脇役になりたくないTS転生者   作:有機栽培茶

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思わぬ帰宅

バタバタバタバタ、

未だ日も登っていない、そんな静かな朝に騒がしい足音が鳴り響く。

 

 

「大変だ!ボス!!」

 

「んぁ〜?なんだよ朝から騒がしいこっちは眠いんだ」

 

 

溜まりに溜まった書類の山の中で1匹のペンギンがあくびをする。

こんななりだが、別に夜遅くまで仕事をしていたというわけではない。

ただそこに暖かそうな布団(書類の山)があったからにすぎない。

 

 

「いいから起きろ!!」

 

「なんだよ.....うぐぁ!?」

 

 

何かが顔に押しつけてられる。

それを手に取り、確認してみるとどうやらそれはタブレットだった。

確かフォルダにテキサスが大量のアルマの寝顔を保存していた機種の()()()()だろう。

 

 

「なんだー?こ.........れ...........」

 

 

言葉が途切れる。

そこに映し出されていたのは炎上するウルサスの移動都市チェルノボーグと、それは感染者の暴動によるものだというテロップ。

 

そしてエンペラーは思い出す。

 

 

 

「......あれ?アルマを送ったのってどこだっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあこれからよろしくっス!先輩!」

 

 

血と焼け焦げた後の残る廃都市にふさわしくない元気な声が私の鼓膜を震わせます。

 

今更ながら幹部格だと知った彼女たちとの情報交換の後、出した結末は“警戒を続ける”。それだけでした。

彼女が何者で、いったい何を企み、何を望むのか。

さまざまな不安要素だけが積み重なってゆくだけでしたが、無意味ではなかった。

 

“知らない”と“わからないが”は全然違う。

少なくとも、知りさえすればそれが何かわからなくとも何かしらの行動を起こせるのですから。

 

そんなこんなで無事話し合いを終えた後、未だ痛む傷口を抑え廃屋を出た私を出迎えたのはレティシアでも、まだ見ぬ他の幹部でもなく....

 

 

『再びすまないな。一つ、いや二つ忘れていた』

 

 

あの龍女でした。

あまりの気配のなさに心臓が飛び出るかと思いました。

まさか会話が聴かれていたのか。そんな思考が私の頭に湧き出てくるよりも前に彼女は話し出します。

 

曰く───お前は感染者の英雄だが、非感染者の社会に身を置いていた身。レユニオン内でのことでわからないこともあるかもしれない。それに傷も治っていないだろうから治療アーツを使える者を専属の部下としてつけておこう。

 

まあ、要は監視役ですね。

彼女がクレアスノダールの真相をどれ程知っているのかはわかりませんが適切な判断です。私は到底信用に足る人間ではない。

 

そして、場面は冒頭に戻る、ということです。

 

 

「えーっと、ではお名前を伺っても?」

 

「タチアナっス!19歳!性別は女性!特技は早食い!好きなものは猫ちゃん!嫌いなものは非感染者!バストは──

 

「いいいから!そこまでの情報はいりませんから!!」

 

「自分!先輩の武勇伝を聞いてからずっと先輩に憧れてたっス!みんなを率いて非感染者の都市一つ落としたとか....!でもクラウンスレイヤーやレティシアのケチンボは全然教えてくれないっス.....だから!先輩のお話をたくさん聞かせてほしいっス!!」

 

「あーはいはい、わかりましたよ。また今度しましょうか」

 

「約束っスよ!!」

 

 

どうやらこの女性、なかなかに面倒臭そうです。

 

 

「回復系アーツもバッチリっス!怪我した時は任せてくださいっスよ!」

 

 

ただ、利用できるものは利用しましょうか。

 

そしてもうひとつ。

タルラさんに言われたのはとある幹部に顔を合わせておいてほしいというもの。なんでも“次の作戦”で共に働いてもらうかもしれないと。

レユニオンに参加したばかりの私を作戦に参加させるあたり戦力が足りていないのは事実なのでしょうね。

そもそもの話、ウルサスの都市を落とした彼らがすべき更なる任務とは、という話ですが。

 

都市を落とし、非感染者を虐殺した時点で復讐はなし得たのではないのでしょうか。

 

 

「おや?あれは...」

 

「レティシアさんっスね!!」

 

 

少し離れたところに白髪と黒髪の少年と楽しそうに話す彼女の姿が見えた。

 

 

「またねレティ!」

 

「....また」

 

「ああ、またな」

 

 

彼女もこちらに気がついたようで、少年たちに手を振ってこちらに向かってきた。

 

 

「話し合いは終わったのかよ」

 

「ええ。できれば貴方を交えて話したかったのですが」

 

「誰がテメーなんかと話すかよ.......それに俺が知ってるのはほとんどアイツと同じだしな」

 

「....とりあえず話し合いの内容は後でリュドミラから聞いてきてください。今この場で話すようなことじゃない」

 

「.......ああ」

 

 

変わった。

それが私が彼女に再会して初めて思い浮かんだ言葉だった。

かつて無邪気に笑い、子供故の残酷さと、育った環境故の弱肉強食思考を持ちながらも家族を大切にし、雛のように私の後を義弟と共について回ってきたあの頃の彼女はもういなかった。

 

成長した彼女から無邪気さは消え失せ、乱暴な言動の裏にはちゃんとした自らの考えを持つようになっているように見える。

2度と騙されないように。大切なものを自らの手で守れるように。

年月が彼女を変えたのか。

 

否。

 

私が彼女を歪めたのです。

私のせいだ。

 

 

「....先程の子供たちは?」

 

「イーノとサーシャ....あれでも幹部だ」

 

「そう...ですか」

 

 

子供が戦場に出る。

それは過去も、そして数年の時を得た今でさえも変わらない。

 

子供が自らの意思を貫き通すことができる。

 

そういえば聞こえはいいのかもしれない。

だが、そんなことができるのはごく少数。私のように前世の記憶を持ったイレギュラーや、レティシアのように強力な力を持った一握りのみ。

だが、そんな少数でさえも弱者であることには変わらない。

転生者である私でさえ幼さゆえに利用されて育てられ、レティシアは強力な力を持ちながらも私に利用され弟を失った。

 

それに、子供は本来大人に守られて、愛情を注がれて育てられるべきではないのでしょうか。

 

どんな世界でも、どんな力を持っていても、子供が戦場に出ていい理由にはならない。

 

 

「.....」

 

「しっかりしろ。お前がこれから会いにいくやつも子供だ」

 

「....ええ、そうですね」

 

 

静かに拳を握りしめる。

それを、彼女たちは静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「あんたがフェイスレスか」

 

 

ガスマスクにフード。その身に似つかわしくないタクティカルベストを身につけた子供。それが、私が行動を共にすると言われた幹部の1人、スカルシュレッダーの姿だった。

 

幼い。

 

未だ声変わりが来ていないのか中性的な声と、私の胸ほどまでしかない身長からも子供だとわかる。

にも関わらず多くの感染者から支持を受け幹部の地位に身を置いているのだという。

 

 

「そういう貴方はスカルシュレッダー、であっていますか?」

 

「ああ」

 

 

レユニオンの幹部は子供ばかりなのか。

あの2人も、目の前の子供も、レティシアだってまだ子供と言っていい年齢でしょう。

 

...あまり、気分のいい話ではありません。

 

 

「思っていたよりも弱そうだな」

 

「あー!そんなこと言っちゃいけないっスよ!この方は偉大なる先導者様なんスから!.....自分も少し思ってましたっすけど」

 

「タチアナさん?」

 

「なんでもないっす!!」

 

 

それにしても....

 

 

「次の作戦というのはなんですか?タルラさん曰く私は貴方の下で働くことになるようですが...」

 

 

そう、何も聞いていないのです。

どこで、誰と、何をするのかすら。

報連相はしっかりしていただきたい。

 

 

「.....龍門だ」

 

「ああ、龍門ですか」

 

 

あーはいはい。龍門ね。

龍門........ロンメン........ろんめん..............

 

 

「龍門!?」

 

「そうだが...何を驚いている?」

 

「耳元で叫ばないでほしいっス」

 

「龍門にまで手を出すつもりですか!?」

 

「ああそうだ.....確かお前はこれまで龍門にいたんだったか。友人でもいるのか?」

 

「別にそういうわけでは.....いや、正直に言えば、います。ですが私が言いたいのはそこではありません。わかっているのですか!?龍門はこのチェルノボーグほどうまくはいきませんよ!?」

 

 

まず手札がばれている。

おそらく、このチェルノボーグにも龍門や炎国の者は少なからず滞在していたのだと思います。付近をルートとする他国の移動都市を監視する目的で。

 

そして当然、その都市で異常が発生すればその情報は即座に伝達されるでしょう。レユニオンがどうやってチェルノボーグを落としたのか、その戦力はどれほどのものか。それらの情報を踏まえ彼らはすでに警戒し対策を始めていることでしょう。

 

そんな龍門を落とすことはチェルノボーグで兵を消費したレユニオンには難しい。それは私が加わったとしても変わりはない。

 

 

「....だとしても、龍門が感染者を差別し排他する都市である以上俺たちが手を出さない理由はない」

 

「ですが.....」

 

「だが今回は違う」

 

「......と、いいますと?」

 

「今回俺たちがすべきことはある人物の保護だ」

 

「なぜそのようなことを?」

 

「その人の父親がこの移動都市チェルノボーグにおいて公明な科学者だったから、だそうだ。詳しくは知らない。だが───」

 

「だが?」

 

「その人が俺の、姉だからだ。俺の理由はそれだけで十分だ」

 

「なるほど」

 

 

姉弟愛ですか。

 

 

「....ふふ」

 

「...何がおかしい」

 

「いえいえ、どこもおかしいところなどありません。ただ...姉のため.....復讐でも正義感でもなく、たったそれだけの理由で全てを跳ね除けた人を思い出しましてね....」

 

 

本当に................?何か悪寒がします。

首元の首輪が妙に冷たいです。

でも、肉親を愛する気持ち、それはかつての私には理解し難いものでしたが、今ならわかります。若干の恐怖心はありますが、私は彼女をはっきりと愛しているといえる。

 

....もちろん家族愛ですよ?

 

 

「そうですね...手伝いましょう!!私の全力を持って貴方の姉を救出しましょう!!」

 

 

ですから、まあ、今は彼に協力しましょう。

彼がちゃんと姉と再会できるように。私もその下準備に協力しましょう。

 

 

 

──ありがとう──

 

 

マスク越しにつぶやかれたその言葉に私はにっこりと笑顔を返します。

 

.....そんな言葉、私には言われる資格もないのに。

 

 




アル「やったるで!!」→アル「もう無理や死にたい」
私の中で半ば固定化されているこの流れ、なんとかしたいですね。


あと私実はハーレム否定派の人間だったんですよね。
なんだよ!推し一人いれば十分じゃないか!!って思ってたんすけど...無理っスね。書いてればわかります。書けば書くほど推しが増えていく。
魅力的なキャラを量産するアークナイツが悪いんだ!!(責任転嫁)

まあ一番の推しはテキサスですけどね!!!!!
けど一番故に描きずらい....納得のいく推しがかけない.....

わかるこの気持ち!?
だから私は雑な扱いをしても許されるオリに走るんだ!(言い訳)
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