絶望がユッケ達に降りかかる。
果たして、ユッケは如何に?
「・・・・・・。」
シヴァはアルテマが起こした大爆発の後に残った広く大きく立ち上る白煙を凝視して動けなくなっていた。
「シヴァ様、いけませんっ!」
慌ててシヴァを追いかけていたミューレがシヴァに追いついて、シヴァを制止しようとシヴァの右手にしがみ付く。
「・・・・・・ユッケ・・・。」
シヴァが呆然と立って、一点を凝視して言葉を口から零した。
「ワッ?!ワワワワッ、シヴァ様っ!」
シヴァは飛ぶ力もなくなったのか、ゆっくりと降下していく。
それを精一杯食い止めようとするミューレ。掴んだシヴァの右手をしっかりと両手で掴んで離さない。が、体格の差からかそれでも速度が落ちるだけでゆっくりと二人で降下していった。
「シヴァ様っ、しっかりして下さいぃ・・・。」
ミューレは必死にシヴァを正気に戻そうと声を掛ける。
「・・・・・・。」
シヴァは最早、糸の切れた人形状態でミューレに全てを任せていた。
「お~~~・・・イツツツツッ・・・。」
白煙が立ち込める中、ラムウの悲痛な呟きが聞こえる。
「・・・あっ、ぐぅっ・・・いっ、生きてる?」
ラムウらしき人物が四つんばいで腰を抑えてる横でうつ伏せに倒れているユッケが声を絞り出した。
「・・・なんとか、無事っ・・・とは、いかんがのっ。」
ラムウがお互いのボロボロの状態を見て、正直に言う
「・・・でも、どうしてっ・・・・・・ぁッ?!」
自分達がどうして、あの爆発に巻き込まれて、五体満足で居られたのか不思議に思っていたユッケだったが、傍らに落ちて、自分の存在を誇示するかのように光っていたアルテマウェポンの小さな小さなアルテマクリスタルの破片が目に入って理解した。
「・・・どうやら、アルテマクリスタル様のご加護のようじゃな・・・。」
ラムウもユッケの気付きにつられる様に話す。
「シヴァ様ッ!無事ですよ!・・・ユッケさん達、無事ですっ!!」
白煙が薄くなってきた頃、ミューレの目に二人の影が目に入り、放心状態のシヴァに必死にその事を伝えた。
「・・・・・・あぁっ・・・ユッ・・・ユッケッ!」
「アッ、シヴァ様?!」
シヴァはミューレの言葉に促されながら、ユッケの姿を探し、ユッケらしき姿を発見するや否や、ミューレの手を一瞬で振りほどき、そこに目掛けて飛んでいってしまった。余りの突然の動きにミューレは慌てて追いかける。
「・・・なんとか無事だけど、身体の節々が痛すぎるよっ。」
うつ伏せからなんとか起き上がり、地面に座り込むユッケ。
「・・・ミナの追撃が無いのは、向こうも相当無理をしておるのじゃろうな・・・。」
ユッケが身体を起こすのに精一杯の時に、ラムウはしっかりミナの方を見て、次の行動に備えていた。
「ユッケッ!!」
「オワッ?!イテテッ・・・シヴァッ、痛いよ・・・。」
上空からシヴァが勢い良くユッケに抱きついた。その勢いがユッケのボロボロの身体に少し激しい電気を流す。
「あぁっ、ごめんなさい・・・。」
ユッケの痛がる様子に慌ててシヴァは抱きついていたユッケの身体を離す。
〔ケアルラ〕〔ホワアアアアアアアア・・・〕
シヴァの手から優しい暖かな光がユッケを包み込む。
その光によって、ユッケの身体からみるみる痛みが和らいでいった。
「ラムウ様、大丈夫ですか?」
ミューレもシヴァに追いついて、ミューレはラムウの身体の手当てをした。
「おぉっ、スマンのミューレ・・・助かるわい・・・。」
ミューレのケアルラでラムウの状態もだいぶ改善された。
「・・・・・・。」
ユッケ達に比べて、圧している様でボロボロなミナ。
黙って直立不動で立ってはいるが、アルテマの連発。その衝撃を避けようともしない行動が、確実にミナの身体をムシバんでいた。
「・・・どうにかして、ミナからあのクリスタルを奪わないと・・・。」
ミナの様子をみて、悲痛な表情でユッケが話す。
「どうすれば、よろしいんでしょうか・・・。」
ミューレはオロオロしている。
必死で打開策を模索しようとするユッケ達だった。
しかし、闇の民はそんなユッケ達に優しいはずもなかった。
「・・・敵を排除します。」
ミナがそう呟いた時だった。
「ナッ?!」
ユッケ達はその光景に驚愕した。
ミナがとった行動とは・・・。
自爆だった。
ミナのクリスタルが大きく輝きだし、ミナの身体を持ち上げてどんどん空中へとミナを誘っていく。
まさにそこに次のアルテマを打ち込もうとする様。
「なんということをさせるんじゃっ!?」
ラムウは余りの光景に怒りを隠せない。
「・・・ミナッ!」
ミナの作り出した光景に涙を流しシヴァが叫ぶ。
「そんなっ・・・・・・ユッケさんっ?!」
ミューレもシヴァ達と同様にミナを見たが、ミューレの視線に思わぬユッケの姿が飛び込んできた。その姿とは、
「ユッケッ・・・あの馬鹿っ!」
遠くから見ていたティアにはユッケの行動が手に取るように分かった。しかし、遠すぎて、ユッケをとめることは出来ない事を悟る。
ユッケは誰よりも早くミナの行動に気付き、アルテマウェポンを握り締めてミナの元へと駆け出していた。
誰に言われたわけでも頼まれたわけでもない。
身体が勝手に動いただけだった。
(ミナを守りたい。)
その想いが頭でどう行動するか考える前にユッケの身体を突き動かしていた。
ユッケがミナをそれほどまでに守りたいと思ったのは、初めてギルガメッシュの操る戦車「ギルダンク」を前にしてだった。
ユッケはアースカンドからミッドガルドに次元の裂け目によって飛ばされて、運悪く記憶をなくしてしまった。その時に、ミナ達が自分を助けてくれた事に純粋に感謝したからだ。
ギルダンクに立ち向かったのは、その恩返しがしたかったら・・・。
そして、ギルダンクを退けてから、あの時は嘘だったとしても良くしてくれたハディの代わりにとミナを守ると誓ったユッケ。
バハムートと会って、ミナを守る必要はないと言われて、今度はバハムートに対抗するように「ミナを守りたい!」と強く思うようになったユッケ。
その事をミナに口に出して約束したが、あの祭りの後、ユッケはミナを守りきれなかった。
その償いがしたくて、ミナが闇の民ハディに操られていると聞いて、居ても立っても居られなかったユッケ。
今度こそは守りたい。取り戻したいと強く思ったユッケ。
「グワアアアアッ!」(母さんっ、クリスタルっ、お願いだ・・・力を貸してくれ!)
ユッケはアルテマウェポンを構えて、無我夢中でミナのクリスタルに向かって再度突進した。
クリスタルにはハディの結界がかかっている。今度も弾かれるかもしれない。しかし、今度弾かれれば、ユッケはともかく、ミナは確実に仲間を巻き込んで、この世から消えてしまうだろう。
(俺の命はどうなってもいい・・・だからっ!)
ユッケが強い思いを込めてアルテマウェポンを握り込む。力強く握り締めたアルテマウェポンの切っ先が、ミナのクリスタルに届こうとしていた。
〔パキーーーーーーーーーーンッ〕
ハディの施した結界がアルテマウェポンも拒もうとする。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
ユッケは自分達を拒もうとする結界の力に圧されるもその場に必死に踏みとどまる。
そして、
〔ビシッ〕
ミナのクリスタルに小さなヒビが入った。
アルテマウェポンの切っ先が見事ハディの結界を打ち破り、ミナのクリスタルに届いたのだ。
〔ビシビシッ、ビシビシビシッ、パリーーーーーーンッ!〕
クリスタルはアルテマウェポンの切っ先に耐えかねて、音を立てて粉々に崩れ散った。
「・・・・・・。」
バハムートは翼でミナの自爆に備えながら、その一部始終を見ていたが、その結末を凝視して動けなかった。
「・・・・・・。」
シヴァ達はユッケの行動に固まって動けず、あっけない終わりに放心状態となった。
〔ドサッ〕
ミナを空中に持ち上げていたクリスタルが無くなり、ミナは1mの高さから落ちて、そのまま仰向けに倒れ込む。
「・・・・・・。」
ユッケはアルテマウェポンを構えたまま動かない。アルテマウェポンは仕事を終えたと言わんばかりに刀身を消して、柄だけになっていた。
闇の民からの呪縛から解放されたミナ
しかし、目覚めたミナが見た光景に衝撃を受ける
動かなくなったユッケは?
次回、「ユッケという青年」
青年よ、お前の道はどこで終わるのか?(千葉しげるさん風)