10/24/01:58 エルド区地上都市部
ゲームをしよう。
それは人々の極楽。
幸せと楽しみを与えてくれるもの。
中でも私はFPSと分類されるものが好きでした。
一人称だからこそ楽しめる非日常感。
迫る殺意に限られた場所、資源で戦う面白さ。
....操り人形であった私が、架空の人形を操るという新鮮な感覚。
それは私の平凡な日常を刺激で色取ってくれました。
「打て!敵の親玉がわざわざ出てきてくれたんだ!丁重におもてなししてやれ!!」
別に、私は前世に何か心残りがあったわけではありません。
確かに、初めて見つけた“娯楽”を楽しみたいとは思っていましたが、それはいわゆる“やり込み要素”。
“私”という物語は
別にあのまま死んで、記憶を失い全くの新しい人生を始めるなり、そのまま脳細胞に記録されたデータとして消えていっても良かったのです。
ですが、今では私をこの世界に転生させてくれた神様には感謝しています。
何せ、こんなにも刺激的で、素晴らしい世界に産まれ直させてくれたのですから。
ま、本当にいるのかは知りませんが。
「あ、ぎゃぁぁぁぁ!?石が!源石が!嫌...d......
「ッ!奴のアーツだ!奴の手に触れられるな!源石に飲まれるぞ!」
あっはははは
楽しい。
すごく、楽しいです。
ボルトの突き刺さる痛みも、鉈で切り裂かれる感触も、アーツで焼かれる衝撃も。
何もかもが新鮮。
かつての戦争でさえこれほどのスリルは楽しめなかった。
「なんで死なねぇんだよこいつ!」
「慌てるな!奴だろうといつかは死ぬはずだ!体制を立て直せ!」
「不味いそっちは!!」
「くそ!一般人を守れ!」
「走れ!」
「嫌だ!死にたくない!」
「落ち着いて!落ち着いて避ッ!?....ぐッ......あ......」
慌てふためく民衆達。
守るべき民の波に飲まれ消えていく可哀想な衛兵。
悲鳴も、怒声も、何もかも。
君たちは.....私をどこまで楽しませてくれるのだろうか。
「来るぞ!」
「盾を構えろ!これ以上の侵入は許されない!」
「くっ!?」
「押し返せ!!」
「あ、っは、ぁ♡」
「ッ!?グレネード!!!!」
密集陣形を取った盾兵の隙間に腕ごと手榴弾を突っ込み、起爆。
体勢を崩した燃え滓達を即座に
さらに爆風に巻き込まれ骨が剥き出しになったこの腕は勿論武器として使える。これはゲームじゃない。現実だ。減るのはHPではなく血肉であり、使えるものはなんでも使える。
「ごぼっ!?あ゛...さざれ゛......!?」
そして何より、彼らは何度でもリスポーンが可能なアバターではない。
一度死んだらそれで終わり。人間だ。
決まった言葉しか話せないNPCではなく、話し合い、交友を持ち、友情を築き、仲間意識を作る。人間だ。
「いっ.....ごぼ....嫌だ、うづな゛あぁぁぁぁあああっぁ!!」
「な!?」
心を持ち、感情を持つ。
他の動植物には無い心が、感情が。
決断を躊躇させる。
できませんよね?仲間を打つなんて非道な真似。
だって、あなた達は人間なのですから。
「しまった!!奴め!俺らを無視して民間人を!」
倒すなら、もちろん逃げ足の早く弱い敵から。
当たり前でしょう?
狙うはパーフェクトゲーム。殲滅率100%。
さあ!行ってみよう!
「イヤァァァァァ!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
パキンッ
あ
「あ〜〜〜〜〜〜..........ゲームオーバー......ですか.....いいところだったんですけどね.....」
惜しかった。
あと少しだったのですけどね。
星三つで評価するなら......精々星二くらいでしょうか。
メインクエストは成功したようですし。
はぁ...全く、この人は。
いつになったら私の期待に応えてくれるのでしょう。
死後くらい私を満足に楽しませてくれてもいいでしょうに。
ま、楽しみは最後まで取っておけってことですかね。
ラスボス役は辛いですよ。
◆
「.....リスタ...小隊長.....?」
仮面の下から現れた顔は、しかし彼らの望むものではなかった。
顔半分が赤黒く光り輝く源石に包まれながらも、その女性を彼らは知っていた。
ミドル区の防衛を担当するリスタ小隊、元小隊長にして、非感染者の身でありながら彼らウルサスを裏切り感染者達に協力した裏切り者。
しかし彼女はすでに故人のはずだ。
彼はその目で見ていた。
彼女がフェイスレスの手によって源石に飲まれ息絶える瞬間を。
しかもあの人外染みた動きはなんだったのか。
明らかに人間のできる動きではなかった。
少なくとも、生前の彼女にはできない動きだった。
そもそも、この遺体を見る限り、感染状況は50%以上。
まともに動ける状態ではなかったはずだ。
ならばあれはなんだったのだろうか。
あんな、まるで操り人形のような......
「.........ぐっ!?」
「ノーマン?」
熱い。
体の奥底に、焼けるような痛みが生じた。
同時に、何かが体内で膨れ上がるような圧迫感。
「???????」
吐き気。目眩。頭痛。
しかしそれらは次第に別の感覚に書き換えられる。
乾きだ。
暑くて、熱くて、喉が渇いて仕方がない。
「あ............か........」
「離れろ!何か....!?お前ら!?」
赤黒いナニカに包まれていく視界の中。
最後に見たものは......
◆
何も見えない。
「アイン!!」
何も聞こえない。
「一体何が!?」
何も感じない。
「正体を表しやがったなこの化け物が!!」
何をするべきか、何をしていたのかさえ思い出せない。
ただ......喉が、渇いていた。
真っ赤な視界。
体が重い。
体が暑い。
僕は..............................誰だ?
◆
私のアーツは、皆さんが思っているほど凄いものではありません。
例えば風。例えば炎。例えば水。
例えば氷。例えば地震。例えば重力。例えば雷。
皆さんが当たり前のように行なっている、源石を介しての自然現象への介入、などといった超常現象は起こせないのです。
私がアーツや源石の存在しない別の世界の転生者だから、なのですかね。
ですが、私を転生させた神様の気まぐれか、単なる偶然か。
私にはできることが一つあります。
それは源石、それ自体を操ること。
私が触れた源石は、私のアーツの一部となるのです。
形も、大きさも、活性化率も自由自在。
少し工夫すれば、リスタちゃんのように操り人形を作ることも可能となります。集中力を要するので今のところ1体が限界ですが。
そんなわけで、大気中源石濃度の高い密室や、源石の溢れかえっている天災直後の現場などは私の独壇場となるわけですね。
それ以外の場所でも体内の源石を利用すれば対処可能ですけど。
自身の活性化率も自由自在。
源石に飲まれて死ぬことはないため寿命も変わらない。
感染者の良いとこどりってわけですね。
結構なチートではありませんか?転生特典って奴ですかね。
そんなわけで、CiRFの皆さんの活性化率を下げて、救世主ごっこをしていたわけですね。
ですが、私は源石の成長を完全に止めてしまったわけではありません。
抑えただけです。
そう、抑えつけただけ。
彼らの体内に宿る源石は、抑制されながらも成長を続けているのです。
レベル上限を迎えてカンストしても、経験値は貯まり続けているようなものですね。
寝る子は育つ。よく言うじゃないですか。
では、その枷を取り外す....つまりレベル上限を取っ払って仕舞えばどうなるでしょうか。
......
はい、正解!
急成長する。そうですね。モン◯ンのランクと同じです。
そんな急成長した源石は、しかし宿主の命を奪うことはありません。
私がそう言う命令を出すからですね。
そんな可愛い源石達は宿主の生命活動を無理矢理維持するため、成長に耐えきれず破損した器官を侵食し、補ってゆきます。
勿論、脳みそさえも。
そうしたら後は簡単。
侵食した源石に私が命令を下せば....なんと言うことでしょう!
あっという間に可愛い
操作するプレイヤーは私一人のため、全員に複雑な命令を出すことはできませんが、単純な命令一つなら可能です。
例えば、目に入った人間を全員殺せ.......とかですね。