双槍銃士   作:トマトしるこ

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トマトしるこです

いよいよって感じですね。


phase 31 掃討作戦1

決行当日。

 

昨晩の内に準備を終えていた俺達は起きてすぐに宿を出た。空がやっと明るみを帯びてきた、そんな時間に。

 

どこかのギルドと合流したりはせず、そのまま目的地まで直行する。転移門を通り、主街区を抜けて街道を歩き、目印の大木から道を逸れて、険しい山脈へと脚を向けた。

 

「……」

 

会話は無かった。今日他人の声を聞いたのは朝のおはようと転移の合言葉だけ。それ以外はただ脚を動かした。フィールドモンスターはうろうろと歩いているが俺達を避けている。フィリアが合成した魔除けのポーションを全員が飲んで無駄な戦闘を避けているからだ。周囲への警戒は怠らないが、気持ちとしては何よりもこれからの戦闘に集中したい、だろう。

 

笑う棺桶掃討作戦。

 

アルゴからの個人的依頼を受けた俺が、ヒースクリフに持ち寄って企画された。いつの間にか話が大きくなっていったが、今後の攻略進捗を左右しかねない大事な日。

 

ボス戦とは違う、プレイヤー同士の、アインクラッドにおける初めての戦争。ああ、そうだ、戦争だ。これがしっくりくる。主義主張の違う人間同士が武器を持ち寄って、負ければ死が待つ戦い。社会に対して警鐘を鳴らすテロではないのだ。

 

これは戦争だ。プレイヤー同士の、ギルドとギルドの、攻略組と犯罪者の。

 

俺と、リーダーの。

 

大勢のゲストに囲まれた、あの日の続き。今度は躊躇わない。見つけ次第、殺してやる。

 

「なあアイン」

「ん?」

 

脚が草を踏む音に混じって、キリトが俺を呼ぶ。

 

「帰ったらどうする」

「それは死亡フラグだから止めろ」

 

全員でずっこける。当の本人はえ? って顔してるのがまたムカついた。お前みたいな一級フラグ建築士がそんなこと言ったら絶対実現するから止めろまじで。

 

「話題を変えてくれ」

「そうだなぁ……酒飲んだことあるか?」

「酒? いっつも飲んでるじゃねえか」

「そっちじゃなくてだな」

「ああ、現実の酒のことか? 飲みたいのか?」

「多少は」

「あるぞ」

「おお、どんな味するんだ?」

「味ねぇ」

「ちょっと、未成年でしょうが」

 

突拍子もない酒の話題に流石のシノンもツッコミを入れる。アスナも似たような表情だ。フィリアは逆に俺と一緒に飲んでいたので気まずそうだな。幸い最後尾にいるので顔を見られていないが。

 

因みに日本に来てからは飲んでいない。法律で駄目と定められているし、何より中学生じゃ買えなかった。おじさんも家で飲むことはないからストックも無いし、詩乃はこんな感じなので当然詩乃のお母さんもくれなかった。たまーに、たまーーーにだが無性に飲みたくなる時は辛かった。

 

SAOの酒は酒じゃなくてジュースだ、ノンアルコールのカクテルだ。ちっとも酔えないし、あのアルコール独特のカッとなる感覚は無い。ゲームに年齢制限は設けられていないので当然と言えば当然なんだけどさぁ。倫理コード解除とかあるなら酒も何とか出来ただろ絶対。くそったれ茅場め、許さん。

 

「お前が言うから思いだしちゃったじゃねえかこの野郎! 一体俺がどれだけ我慢してきたと思ってやがる!」

「ふぅん」

「あっ、今の忘れてくださいシノンさん嘘です。キリト、僕ちょびっとしか飲んだこと無いんです」

「えー? 教えてくれるくらいなら良いじゃないか」

「キリト君?」

「すみません何も聞いてませんジュース大好き」

「あははっ」

 

詩乃もそうだが、アスナも真面目に生きてきたんだろうな。親のビール舐めたりとかしないのか? なんか周りのクラスメイトはビール美味しいとかカクテル飲みやすいとか平気で話してたぞ? 皆男子だったけどさ。女子ってのはいっつもこうだ。

 

その点、キリトはやっぱこっち側だよな。そりゃ気になるだろ普通。あれだろ、親が晩酌してるのいっつも横で見てんだろ? つまみ片手に美味そうにジョッキ傾けてんだろ?

 

そもそも駄目って言われている事は駄目だってわかるけど、それをやった時の背徳感とスリルが良いんじゃないか。

 

「てかフィリアだって飲んでるからな! 俺と一緒にウイスキー飲んでたからな!」

「ちょ!」

「ユウ、フィリアがそんなことするわけないじゃない」

「いやいや、今ちょ! って言ったから! すっげぇ気まずい顔してるから!」

「どうでもいいのよ。あなたが飲んでる事が問題」

「フィリアさんめっちゃ後ろでガッツポーズしてるけど!」

 

おのれ妹め…! 一人だけ逃げきるつもりか!

 

何か策は無いかと思考を巡らせているとシノンが詰め寄って両肩をがっしりと掴んできた。ダメージ判定が入らないギリギリの力加減でちょっと痛い。にこりと笑っているが表情は笑ってない、雰囲気は鬼、背後には阿修羅。

 

「あなたは何人?」

「…日本人です」

「お酒と煙草は?」

「…二十歳からです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか」

 

キリトの何気ない一言で緊張がほぐれた俺達はいつも通りに戻った。ガッチガチじゃあ実力は出しきれないからな、キリトなりの気遣いだったのかもしれない。何にせよお手柄だった。俺は怖い思いをしただけ損した。

 

集合場所には既に俺達以外の全員が集合していた。途中遊びながらだったから少し予定より遅れてしまったようだ。作戦開始には間に合っているので問題ないだろう。

 

「では、行こうか」

 

そう言うと、血盟騎士団の幹部が武器を抜いて先頭を歩きだした。それに従う様に他の面子が歩きはじめる。後は事前に決められた通りに隊列を組んで洞窟へと入っていく。

 

隊列と言っても軍隊の様にきっちりと縦横人数揃えて行進するわけじゃない。血盟騎士団を先頭にして、聖竜連合が殿。俺達中小ギルド三つは人数が少ない反面、群としての機動力がある故、中央に入って前後どちらにも対応できるという並びだ。横から分断されたとしても、大ギルドが分断されなければ問題は無い。五人というのは都合がいい数字だった。

 

中の洞窟は結構広い。その上途中に分岐点が多く、人が優に隠れられる岩がごろごろと転がっている。奇襲には持って来いの地形。狙われる側としては堪ったもんじゃない。

 

別れ道では迷わず左を選ぶ。迷路で迷う時は壁沿いに歩く、というやり方があるが実際のダンジョン攻略では結構優れた方法でもあるからだ。城や街などは点対称に作られることが多いが、こういった洞窟は自然物でマッピングが進まなければ全体像が掴めない。小人数なら気ままに進むところだが、生憎と今回は五十を越える大所帯なので、この方法をとった。

 

二手に分かれるのは自殺行為なので、当然しない。

 

天井はそこそこ低く、思い切りジャンプすれば簡単に手が届く、生身なら難しいがこのアバターなら余裕といった程度。音も良く響く。騎士甲冑をや防御力高めな鎧を着こんだ奴が多いパーティなので、さっきからガッシャガッシャと五月蠅いのだ。とっくにバレているだろう。お陰で数十分歩き続けたが一向にラフコフのプレイヤーと遭遇しなかった。

 

「アインよぉ、どう思う?」

 

クラインが少し歩調を早めて俺の横にくっついてきた。険しい表情は崩していないが、早速疲れが出ているようだ。それもそうだ、緊張は長持ちしない。それを無理矢理にでも糸を張り続ければ体力がどんどん減っていく。

 

今は会話すべきじゃない。そっちに集中してしまい奇襲を許してしまう。これだけ静かなら当然周りの連中にも聞こえるだろうし、そっちに耳を傾けてしまう。

 

「罠」

 

良くないと分かっていつつも返事する。少しぐらいは緊張をほぐしておかないといざという時に身体が動かなくなるのは身をもって体験してきた。

 

なるたけ気を散らさないように、小声で返した。

 

「結構深くまで来ている。洞窟の構造次第じゃあ後ろから回り込まれる事もあるかもしれない」

「だな、岩もデカイのがゴロゴロしてるしよ」

「ああ。気をつけろよ」

 

それを最後にクラインは元の位置に戻るべく歩調を落とした。

 

やはりと言うべきか、地形は最悪だな。コイツらが根城にするぐらいだ、仕掛けあり罠ありの攻めづらい場所ということは想像していたが、これはこれでかなりやりにくい。攻め難く護りやすい。あの男らしい、ッ実にいやらしい根城だ。

 

はぁ。と溜め息をついた。

 

ばたり、と前方にいたプレイヤーがいきなり倒れた。

 

倒れたと思ったら彼のアバターがラグを起こし始める。

 

一秒後、青一色に染まり砕けた。つまり死んだ。

 

それと同時にキリトが剣を抜いて虚空に振り下ろす。何も無い場所で剣が止まったかと思えば、瞬きするとそこには小柄な男がキリトの剣を受け止めていた。

 

全員がぞっとした。何が起きたのか理解できなかったが、流石は歴戦の猛者。一秒かかったがしっかりと切り替えれた様子。

 

「捕えろ!」

 

誰かの号令。言われなくともキリトがそうしてるよ。

 

鍔迫り合いを強引に押し切ったキリトの一撃は重たく、武器を弾くでは止まらず深く襲撃者の身体を斬りつけた。ガクンと減ったHPバーはイエローに到達。勢いを殺せなかった襲撃者は尻餅をつき、その隙を狙って近くにいたプレイヤーがロープを用いて縛りあげた。同時にフィリアが鎮静剤を首筋に打ち込み、睡眠状態に入った襲撃者は一言も発することなく沈んだ。

 

ふぅ、とキリトの溜め息がよく聞こえる。コイツは索敵スキルがあったから気付けたんだろう。そして恐らく襲撃者はかなりの隠蔽スキル持ちと見た。どこかの岩に隠れて狙ったんだ。

 

誰も、一言も発さない。一人捕まえたが、いきなり一人死んだ。音も無くいきなり俺の前に居たプレイヤーは死んだんだ。かなりの腕前、鮮やか過ぎる手口に俺すらも恐怖する。

 

Poh以外は大したことないと思っていたが認識を改めるべきか。中東に居た頃肌で感じていたヒリつく痺れが俺を支配している。

 

間違いなく、連中はプロだ。

 

「で、どうする?」

 

剣を収めたキリトが全員へ問いかける。捕えろと言われたから縄で縛って眠らせたのだが、ここからどうすべきか。指示を出した血盟騎士団の幹部は悩んだ。

 

予定では倒しながら進む、或いは集団での襲撃を捌き、まとめて黒鉄宮送りにする手筈だった。だが襲って来たのは一人。しかもこちらは一人殺されている。放置しておけば仲間に回収されて再び襲ってくるのは間違いない。だが、連れ回したところで荷物になるのは明らか。やはり隙を見て開放されて殺しに来るだろう。

 

何よりも簡単に殺しに来た事が全員の心を乱していた。まず殺されるとは考えておらず、精々人質に取られるかデバフで動きを封じられるか、それぐらいにしか考えていなかったのだ。俺達以外が。

 

苦い顔をした幹部。聖竜連合の隊長もまたそうだった。

 

「時間の無駄だな」

「アイン!」

 

そう判断した俺は槍を襲撃者の頭に突き刺した。非難の声が聞こえるが無視、槍を捩じり抉りより深く突き立て、岩盤まで貫通した瞬間、襲撃者はHP全損により死亡した。

 

たとえ半分近く残っていようが、防具もついてない急所ならあっという間だ。それに、隠蔽スキルを使って不意打ちするぐらいだ、身軽さを優先した結果硬さが足りないのは常識。俺自身もそうだしな。

 

「今止まったら次が来る。早く行くぞ」

「貴様!」

「んだよ、こういう場合を考えるのがアンタの仕事だったんだろ? ヒースクリフからそう言われたんじゃなかったのか? それが出来てないからだろ。話している間にまたおたくのプレイヤーが暗殺されても文句が出ないなら、俺はこのままでもいいぜ」

「ぐっ…!」

 

みんな分かってるんだ、今話し合う事が拙い事ぐらい。でも殺すという選択肢は選べない。染みついた倫理観や罪悪を背負いたくない自分可愛さを誰しもが持っている。

 

俺には無い。だから出来る。殺せるとも。善良な人間なら確かに躊躇うが、コイツらは今まで迷惑かけて時には人殺しをやってきた犯罪者だ。何を迷う事がある? いいや、無いね。だから俺は今まで生き残って来た。

 

「殺したいわけじゃない、ただ生き延びたいだけだ。アンタらもそうだろ?」

「それは…」

「じゃあ覚悟決めろ」

 

行こうぜ、と幹部の男を促す。納得しない表情のまま、男は踵を返してまた歩き始めた。

 

隣の相棒はやはり微妙な顔。まぁ、昨日の今日で覚悟を決めろって言うのが酷か。

 

「…腹くくったつもりだったんだけどな、やっぱ直で見ると辛いな。どんだけ悪人でも」

「キリト」

「大丈夫。仲間は守る、皆で生きて帰る」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

困った。

 

何故かと言うと、はぐれた。俺一人がじゃなくて全員が笑う棺桶の罠に見事に嵌まってしまった。

 

待ち伏せ、横から強襲、前後の挟撃、岩陰からの伏兵、仕掛けられたトラップの数々…。それらを組み合わせて休む間もなく走らされ、時には分断され、気付けばパーティはおろかシノン達とまではぐれる始末。洞窟はどうやら下にも広がっているらしく、床が開いて下の階に落とされてしまった。

 

俺が最後に見た限りでは四人とも揃っていたが、あの調子だとまた誰かトラップに引っかかりそうだな。しかしフィリアのパンツが見れたので満足である。

 

さて。

 

洞窟の作りはさして変わりは無い。上を見上げても落ちてきた穴は塞がってしまい、届く距離ではあるが戻ることはできない。

 

道は三つ。一先ず進行方向にある方の竪穴へ脚を向けた。

 

マップを開く。自分が歩いてきた道と、別れ道があった場所を見るからに、恐らくこの洞窟は行き止まりが殆ど無い可能性が高い。どこかしらで別の道と合流でき、最終的にはどの道を通っても最深部まで辿りつけるような、そんなイメージ。事実として今まで一度も壁に当たったことは無く進み続けてきた。運がいいでは説得力に欠ける距離を、である。

 

勘は良い方だ、だったら進むうちにきっと合流できる。それに、音がよく響く洞窟だから戦闘音のする方へ進めば問題ないはずだ。

 

メールは頼りにならないし、コール機能も向こうが危険である。自分の足で何とかするか。

 

こういう時に目印になる様なものを残せないのはSAOの厳しい所だ。現実なら岩に何かメッセージを書き残したり出来るが、ここでそんなことをしても傷はつかないし、パン屑を撒いたところで耐久値が無くなれば勝手に消滅する。マッピング機能にはマーカーなんて機能も無い

 

「はぁ」

 

溜め息が漏れるが、無い物ねだりをしても仕方が無い。結局はある物で何とかするしかないのだから。

 

しっかし誰とも会わないな。味方も敵も、影すらない。今日は戦闘らしい戦闘をしてない、せめてPohとやりあう前に準備運動ぐらいはしておきたいんだが。

 

おっと、噂をすれば。

 

「ひひ」

 

男が三人。短剣使いが二人と、斧使いが一人。短剣使いの内一人は盾を構えており、すばしっこさと防御を両立したスタイルか。斧使いは甲冑を着こんでいる。

 

斧か、珍しい。ラフコフは幹部が軽量で取り回しやすい武器を使ってるし、隠蔽を使った潜入とか奇襲を好むギルドだからな、ああいうあからさまな盾役がいるとは思ってなかった。居たところでさして変わりは無い。

 

三対一? 大いに結構。

 

槍を抜いて駆ける。正面には斧。斜め後ろに盾持ち。短剣は斧の後ろに隠れつつ距離を詰めてきた。

 

斧が腕を振り上げ、それと同時に武器が光る。ソードスキルだ。少しタイミングをずらして盾持ちもソードスキルを発動させた。波状攻撃か。

 

斧は上段からの振り下ろしをバックステップで回避。それを読んでいた盾持ちが突進技で横から仕掛けてきた。そこへ斧の二段目攻撃が。さらに斧の背後から小瓶がふわりと舞いあがる。丁度俺の背後に落下する絶妙な力加減。間違いなく、短剣の奴がこれ以上下がらせないように投擲したアイテムだ。

 

下がれば謎の小瓶、横は盾持ちの突進技と腰だめに構えた斧の二段目、恐らく飛んでも斧の三段目が待っている。

 

小瓶は恐らくデバフ系アイテムだ。十中八九、麻痺毒だろう。これは何としても回避しなければならない。同じく盾持ちの武器にも何かしらのデバフが付加されているはず。これも回避必須。そこで逃げた先に斧の強力なソードスキルで叩く、か。スタンでも貰ったら即死かな。

 

硬直が発生するソードスキルを組み合わせたコンビプレイだ。タイミングをずらしているので硬直の隙を狙われることもないし、短剣がまだフリーなのでカバーも入れる、と。一定のロジックで判断するモンスターとは違った、対人技。よく考えられた、思考錯誤の末のコンビネーション。

 

それでも、甘い。

 

「ぐぇ」

 

横から突進してきた盾持ちの顔面に石突を叩き込む。カエルのような鳴き声を発した盾持ちはソードスキルのキャンセルを余儀なくされ、そいつの胸倉を掴んで上に放り投げて小瓶にブチ当てた。電気の様なエフェクトが迸ると、盾持ちの身体が痙攣して動かなくなり、その姿勢のまま滞空して地面に叩きつけられた。

 

斧の二段目は予想通りの横薙ぎ、そして読んだ通りに三段目が待ち構えている。片手で持っていた斧を両手で握りしめ、渾身の一撃を上段から叩き込むソードスキルか。

 

滞空したお陰で二段目をやり過ごした盾持ちは、動けないまま地面に叩きつけられるとどうなる?

 

「止めろ、やめろーーーー!」

「ひいいいいい!」

 

体重と武器重量とソードスキル、三点セットが漏れなくついてくる。当然、HPは全損だ。まず一人。

 

振り下ろした体制のまま硬直する斧に槍を構えて肉薄。着込んだ鎧の繋ぎ目…兜と甲冑の隙間に槍を指し込む。堅い手応えを柄から感じ取り、そのまま更に力を込めて突き、喉を貫通した槍の穂先が姿を見せた。順手で握っていた右手を右から押しこむように持ちかえ、腰をひねって全力で振り抜く。

 

斧の首と兜が宙を舞う。頭部欠損は致命傷判定が入る。つまりは死亡。二人目。

 

「……はは」

 

壁を失った短剣は乾いた笑いを零した。決して弱い奴らではなかったはずなのに、一瞬で二人も死んだ。しかも自身のあるコンビネーションを仕掛けて。信じたくない気持ちは分からんことも無いが、今それをやってはいけない。

 

麻痺毒を塗った投げナイフが短剣の腹と右腕に刺さる。レベルの高いそれは命中すれば確実に行動不能にするフィリア手製のえげつない薬物。盾持ち同様に動けなくなった短剣は膝から崩れ落ちた。

 

カツ、カツ、とブーツの音をわざと響かせながらじわじわと近づく。口では何か命乞いを言っている様な気がするが、生憎と雑音を拾う耳は持っていないので聞こえなかった。

 

逆手に握った槍を振りかぶり、垂直に振り下ろす。心臓を捉えた槍をぐりぐりと捩じりながらダメージを与え、数秒後にはポリゴンになって砕けて逝った。

 

「ふぅ」

 

雑魚とはいえ気は抜けそうにないな。慎重に進むとしよう。

 

こっちからコイツら来てたけど、道合ってるのかな……。

 

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