目が覚めたらパチュリーになっていた件について   作:レアブルー

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現実にも僕っ子が実在した件について

「にしてもこーんなに可愛くなってるのに元は男の子なんだね」

 

なんてことを言いながら俺の周りをくるくる回りながら観察してる"可愛い悪魔"は。俺と同じく朝起きたら突然容姿が変わっていた仲間だ。……まあ俺と違って性別は変わっていないらしいけど。

 

「えっと、月宮さんはいつからその姿に?」

「僕は丁度昨日からかな。朝起きたら髪が短くなってこんなに可愛くなっててびっくりしたよ!読河ちゃんも同じなのかな?」

 

ちゃんづけ……まあ見た目は女の子なので仕方ないのか?なんかむずかゆいな。まあでも別に訂正するほどじゃないし……。

 

「……うん、同じ昨日の日曜日だよ」

「やっぱりそうなんだね。朝起きてお母さんも特に気にしてないし、なんか変になっちゃったのかなと思ったけど、みんなこの羽にも気がついてないみたいで…絶対おかしいよね!っと思ってたところだったんだ」

 

仲間が見つかって良かったーと笑顔で語りかけてくる少女。ま、まぶしい……!というか、やっぱり自分たち変化は変化してない周りの人たちには認識できてないみたいだな。昨日の出来事が衝撃的すぎてもしかして自分の頭がおかしくなっただけなんじゃ無いか一晩中悩んでしまった。

 

「そういえば読河くんは何年何組?」

「え、ああ、二年二組だけど……」

「僕は二年一組。同級生だったんだね!」

 

キーンコーンカーンコーン。これは始業五分前の……っということは!

 

「チャイムなっちゃったね。また昼休みとかに話しよっか」

「あ、うんそうだね」

 

体育館裏から教室までは少し距離がある。僕たちは小走りでHRに間に合うよう教室へ向かうのであった。

 

 

 

時間は過ぎて昼休み。なんというか余りにも日常的に時間が流れすぎて、視界の端に移る紫色の艶やかな髪が無ければTSしたことも忘れそうになるほどだった。周りは特に容姿に対して言及しないし、制服が女物になっていても何も気にしない。授業合間の休み時間ではいつも通り友人と趣味の話をしたし何というか、正直拍子抜けしていた。

 

「こんにちは、読河ちゃんいるかな?」

 

とりあえず食事をして二年一組を尋ねようと席を立った瞬間、教室の扉が開き元気な女の子の声が聞こえる。

 

「あ、いたいた。もうご飯食べた?」

「えっ、いや、まだだけど」

「じゃあ一緒に食堂に行こう!」

 

あまりにも陽パワー。反射的にうなずいてしまった。

 

 

 

「いただきます!」

「……いただきます」

 

月宮さんは大盛りのカツ丼を頼んでいた。俺?うどん(小)だ。なんかこの身体になってから小食になったみたいなんだよな。昨日コンビニでいつも通りの男子高校生らしい大盛り弁当買って食べると半分も食べきらなかった。しかも油物が少々きつい。当然と言えば当然かもしれないが、身体の内面(物理)もしっかり変わっているようだ。味覚も変わっているのか、余り好きじゃ無かった素うどんの味か染み渡る。

 

「読河ちゃん、そんな量で足りるの?ほんとに女の子みたいだね」

「前は普通に大盛り食べてたんだけど、まあ一応今の身体は女の子なので」

「確かにそっか!」

 

逆に月宮さんはその華奢な身体にどうやって入るのか、パクパクとカツ丼を平らげていく。この様子だと元々ご飯一杯食べる人なのか……?お互い、余り食事中に喋らないタイプのようでお互いに食べ終わり(量の差があるのに同時だった)今日の本題に入る。

 

「それで、読河ちゃんは原因に心当たりある?」

「いや、それがあれば苦労は無いんだけど」

「だよねー。黒ずくめの組織とかにあった記憶は無いんだけどなー」

 

おっと結構そういうネタいける系か?というかそもそも疑問だったが――

 

「そういえば、月宮さんは東方知ってる?」

「ん?東方神起のこと?」

 

あ、明らかにご存じで無いやつだ。

 

「いや、東方プロジェクトのほう。この見た目のキャラクターなんだけど」

「へーキャラクターなんだ。確かに羽も生えてるし、アニメのキャラかなんかだとは思ってたけど」

 

……えー、ここでアニメではなく原作は弾幕STGであり云々言い出すとあまりにもあまりにもなので、厄介オタク成分をぐぐっとこらえて……

 

「ってことは読河ちゃんが知ってるやつなんだね」

「……うん、一応」

「じゃあ僕のキャラはどういうキャラなの?」

「えーーーーーっと」

 

……なんていえばいいんだろうか、これ。正直俺も知っては居るしプレイ動画は見たことあるがそもそも出演が少ないっていうのと、未プレイのみであんまり語るのも……いやいや、そもそもそういうのは望まれてない。簡潔に、伝えれば良いんだ。

 

「……名前は幻月。"まぼろし"に"つき"って書いて幻月。ゲームのラスボスで種族は悪魔ってところかな」

「え!この子悪魔なの!?天使だと思ってた……」

 

まあそうだよね。誰だってそう思う、俺だってそう思う。改めて容姿を見ると、肩まで伸びる絹のように艶やかな金糸の髪、少し目じりがツリ目で大きくてまん丸な金色の瞳、背中からは極上の羽毛もかくやといったフワフワで純白の羽。うーん、これが悪魔かー。

 

「というか悪魔でラスボスって、もしかして僕、すごく悪いやつ?」

「あーいや、東方ってゲームはあんまりそんな良い悪いって感じじゃ無くて、なんというかすれ違いで主人公と対立しただけで普通の悪魔だよ」

 

普通の悪魔って何だよ。

 

「そう?なんだ。というか戦うゲーム?ならもしかしてなんかこう、超能力みたいなのがあるの?」

「……うん、あるはずなんだけど、昨日自分が試してみたけど俺たちには無いみたい」

 

とはいえ幻月みたいに種族単位で最強格のキャラが自分の他に居る可能性があるなら能力が無くて良かったかもしれない。悪用する人がいないとも限らないし、最悪、種族によっては怪力が暴発する可能性とかもあるわけだし。

 

「……そういえば読河ちゃんのほうはどんなキャラクターなの?」

「えっと俺の方はパチュリー・ノーレッジ。七曜の魔女。魔法使いなんだ」

「魔法使い!」

 

さっき能力は無いといったのに"魔法"の一言を聞いた瞬間、月宮の目が輝く。そんな目で見られても何も出せないし、俺も出せる物なら出したいよ……。ただ先ほど俺の言った言葉を思い出したのか、今度はずーんと影を落として俯く。感情表現豊かだなぁ。

 

「……でも使えないんだよね、残念」

「そうだね、本当に、マジで」

「なんか僕よりめちゃくちゃ残念そうな顔してる……」

 

はい、残念です。俺も『火符「アグニシャイン」』とか『日符「ロイヤルフレア」』とかやりたかったよ……。

 

「じゃあ、僕たちは見た目が変わっただけなんだね」

「……そうだね、といっても周りの人は気がついていないみたいだけど」

「そうそれ!みんなこんなに変わったのに何も気がついてくれないんだよね。この羽とか明らかにおかしいのにみーんなスルーするし」

「そういえばその制服どうなってるの?」

「なんか小さい穴袖があいてるからそこ通してるよ」

 

ちょっと面倒なんだけどね、と背中を見せてくれた。良く見ると付け根辺りに小さな袖口が着いていてそこから羽が伸びている。思ったより羽は柔軟なようで、小さな穴でも通せるらしいが慣れるまで結構時間がかかったようだ。

 

「一応みんなも見えているみたいだけど、なんていうか、"僕は最初からそうだった"みたいな感じで気にされないんだよね。初対面の人でも気にされないから、よくわからないんだけど」

 

これは僕の場合と同じだ。この世界では非常識的な髪色や容姿に関しても"まるで当たり前かのように気にされない"かといって気がついても違和感を感じない……正確には感じても気にしないといったところか。どう考えても校則違反どころじゃないだろこの髪色は。

 

「うーん、わからないことだらけだけど、とりあえず今まで通り生活しても問題なさそうみたいだね」

「……うん、まあ、そうだね」

「……あれ?でもそういえば読河ちゃんって元男の子だよね?今はどうなってるの?次、体育だよ?」

 

 

――さあ?どうなってるんでしょうねぇ、マジで




ごぶ……さた……しております……
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