脇役になりたくないTS転生者   作:有機栽培茶

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二アールさんもフレイムテイルさんも出ません。何故だ....


カウントダウン

幻想的な光を纏った殺意の飛び交う戦場。

人の命が塵のように消耗されゆくその地にて、その女は、とても美しく、それでいて邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

『よぉ嬢ちゃんあんたも逃げるのか?』

 

『......なんですかあなた』

 

『感染したんだろ?』

 

『.......だとしたらどうするのですか?』

 

『いや何、あんたがこれから何をする気か、気になってな。あんたのその目は感染者になって絶望してる奴の顔じゃない。これから先のことが楽しみで仕方がないって奴の顔だ』

 

 

 

気になるんだ。

いつも張り付けたような笑みを浮かべていたあんたが、どうしてそんな楽しそうに笑うのか。

なあ、一体何をするつもりなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、調子はどうだいリーダーさんよぉ?一丁前にワイングラスなんて掲げちゃってよ。まるで映画の悪役(ヴィラン)みたいだな」

 

「....あなた方ですか」

 

「そう邪険にすんなよ。俺たちの仲じゃねーか」

 

「人が思いに耽っているというのに邪魔しないでいただきたい」

 

「そりゃ悪かったよ」

 

 

歓声を上げる同胞諸君(愚者達)を風景にワインを嗜んでいた私に軽々しく話しかけてきた男達は、そこに置かれた肉塊を退かし、血濡れたソファーにどかっと座ります。

認めたくないですが彼らは私の古くからの友人です。

従軍時代からの逃亡兵。

まあ名前を上げるまでもないモブ兵士と思ってくださって結構です。

 

 

「なあフェイスレス様よ。俺らはあんたの直属の部下だ。だが、流石にあんな退屈な仕事はもう懲り懲りだぜ?せっかくこんな一大イベントなんだ。もっと派手なことがしたい」

 

 

彼らに任せた仕事はレイル区の殲滅、それを除けば中央殲滅の支援、残党処理、アイン隊の()()の生中継。

もっと古いもので言えば、クラウンスレイヤー達の勧誘や、あるタイミングで貴族達に地下の()()をさせるように誘導したり。

さまざまな雑用を裏でこなしてくれたなかなか使える駒達です。

 

 

「はぁ...全くいいご身分だなフェイスレス様よ。古い友人を見つけたからって俺らに仕事を投げつけたり、てめぇの趣味のために俺たちをこきつかったりしやがって」

 

「実際いいご身分ですし」

 

「へいへい、先導者様」

 

「それに、これはあなた達の趣味でもあるでしょう?」

 

「そう言えばそうだったな。はぁ、ヘドリーの奴らもこればよかったのにな。こんないい景色。堪能しなきゃ損だぜ」

 

「カズデルは今荒れていますからね。今はもうイネスや“W”も生きているかわかりません」

 

「そうだなー。あいつらと飲む酒は美味かった。お前はすぐぶっ倒れたから覚えていないだろうがな」

 

 

彼らの口から出る昔を懐かしむ言葉。

しかしすぐに雰囲気は一転。

仕事をこなす傭兵の顔に。

そしてこれから起こることを楽しみにする悪い笑みを浮かべます。

 

 

「で、次は何をすればいいんだ?」

 

 

俺たちを楽しませてくれるんだろう?

私を見る男達は目を子供の様に輝きながら、そう私に語りかけてきた。

 

 

「.......いいでしょう。あなた方には制御区画の防衛をお願いします」

 

「あの薄暗いところか?」

 

「ええ、おそらく来るのは英雄ジャスパー・ランフォード。クラウンスレイヤーが抜けた今、最高戦力と言って差し違えないあなた方に、そこを任せたい」

 

「くく、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。しかしジャスパー....あのおっさんか。あいつが来るのならこっちの艦橋じゃ無いのか?」

 

「はい。予想される彼らの目的は、私の殺害ではなく、この都市の停止。制御区画を直接叩けば、この都市の動きを止めることができなす。なのでわざわざここに来る必要はないでしょう。それに、私を殺しに来るのは彼じゃない」

 

「随分な自信だな。あのペンギンどもがここに辿り着けるとでも?」

 

「ええ。私の妹ですから」

 

「はっ、シスコンが」

 

 

 

物語の終わりはもう近い。

それがどの様な形で幕を閉じるのか、私にはわからない。

果たしてそれが私たち感染者の勝利で終わるのか。非感染者達の逆転勝利で終わるのか。はたまた...........

 

しかし、だからこそ面白い。

 

誰にも結末がわからないからこそ物語というものは面白い。

 

決められた道を辿って手に入れたハッピーエンドよりも、自らが選んだ道の先に見つけたバットエンドの方が、よっぽど面白い。

 

ああ....彼女は、私にどんな終幕を与えてくれるのだろう。

 

 

 

 

 

 

10/24/3:45 エルド区地上都市部住宅街

 

 

 

「くそっ!弾切れだ!」

 

「......っ!源石剣が...」

 

「α班は下がれ!β班と後退しろ!」

 

 

次々と押し寄せる源石に包まれた怪物たち。

フェイスレスのアーツによって生み出されたものと予想される化け物達の猛攻は止まらない。

前線は避難民の生き残りが立て篭もる住宅街にまで下げられていた。

立ち並ぶ建造物を要塞として利用し、立ち回っているが着実に押されている。

その理由の一つとして挙げられるのが奴らの耐久性だろう。

本来そこまでの硬度はないはずの源石は何者かのアーツの影響か、戦斧さえも通さない強固な鎧と化していた。

故にその突破には攻城兵器の類を使用するか、露出する生身の肉体を狙う他ない。

エンペラーの使用する拳銃も人間体に当たらない限り有効打にはなり得ず、テキサスの源石剣もまたアーツとして使用することで足止めすることはできても決定的なダメージを与えるに至らない。

 

最後の希望として存在したこの都市の離脱機能は機関室の破壊によって不可能となった。

しかしこのまま立てこもっていても限界が来ることも明白だ。

 

 

「客人、話がある」

 

「ジャスパー?なんだよ」

 

「........?」

 

 

話しかけてきたのはこの暴動...いや、もはや戦争と言えるこの戦いで1番のMVPと言ってもいいご老人、ジャスパー・ランフォード。

かの英雄といえどもあれほどの異形の前には数々の生傷を作っていた。

 

 

「ボルトも銃弾も、燃料も食料も残り少ない。民間人含めて軽者者103名、重傷者138名、死者32名。まともに動ける奴はほとんどいない」

 

 

後方に控えるのは片足を無くした者、片腕を食いちぎられた者、目玉に瓦礫が刺された者。無傷と呼べるものは数えるほどもいない。

そこに女も子供も、軍人も民間人も関係なく、動けるものは兵器を動かすため、戦場へと駆り出されていた。

いや、そもそもの話、もう既にこの地獄に逃げ場などないのだ。

戦う他、生き残る術はないのだ。

 

だが、それすらもできなくなった時。

彼らに訪れるのは、逃げることのできない絶望のみ。

 

 

「はっきり言って限界だ」

 

 

そしてその時は、もう既にすぐそこにまで近づいてきていた。

 

 

「.....諦めるのか?」

 

「な訳ないだろ」

 

「秘策でもあるのか」

 

「はっきり言ってないな。俺がこのあり様じゃなきゃいけたんだがな」

 

 

そう言った彼の左足は膝から先が既になく、何かの棒を括り付けて無理やり義足にしているような状態だ。

包帯で応急処置は行っているが、最大戦力である彼が休めるはずもなく、傷口は広がり出血は酷い。

とてもじゃないが、ここから中央に位置する艦橋にまで行くのは無理だろう。

 

 

「だから、お前に頼みたい」

 

 

「帝王、エンペラー」

 

 

彼は口にした。

目の前のペンギン、いや、覇王エンペラーの名を。

 

 

「お前の噂は聞いている。大物投資家にしてクルビアの大御所ラッパー。しかしその反面、喧嘩の達人とも呼ばれ数々の修羅場をくぐり抜け、数々の騒動を解決してきたという。さらに何度も殺されかけながらも生き延び、裏社会では不死身と言われるほど」

 

ほとんど眉唾物の噂だがな、と続ける。

 

「だが、そんなことを言ってもられない様な状況だ。例え虚実であろうと縋りたいくらいにはな。だから........お前たちに頼みたい」

 

 

 

この都市を止めてくれ。

 

 

 

 

 

「任せておけ.......って言いたいんだが、それは無茶な頼みなんじゃねーの?さすがの俺様でもあの化け物どもをくぐり抜けてアルベルトの野郎を殴りに行くのは不可能だ」

 

「もちろん、こちらからも数人か出す」

 

「いや数の問題じゃねえ。何人いようとあれはきつい.....」

 

「頼む」

 

「おいおい!土下座しろって言ってるんじゃ....」

 

「もう、俺たちにはお前たちに託す以外にないんだ」

 

 

頭を血に汚れたコンクリの地面に擦り付け、民間人に頼み込む。

それは傲慢なウルサス貴族には考えられない行動で、軍人にも考えられない様な行動だった。

しかし彼は行った。

これで多くの命が助かるのなら、頭の一つやすいものだと。

ならば、こちらも答えなければ道理が通らないだろう。

 

 

「.....ここまで言われたんじゃ仕方がねえな!俺たちに任せておけ!」

 

「.......ボス」

 

「.....感謝する」

 

「誰かがやらねえと俺らも死ぬのは変わらねえからな。だが存分に感謝しろ?客人である俺がてめえらの尻拭いをするんだからな」

 

「ああ....本当に....本当にありがとう」

 

 

とは言ってもエンペラーにも策はない。

だがやらねばならない。

やらなければこの都市を棺桶にすることになる。

こんな寒いところを墓場にするのは御免だ。

 

 

「それで?同行するっつー奴らは?」

 

「ああ、動ける優秀な俺の元部下数名と()()()()()()を数人選んだ。おい、来てくれ」

 

 

彼の呼びかけに応じて集まったのはたった12人。

その少なさが戦場の余裕のなさを語っていた。

しかしその面構えは違う。

みなが皆、覚悟を決めていた。

より多くのものを助けるための犠牲となる覚悟を。

分りきった死に対する覚悟を。

 

 

「お久しぶりですね。エンペラーさん」

 

「お前は....確かリスタ小隊のフィッツ....だったか?」

 

「そうです。まさか覚えて頂けたとは、光栄です」

 

 

そこにいたのは数刻前まで死に怯え、争うことを諦めた兵士の一人。

しかし先程とは打って変わり、彼はエンペラーを真っ直ぐに見つめ、死ぬ覚悟を決めていた。

 

 

「....なんで、お前は俺たちと一緒に来るんだ?(死にに来るんだ?)

 

「子供が.....いたんです」

 

「.....」

 

「.....ああ」

 

「ちょうど、目の前で火に巻かれた僕の娘と同じくらいの子供でした。そんな子供が、傷つき、冷たくなった母の名を呼びながら涙を流していたんです」

 

「.....」

 

「..........僕が、守らないといけないと思った」

 

「僕が終わらせなければと思った」

 

「僕がやらなければいけないと思った」

 

 

 

「それだけです。いけませんか?」

 

「いや、十分だ」

 

 

繰り返そう。

彼らは、弱き者のために死ぬ覚悟を決めた戦士だ。

目の前に立ちはだかる敵を打ち倒し、その命が途切れるその時まで戦い続ける。

そんな戦士だ。

 

 

「....お前らも、もう覚悟決まってるんだな」

 

 

頷き一つ。

 

 

「ああ......そうか」

 

 

 

 

 

 

「なら、死ぬな。その命を無駄にするな。作戦は命を大事に。最後まで足掻き続けろ。そしてその上で、勝つぞ。勝って、全員で生きてここから出る。いいな!」

 

「「はっ!!」」

 

 

目指すのなら、多くの死の先に立つハッピーエンドより、皆で生き残った先のハッピーエンドだろう。

死ぬ覚悟をするここと、死にに行くのでは意味が違う。

目指すのならより良い結末を。

その方がよっぽど良い。

 

 

「ま、待ってくれ!」

 

 

そこに声をかけたのは燃えるような紅の髪を持つリーベリの少女

CiRF幹部レティシアだ。

 

 

「.....なんだ、レティ。止めるのなら、お前でも容赦しない」

 

「違う!テキサス、俺もフェイスレスの、アルベルト様のところに連れて行ってくれ」

 

「あ!?」

 

「あの方に、アルベルト様に聞きたいんだ。なんで、こんなことをしたのかって。なんで、アインを、みんなをあんな姿にしたんだってっ!.....俺にはわかる.....あれは、アルベルト様のアーツだ。見たことだってある。だから、どうしてって聞きたい......きっと....理由が....あるはずなんだ......じゃなきゃ......だって.....あの人が私達を見捨てるはずがないんだ!」

 

「わかった」

 

「あ!?無理だ無理!こいつは敵幹部だぞ!」

 

「だが信用はできる」

 

「だからその根拠はどこから..........」

 

 

「頼む........お願いします。お前達の邪魔はしない。あの人の元に行くまでは手伝うし、アルベルトを討つっていうなら....止めない。私は、ただっ......知りたいだけなんだ」

 

 

 

「〜〜〜〜〜っ!わぁーた!ついてこい!お前らも喧嘩すんなよ!」

 

「.......わかりました」

 

「っ......ありがとう......」

 

「.............僕たちはお前を許したわけじゃない。必要だから利用するだけだ」

 

「.....わかってる。私だって、非感染者のお前達を許すつもりはない」

 

 

 

「頼んだぞ」

 

「おう。期待して待ってろ」

 

 

ジャスパーが最後のアーツユニットを犠牲にアーツを振るう。

雷の代名詞。雷獣ジャスパー・ランフォードの名は伊達ではない。

鳴り響く雷鳴が、光と共に源石の化物を飲み込み、その壁に風穴を開ける。

開けられた突破口は全員が通るには狭い。

だが、少数精鋭である彼らにとっては広すぎるほどだ。

 

たった数名。されど数名。

移動都市クレアスノダールに残る非感染者の命は彼らに託されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「........いったか」

 

「隊長.....ここ、守りきれますかね。俺、もう片腕ないんすけど」

 

「馬鹿野郎。守るんだろうが。民間人であるあいつらにあんな大役任せちまったんだ。どんな事をしてでも俺らがここを守り切らねえと示しがつかないだろうが」

 

「そうっすね......あ、今のでアーツユニット最後っす。昔から思ってましたけど隊長のアーツって戦略級の威力っすけど燃費悪いっすね......あ、俺の回復アーツも品切れっす」

 

「俺を英雄たらしめるアーツだからな。だが...あー.....参ったな..............」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、感染者って、ユニットなしでアーツが使えるんだよな?」

 

「.......あー....っすね」

 

 

 

 

 

雷鳴は鳴り止まない。

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