脇役になりたくないTS転生者   作:有機栽培茶

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この章(本編)の最終回。
今回めちゃくちゃ長いです。二話分くらいある。


日の出

 

上段からの斬撃を源石剣ではじく。

続いて横から迫りくる二本目の源石剣をしゃがんで回避。

生じた隙を逃がす道理はない。

そこに全力で蹴りをいれ、距離をとる。

防がれたが、中々のダメージは入ったようだ。

 

これまでこのような攻防が約数十分は続いていた。

 

 

 

「あはは...すばらしい。随分と腕を上げたのですね」

 

「...連れて...帰る!」

 

 

 

...甘い。

実に甘い。

確かに昔よりかは腕を上げたようです...が、その決意が甘すぎる。

私を連れて帰る?

そんなこと...

 

 

 

「まだ言っているのですか」

 

「ぅぐ!?」

 

 

 

地面を強く蹴りつけ、そのままテキサスの腹部を強打。

 

 

 

「テキサス!」

 

「数十年ぶりの姉妹喧嘩ですよ?邪魔しないでいただきたい」

 

「くそ!うごけねえ!」

 

 

 

エンペラーは源石製の鎖で既に拘束済みです。

この部屋には私の制御下にある源石が充満しています。

感染能力はほぼ機能しない程度に弱化させていますが、その粉末を凝固させてこの鎖やちょっとした大剣など様々な武器や道具を生成することができます。

もちろん相手の体内に入り込んだ粉末を活性化させて内部破壊を促すことも可能です。

 

ですが、それではつまらない。

やはり姉妹喧嘩は正々堂々とやらなければ。

 

 

 

「ほら、ほらほらほらほら!殺意を抱け!私を殺す気で来い!」

 

「っ...黙れ!私は、兄さんを連れて帰る!」

 

 

馬鹿、ですね。

今の私にあなたは勝てない。

 

私は戦う、という行為が好きです。

命を感じ取れるの瞬間が何よりも好きです。

しかしこの体はそこまで丈夫にできていません。

前世の私も、ほぼすべての教科で高い成績をたたき出していたにも関わらず、体育の成績のみ4でした。体力測定もさんざんな結果でした。

それが今世では女性の体に生まれ変わり、ただでさえ低い運動能力がさらに低くなってしまいました。霊長類最強レベルの身体能力は残念ながら持ち合わせていなかったようです。

 

では、そんな私が従軍したり、傭兵で金を稼いだり、このように満足のいく戦闘を行うことができているのでしょうか。

 

それは体内をアーツで強化しているからです。

骨や筋肉などを、極限まで硬化させた源石で補強しているのです。

 

故に、今の私は人間離れした動きすら可能。

 

つまり──なぜ同じ姉妹であるにもかかわらずここまで強くなったのかはわかりませんが──あくまで人間の領域をでない彼女に私を殺すことは難しい。

 

しかも、そんな生ぬるい考えを持っている限りは私を倒せない。

 

 

「剣雨っ!!」

 

「ふふふ、面白いアーツですね。なるほど。源石剣の刀身を過剰生産し、相手に雨のように降り注がせる。なるほどなるほど....やってみましょうか」

 

「っ!?....なぜ」

 

「妹であるあなたにできて、私にできないはずがないでしょう?」

 

 

私の源石剣は十数年前から使用している骨董品。

発生している刀身は不安定きわまりなく、私のアーツなしには起動すらしないおんぼろです。

なのでこれは私のアーツで刀身を大量に生み出したただけ。

つまりズルです。

ですが彼女にとってそれが脅威になることは変わりません。

 

 

「ぐ...!」

 

「あはははは!!さあ足掻くのです!私を楽しませてください!」

 

 

ある程度はじき返すことには成功したようですが、すべては防げなかった様子。

 

源石でできた刀身は彼女の衣服を切り裂き、肉を削ぎ、真っ赤な鮮血を噴出させる。

 

美しい。

なんと美しい光景だろうか。

私はかつてこれほどまでに素晴らしい光景を見たことがない。

首を絞められながら徐々に血の気を失ってゆく父親を眺めて以来の興奮、高揚感。

 

もっと見たい。

苦痛に歪むその顔が。

 

 

「あっははははははははは!!!もっと!もっとあなたの苦しむ姿を私に───

 

 

 

 

 

ゴボッ

 

 

 

 

 

 

「が..........ぁ、え?」

 

 

 

 

粘着質の赤黒い液体が、みずみずしい音を立てながら零れ落ちる。

黒く光る結晶が混じった液体が、私の血液だときずくのにそう時間はかからなかった。

 

 

 

「兄さん!?」

 

 

 

ああ...なるほど、と理解します。

限界、というわけですか。

気づけば体に感覚はなく、床から伝わる冷たさすら感じない。

おそらく不味いことになっているであろう体内からは痛みの「い」の字すら伝わってこない。

にもかかわらず、自分の意識はもう“私”という存在の寿命が尽きようとしていることをはっきりと感じ取れていた。

 

ああ、死ぬのか....と。

 

 

 

「まて!近づくなテキサス!」

 

 

意識が遠のいてゆく。

これが、“死”なのですね。

 

ゆっくりと、ゆっくりと....徐々に徐々に私という存在が失われてゆく。

 

そこに苦痛はなく、痛みも、悲しみもない。

 

私の見てきた中で最も“楽な死”だろう。

 

いや、もしかしたら死というものは全てこのようなものなのかもしれない。私が記憶を失っているだけで、あの時もそうだったのかもしれない。

 

ああ、でも、もうどうでもいいか。

 

だって、やっと終われるのだから。

 

この血に濡れた命を、絶つことができるのだから。

 

 

ああ.......

 

 

やっと、

 

 

やっと終わることができ─────────

 

 

 

 

『本当にそれでいいのか?』

 

 

 

 

ふと、そんな言葉がよぎった。

 

 

『これまで、私たちは償いきれないほどの”罪“を犯してきた。私たちは、救われることのない罪人だ』

 

『そんな罪人が、こんな安らかな最期を迎えてもいいとでも思っているのか?』

 

『仲間たちの屍の上に作り上げたこの演劇を、こんな中途半端な終幕で閉じていいのか?』

 

『それは犠牲となった可哀想な彼らへの侮辱ではないのか?哀れな彼女らへの裏切りではないのか?』

 

 

.......そうか

 

 

『どうせやるなら────

 

 

 

 

 

 

「最期まで楽しむべき(やり切るべき)だろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?兄さん!?」

 

 

まだ死ねない。

 

 

「ちっ!まだ生きてやがった!」

 

 

まだ終われない。

 

 

「あは、あはははははははははははは!!!」

 

 

 

最期まで楽しみきるまでは

 

 

 

「っ~~~~~!?」

 

「はははははははははは!!!死ね!死ね!死んでしまえ!!!」

 

「兄、さんっ!」

 

 

体中が悲鳴を上げている。

体内の源石どもが早く食われろと騒ぎ立てている。

 

うるさい

 

うるさいうるさいうるさいうるさい

 

どいつもこいつもぎゃーぎゃーと、

 

静かにしろ

 

 

 

「私の頭の中でしゃべるなぁぁぁぁ!!!」

 

「うっ!」

 

 

そうだ

 

従え

 

私の言うことを聞け

 

貴様らは私の手足だ道具だ奴隷だ

 

黙って従っていればいいんだよ!

 

 

「兄さん!正気に」

 

「正気!?ああそうさ私は正気だ狂ってなどいない!狂っているのは貴様らだ!この世界だ!」

 

「力が、増してる...!?」

 

 

あふれ出る力に高揚感

たまらない

とめられない

私が私じゃないく...

私が私として完成してゆく

 

これが私だ!

 

人形なんかじゃない!

 

奴隷なんかじゃない!

 

私は誰かの脇役なんかじゃない!

 

わたしは、私自身だ!

 

だから....

 

 

「私をそんな目で見るなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「しまっ!?」

 

「テキサス!?くそ!外れねえ!」

 

 

あは

 

 

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!

 

 

自由だ

 

 

私は

 

 

自由になれるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ.........はあ!」

 

「...」

 

 

 

 

横なぎに振るわれた攻撃を片手で軽くいなす。

 

 

「はは、ははは...はぁ、テキサス。そんなものでは、私はいつまでたっても倒せませんよ?」

 

「ふー...ふー...」

 

 

もうすでに体力の限界なのかテキサスは肩で息をし、その剣撃も弱々しいものとなっていた。

 

 

「まあいいでしょう。むしろそのほうが好都合です。私は、あなたを殺すことで、やっと解放されるのですから」

 

 

つまらないが、しかたがない。

これがここでの終わりならそれもそれでいい。

また次の劇を始めるだけだ。

 

だが、そうだな。

その前に一つ、いいことを思いついた。

 

 

「最後ですし、いいことを教えてあげましょうテキサス。覚えていますか?あの夜のことを」

 

「...」

 

「私たちの父が死に、テキサスファミリーが壊滅したあの夜のことです」

 

「...」

 

 

 

「あの時、最後に父の命を奪ったの、実は私なんです」

 

 

「あの時、敵対ファミリーを屋敷に招き入れたのも私。多くの部下達を切り殺したのも私。逃げ惑う使用人達を殺したのも私」

 

 

 

「あの時の惨劇は!あの時の悲劇は!貴方の不幸は!ぜーーーーんぶ!........私のせいなのですよ」

 

 

 

 

「そう....か」

 

 

 

おや?思っていたよりも反応が薄いですね。

ショックが大きすぎて飲み込めてな────────

 

 

 

「おっと!!!」

 

 

 

そんなことはなかったようですね。

 

 

 

「怒りましたか?!怒っちゃいましたか?!やっと殺したくなりましたか?!いいですよ!さあ!もっと怒りなさい!私を、殺しなさい!!」

 

 

 

そうだ!その調子だ!

やはり貴方は優秀な妹です!

最後まで私を楽しませてくれる!

 

ははは!はははははははははは!!!

 

最高だ!

 

最高すぎる!

 

 

だが.......

 

 

「そろそろ終わりにしよう」

 

 

ゴゴゴ、と轟音を立てて艦橋が傾く。

爆発や天災の影響でしょう。

この都市に限界が訪れているのです。

次期にこの艦橋は崩れ、都市もただの瓦礫の山と化すでしょう。

 

だからこれが

 

 

「さぁ.......来い!!」

 

 

最後です。

 

 

「っ!」

 

 

床板として敷き詰められた金属板が踏み込みの衝撃でめくり上がり、一瞬で両者の間は詰められる。

真っ赤な残光を残しながら両者の剣は刀身にそれぞれの意志を込めながら振るわれる。

 

ほぼ同時。

 

速度も力もその全てが同時と思われた。

少なくとも、第三者の目線で見ていたエンペラーにはそう見えていたのだろう。

 

 

だが、僅かに、ほんの僅かに

 

 

 

 

 

私の方が早い。

 

 

 

 

 

ほんの僅かな差。

しかしそれが生み出す結果ははっきりとした物だろう。

ほんの数センチ、数ミリの差が、生きるか死ぬかを決める。

 

そう、このままいけば確実に私の勝ちだ。

 

 

 

そのはずだった。

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

右腕に生じた衝撃。

それが握られた源石剣を右腕から弾き飛ばし、明らかな隙を生み出した。

 

一体何がおこったのか。

 

まさかエンペラーがもう拘束から抜け出したのか?

 

いや、違う。彼は今もあの状態のまま目を見開いている。

 

じゃあ、一体誰が─────

 

 

 

 

 

「行っけぇぇぇ!!!テキサァァァァァァス!!!」

 

 

 

 

 

レティシアだ。

体の大半を源石に包まれながらも、その目は、その意志は生きていた。

 

ありえない。確実に死んでいたはずだ。

彼女の鉱石病はそこまで進行していた。

確実に生命活動を維持できるような状況ではなかったはずだ。

そこから生き延びるなど、それこそ私のアーツ無しには.......

 

 

....まさか、

 

 

まさか“私”が......?

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「っ!!!!!」

 

 

 

もう、彼女の剣先は目の前まで迫ってきていた。

まずい。

自分の武器は?無い。

蹴り飛ばすか?いや、この体勢からでは無理だ。

 

 

では、このまま死を受け入れるか?

 

 

 

 

 

 

 

「舐めるなァァァァ!!!!!」

 

 

弾かれた反動で前に出ていた左腕が、そのところどころに生じた源石が赤黒い光を放つ。

私のアーツが起動する合図だ。

このまま彼女に触れ、アーツを発動させる。

発動時間は0.1秒にも満たない。

そんな短い時間で、私のアーツに触れた彼女は体内の源石に内側から貫かれて死ぬことになるだろう。

 

さあ、終わりだ(チェックメイトだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは....どこだ?

 

 

『.....どう....ですか?これ.......?』

 

 

目の前の少年が手書きで書いたであろう模様を私に見せてくる。

彼は.........アイン?

では、これは走馬灯とやらか?

 

 

『おや?これは鎖...ですか?』

 

 

真横から声が聞こえた。

私だ。

そこには、いつかの私がいた。

 

 

『......私たちの目的は感染者の解放だ。その旗印が鎖ってのはないんじゃ無いか?』

 

 

その隣にいたクラウンスレイヤーが疑問を口にした。

 

 

『何でこれにしたんだ?』

 

 

少し目線を下に向ければ不思議そうに首を傾けたレティシアもそこにいた。

 

ああ、思い出した。

これはあの時、CiRF....みんなのマークを決めようと集まっていた時の話だ。

そうだ......確かにあの時、私たちはこんな感じの、ガラクタを組み合わせて作り上げた薄暗くて狭い部屋の中に集まって真面目に考えていたのだったな。

 

 

『理由を、教えていただいても?』

 

 

また私の声だ。

そうだ、この時の私は少し怒っていた。

私の嫌いな“鎖”なんてものを出すから。

口調もちょっと強めだ。

 

 

『それは.........少し、恥ずかしいんですけど.....

 

 

 

 

 

 

このマークが、全部、終わった後でも、僕たちを繋ぎ止めてくれる

 

 

 

........そんなマークになれば........なんて』

 

 

 

そう言って、彼は顔をさらに赤らめて下を向いた。

恥ずかしかったのだろう。

 

だが、そんな彼の言葉を聞いてみんなは

 

 

 

『嬉しいこと言ってくれるじゃねえか坊主!』

 

『ああもう!そんなのがなくても私たちはずっと家族よ!!』

 

『ーーー!天才だ!アイン!』

 

『ふっ....レティシアの弟にしてはよくできてるじゃないか』

 

『んだとぉ!?』

 

 

笑っていた。

みんな、幸せそうに。

確かな温かみがそこにはあった。

 

 

『ーーー!........あ、あの!アルベルト様は、どう、思います、か?』

 

 

さらに顔を赤らめながら、辿々しくそう聞いてきた彼に....

私は......

 

 

 

 

 

 

 

『素晴らしいですよアイン』

 

 

 

笑っていた。

心から、信じられないほど楽しそうに、幸せそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボス!早くこっちにきてください!』

 

 

黒いスーツに身を包んだ男に連れられて見覚えのある屋敷の廊下を歩く。

ここは.....そうだ、テキサスファミリーの.....

 

 

『一体何があった!?■■■■は!?妹は無事なのですか!?』

 

 

またもや隣を走る私は額を汗で濡らし、明らかに焦っていた。

そう、確かあの時は妹の■■■■に何かあったのだと、そう聞いたのだ。

 

だが、部下の後を早足で追い、たどり着いた私を迎えたのは

 

 

 

 

 

 

『『『『ハッピーバースデー!!!』』』』

 

 

 

 

 

沢山のクラッカーと、煌びやかに飾り付けされた執務室だった。

 

 

『こ、これはいったい....』

 

『お兄ちゃん!誕生日おめでとう!』

 

 

困惑する私に、まだ明るい性格をしていたあの頃の妹が、満面の笑みを浮かべて、私にプレゼント箱を渡してきた。

 

ああ、そうだ。これは確か私が13歳の頃の誕生日会での出来事だ。

まだ幼いながらにサプライズという最高のお祝い方法を考えた妹にまんまと嵌められたのだ。

 

ちなみにその箱の中身は可愛らしい飾り付けがされた腕時計。

そして子供向けであろうその腕時計とともに、一枚の厚紙が入っていた。

 

そこに描かれていたのは楽しげに笑う私と妹、そしてファミリーの家族達に、普段なら絶対にありえないであろう笑みを浮かべている父親の絵。

 

幸せな光景がそこには描かれていた。

 

 

 

 

一マフィアのボスへのプレゼントとしてはお粗末極まりないそれに対して、私は

 

 

 

 

 

 

「ありがとう.......本当にありがとうございます」

 

 

 

泣きながら、笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.........私はここまで、欠けた何かを満たすために、

 

 

『■■■■!お前は私たち親の道具なんだよ!お前は黙って従っていればいいんだ!』

 

 

そして自由を手にして、“幸せ”を手にするためにここまで走ってきた。

 

 

ですが.........ああ............そうか。

 

 

 

 

 

 

『うるさい!■■■■さんは義母さんと義父さんの道具なんかじゃ無い!■■■■さんは!私の彼氏は人間なんだ!!!』

 

 

 

 

 

初めからすぐそばにあったのですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剣雨」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6:43

都市に朝が訪れた。

 

 

 

 

クレアスノダール事変

1087年10月24日にウルサスの移動都市クレアスノダールを襲った悲劇である。

派遣された調査団による調査では、死者・行方不明者は数十万人に達し、移動都市は修復が不可能なまでに破壊されていることが確認された。

政府はこれを、乗務員の不手際によって移動ルートを外れ、天災に直撃してしまったことで起こった悲しき『事故』として処理した。

 

しかし、人の口に戸は立てられないとはよく言ったもので、どこから広まったのか。感染者達の間にはこのような噂が囁かれていた。

 

 

『クレアスノダール事変は事故ではなく、人為的なもので、とある感染者集団が起こした支配への抵抗である』......と。

 

 

この噂は次々と広まってゆくこととなる。

その結果。

人々は自由を求めて立ち上がった勇者達と、彼らを率いた“英雄”フェイスレスを称え、その行動に心を打たれ、非感染者の支配からの脱却を望み、立ち上がった。

 

 

 

 

人々はそれを、『レユニオン』と呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ガタリガタリと不規則なリズムが身を揺らす。

 

 

 

「..............なぜ、私は生きているのでしょう」

 

「俺は反対したんだぜ?お前みたいな極悪人、助けたら碌なことが起こらねえって。でもこいつがなぁ..........」

 

 

 

 

「......テキサス」

 

 

 

「......私は、兄さんに生きてほしかった」

 

「....何故ですか?私は、貴方の家族を、幸せを奪った....」

 

「ああ....確かに兄さんは私から幸せを奪った」

 

「......」

 

「だが、それは兄さんが家族を殺したからじゃない」

 

「......」

 

「............私は兄さんがいればそれでよかった」

 

「......」

 

「私は知っていたんだ。兄さんが、私を父さんの教育(支配)から守っていてくれたこと....ファミリーのリーダーっていう重責から守ってくれたこと.....」

 

「.....」

 

「そして....兄さんがそれに苦しんでいたことを」

 

「.....」

 

「私は、守ってもらってばかりだ。救ってもらってばかりだ。私は兄さんに何一つしてあげられなかった。結局、兄さんは家族を嫌うことになって、父さん(家族)を殺すことになってしまった」

 

「.....」

 

「あの時、私がもっと兄さんの助けになってあげられていれば...何度も後悔してきた」

 

「.....」

 

「兄さんが、こうなってしまったのは私のせいだと、今も後悔している......」

 

「.....」

 

「....だから、これからは私が兄さんを助ける。兄さんを救う。兄さんが犯した罪も、私が一緒に償う」

 

「.....」

 

「だから......これからは............一緒にいて、欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「..........好きにしろ」

 

 

 

 

 

私はもう、疲れた。




自由を求めた罪人は再び家族という檻に囚われることとなる。
これは彼女にとっての罰であり、救いでもあるのかもしれない。

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