「.......知らない天井だ」
思わずそんなセリフが出ました。
焼け焦げたのかところどころ黒ずみひび割れた天井。
光と呼べるものは窓から差し込む炎の光のみ。
とてもじゃないですが、天国とは思えませんね。
「あるぇ?」
私死んだのではありませんでしたっけ?
リュドミラとレティシアの二人を相手にしながら、ゾーヤさんをレユニオンじゃなそうな人たちに渡したところまではおぼえています。
.....咄嗟の判断でしたが間違っていませんよね?
民間人らしき子供達も連れていましたし、なぜかわかりませんが耀騎士の姿もありました。
少なくともあのThe・騎士で有名な彼の方があの子が所属する集団があの子が悲しむようなことはしないと思いますが....不安です。
それにしても...本当なんで私生きてるんでしょう?絶対あの出血量、普通死んでもおかしくない量でしたよ?
もしかしたらないと思っていた転生者(主人公)補正とやらが私に....?
「いてて....」
それに何故か包帯が巻かれたりと治療らしきものも受けているようですし...一体誰が?
....まさかリュドミラさん達が?
あの時の復讐のため?
私をタダで死なす気はないと?
これは死んでいった仲間の分だ!と言って何百発も殴る気で....?
「.....終わった」
「何が終わったんだ?」
「ひぃ!?」
突如後ろから声がかけられる。
いつのまに!?
「い、いたのですかクラウンスレイヤー.......あの時の復讐ですか?か、覚悟はできていますよ。全て私が悪いのですから。さあ、煮るなり焼くなり好きにしてください」
「いや、今更お前をどうこうするつもりはない」
「......へ?では、なぜ生かしたのですか?」
率直な疑問を口にする。
「...別にお前を許したわけじゃない。レティシアも、死んでいった奴らも」
「...........ええ、わかっていますよ」
「ひとつ聞きたい。なんで、私達を裏切った?」
「....以前言った通りですよ。私は、貴方達が嫌いだった」
「.........そう、か.......」
「それだけですか?私を生かした理由は」
「....違う。お前に会わせたい人がいる」
「それは?」
「私だ」
「っ!!」
「!まて!!」
悪寒。
かつてないほどの悪寒を感じ取った。
体のあげる悲鳴を無視して起き上がり、アーツを起動し───リュドミラに止められた。
「数日ぶりだなフェイスレス」
「貴方は.....!」
太陽だ。
だが、夜を照らし人々に希望を与えるような素晴らしいものではない。
爛々と輝く炎によって虫を誘い込みその全てを燃やし尽くす破滅の炎。
私の第六感と呼べる感覚が警告を大声で放っていた。
「まさか貴方にもう一度会えるとは思っていなかった。てっきり私はあのまま逃げ出してしまったのだと思っていた」
「何者....いや、貴方はなんなのですか?」
鳥肌が立つ。
浅い呼吸を繰り返す。
両手の震えが止まらない。
起動していないはずの源石が赤黒い光を淡く点滅させている。
この人は、いや、コレは一体なんだ?
「私の名はタルラ。レユニオンのリーダーをさせてもらっている。会えて嬉しいよ先導者フェイスレス。まさか彼の英雄に生きてあえるとは思っていなかった」
握り返した掌に反比例するように、彼女の目は冷え切っていた。
そこには何も写っていない。何も感じ取ることはできない。復讐心も渇望も、何もかも。深淵を除いているようだ。
しかしその一方で....いや、別の側面で微かな熱も感じ取れる。一見矛盾したことだが、私の語彙力ではこうとしか言い表せない。まるでひとつ上のレイヤーに隠されたように感じ取りずらいが、確かにそこにある。
本当に、得体が知れない。
あのバウンティハンターと同じく関わりたくない類のものです。
「提案があるんだ」
「.....提案?」
「ああ、それが貴方を生かした理由でもある」
「.....つまり拒否権はないと」
「そう受け取ってくれても構わない」
「.....」
「貴方には私達に協力してほしい」
「協力?」
「そうだ。今の我々には多くの戦力が必要だ。かつて貴方が教えてくれたように、我々感染者の意見を通すためには大きな“力”と結果が必要だからだ。それに貴方は私達に希望を与えた英雄のような存在だ。貴方がいれば皆も心強いだろう」
「.........私はもうそう言ったことは引退したのですが──
「お前は家族を2度も
「っ..........家族を裏切るというなら、あなた方に協力することの方が大きな裏切りになりそうですがね」
「いや、お前はそうは思っていないはずだ。そうだろう?」
タルラの視線の先に気づく。
彼女は気づいていない。
はは......はははは
なんと悪趣味な。
「全く...痛いところをついてくれる」
まるで心が見透かされているようです。
私よりも確実に年下のようにも関わらず大層な観察眼をお持ちなようで。
「わかりました。私にできうる限りは協力しましょう」
「ありがとう。感染者の英雄が味方をしてくれるといえば皆喜ぶはずだ。また会おう」
「ははは....英雄、ね」
最後にもう一度握手をし、静かにさってゆく彼女の背中を見送る。
...できればもう2度と会いたくないな。
「.....どうだった?」
「?どうだった、とは?」
「あの人にあって、お前はどう思った?」
「どうって...まあ、敵対はしたくないとは」
「そうじゃない。もっと、こう.....」
「あらぁ?アナタがあの龍女の言っていた腰抜けやろうかしら?」
「......やけに客人が多いですね」
「.....すまない。無視してもらって構わない」
「ちょっと、無視しないでもらえないかしら?」
真っ赤なツノを持った白髪の女性。
尻尾の形状からもサルカズだと予想できる。あとたぶん小悪魔的なキャラなのだろう。煽り顔がよく似合いそうな美人だ。
「ん゛ん゛!私はW。アナタのことは
「ちゃん付けは勘弁して.............W?」
「なによ?別に変な名前じゃないでしょう?」
「いや....名前を馬鹿にしたいんじゃないのですが.....
貴方もTSしたのですか?」
えらい美人になったなぁ....あの酒飲みがなぁ.....
「は?てぃーえす?何言ってんの?」
「すまんW。こいつはたまに変なことを言うんだ」
あ、違うのか。
「多分あんたが言ってるのは私の前のWよ。私じゃない。私は名前と装備を受け継いだだけ」
「.....あー、たしかにありましたねそんなしきたりが」
サルカズには確か本人の武器や遺品を継いだものが共に名前も引き継いでいくという伝統があったはずです。
だとしたらあの酒飲みWは死んだのですか。
早死にしそうな方だと思っていましたが、少し残念です。
「ちなみにイネスも死んだわ。さっきね」
「.......ヘドリーは?」
「知らない。どっかいったわ」
「..........はぁ......」
まあ、わかっていましたよ。傭兵が死にやすい職業だってことは。ただこうも急に友とは行かないまでも知り合いの死を聞くのは堪えますね。
「知りたいことはもうないかしら?だったらさっさと話しなさい。私も気になるのよね」
「......私が、タルラさんに対してどう思ったか....でしたよね?」
どう思ったか、ねぇ.....
「まず初めに思ったのは、恐怖ですね。私はあれほどの絶対的強者に出会ったことがない」
いや、正確には一度出会ったことがあったな。どうやっても殺せそうにない化け物に。まあ今は話さなくていいだろう。
「次に違和感。彼女は口先では感染者のためと言っていますが彼女自身の目的は別にあるように感じました」
なによりも“熱”がない。
自分で言うのもなんですが私は人の心を読むのが得意です。敵意とか悪意とか、嘘か、本当か、など。
何せ私自身が嘘をつく側だったのですから。
まあエンペラー曰く好意などを読み取るのは苦手らしいですが。
だからわかった。
彼女が望んでいるのは感染者の解放などではない、と。
「......やっぱりか」
「ん?驚かないのですか?」
「なんとなくわかっていた。お前みたいな嘘つきのそばにいたからな。そう言うことにはよく気を使うようになった」
「それはよかった」
あとは.....そうですね。
「最後にもうひとつ、と言いたいのですが、少し質問を」
「なに?」
「タルラさんはどこか特別体が悪かったりするのですか?」
「?別にそんなこと聞いた覚えはないな...」
ふむ......なるほど。
「......私が最後に感じた違和感としては彼女から誰か、第三者からのアーツ反応を感じ取ったことです。それも異質なものを」
「アーツ?」
「........ふーん。なるほどね」
私は自身のアーツのおかげか周囲の源石やそれに関連するアーツの反応に敏感になっている。その詳細な効果まではわからないが、アーツによる罠を感知したり、敵のアーツによる治療痕を読み取って古傷を抉ることなどに役立っている。
そんな私の感知能力が彼女に強く反応していた。
何か強力で、異質なものが彼女に渦巻いていると。
現代アーツでも、サルカズの使う古のアーツでもない。
私の見たこともないものが。
そもそもの話、アーツを常にかけておくなど重い病でも患っていない限り体や術者に負担がかかりすぎる。もしくは第三者がタルラの目を通してアーツで私を観察していたという線もありますが.....
「イネスもそんなことを言っていたってさっき部下から聞いたわね」
「なんと?」
「確か、アイツの影が
ふむ....確かイネスのアーツは相手の感情が読み取れる、などと言う本当かわからない不思議なものだったはずだ。
そんな彼女がタルラに影を二つ見た?
.......もしかしたらタルラも私と
二つの感情は前世のものと今世のものが混合前の状態でそれぞれ別のことも思っているからそう見えたとか......
いや、ないですね。
確かにあのアーツは創作物の主人公かってくらいのチートぶりでしたが、彼女が転生者、なんてことはないでしょう。どんな確率ですかそれは。ただでさえ私が転生者ってことすら信じ難いことなのですから。もしかしたらこの記憶も全て私の妄想では?と思ったこともありましたからね。
「そろそろ自分の世界から戻ってきてもらえるかしら?」
「おっと、すみません。とりあえず私が彼女に感じたものはコレくらいですかね」
「ありがとう......やはり警戒はしておいて正解だったか」
「大声で正義やら自由やらを叫ぶ人は信用しないほうがいいですよ?」
「お前が言うな」
「いてっ」
そんなこんなでレユニオンに協力することになってしまった私ですが、この後、地獄を見ることになりました。
積み重なる死体に、今なお響く悲鳴に笑い声。そして感染者の勝利を讃える歓声。かつて見た惨劇そのままの光景です。
それを見て、またトラウマを呼びおこされて吐くことになったのは想像に難しくないでしょう。
そして、再度私の行ったことの重大さと、その罪を再確認することになりました。
そして、それを自ら償うことの大切さを。
いや、償いなどと言う綺麗事ではありません。
後始末。たとえそれが自分の罪の意識を薄めるための自己満足だったとしても、これ以上の犠牲を出さないために必要な行為だと再確認したのです。
私がすべきことは二つ。
感染者、非感染者問わずこれ以上の犠牲を抑えること。
そして“家族”を全て守ること。
リュドミラも、レティシアも.......これから知り合っていく人たちも。
これは私の果たすべき責任だ。
だから、今はレユニオンに従おう。改革は内から。定石だろう?
.........テキサスになんて言い訳しましょうか
ということレユニオン生存ルートには必須な情報整理な話でした。
ちょっとご都合主義あった気がするけど気にしないでください。
イネスの“影が二つ”とかの情報貰っとかないと黒蛇とかわかんないからね。
ちなみにクラスレねきはアルちゃんという前例からタルタルを警戒していました。やったね!初めてテメーの行いが役に立ったよ!!
(各キャラからの印象)
クラスレねき<心強いけど複雑な気分。
レティシア<警戒心MAX
W<使えそうな駒
タルラ?<ウルサスの都市壊しやがったなこの野郎
???<わぁ、生の英雄だ!想像してたのとは違うけどもしかしたら...