名前を呼ぶ。
「お二人ともご無事でしたかっ!」
ニコニコしたいつもの顔でシド達に近付いてレオンが胸を張る。
「そちらもご無事で何よりです。」
ラスターがニコリと笑ってレオンに言葉をかける。
「・・・ギリギリでしたっ。」
白い歯を見せて苦笑いで答えるレオン。
「ところで、ユッケ殿達は?」
レオンは周囲を見渡しながらシド達に尋ねた。
「おぅっ、なんかしらねぇが、バハムート?っていう奴の声が聞こえたからって慌ててあっちに走っていったぜっ。」
シドはレオンの質問に素直に答えて、親指で行き先を指し示した。
「なんとっ?!・・・それは急がねばっ!」
シドの答えに驚きを隠せないレオン。
「レオンさん、ここは我々で大丈夫ですので、どうぞ気にせず向かって下さい。」
ラスターが迷っているレオンの肩をポンポンと叩いて笑顔で背中を押した。
「ありがとうございますっ!」
レオンはラスターの後押しに綺麗なお辞儀をして、颯爽と向かった。
「ヤム!ドマ!いつまでそうしてるつもりだっ!」
「っ?!」
シドの自分達を呼ぶ声に驚くヤムとドマ。
「お前たちはギルガメッシュの一番弟子なんだろ?このまま、ギルガメッシュの全てをなくして良いのか?」
シドがヤム達の方を見ながら腕組みして叫ぶ。
「・・・・・・。」
何の事か掴めずにヤムとドマが顔を見合す。
「ここにギルガメッシュの整備室か、研究室はないのか?資料を持ち出さないと軍に取られちまうぜっ!」
ヤム達にそう叫んで、ラスターの方をニタリと笑ってみる。
「・・・・・・。」
目をツムって顔を横に振り、やれやれとしたようなポージングを取るラスター。
「そら、モタモタするんじゃねぇっ!ギルガメッシュのじじいは後で丁重に葬ってやろう。」
右手を高らかに上げてヤム達を促すシド。
「・・・わかりました・・・そういうことですね・・・。」
ラスターはシドの考えを全て理解して、ギルガメッシュの方へと近付いてその身体を抱えた。
「・・・・・・。」
ヤムとドマは二人顔を見合わせて、頷き合いシドの方へと掛けていく。そして、
シド達はこれからの事やギルガメッシュの事を笑って話しながらビッグブリッヂの中へと消えていった。
シドが科学者としての生き方について考えていた中、
ユッケ達はバハムートに導かれるように
ミナの元へと辿り着いた。そして、
次回、「アルテマの巫女」
青年よ、時代を重ねてきた歴史の力を見よ!(千葉しげるさん風)