脇役になりたくないTS転生者   作:有機栽培茶

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DC-ST-1【企み】

『貴方は私たちの言うとおりにしていればいいの』

 

 

 私は■■で、■■は私だ。

 しかし両親が望んだのは私ではなく、■■()と言う名前の人形だけだった。

 

 ■■()に自由意志はなく、ただ両親に言われるがままに生き続けた。

 

 進路、交友関係、趣味思考、就職先。

 全ては親が決め、■■()はそれに従い続けた。

 

 それを、私は暗闇の中、何をすることもなく眺めているだけだった。

 

 何をすることもできなかった。

 

 自由を求めることも、幸福を求めることも、考えることすらできなかった。

 

 幼い頃から両親に鍵をかけられ、■■()と言う鳥籠の中に閉じ込められた()は暗闇の中、じっと眺めていることしかできなかった。

 

 両親が笑っている。

 

 他人が笑っている。

 

 ■■()と言う人形の上に成り立つ幸福を謳歌している。

 

 しかし私に自由は存在せず、幸福など、かけらも存在しなかった。

 皆が皆、()ではなく、■■(人形)を求めた。

 誰も()を見てくれなかった。

 

 いつまで経っても(死んでも)、私は囚われたままだった。

 

 

 

 

 だから、壊した。

 

 全て、壊した。

 

 

 

 

 自由だ。

 縛るものは何もない。

 初めからこうすれば良かった。

 

 幸せになる方法を見つけた私を止めることはもう誰にもできない。何度縛られたって必ず自由を手に入れる。最後に笑うのは私だけでいい。

 

 幸福だ。

 

 今度は私が笑う番なのだ。

 

 

 

 

 そのはずだったのに

 

 

 

『兄さん』

 

 

 

 

 

 そんな目で()を見ないでくれ。

 

 

 

 

 

 

10/23/22:45/艦橋

 

 

「おい、アルハイム。」

「……ん?ああ、なんですかクラウンスレイヤー。」

「よくこんな所で呆けられるな。」

「何かあってもあなたが守ってくれるでしょう?」

「……抜かせ。」

 

 

 2人揃って辺りを血で塗りたくられたこの都市の中央区画である艦橋を、“同士”達に手を振り返しながら歩きます。まさに戦勝ムード。浮かれっぱなしと言った所でしょう。

 

 長年の支配からの解放。まあ浮かれる気持ちもわかりますけど自重はしてほしいですね。

 

 そして私の隣を歩く彼女の名前は“クラウンスレイヤー”。

 地下通路で私たちを襲撃──に見せかけた情報交換の際にいた橙の髪色のループスの少女です。あの時は壁に私を叩きつけた上、私ごと壁を破壊するなんて酷いことをしてくれましたが……この照れ顔を見たら全てが許せますね。可愛い女の子が恥ずかしがってマフラーとかで顔を隠すのいいよね。

 

 あ、そうそう。

 お久しぶりですみなさん。アルハイムです。

 

 何年振りでしょうかね。あれから色々なことがありました。戦場から抜け出した脱走兵達と共に傭兵稼業を営んだり、一緒に仕事をしたサルカズ達と共にラテラーノの行商人を襲撃したり、化け物賞金稼ぎに殺されそうになったり。まあ、色々あったのです。

 

 そしてたどり着いたこの地。クレアスノダール。

 感染者への差別が激しく、怨みの積り重なったこの地はまさに私にとっての楽園の種。少しテコ入れしてあげればご覧の通り。あっという間に私好みに芽吹いてくれた。

 

 響き渡る悲鳴に溢れ出る恐怖と狂気。

 壊された平穏と産み落とされた絶望。

 

 素晴らしいとは思いませんか?

 

 絶景だとは思いませんか?

 

 

 んえ?思わない?あ……そう……。

 まあいいですよ?好みは人それぞれ。偶々私と貴方の趣味嗜好が合わなかっただけですから。わかってもらえなくたっていいんです。

 

 

 ……私だって努力したんですけどねぇ?数年前から自治隊に潜り込んで信用を得たり、めんどくさい貴族の豚どもの機嫌を伺ったり、変装のために息苦しいサラシを巻いたり……結構なストレスだったんですよ?

 今日この時のためと思えば、まあ耐えれましたが。

 

 なに?「無乳にサラシは必要ない」ですって?

 

 な……あ……!

 ゆ、許されませんよ!その発言は!流石に!

 こほんっ!いくら無乳だと言っても、そこらの男性よりはあるのです。舐めないでください?ちゃんと揉んだら柔らかいんです。

 

 ……流石に昔あったサルカズ傭兵の方の胸筋には劣りますが…

 

 ……く、クラウンスレイヤーめっ!己の父を見せつけるかのように私の横に立ちやがって!揉んでやろうか!舐め回してやろうか!

 

 

「やめろ」

「いてっ」

 

 

 叩かれました。

 まだ何もしてないのに…

 

 

「ところでリスタのやつはどうした?予定では占領後奴等の部隊と共にお前は帰還する手筈だったが。」

 

 

 さすがはクラウンスレイヤー。危機察知能力とスルースキルが高い。側から見れば貴方が急に指導者である私の頭をぶっ叩き、そのまま何事もなかったかのように話を変えるという完全な理不尽行動にしか映らないはずですがこんなにも堂々としているなんて。

 

 ……いや、CiRF結成当初からの彼女にこのような扱いを受けるのは、まあ、わかります。分かりたくないですけど。でも!ほら!そこら辺にいる貴方達は止めてくれたっていいんじゃないですか!?そこの貴方なんて確か数ヶ月前に入った新参中の新参だったはずでしょう!?何故そんな『なんだ、いつものことか。』みたいな顔しているんですか!?

 

 はぁ…初めの頃乳を揉まれてアワアワしていた可愛い少女はどこ知ったのでしょう。今では恩人と慕っていた私をこんな雑に扱う始末。私は悲しい。

 

 ちなみに私の性的嗜好は両親に男として育てられたためか、前世のまま可愛いおにゃのこに向けられています。つまり、合法的*1に可愛い子とお触りできるというわけですね!*2

 

 それに皆さん。私の性的嗜好が女性、ということはどういうことかわかりますか?

 

 そう、よくあるTS転生ものの様にメス堕ちする心配がないということです!ふはははは!残念でしたね!私のメス堕ちを期待していた諸君!そんなことは天災が移動都市に直撃してもありえないのですよ!

 

 くくく、たまにはあのクソ親も役に立つ、というわけです。

 

 っと、いい加減質問に答えてあげましょうか。『こいつまた変なこと考えてるな』って顔してますし。

 

 

「リスタのことでしたっけ?彼女は死にました。いや、殺したという方が正しいか」

「…なに?」

「裏切りです。彼女どうやら初めから私を裏切るつもりだったようで。復讐が済んだ瞬間にクロスボウを全員から向けられましたよ。酷いものです」

「……やはり非感染者は信用できない。」

「ですね」

 

 

 すっかり私の話を鵜呑みにして非感染者への憎しみに拳を振るわせるクラウンスレイヤー。可愛いですね。基本的にCiRFの皆さんは私に盲信的ですので扱いやすくて助かります。本当に、可愛いですね。

 

 

「しかしよく無事だったな」

「ええ、まあ万が一に備えはあったので。それにアインにも護衛として付いてきてもらっていましたし……もしかして心配してくれました?」

「いや、全然」

「まーたまた。そんなこと言って実は……その顔はマジですね」

 

 

 済ました顔で私の隣を歩く彼女とは数年間もの付き合いです。そのせいか少々私への扱いが雑。少々どころではないかもしれませんが。

 

 いや、私に崇拝に近い感情を向ける人が多いCiRFの皆さんの中では、このくらいの接し方が私としてはちょうど良いのですが……もう少し丁寧な扱いをしてくれても良いのでは?と思ってしまいます。

 

 だって私リーダーですよ?

 

 ちなみに我々CiRFには彼女を含め、四人の幹部がいます。皆が皆、私という“先導者”を盲信する可愛い子羊達です。これほどの大世帯を私1人で統率するのは難しいですからね。中間管理職は必要です。

 

 あ、いえ。今はもう3人ですね。

 彼女はクレアスノダール駐屯軍内部スパイとして活動していたので他の幹部との接点はありませんでしたが、非感染者部隊統率のため幹部ということにしていたんでした。

 

 つまり幹部を1人無駄遣いしてしまったわけですが……まあ必要な犠牲だった、と言うわけで。

 

 

「そういえばレティシアはどうなりました?見たところ彼女達の担当する区画がまだ騒がしいようですが」

 

 

 アーツによって傍受した通信回線からは未だ騒音が聞こえます。この様子だと彼女の担当区画、エルド区はまだ陥落していない様ですね。“()()()”が堕ちていないというのは、あまりよろしくない。

 

 

「艦橋付近の駐屯軍の生き残りや有権者の私兵達が立てこもっている様で少し手こずっている。今はお前より先に帰還したアインが部下達を連れて向かったはずだ。私もここら一帯の残党の制圧が完了したら向かう」

「なるほど、残党が。ところで()()()はしっかり確保したのですか?」

 

 

 その言葉に彼女の肩が震える。

 もちろん。ここで言った“お客様”という言葉はエンペラー達を示すものではない。

 

 

「……すまない。逃してしまった。」

 

 

 やっぱり、そうですよね。

 

 

「……私たちが何故昨日、あの時間に蜂起を起こしたのかご存知で?」

「あ、ああ。この国の有権者がこの都市に来て、昨日が都市を離れる日だったからだ。そして私達はそれを人質に…」

「ええ、そうです。それがこの計画の肝……それを貴方は逃してしまった。」

「だ、だが!この都市が動き続けている限り奴らが逃げることは!」

「それがねぇ……そうでもないんですよね」

 

 

 とくに、レティシア……幹部の1人である彼女の担当していたエルド区が落ちていないのが非常にまずい。

 

 皆さんは移動都市が天災を回避する方法をご存知でしょうか?まあ知ってますよね。皆さんご存知の通り、天災の出現を天災トランスポーターを使って予測し、事前にその範囲外に移動するのです。

 

 ですが、その際、移動都市は自らの重量を減らし速度を早めるために分離します。

 

規模によってはしないものもありますが、大体の移動都市はその機能が備わっています。

 

 勿論、骨董品同然の中規模移動都市クレアスノダールも例外ではありません。

 

 この中央制御区画こと艦橋を中心に『ミドル区』、『ドルトン区』、『レイル区』、そして『エルド区』。それらが避難時に分離が可能な区画となっています。そのうちミドル、ドルトン、レイルは我々の手に堕ちています。

 

 しかし、残るエルド区のみは未だ非感染者達の手に残っています。そして最悪なことに、エルド区は非常時に身分の高いもの達が脱出するために作られた区画。小型の武装艦といっても名劣りしない規模の兵装、そして生き延びるための物資が充実しています。

 

 勿論そこに逃げ込んだ駐屯兵は分離の方法は心得ているでしょう。逃げられるのも時間の問題です。

 

 

「不味い、のか」

「不味いですね」

 

 

 さらに言えばエルド区はクレアスノダールの進行方向とは逆位置、後方に存在するため、連結を解除したが最後、そのままさようなら、となります。

 

 

「……アインだけじゃ不安だ。私も急ごう」

 

 

 人質候補のお偉いさん方の殆どは肥満体型の一言で言って豚どもです。連れている護衛団もそれ相応のもの。

 

 しかしその中で1人、注意すべき人物がいます。

 彼は元ウルサス正規軍で大きな功績を立てたとかで爵位をもらった人物です。そんな人物が率いる私兵の練度は他の豚どもとは比べ物にならない。そして、彼自身も。

 

 ええ、リスタ小隊なんて比べ物になりません。

 それに、エンペラー達がエルド区残党と武器庫の通信機を通じて会話していたのもしっかりと傍受済みです。彼らも残党達に加わることになるでしょう。

 

 アイン達は幹部とは言えまだ未熟。

 年もまだ子供と言える年齢です。ですので彼らには少し荷が重いかもしれません。彼女が心配するのもわかります。

 

 ですが──

 

 

「ダメですよ。貴方にはまだやってもらうことがありますし。」

「なっ!まさかお前が行くつもりか!?大将首はじっとしてろ!中央で踏ん反り返っていろ!お前みたいな柔な奴が行ったら無事ではすまないだろ!」

「貴方、私のことどう思ってるんですか。」

 

 

 そう言いながら私は前を、少し前の瓦礫を見つめます。

 

 

「ほら。仕事はちゃんと最後までしないといけませんでしょう?」

 

 

 その時、瓦礫の影から1人のボロ衣を纏った男が飛び出て、そしてその手に持ったクロスボウを私に向けて引き金を引いた。

 

 

「死にやがれフェイスレス!!」

 

 

 放たれたボルトは真っ直ぐに射出され、私に向けて空気を切りながら飛び込んできて…そして不自然な場所で火花をあげて軌道を変えました。

 

 

「なに!?」

「っ!生き残りか!」

「次は外さん!」

 

 

 再び矢をつがえ、放つ。

 

 しかしまたもや矢は私には届かず、何かに弾かれたように火花を散らして軌道を変えます。リスタが放った弾丸と同じように。ええ、そうです。私に遠距離武器は効きません。私の周囲を舞う源石の欠片が私を守ってくれるのですから。流石にサンクタ達が扱う大型の銃火器ならわかりませんがね。

 

 

「くそっ!化け物が!」

 

 

 ですので、彼が軍刀片手に突っ込んできたのは正しく最善の判断と言えるでしょう。

 あくまで、全ての選択肢が“詰みに向かう中での”最善の選択、という意味でですけどね。

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 

 リスタさんの遺物、拳銃に残った最後の弾丸で彼の肩を撃ち抜きます。その痛みからか男性は軍刀を手から落とし、地面に倒れました。

 その隙を付いてそのまま彼の髪を引っ張り、晒された腹部に拳を叩きつける。これで一丁上がり、です。

 

 

「ね?仕事は最後までやり切らないと。」

「……すまない。」

「構いません。次から気をつければいいのですから。」

「ま、アイン君とレティシアさんを信じてあげましょう。私たちは、私たちのやるべきことを成しましょう。」

 

 

 おやおや、少ししょぼんとしてしまいましたね。責めるつもりは無かったのですが…

 

 

「そうだ。これ、要ります?」

「…?い、いや。要らないが。」

「じゃあ他の人にあげましょうか。」

 

 

 そう言って手で支えている、未だ痛みに動くことのできない男性を投げ捨てます。あまり力がないのであまり遠くには飛ばすことはできませんでしたが、それで十分です。

 私たちに敵意を持った、しかもリーダーである私を殺そうとした非感染者なんて“彼ら”にとって()()()()以外何者でもないのですからね。

 

 

「なっ!近寄るな!嫌だ!う、うあああああああ!!」

 

「あはははは!殺せ殺せ!」

「……」

 

 

 ()()()の接待はアイン達に任せましょう。

 仕込みはもう、終わっているのですから。

*1
別に合法ではない。

*2
多分その思考が嫌われる原因。




CiRF幹部‘s
リスタ→最序盤に死亡。やつは四天王の中でも最弱...!!
クラウンスレイヤー(原作キャラ)、アイン(new)、レティシア(new)

レユニオン編以前の話だから自然とオリが増えてしまうのは許して...
ダブチも入れたかったけどこの頃そもそもダブチがダブチじゃなかった頃だろうし...(時系列参考にしているサイトが正しいかは分からない)
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