某日の深夜、
世界貴族『天竜人』が住まうその禁域に、突如襲撃者が飛来した。
予兆は無かった。足下に位置している海軍本部と第一支部すらも気付かなかった侵入は、襲撃者……カルデア海賊団の第一撃を容易に許した。
「作戦第一段階成功!」
「此方の侵入に気付いた様子はありません。マスター、指示を」
参謀のダ・ヴィンチ、副官のマシュの報告を受け、立香は頷いて振り返る。
「うん。……皆、一先ず侵入には成功! これより第二段階に移行します!」
立香の言葉に、皆三者三様に頷く。それを確認した立香は、次々に指示を出す。
「アルトリア達は祝福を使って粛清騎士を召喚、円卓組と一緒に進軍! ダブルマーリンとキャストリアは援護!」
「心得ました」
「メイヴはケルト兵を召喚し次第フィオナ・アルスター両騎士達の指揮して、円卓軍と共に攻めて! スカサハ師匠も加わって!」
「了解マスター!」
「イアソンはアルゴノーツのメンバーと一緒に竜牙兵を連れて回り込んで! それで奴隷の人達を見つけ次第解放、逃がしてあげて!」
「任せとけ、俺は戦わないけどな!」
「次にローマ皇帝組! 力を合わせてローマ兵を出してイアソン達の援護に半分回して! もう半分は守備!」
「うむ、余達に任せよ!」
「ツァーリとダディは其々
その後も次々に手早く伝えられる指示を基に、皆迅速に行動を始める。忙しなく動く仲間達に向けて、立香は最後に締め括った。
「皆、この作戦は時間との勝負だよ。多分直ぐに本部の中将や大将、サイファーポールが出てくる。それまでに出来るだけ天竜人を仕留めて奴隷を解放、大将やイージス・ゼロとの戦闘は最小限に留めて! 以上、行動開始!」
程なくして、マリージョアは炎と怒号に包まれた。
上空をイシュタルや伊吹童子をはじめとした神々が飛び交い、炎や雷を地上に向けて撃ち出す。
前線ではガウェインやアグラヴェイン、ディルムッドの指揮の声やイアソンの悲鳴、カエサルの文句、ランスロットやクー・オルタの啖呵、ヘラクレスの咆哮が響き渡る。
流石にここまで暴れれば護衛の兵士達も出てくるが、それらは信長率いるチビノブ軍団と新撰組が返り討ちにする。
すると前線より、各部隊に持たせた電伝虫から立香達司令部に連絡が入る。
「トリスタン卿より連絡! 天竜人を三人討ち取ったとの事!」
「アルジュナから通信、こちらも二人討ち取ったと報告!」
「こっちはフィン団長から! 三人討ち取ったって!」
「アサシン・エミヤ、四人始末したとの事!」
「アタランテから報告、奴隷約1500人を解放!」
「百貌のハサン、奴隷2000人解放!」
「パーシヴァル卿、約1800人解放!」
「小太郎君、2200人解放!」
ネモ軍団から次々伝えられる戦果に、立香達は小さくガッツポーズをとる。しかし気は緩めない。事態はまだ始まったばかりである。
そこへ海軍の動向監視に回していたチームから連絡が入る。
『マスター、此方ビリー。連中遂に出てきたよ、今はグリーンの罠とアーラシュの狙撃で対処出来てる』
「分かった、エミヤに替われる?」
『はいよ……レッド、マスターが変わってとさ!』
すると遠くにガヤガヤとした音がした後、電話口の声が変わる。
『……通信替わった、此方エミヤ』
「エミヤ、海軍はどれ位のが来た?」
『規模は約二千、大半が中佐・大佐でその中に数十人准将や少将。何れも二年前の戦争で活躍した連中だな。中将達の姿は無い』
「……どう思う?」
立香が意見を求めたのは、太公望と孔明・司馬懿兄妹。陳宮は呂布にくっ付いているのでこの場にはいない。
「隠匿系の能力を持った中将が混ざっている事も考えられますが、兎に角先ずは何人か援軍を出すべきでしょう」
「あぁ。対処しているのはロビン・フッドにビリー・ザ・キッド、エミヤ、アーラシュの四人だ。近接要員がエミヤ一人、辛うじてビリーが出来たとしても二人。銃撃戦以外では少し厳しいだろう」
「だね。少なく見積もって五、六人はいるだろうね」
三人の意見に、立香は少し考えた後にエミヤに告げる。
「エミヤ、聞いての通り警戒態勢を維持して。援軍を送るから」
『了解した、暫く持ち堪えよう』
エミヤとの通信を切って直ぐ、立香は前線に通信を繋ぐ。
「もしもし坂本さん? ノッブからチビノブを少し借りてダーオカと新兵衛君と一緒に引き返してきて。海軍が動いた」
『了解!』
『お竜さんとリョーマに任せておけ』
「赤兎、聞こえる?」
『明瞭に!』
「呂布と一緒に戻ってきて。海軍が動いた」
『ヒヒン! お任せあれ!』
「僕からも哪吒に連絡しておきましょう」
「私の方からも巴さん、アストルフォさんに連絡しておきました! ニトクリスさんもスフィンクスを数体回してくれるそうです!」
龍馬、お竜、以蔵、新兵衛、呂布、赤兎馬、哪吒、巴御前、アストルフォとチビノブ・スフィンクス軍団を対処に回す。
すると間もなく、緊急用の電伝虫が鳴り響く。発信元は円卓ケルト連合軍とアルゴノーツだ。
「何があったの!?」
『此方メディア・リリィ! イージス・ゼロが出てきました、ヘラクレス様とディオスクロイ様方が対処されています!』
『此方ベディヴィエール! パシフィスタ出現、モードレット卿が対峙しています!』
「遂に来たか……! 全員、隙を見て撤退して!」
『もしもしマスター、聞こえる!? 中庭の武蔵だけど!』
「武蔵ちゃん! どうしたの?」
『海軍大将のお出ましよ。藤虎って人が来たわ。今は私達が対応してるけど、どうする?』
どうやら中庭で大将・藤虎に遭遇したらしく、武蔵、宗矩、村正、始皇帝、モルガン、バーゲスト、バーヴァン・シー、ヘクトール、小次郎が食い止めているらしい。
『此方スカディ。マスター、中将達が現れた。勇士シグルドとブリュンヒルデ、ワルキューレ達と即席の巨人達で対処中だ』
「中将も出てきたか、戦果はもう十分だから……どっちも隙を見て撤退、船に戻ってきて!」
そう伝えて通信を切ったその瞬間、不意に頭上上空で衝撃音が響いた。何事かと目を向ければ……
「あれは!?」
「大将・黄猿です!」
いつの間にか大将がもう一人、光人間の黄猿が飛来していた。恐らくその速度で以て、立香の首を取りに来たのだろう。
しかしそんな彼を囲む様にメリュジーヌ、ロムルス=クィリヌス、ジェット装備の沖田、アキレウス、アタランテ・オルタ、魔神沖田が位置取っている。更に立香を庇う様にイヴァン雷帝とモリアーティ、山の翁も側に来ており、アヴィケブロンとパラケルススもゴーレムとホムンクルスを多量展開して防壁としている。
「あっちゃ~、そう簡単にはいかないかぁ」
「僕らがマスターに触れさせる訳無いだろう」
「それに、だ。俺らに速度で対抗出来る奴なんぞ、海軍じゃアンタぐらいだからな。対策しない訳がねぇ」
メリュジーヌとアキレウスが槍を掲げて黄猿を威嚇する。
「そう言われてもねぇ~。こっちとしてもアンタ等に何度も侵入されちゃあ、面目丸潰れなのよ~」
言うが早いか、黄猿は一瞬で立香に迫り光の剣を振るう。
「させませんっ!」
「ローマッ!」
それをダブル沖田が受け止め、がら空きになった側面からロムルスが貫き手を叩きこむ。
黄猿は即座にそれを躱すが、その先にはアキレウスが待ち構えていた。
「そりゃぁっ!!」
振り抜いた穂先が軽く捉え、黄猿をのけぞらせる。そこへアタランテ・オルタの連射、雷帝の雷撃、モリアーティの集中砲火が襲い掛かる。
「おおっとぉ~、危ないねぇ~」
しかしどうやら、間一髪で逃れたらしい。海軍最速は伊達ではない様だ。
すると、
「マスター! 皆さん戻りました!」
マシュの声に振り向けば、天竜人討伐及び奴隷解放、海軍の足止めに動いていた面々に加え、この大陸を挟んで本部とは反対側にある第一支部を強襲していたスルト、ゴルゴーン、ヘシアン・ロボ、ヴリトラ、景虎、卑弥呼、イスカンダル、ペルセウス、頼光、金時、綱、書文、千代女、ベオウルフ、ラスプーチン、闇のコヤンスカヤ、ニキチッチも戻ってきている。メディアと太公望、モルガンが頑張った様だ。
「よし! 皆逃げるよ!」
「させると思ってんのかい?」
立香の言葉に、黄猿が恐るべき速度で迫る。果たしてその答えは……行動によって示された。
「一斉射っ!!」
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「"神剣・
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「"|凱旋を高らかに告げる虹弓《アルク・ドゥ・トリオンフ・ドゥ・レトワール》"!」
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「"|至高の神よ、我を憐れみたまえ《ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ》"!」
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宝具の嵐が黄猿を飲み込み、その隙に転移しマリージョアを後にする。人一人に対して、明らかな
しかし一先ず、追手の影は無い。
それにより、カルデア海賊団の『第三次マリージョア侵攻作戦』は成功したのである。
後半やかましかったですね。