双槍銃士   作:トマトしるこ

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 どうも、トマトしるこです。

 息抜き兼シノンへの愛が止まらず投稿へ。ファントム・バレットも始まるだろうし、いいよね?


phase 1 日常

 

『よぉ、久しぶりだな。元気にしてたかい?』

『お前……生きてたのか』

『当たり前だろ? 勝手に殺してんじゃねぇ。会いたかったぜ、相棒』

『誰が相棒だ。とっとと失せろ』

『そりゃこっちの台詞だ』

『復讐のつもりか?』

『違うね、いつもどおり遊びだよ。ア・ソ・ビ。死んでくれや、《アイン》』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鷹村ぁ!」

「うおぉっ!?」

 

 誰かに思いっきり名前を呼ばれて驚いた俺、鷹村悠(タカムラ ハルカ)は飛び上がった。比喩ではなく、文字どおりに。座っていた椅子を蹴っ飛ばして、机に乗っていた筆記具を床へと落としながら。

 

「お前、寝ていただろ?」

「寝てません」

 

 しまった……授業中だったのか。しかもウチの中学で一番メンドクサイことで知られている数学の原野じゃん。昨日遅くまでゲームしてたから睡魔に勝てなかったんだっけ?

 

「なら、頬と額についてる真っ赤な痕はなんだ? 腕と筆箱を枕代わりしてたからそんな痕がついてるんだろう?」

「仰る通りで」

「寝ていたのならはっきり言わんか!」

「でもちゃんと聞いてましたよ」

「睡眠学習です。なんて一世代昔の言い訳をするんじゃないだろうな?」

「そのまさかです」

「はぁ……座れ、時間の無駄だ。放課後に職員室まで来るように」

「うす」

 

 クラス替えしてかなり経つこの1-Bでは既に見慣れた光景の一つだと言われているこのやり取り。俺が何かをやらかして、先生に叱られる。体育科の先生だろうと、学年主任だろうと校長先生だろうと全く怖くない俺は軽く流している。不良………というほどではなく、かといってお利口なわけでもない事で知られている俺は、“ただハイハイと言う事を聞くだけの生徒ではなく、高い意識を持っている”というよくわからないが過大評価を受けていた。なので(?)呼び出されるだけで済んでいる……のか? 面倒なのでこのことは考えないようにしよう。テストの点が高ければ教師は納得するんだよ。

 

 席に座って、落とした筆記用具を拾う。教科書とノートを広げてはいるものの板書するつもりはさらさらない。板書は理解するために書き写すのであって、理解しているならその必要は無いと俺は考えている。この授業はノート提出も無いので、重要な場所だけを教科書にメモしたりラインを引いたりするだけで十分定期テストで高得点をとれるしな。

 

 2分後。また眠たくなってきた……。

 

 おやすみ諸君、精々頑張りたまえ。

 

「zzz」

 

 ガスッ!

 

「いっ………っつぅ~~!」

 

 さっきのように授業中だという事を忘れていなかった俺は何とか声を我慢できた。鈍い痛みの発生源は左側。更に言うなら脇腹。授業中にこんなことが出来るのは1人だけ、この学校で俺にこんなことをしてくるのも1人だけだ。

 

「何すんだよ、詩乃」

「寝そうになってたから、起こしてあげたの」

 

 俺の隣の席……教室の窓際最後列というベストポジションを獲得したラッキーな幼馴染み、朝田詩乃。メガネをかけたクールな印象が強く、女子のレベルがかなり低い我が校にとって貴重な美少女。運動は平均、学力は毎回学年上位、性格は少し……いや、かなりキツイところもあるが基本優しいと、これまた我が校にしては貴重な優等生っぷりを発揮している。学年問わず、男子からの人気は高いらしい。が、とある理由により誰も詩乃には関わろうとしない。

 

 こいつとは小学校に上がる前にこっちに引っ越してきたときからの付き合いだ。それからは学校もクラスも同じだし、放課後も大体一緒に居る。お互い何を考えているのか分かるくらいには仲がいい。

 

 決してお互い友達が出来ないからではない。

 

「それはありがたいんだけどな、もうちょっと起こし方を考えてだな……」

「軽くつねっただけじゃ起きないでしょ。指とかペンでつついてもそうだし、蹴ってもダメだし」

「うぐ、ま、まあそうなんだが……」

 

 何も言えない。全部事実なので。経験済みなので。

 

 黙っていると詩乃はため息をついて前を向いた。視線は黒板とノートを往復し、シャーペンをせわしなく動かしている。

 

「くあぁ……」

 

 眠たい。寝たい。でも寝れない。起きなければ……。

 

 

 

 

 

 

 結局、俺は寝ていた。終わった時のチャイムすら気付かず放課後を迎え、またしても俺を呼ぶ声で目が覚めた。

 

「鷹村君ー」

「………んー?」

「さっきの授業なんだけど、ここ教えてくれないー?」

「………おう。くあぁぁ……」

 

 またしても床に散らばった筆記用具を拾って筆箱に入れる。今日はSHRも無いし、さっきの数学で最後なんだからさっさと帰ればいいのに、わざわざ勉強を教えてくれなんて真面目な奴らだなぁ。

 

 授業中に居眠りしてもテストは毎回と言っていいほど学年上位者に名を連ねるため、よくクラスメイトの先生をすることがある。テスト前の自習時間に黒板を使って問題の解説をさせられたこともある。俺より成績がいい奴がいるにも関わらず、だ。なんでも教え方が上手いらしい。

 

 そんなこともあるので、クラスメイトからは勉強教えてと言われることがたまにある。俺はひねくれ者でもないし、前時代のヤンキー(現代では死語に近い)みたいにガンつけることもしない。人付き合いはいいのだ。少なくとも詩乃よりは。

 

「何よ」

「何でも」

 

 学校での俺は“体のいい便利屋”って感じの扱いを受けている気がする。

 

 そんなに時間はかからないだろうが、詩乃を待たせるのも悪い。先に行くように言っておこう。

 

「詩乃」

「何?」

「先に行っててくれ」

「ゆっくりとね」

 

 表情を変えずに詩乃は教室からゆっくりと出て行った。そこからゆっくりなのかい。

 

「鷹村君、よくあの人と一緒に居られるね」

「ガキの頃からの付き合いだしな。んで、どこがわからないんだ?」

「あ、そうそう。この――」

 

 詩乃は学校を始めとしたここら一帯での評判が悪い。理由はそう簡単に口にできることではないので誰も言いはしないが。

 

 その理由は理解できる。でも納得はできない。本当なら詩乃をバカにするやつら全員ぶちのめしてやりたいが、俺がスッキリするだけで何も残らないし、当の本人は望まない。何の解決にもならないし、逆に迫害を加速させてしまうことになる。ぐっと堪えて愛想よく接し、さっさと終えて後を追うことにしよう。

 

「―――ってことだ」

「おおー! 流石ぁ~わかりやすいね。ありがとう!」

「おう、じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 幼馴染みはわざわざ校門の外で待っていてくれた。

 

「悪い」

「いこ、今日はあのスーパー安いから」

「ああ」

 

 肩を並べて少し足早に歩く。余計なことで時間を食ってしまった、チラシに載っている目玉商品が無くなっていませんように……と祈りながら急ぐ。

 

「ユウ」

「んー?」

「寝過ぎ」

「いやぁ……ちょっと夜更かししちゃってさ」

「起こしに行かなかったら絶対遅刻してたわよ」

「詩乃さんあざッす!」

「はぁ……」

 

 俺と一緒に熱中してた“アイツ”も、今日の学校はキツかっただろう。同士がいるというのは心が休まるな。精々先生に絞られるがいいさ! ………夏期講習があればの話だけど。

 

 因みに「ユウ」ってのは俺の事。(ハルカ)って字は(ユウ)とも読める。会ったばかりの頃、俺の字が読めなかった詩乃は「ユウ」と呼んだのがきっかけで今も呼び続けていた。ニックネームみたいなもんさ。

 

「“ナーヴギア”のゲーム、また遅くまでしてたんでしょ?」

「おう」

「この前言ってたβテスターに選ばれた………なんて言ったっけ?」

「“ソードアート・オンライン”」

「そう、それ」

 

 “ソードアート・オンライン”。“ナーヴギア”というヘルメット型の次世代ゲームハードの最新作ソフトで、100層で構成された浮遊する鋼鉄の城、“アインクラッド”をプレイヤー達と協力して攻略していく、自由度がハンパじゃない注目のゲームだ。

 

ナーヴギアは脳が発する電気信号を送受信することによって、自分がゲームプレイヤーとなってVR世界を駆けまわれる最新ハード。コントローラーを持って画面に映るキャラクターを動かす時代は終わりを告げ、とうとう自分がキャラクターとしてゲームが出来るようになった。

 

 決められたパターンの攻撃しかできないゲームなんてもう古い、コマンド入力なんてもっての外。アバターに魂を宿し、相棒とも言える武器を握り、壮大なフィールドを駆けめぐり、プレイヤー達と協力し、時に対立し、思うままにプレイする(生きる)

 

 今一ぱっとしないソフトばかりだったナーヴギアだが、ソードアート・オンライン発表からはユーザーも非ユーザーも湧き上がった。本当の意味での冒険が始まるのだから。かくいう俺もゲームにはあまり関心が無かったが、これには興味を持った。保護者がそういう仕事をしていることもあって、ナーヴギアも格安で手に入れる事が出来た。

 

 運がいいことに、その日本全国のゲーマーを滾らせるソフトのβテスターに選ばれた。その数、なんと僅か1000人。これで喜ばないヤツはクズだ。やりこまないヤツはアホだ。それぐらい面白いんだよ! って感じでハマってます。

 

「ナーヴギアは使わせてもらったことあるけど、すごかったわね。アレ」

「前にさわらせたチャチなやつと一緒にされちゃあ困る。SAOは今までの比じゃないぜ。現実なんじゃないかってぐらいリアルだし、何でもできるんだ。モンスターと戦うのはそうだけど、商人になったり、鍛冶屋になったり、シェフになったり、デザイナーにだってなれる」

「自由ね、それ。本当にファンタジー系のゲーム?」

「そうなんだな、これが。まるで、SAOの中で(・・・・・・)生活できるように(・・・・・・・・)作られたみたい(・・・・・・・)だ。現実世界とゲームの世界を足したら多分ああなる」

「へぇ。面白そう」

「だろ! でも買うのは……無理そうだな。お金以前に爺さんが厳しい人だし。正式サービス始まったらサブアカウント作るから、偶にやってみろよ。いや、おじさんに頼めばもう一台手に入るか?」

「ありがと。でも……」

「大丈夫だって。ソード……つまり剣なんだぜ? 銃なんてありえないし、弓すらない。遠距離なんて投擲用のナイフとピックぐらいしかねえよ」

「そう」

「………」

「………」

 

 沈黙。何度も言っているが、理由は言わずもがな、だ。

 

「いつか……」

「ん?」

「一緒にできるといいね」

「そうだな。ゲームの中なら誰が誰か分からないから何やっても大丈夫だもんな!」

「そういう意味じゃない!」

「ははははははは!」

「もう……」

 

 何だかんだ言いつつも、詩乃はクスクスと笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 スーパー到着。俺が籠を乗せたカートを押して、詩乃がポイポイと放り込む。俺の保護者はお金持ちの部類に入るらしいが、無駄に使うつもりは無いので安いものを選ぶ。何でもかんでも無差別に入れているわけではないので注意。産地は大事だ。

 

「今晩何にする?」

「昨日のカレーがまだ余ってただろ? サラダとかで良くないか?」

「えぇ……2日続けてカレーなの?」

「でも勿体ないじゃん。カレー蕎麦でもするか?」

「うどんじゃないのね」

「好きですから、蕎麦」

「言ったわね? ユウのだけ激辛にしてやるから」

「うへぇ」

 

 他にも必要そうな物、無くなりかけていた物、ジュースとお菓子を少々購入。タバスコまで籠に入っていたのでこっそり戻しておいた。いつもならちょっと顔を出していく古本屋やゲーセン等の寄り道はせず、真っすぐ俺の家に帰る。

 

「ただいまー」

「おじゃまします」

 

 返事は無い。どうやら今日も遅くまで仕事、もしくは泊まり込みみたいだ。いつものことなので俺も詩乃も気にせず上がりキッチンへ直行。パパッとカレー蕎麦を作った。と言っても麺を湯がいてカレーをぶちまけるだけなんだが。

 

「「いただきます」」

 

 テレビを見ながら蕎麦を啜る。うまうま。辛い辛い。策士の詩乃さんは既にタバスコを買っていたようだ。自分の家だが、料理をするのは詩乃で俺はお手伝い。台所

事情を知らない俺の負けだった。

 

「ユウ」

「辛いのは我慢しろよ、お前が悪戯でタバスコ入れまくったんだからな」

「それは無問題よ、辛いのは好きだもの。……ってそうじゃなくて! その……私のことどう思ってるの?」

「……はぁ、また何か言われたな? 誰だ、荒井か? 気にするなって言ってるだろ」

「そ、そうじゃないけど……」

 

 二の句が出てこない時点で「はいそうです」って言ってるもんだぞ。分かりやすいなぁ。

 

「いつも言ってるだろ。お前に会えて良かった。詩乃がいなかったら、俺は現実に耐えられなくて死んでいたって」

「……うん」

「詩乃は俺の全てだよ。詩乃がいるから、俺はここに居る」

「……うん」

 

 不安そうな表情だったが、安心してくれたようでにこりと笑って返してくれた。

 

 俺が特別詩乃と仲がいいから、詩乃は俺とだけ仲がいいから、それをタネに嫌がらせを言ってくる奴らがちらほらといる、というか後を絶たない。大半の奴は相手が俺だからと避ける程度だが、ごく少数の奴は直接俺の居ないところで色々と心無いことを言っているらしい。内容は想像がつく、大方「俺が情けで付き合ってるだけ」とかそんなところだろ。

 

 そんなことは無い、絶対にあり得ない。詩乃だって分かってることだが、それでもIF(もしかしたら…)を考えてしまうみたいで、何度もこのやり取りを繰り返した。

 

「そんなことを言う奴は、そんなことしか言えない奴らだ。相手にする価値なんてない」

「相変わらずキッツイわね」

「お前ほどじゃないさ」

「えい」

「熱っ! 蕎麦麺熱い! あとカレー飛び散るから! ゴメンナサイ!」

「許す」

「ありがとうございます」

「その代わりデザートは頂く」

「太るぞ」

「えい」

「ああっ! ゴメンナサイゴメンナサイ!!」

 

 食べ物は大事にしましょうね。詩乃さんや。

 

 遊びつつも、楽しみながら食事を終えた。デザートに買っておいたショートケーキは献上したので、寂しく卑しくラベルについたクリームをフォークでとっていると半分恵んでくれた。こういうのなんて言うんだろ。ツンデレ? ………違うか。

 

 

 

 

 

 

 昔はお隣さんだった詩乃だが、詩乃のお母さんの関係で母方の爺さん婆さんの家に引っ越した。引っ越した、といっても我が家から歩いて15分ぐらいの所にあるので、いつも一緒に晩御飯を食べた後は家まで送っていくのが日課だ。制服から私服に着替え、カレー臭いので歯を磨いて外に出た。2日連続だったこともあってしばらくカレーは食べたくない。蕎麦も嫌だな、熱いし武器にされる。

 

 8月ももうすぐ終わりに近づいている。夜とはいえ肌寒くなってくる。

 

「寒くないか?」

「ちょっとだけ。でも大丈夫だから」

「無理しないでコレ着てろ」

 

 多分そんなこと言うだろうなーとか思ってたので、一着余計に持ってきておいた。男物だから大きめで暖かいはず。少なくとも無いよりはマシだ。

 

「ん」

 

 詩乃がそれだけ言うと、羽織ったコートの内側の右腕が少し動いた。何も言わずに右手を握った。

 

「……ばか」

「バカは嫌いか?」

「………ばーか」

「2回も言うなよ」

「嫌いなわけ、ないじゃない」

 

 話したのはそれだけ、15分間何も言わずに歩いた。話題が無いからとかそういうのじゃなくて、それだけで十分だったから。その証拠に詩乃は嬉しそうだ。きっと鏡をみれば俺も同じ顔をしているだろう。

 

 一昔前にできたグレーの家、それが詩乃の今の家だ。いつもなら上がっていくが、今日は遠慮しておくと玄関先で伝えた。

 

「ちょっと家の掃除しないといけなくてさ、時間かかりそうで」

「言ってくれれば手伝ったのに」

「宿題あるだろうが。お前の苦手な生物の宿題がな」

「ぅ……まぁ、そうだけど」

「そういうこと。分からなかったら電話してくれれば出るから」

「わかった。また明日ね」

「ああ、また明日」

 

 少し寂しそうな詩乃に背を向けて、家へと足を向けた。

 

 さっさと片付けてSAOにログインしないとな。約束もしてる事だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い! 遅くなった!」

「そうか? たったの6分だろ」

「それでも遅れたのは変わりないだろ。スマン」

「いいっていいって。行こうぜ、今日は普通に狩りでいいか?」

「おう」

「………なんかいいことでもあったのか?」

「あったあった。今ならボスも1人で勝てる」

「それは言い過ぎだろ……」

 

 アインクラッド第8層。転位門がある町から少し離れた場所にある遺跡の前で、フレンドと待ち合わせをしていたが、思っていたより掃除に時間をくってしまい遅れた。軽く詫びて中に入る。

 

 本当なら家に帰って、おじさんに言われた通り家を軽く片付けてさあSAOだ! ……だったんだが、散らかり具合が予想より酷かった為に手間がかかった。書斎の汚さときたらもうヤバいって言葉が優しいぐらいヤバい。

 

「“アイン”が上機嫌って珍しいよな」

「お前の中の俺はどうなってるんだよ。え?」

 

 約束して待ち合わせたコイツは“キリト”。勿論アバターネームなので本名じゃない。最前線探索中で偶然知り合っただけの関係だったが、最近はフレンドの中でも一番仲がいい相棒だ。身軽なくせして重い剣を軽々と振り回す片手剣使い、ゲームセンスが人の何倍もある気さくな奴。背中を預けられる程度にはコイツを信用している。

 

 “アイン”は俺のアバターネームな。ドイツ語で1を意味するこれを選んだのはβテスター千人いる中で、俺が最初に選ばれたからだ。IDが0と1だったのを見た時は少し嬉しかった。

 

「で、何があったんだよ」

「秘密。インドアなお前にはまだまだ縁遠い事だと言っておこう」

「うるせえ」

 

 出会いが無いだけで、中身イケメンなキリトは直ぐに女が出来ることだろう。中身がいい奴は容姿もいいと相場が決まっている。まぁ俺の勝手な妄想なんだけどな。

 

 右手を軽く縦に振ってウインドウを開く。最後にもう一度装備とアイテムを確認して、装備を取り出して閉じた。

 

「お、今日は槍か」

「今日も槍だ」

「この間は片手剣だったじゃん。その前は短剣だったし」

「その時だけだろうが、俺は槍使いだ」

 

 キリトが片手剣を使うのに対して、俺は槍を使っている。使いやすかったからというのもあるし、性に合っている気がした。一通り武器を試してみたが、やっぱり槍が一番だな。ただ、これだけたくさんの武器があるのに1つだけしか使わないのは勿体ない気がするので、偶に別の武器を使ってみたりする。それがキリトが言う片手剣だったり短剣だったり。斧やメイスは重たそうなので却下した。

 

 複数の武器を扱うことは、攻略を考えると実に非効率的だ。スキルは使い込んだ分だけ上昇していく。一つの武器を極めていくのと、幾つかの武器を半端に使うのでは想像するよりも大きな差がある。スキルの関係もある。結局のところ戦闘中は1つの武器しか使えないのだから。

 

まぁそこはプレイヤースキルでカバーだ。幸い、俺はおじさんに色々と教えてもらってるからな。リアルの経験がそのまま活かせるのもVRMMORPGの特徴と言える。

 

「準備はできてるかー?」

「おう」

「そうか、なら――」

 

 俺は腰から投擲用ナイフを、キリトは袖からピックを取り出してお互いの背後に向かって投げる。ナイフとピックは何かに命中し、人では発せないような声とガラスが砕ける音が遺跡に響いた。

 

 暢気に話してはいたが、ここは既にダンジョンの中だ。当然のごとく敵がウヨウヨしている。索敵スキルを磨いていた俺達だからこそ、囲まれる前に気付くことが出来た。

 

「――狩りの時間といこう」

「死ぬなよアイン、復活アイテム使うのとか面倒だし金がかかる」

「当たり前だろ。折角のドロップを無駄にはしねえよ」

 

 俺達は自信の獲物を構えて、鋭い眼を光らせるモンスター達の群れに飛び込んだ。

 




 長々とルビを振った部分がありましたが、どうやら一度にルビを触れる文字数が決まっているようでして………不格好ですがご勘弁ください。
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