シリアス編が終わったから、多分急激な温度変化に風邪を引く方も出てくると思います。ヘックシ
二章から読み始めた方は初めまして。
主人公のアルちゃんについては
・前世(男)持ち
・今世と前世の人格(性格)の混濁。
・前世(自由&人の不幸LOVE、愉悦部)
・今世(I love 家族、一章の罪悪感やばい)
・アーツ:源石干渉=なんかつよぉい(小並感)
・私的な理由で都市を落とした&仲間を裏切った。
私情でチェルノボーグ事変もどきを起こした前科持ちのやべーヤツと思っていただければ十分だと思います。ちなみに二部からは今世寄りの性格。
幕間:ペンギン急便
「ぐっへっへっへ、見事に引っかかりましたね兄貴!」
「くくく....そうだなぁ。まさか天下のペンギン急便様がこーーんなわかりやすい罠に引っ掛かるなんてなぁ!」
少し埃臭く、電灯がいくつか点滅しているTheマフィア御用達の倉庫のような場所に、ペンギン急便の2人。テキサスとエクシアは縛られていた。
そしてその前には厳つく、しかし何処か小物臭が漂う男たちが下卑た笑みを浮かべていた。その考えていることが丸わかりな品のない顔は、いうなら薄い本に出てくるモブおじのようである。
「さぁーて、どうしてくれようか。テメェらペンギン急便にはいつも世話になってばかりだからなぁ。顔はいい。しかも片方はあの“テキサス”ときた!どっかの貴族に高値で売るか?まあ中古での出品になるだろうがヨォ」
「いやいや兄貴。そんなものよりもいいアイデアがありますぜ。こいつらの一部を切り取って送りつけてやるんでさぁ。そうすりゃぁあの腐れペンギンへの仕返しにもなる」
「そうだないいアイデアだ。金よりもまずあのクソペンギンへの復讐が先だ」
しかし彼らは正真正銘裏世界の人間。マフィアやギャングと呼ばれる者...その中でも特に最下層に位置するもの。その欲望はどす黒く、どこまでも救えないものだ。
「.....ね、ねぇテキサス.....これ......」
「...ああ、まずいな」
自身の後輩とも言える赤髪の天使の怯えるような声に彼女は答える。
普段は明るく活発な彼女だが、この会社に入社したばかりで、このような経験の少ない彼女には、この状況はひどく恐ろしいものなのだろう。
かといって彼女自身も、この状況が恐ろしくないわけではない。
なんらかの装置により連絡は出来ず、強固な縄に縛られ、身動きひとつできない。武装も全て押収され、選べる選択肢はなされるがままに汚されるか、舌を噛み切って自害するか。
テキサスは知っていた。
彼らがたった今口にしたことは脅しなどではなく、必ずやると。
そしてそれは口にしたものよりもずっと残酷で、耐え難いものだと。
彼女は知っていた。自らの兄が実際に行っていたことだから。
だが、彼女はここで死ぬわけにはいかなかった。
約束したのだから。
共に生きると。共に償うと。
「う....うぅ......」
だから
「くっくっく.......じゃあお楽しみの時間といこうじゃねぇか」
ここで死ぬわけには─────
ピンポーーン
「宅配便でーす」
「あ?」
男たちの動きが止まる。
「ちっ...いいところだったのによ。おい!そこのお前行ってこい!」
「えぇーーー!なんで俺が...」
「いいから行ってこい!」
「へーい」
しかし縄は解けず、走って逃げようにも隙も見当たらない。
ここで声を出せば、少なくともあの声の主には届くだろう。
だがそこまでだ。
ただ新たな犠牲者を増やすだけになってしまう。
(だが......今の声......)
「ったく...一体どこのどいつが何頼んだんだよ」
がちゃり
そんな音が聞こえた時だった。
「助けて!!」
「っ!?」
「くそっ!こいつを黙らせろ!お前はそこの客人を逃すな!」
我慢の限界だったのか。
あの声の主を巻き込むとわかっていながら、叫ばずにはいられなかったのだろう。
なにせやっと見つけた希望。一筋の光。
これを逃して仕舞えば私たちにまともな明日はこなかったかも知れなかったから。
「けけけ....兄ちゃん運がねえな!ま、恨むならせいぜい声を出したあの小娘にしてくれや」
だがこれは悪手だ。
たしかに私たちの周りにはボスや近衛局の隊長、クロワッサンなど戦える人たちが多い。
しかしこの龍門全体で言えば、この数十人のマフィア相手に戦える者などほんの一握り。
先程言ったようにただの一般人を巻き込み新たな犠牲者を増やしてしまうだけ───────
「ごばぁ!?」
────のはずだった。
「我々ペンギン急便の社訓はただ一つ。売られた喧嘩は百倍にして返せ」
鉄製のドアをぶち破り、男が目の前に転がってきた。
扉なき廊下の先からはこつりこつりという音が徐々に、徐々に近づいてくる。
「それでも足りないのなら一千倍で」
それは片手に真っ赤に輝く光剣を握り、夜を詰め込んだような真っ黒な髪をはためかせる。
「我々の仕事は生と死を運ぶことだが....あなたがたには死がお似合いだ」
彼女の名は
「ペンギン急便所属トランスポーター、アルマ。お荷物をお届けに参りました」
◆
かつて虐げられ、人としての扱いすら受けることのできなかった感染者達に光と、そして進むべき道を示した先導者がいた。
「.....」
彼の者は自らが鎖にとらわれながらも、多くの人々を導き、そして解放を目指したという。残念ながらそれは叶わず、彼らは道半ばで倒れることとなった。しかしその意思は確かに光を作り出し、一寸先も見えなかった感染者達の目の前に道を示した。
抵抗という名の自由への道を。
「兄さん、飲み物を買ってきた」
「ん、ありがとう」
たとえその話の裏にどのような悪意が潜んでいたとしても、彼女は確かに感染者達の英雄となったのだ。
「...兄さん」
「....」
いまや感染者達の間では知らぬ人などいない有名人だ。
誰もが憧れ、尊敬し、その意思をつなごうとした。
我々には等しく幸せになる権利がある。
感染者に自由を。感染者に解放を。
「アル兄」
「.......」
全ての感染者に道を示した英雄は今名前を変え、立場を捨て、そして───
「もう、休むべきだ」
「いやダメだ書類が残っている」
社畜となっていた。
「なあテキサスはん...アルマはんって確かカジミエーシュへの配達の帰りだった気がするんやけど....」
「ああ........兄さん、休みは取ったのか?」
「いや。だが私は過去に21日間のデスマーチを耐え抜いたエリート社畜だ。全く問題ない」
「問題大有りや!?鏡見てみ!?目の下のでっかい隈あるで!?」
「.....ボス」
「いやー....本人がどうしてもっつってな?」
「あとすこし....」
その姿はとても噂の人物には見えないようなやつれ具合だった。
話を聞いてみればカジミエーシュからの配達帰りにそのままテキサスたちが巻き込まれた事件の解決&後処理を行い、近衛局へ出す書類を書いている最中だとか。
テキサス自身、久しぶりの、しかも衝撃的な再会で思いっきり甘えたい衝動はあるが、仲間達の前でそのような姿を見せられないという自制心と、彼女のあんまりな姿を見て我慢することとなっていた。
ペンギン急便所属トランスポーター、アルマ。
その正体はみなさんご存知の通り、クレアスノダール事変主犯、アルベルトである。
彼女はあの後、エンペラーが経営する会社、ペンギン急便の社員として半ば強制的に入社させられ、こき使われることとなっていた。
しかしあまり広まってはいないとは言え、犯罪者として本名を使うわけにもいかず、本人の意向もあって、偽名を使うこととなった。
また、彼らの会社が置かれている都市は炎国の龍門。ウルサスの移動都市ほどではないにしろ、感染者が一社員として働いているという事実はあまりいい顔をされるものではないため、こうして基本一人都市外で働くこととなっている。一応自分が感染者であるということはアーツで隠せるため、これは念のためであり、理由としては彼女の“妹と一緒に働くのなんか気まずい”という気持ちの方が大きいだろう。
「.....あ、あの!」
そんな彼女に声をかける者が一人。
「えーと.....さっきは、ありがとう、ございます!」
赤髪のサンクタの少女だった。
テキサスよりも少し小柄な、明るそうな子だ。
「あー....初めましてお嬢さん。新人ですか?貴方のお名前は?」
「っ!あ、あの!えと、エ、エクシアです!」
「そうですか。いい名前ですね」
「あ、ありがとうございます!!」
普段はどんな人間に対して明るく、悪く言って仕舞えば馴れ馴れしく接するエクシアだったが、その時はあからさまに緊張している様子だ。
それを、テキサスはジトーっとした目つきで見つめていた。
落ちたな.....と。
「あ、あの!テ、テキサスのお兄さん、ですよね!?」
「はい、そうですが...なにか?」
「え、えと!私!エクシアって言います!!」
「あ、はい、さっき聞きましたが?」
「あ、〜〜〜〜〜〜!!!」
後にテキサスは語る。
兄さんは人たらしだ、と。
多くの感染者たちをまとめ上げ、さらには信仰にも等しいほどの尊敬を集めていたのがその証拠だ。
この男(女)のどこにそんな魅力があるのだろうか。
「あ、え、ど、どこに?」
「すみません。ひと段落着いたので少しお手洗いに」
「い、いえ!こちらこそすみませ........ん..............ん???」
いや、魅力がないとは言わせない。
「ね、ねえテキサス?」
兄さんは目つきこそ悪いが、その中性的な見た目は性別を問わず誘惑する魅力を秘めているし、誰にでも優しく、紳士的に向き合うその姿は聖女にすら見えたと、とある少女から聞いている。それでいてこの人なら、と思わせるカリスマ性を持ち、ピンチに颯爽と駆けつけ、助け出すヒーローのようなかっこよさ。これは惚れない方が無理というもの────
「テキサス!?」
「ん、どうした?」
「どうしたもこうも、アルマさんが入っていたのって女子トイレだよね!?なんでみんな平然としてるの!?止めないの!?」
「いや.....それは....」
「兄さんは女性なんだから当たり前だ」
1秒
2秒
3秒
4秒
そして5秒
時は動き出す。
「?????????」
何言ってんのこの人。
再び活動を再開したエクシアの頭が必死に捻り出した疑問であった。
『兄』
それ即ち同じ親から生まれた年上の男。更に広く、義兄。すなわち夫・妻の兄、姉の夫のことを指す言葉である。
そう、男だ。
この呼び名が使われる以上、彼....いた彼女は男だと思っていた。
声も高すぎもせず、顔立ちも中性的で、失礼だが.......胸も控えめだ。
一見男性に見えても仕方のないことだろう。
しかし、彼女に取ってはそれだけで終わる問題では無かった。
一目惚れだったのだ。
会った瞬間...目と目が合う瞬間好きだと気づいた....というやつだ。
あんな物語に出てくる騎士様のような助け方をされたら誰だって落ちる。いっぱつ“おっふ”ものである。
そんな相手が女性。つまり同性。
「すっきり...と、社長、今から近衛局にこれ出しに行くけど何か他に持ってくものでもあるか?」
「あー....ないぞ....................たぶん」
彼女は今、混乱の渦中に陥っていた。
「なんやもう行くんかいな」
「.....もう少し、休んでいかないのか?」
「ああ、まだ次の配達が残ってるし...それに
しかし少女は恋愛というものに盲目的な年齢だった。
同性だからなんだ。
この世には“ゆり”などというジャンルも存在するという。
ならば問題ないのではないか。
少女の、彼女のことをもっと知りたい、もっと話したい。
そういった欲求が一度は崩れかけた感情を復元し補強してゆく。
そして少女は決意した。
どんな障害があろうと、この思いを突き通すと───!!!
「あの!アルマさん!!!」
「アイツならもう行ったぞ?」
少女は膝から崩れ落ちた。
ペンギン急便所属トランスポーターアルマ
(アルベルト)
糸目ニコニコ胡散臭い→目つき悪い隈有り社畜(初対面の人にはニコニコ)
ウェイさん達に睨まれてる。
尚メス堕ちはまだの様子。
一応アンケートあるんで答えてもらえたら体力ゼロのもやし作者が全力で喜びの舞を踊ります。
これからの路線どうすれば良き?
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