脇役になりたくないTS転生者   作:有機栽培茶

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ゲーム的に言ったらスカルシュレッダー君と一緒にイベントボスが襲いかかってくるレベル。ただし特定のキャラクターにはアホみたいな補正が入る。

ちなみにメインで一番好きなボスはスカルシュレッダー君。何あの変形グレラン刀。ロマンの塊じゃん。あと足がいい。



混戦

 

 

「重装歩兵隊は塹壕まで後退!!射手はできる限り援護しろ!!術者はアーツの用意を!歩兵隊は物資を砲兵に運べ!!イワンさん!後30秒で砲撃が始まります!兵を率いて撤退を!怪我人は後方の医療部隊へ!」

 

 

予想通り足止めとして配置されていたWの傭兵団は全滅。

敵は我々の本隊と接敵。

採掘場は戦場と化していました。

 

しかし掘り進められた地下空間からの強襲は成功。

お陰で戦場は混乱し、敵部隊の術者や射手は味方への誤射を恐れてか手は出してくることはなく、手強い近衛兵相手にも複数人で対応したり、ひたすらに時間稼ぎを目的として防御に徹することでなんとか戦線を保てています。

 

そして敵側がうまく進めず四苦八苦する中、私たちは体制を整え塹壕戦の用意をし、敵の進行を抑えている彼らの撤退を見計らって砲撃を開始。塹壕戦に持ち込みます。

人員だけは無駄にいる兵を使用する消耗戦に持ち込むのです。

おそらく多くの血が流れることになるでしょう。

 

同胞の仇とばかりに突撃するスカルシュレッダー君のおかげで戦線自体はむしろ押し返しているくらいです。味方の誤射が怖いところですが彼は気にする様子もない。それほど彼らを信頼しているのでしょうか。

しかしこれは撤退戦。

あまり突撃しすぎるのはいいことではない。

それにここで彼を使い潰すわけにはいかない。

 

 

「スカルシュレッダー!そろそろ一斉砲撃が始まります!下がりなさい!巻き込まれますよ!」

 

『っ!くそ!わかった!!』

 

 

意外なことに素直に下がってくれました。

なんとかこの状況を保てているのは彼らが私の指示を素直に聞いてくれていることもあるでしょう。こんなところで先導者の肩書きが役立つとは思っていませんでした。

 

しかしこれもあまり長くは持たないでしょう。

一人で戦線を維持していると言ってもいいほど活躍しているスカルシュレッダーの体力もいつかは尽きます。塹壕戦に持ち込むにしても物資があまりにも足りない。また、前世に比べこちらには“銃”という使えば子供でも人を殺せるような万能兵器は存在しません。

ゆえに数少ない術師と射手で対応しなければならない。

このまま突撃して戦うよりかは時間が稼げるでしょうがそれも大した差にはならない。

 

それにこれはまだ先遣隊でしょう。直ぐに本隊が来る。それまでに撤退しなければならないのですが.....

 

 

「砲撃用意!!打───────

 

「させると思うか?」

 

 

どうやら時間切れのようですね。

 

 

「くっ....」

 

「フェイスレス!?」

 

 

血飛沫と同時に、己の左腕が吹き飛びました。

遠方からの攻撃ではない。斬撃。

 

 

「敵襲!!フェイスレスを守れ!」

 

「邪魔だ!」

 

 

見落としていたルートがあったのでしょうか。

まさかこちら側も強襲を受けることになるとは。

しかも、貴方のような強敵に。

 

 

「命まではとらん。だが、手足の一二本は覚悟してもらおうか」

 

「忠告が、少し遅いのでは?」

 

 

戦場は血に濡れてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

「感染者の英雄....先導者フェイスレス、か」

 

 

ロドスのリーダーと言える3人の人物のうち、その一人。

ケルシー医師がホワイトボードに貼り付けられた写真を見ながら呟いた。そこに写っているのは目の下にクマを作り、疲れた顔をしながら買い物かごを持つ黒髪のループスの姿。龍門、いや、ペンギン急便が秘匿し続けてきた大犯罪者の写真だ。

 

 

「あの、ケルシー先生、この人は?」

 

「...アーミヤ、ウルサス政府によって隠蔽された移動都市クレアスノダールの悲劇の真相は知っているか?」

 

「い、いえ」

 

「そうか......なら、この機会に知るべきだろう。かの都市は感染者の蜂起によって地に落ちたと言うことを」

 

「え!?」

 

 

クレアスノダール事変。

ウルサスにとっての汚点にして感染者達にとっての自由への起点。

ウルサスが闇に葬り去ろうとしたその事実は情報収集のため滞在していたロドスのエリートオペレーター、Scoutが持ち帰った情報によってその真相は明らかにされた。

抑圧された感染者達は一人の女性によって解放された。

自由と平等を掲げ、感染者にも幸せを得る権利があると主張し、都市を火の海に沈めた。

駐屯軍は感染者達の強襲と、仲間の裏切りにあい暴動が開始された数時間で指揮系統が崩壊。自警団はろくに抵抗もできず虐殺された。

驚くべきことに感染者達はクレアスノダールの5区画のうち4区画を1日もたたないうちに占領した。そして滞在していた元ウルサス軍少尉ジャスパー・ランフォードが守る残りの一区画も、どちらが使用したのか、謎の生態兵器の暴走によって壊滅することとなった。

 

そしてその後、原因不明の爆発によって都市機能は停止。

移動ルートがずれていたことにより天災に遭遇してしまい、移動都市クレアスノダールは正真正銘の地獄となった。

 

 

「それを...実行したのがこの人なんですか?」

 

「そうだ」

 

 

感染者を導き、希望をもたせたもの。

聞こえは良いが実際に彼女が行ったことは虐殺の教唆。

そして破滅への扇動。

彼女らロドスの目指す先とは似て非なるもの。

 

そんな彼女は今日この時まで死んだと思われていた。

あの天災に巻き込まれて死亡したと。

だが彼女は生きていた。ウルサスについての情報と、龍門への協力を条件に、ペンギン急便と龍門に匿われて。

 

しかし彼女はその約束を破り、レユニオンと手を組んだ。

これは彼女と直接対峙した近衛局隊長チェンと、なぜか彼女の現在位置を把握していたペンギン急便のテキサスからの情報で明らかになっている。

 

そこにどんな事情があったのかは分からない。そこにあるのは“フェイスレス”という罪人が我々の敵として現れた事実のみ。

 

 

「でもさ、ケルシー。その人がゾーヤ......アブサントちゃんを助けたんだろ?そんなに悪い人なのか?」

 

「....ドクター」

 

 

黒尽くめのフードを被った不審者...ロドスのリーダーと言える3人のうちの一人、ドクターがはいはい!と手を挙げてケルシーに物申した。

ドクターは先日のチェルノボーグ事変の際、チェルノボーグに存在する“石棺”という施設からロドスのメンバーによって救出された人物だ。

しかしレユニオンの暴動と重なり不備があったのか、はたまた最初からそうだったのか。ロドスの頭脳とも言えるドクターは記憶喪失となっていた。

しかしその指揮能力は健在。

だが───

 

 

「ドクター、余計なことは考えない方がいい。やつはお前が思っているような人物ではない」

 

 

甘い。以前のドクターを知っていたケルシーにはそう感じた。

人殺しを嫌い、仲間を駒のように使うこともしない。

人としては正解だが、指揮官としてはどうなのか、と。

 

そしてケルシーは知っていた。

彼女、フェイスレスの本性を。そして彼女が犯した罪を。

他人を駒としてしか見れず、他者の幸せを良しとせず、家族をひどく憎む。少なくとも“以前の彼女”はそうであったと聞いている。

Scoutやエンペラーから聞き出した事実だ。

例えその後の彼女がどれほど反省していたように見えても、それがただの演技の可能性もある。そうケルシーは聞き出した彼女の人物像から予想していた。

 

 

「先導者フェイスレス。奴を用意できうる最大限の戦力をもってして討伐するんだドクター。下手な情けはかけるな」

 

「......わかった」

 

 

 

 

 

 

「フェイスレス!!」

 

「スカルシュレッダー!指揮を!頼みます!」

 

「まて!俺も....くそ!邪魔だ!!」

 

 

ボタボタと小さな赤黒い血液が切り口から溢れ出します。

これは予想外。陣形はしっかりと機能していたはず。

回り込むこともできぬように左右をそれなりの人数で囲んでいたはずです。

 

 

「どうやってここまで...?」

 

「切った。邪魔するものは全て」

 

「.....は、ははは。冗談でしょう?」

 

 

冗談ではない。

彼女の二本の刀のうち一本からこぼれ落ちる鮮血が物語っている。

はは、本当に冗談だと言って欲しいものです。

雑兵とはいえあれほどの数をたった一人で?それでいて息も切らさず傷ひとつない。化け物じみていますね。これはもうチートと言っても良いのでは?

 

 

「大人しく投降しろ。そうすれば命だけは助けてやる」

 

「そういって、いったい何人が武器を捨てましたか?」

 

「..........」

 

「ふっ、でしょうね」

 

 

傷口から溢れ出す血液に混じる源石を活性化。

傷口を源石で塞ぎます。

おそらく、ここで私が彼女を抑えなければ戦線は崩壊する。

いや、既に崩壊しているのかもしれないですけどね。

 

 

「邪魔をするなロドス!!」

 

 

遠くで破裂音が聞こえます。

既にロドスまで合流しましたか。

ここが限界でしょう。

これ以上この雑兵達で抑えるのは無理です。

このままでは私たちも危ない。スカルシュレッダー君を連れて撤退したいのですが....まあ彼女がさせてはくれないでしょうね。

 

 

「援護するフェイスレス!!」

 

「やめなさい。貴方達はスカルシュレッダーの援護へ」

 

「だがその怪我では」

 

「行きなさいと、言っているのです!」

 

「っ!....すまん!」

 

 

出来るなら彼らを使ってチェンさんを足止めしたいところですが、はっきり言って無理でしょう。数分稼げるかどうかも怪しい。それならスカルシュレッダー君を守りに行ってくれた方が助かります。

私の戦い方は足手まといはいない方がいい。

 

 

「これは、お前という悪から目を離した私の責任でもある。今ここで、必ず捕らえさせてもらう」

 

「ふふふ、怖い、ですねぇ!」

 

 

源石剣を抜刀。

先ほどの一線で耐久面が少し心配ですがもう少し頑張っていただくとしましょう。

 

 

「さあて!一仕事行きましょうか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」

 

 

その声に、私は気づくことができませんでした。

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