「数は!?」
「10以上!奴ら本気で俺らを潰す気だ!」
場の混乱は広がってゆく。
ウルサスの雪原に置いて白い悪魔と呼ばれたスノーデビル小隊が力を合わせてなんとか撃退することのできた存在が倍以上の数を成して襲ってくる。あまりに絶滅的な状態。中には絶望して頭を抑え蹲るものもいる始末。
「各員、傾聴せよ」
だが、冷たく、静かで、そして妙に響き渡るアルトの声が聞こえた瞬間に騒音は止んだ。
「敵は強大にして多数。それに対し我々の部隊はほぼ壊滅。まともな戦力はフロストノヴァ率いるスノーデビル小隊のみ」
光を失った瞳が平坦な声を発しながら周囲を見渡す。かつての先導者のように演技がかった大袈裟な動きはなく、淡々と言葉を述べてゆく。
「戦力差は絶望的。今の我々に勝ち目はほぼないと言える。そして、ここにいるほとんどのものは生き残れないだろうな」
「だが、私は最後まで足掻こう。両手を切り取られようと、両足をもぎ取られようと、私はこの口で奴らの喉元を食いちぎろう。この両目で睨み殺そう。私はもう諦めない。私には目的がある。守るべき者がいる」
硬質で、深く闇の篭った瞳はしかし、確かな決意を兼ね備えていた。
「私は家族を守る。これは償いであり、決意だ。そしてこれは、決定事項であり、すでに定められた未来でもある。私は家族を守る。最後の一人になろうとも。この命が燃え尽きようとも」
それはその場にいる皆に言い聞かせると同時に、自身に言い聞かせるような言葉でもあった。これは“自分“というものを確立できなかったかつての癖であり、新たな自分を作り上げまとめ上げるために必要な儀式である。
不安定な彼女はもういない。そこにあるのはただ一つの強固な意志だけだ。
「…このまま虫のように殺されてもいいと言う者は逃げればいい。だが、少しでも足掻きたいと思う者がいるのなら私に手を貸せ。その命を私に差し出せ。私の道具となれ。私が──
静かに、しかしはっきりと彼女は言い切った。
静寂が場を包む。
当たり前だ。彼女はこう言っているのだ。自分の家族のためにお前らが死ね。せめて死に場所は用意してやると。状況が状況とはいえそんな提案が簡単に飲めるはずがないだろう。
「私たちはお前に従おう」
しかし、初めに沈黙を破ったのは彼女の言葉への不満ではなく、肯定であった。
「フロストノヴァ」
「だが勘違いするな。お前が私たちを利用するように、私達もお前を利用するだけだ」
「構わない」
「…俺もやるぞ、やってやる」
この場において多くの者達の精神の支柱となっていたスノーデビル小隊のリーダー、フロストノヴァが私の言葉に賛同したからだろう。次々と声を上げる者達が現れた。
「やってやる!こんなところで死ねるか!」
「まだ俺ぁレユニオンのクソまずい飯しか食ってないんだ!もっとうまいもん食ってから死にてぇ!」
「俺も死ぬなら姉さんの太ももの上で死にてぇな。顔も見えない化け物どもに殺されるのは嫌だ」
「俺、この戦いが終わったらタルラ様に告白するんだ」
皆が皆、それぞれの生きる理由を上げていく。非感染者への恨み。この世への未練。あとその他のくだらない欲望。どうやらみんな私の道具として死ぬ気はないようだ。でも構わない。私に従ってくれるならいい。抵抗しようと立ち上がってくれるのならそれでいい。
しかし…はは、私の言葉なんかで立ち上がってくれるなんてね。まだ先導者っていう肩書きは健在だったのかな。それとも……
私には彼らが少し眩しく見えた。
「フェイスレス、指示を出せ。私達はお前に従おう」
「…ああ、そうだね」
よし───やろうか。
「近くに私が先ほど利用したメフィストの家畜の生き残りが数体いるはずだ。スノーデビル小隊はソレを出来る限りたくさん誘導して私のところに連れてきて欲しい。元CiRF組は二手に分かれて一方はそこら辺に落ちている源石を集めて───」
各員に指示を出してゆく。この場で最大火力を出し得るフロストノヴァの体が予想以上に源石に蝕まれていて使い物になりそうにないことは残念だったがスノーデビル小隊はフロストノヴァ抜きにしても優秀な部隊だ。それに元CiRF組もあの事件からここまで生き残ってきた生存能力も考えてなかなか使える。”家族“である彼らにはできる限り安全圏に逃げて欲しいが今は人手が足りない。少し手伝ってもらう。
「…なあ、フェイスレス。さっきお前が言っていた家族っていうのは…」
そうやって指示を出しているとクラウンスレイヤーが話しかけてきた。彼女には感謝しかない。私のことを恨んでいるだろうに、ここまで協力してくれるなんて。しかし…不思議なことを言う。
「?貴方のことですが」
「……!?な、な!?何を!?」
「…ああ、いや。すまないあまり良い表現ではなかったね」
「そ、その、か、家族なんて、そんな…こういうのはもっと段階を踏んでからだな… 」
「お前達を裏切った私が使っていい言葉ではなかった…これからは別の言葉で読んだ方がいいか」
「い、いや!別に構わない!」
「そ、そうか?ありがとう、リュドミラ」
「っ〜〜〜!?!?」
何やら煙を上げているが…怒らせてしまったか。そうだよな…嫌だよな…私は裏切り者なんだ…そんな奴に家族だなんてな……きっと彼女は私に気遣ってくれたんだろう。ソレにさっき情けない姿を見せた時も激励をくれたし、頑張らなきゃいけない…ですね。
「おい、お前達のリーダー大丈夫か?」
「いや、重症だな。あの人一回裏切られたってのにまだ懲りてなかったのか」
「クレアスノダールの頃からあの人たち結構距離が近かったからな。フェイスレスもあの人には結構砕けた感じで話してたし、あれも演技のうちだったんだろうけど…見事にかかっちゃってんだよなぁ」
「うちのリーダーを毒牙にかけやがって。またあいつの罪が増えた」
何故か罪が増えた気がします。しかも多分冤罪。
まあこれ以上増えても大して変わらない気はしますが…
「さて、私は私の仕事をしましょうか」
これからくる敵さんには少しばかり痛い目にあってもらいましょうか。
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影衛
龍門の影であり、裏から龍門を支える者達。
表向きに龍門の守護者とされる近衛局以上の力を持ち、ウルサス帝国の近衛兵、皇帝の利刃にさえ匹敵する実力者集団。そして龍門の利となることならば時には非合法的な、論理から外れた行為も辞さない冷酷な殺人鬼。
彼らはスラム街に潜伏していたレユニオンの協力者や侵入してきた多くのレユニオンを排除し、たった今龍門にとって最大の警戒対象である“クレアスノダール事変主導者”、『先導者フェイスレス』の討伐を命じられていた。
都市に潜む感染者集団を導き、たった1日でウルサス帝国の中規模移動都市を陥落させた危険人物。指揮官としての力だけでなく、近衛局の集めた情報から本人のアーツも強力であることが判明している。下手を打てば自分達が彼女の人形として利用される可能性すらある。しかし彼女は度重なる戦闘で傷付き戦闘不能の一歩前の状態。
絶好の機会。
彼らにそれを逃す選択肢はなかった。
「目標を確認」
まるで機械のような淡々とした口調で仲間に指示を出す。
「目標は一人。所要時間約16分。行動開始」
血に濡れた凶刃が
その時だった。
「範囲内への侵入を確認──爆破──」
聳え立つ二本の摩天楼が火を吹いた。
「!回避!」
地響きと共に崩壊を開始したビルに巻き込まれ数人の影衛が姿を消したが、彼らは止まらない。さらに速度を加速かせ、彼女に迫る。
しかし彼女もそれだけでは終わらない。
「第一、第二回路起動。起きろ」
「お゛Aあ゛ァaァ亜ァァ!!」
瓦礫の影やそこらに放置された死体が動き出し、襲いかかる。
動き出すと同時に体から突き出た源石が全身甲冑の様にそれらを覆い出す。隙間はほとんどなく、殺害するには時間がかかるだろう。だが時間をかければ倒せないほどではない。だが時間をかけるのは愚策。故に彼らは装甲の隙間から手足を切り落とし無力化する。
その間僅か数秒。しかしその間に彼女の準備は完了していた。
「迎撃開始」
浮遊する武器をかたどった複数の源石塊が彼らに襲いかかる。しかしそれらが彼らを貫くことはなくあっけなく弾かれる、が────
「起爆」
「なっ!」
赤白く輝き、瞬間体積を増したそれは身を焼くほどの熱量を発しながら破裂する。高純度の源石や特殊な加工が施された源石は刺激などの外的要因で衝撃を与えられると内部エネルギーからの耐えきれなくなり爆発を起こす。それを利用したものがレユニオンの幹部Wが使用する爆弾の様な源石爆発であり、これはその高火力広範囲版である。
人の背丈ほどの源石が内部に溜め込みきれなくなったエネルギーの解放。それが生み出す破壊力はたとえ影衛であっても直撃すれば耐えられない。
「アハハハハ!芸術は爆発だ!…なーんてね」
「っ……」
「それで…まだやるのかい?」
口元に弧を作り彼女は笑かけてくる。
嵌められた。おそらくこれらの攻撃はフェイスレスのアーツによるものだろう。傷付き損傷したフェイスレスにはこれほどの力はもう残っていないはずだった。だが、事実彼女が失ったはずの両腕は健在で、こうして楽しそうに彼らを嘲笑っている。
対する彼らは半数を喪失し残った戦力も損傷している。
「……撤退する」
彼らは引くことを選んだ。
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「………」
敵は去ってゆく。
彼方には被害を与え此方は傀儡兵が使い物にならなくなった程度。被害と言えるものではない。
「………ふぅ」
作戦は成功であった。
「…生きてる」
生きている。生き延びた。
「やったなフェイスレス!完全勝利だ!」
「やるじゃねえか!英雄の肩書きは伊達じゃないってか?」
後方に避難していたスノーデビル達が出てきて肩を叩く。その賛美は嬉しい。だが、その言葉には一つの間違いがあった。
「ゴボッ」
「フェイスレス!?」
血反吐が口から漏れ出る。
地面に膝をつき、手で口元を押さえるが溢れ出る赤黒い液体の波は止まらない。そう、私は全然余裕ではなかった。欠損した両腕は源石と包帯で偽装しただけだし、あのいかにも余裕そうな嘲笑も全然余裕じゃなかった。痛覚の鈍った私でも感じるほどの痛みに脂汗がドバドバだった。
私の体はもう限界だ。
内臓は現時点で殆どが源石に犯され、こうやって溢れ出す血液だって血中に源石が混ざってドロドロでほぼタールの様な色合いと粘り気だ。正直生きているのが不思議なくらいだけど…:そこら辺はアーツと気合いでなんとかしている。というか多分アーツを解除したら即死する。でもアーツを使用し続ける限り源石は成長し続け、死に近づいていく。つまり死ぬのは時間の問題ってことだ。
…仲間のために死ぬ。本望じゃないか。恐怖なんて感じない。強いて言えば彼女達を逃し切るまでこの体が持つかどうか。
そして、私はまだやれる。
「…スノーデビル一号、すみませんがフロストノヴァ達のところまで連れて行ってもらっていいですか。ちょっと腰が抜けてしまいまして…ハハ」
「腰が抜けたどころじゃ……」
「…お願い」
「……わかった」
戦いの終わりはもう近い。
・影衛さんが負けたのは作者があの人たちの実力を把握できていないから。あのクソほど強いボスの利刃さんに格上ムーブして?ゲームでは雑魚敵として出てくるスノーデビル小隊に追い返されて?同じく撃退された利刃さんと同格かそれ以上?ゲームとのスペックは違うんだろうけど実際どのくらいの実力なんだろう。
・キャラの屑への好感度が高いのは彼女の優しさ()と救世主ムーブ()とテキサスフェイスのせい。あんなイケメンループス顔、惚れないわけがないんだよなぁ。私は惚れた。
好感度順(しゅきぃ→尊敬)
テキサス>>>>|超えられない壁|>ラッピー、モッさん>エク>>おチェンチェン、クラスレ >メフィファウ、スカシュレ’s> ノヴァネキ、スノーデビル、たるぅ、レティ >CiRF構成員(死亡&本性未確認)
複雑
アブサント、元CiRF’s
普通or警戒orあんま好きじゃない
パトおじ、ジャスパー、アイン、元CiRF構成員、龍門おじさん’s
加減突破
タルラ(?)、リスタ、その他