私は、屋上からしっかりと彼女たちの戦いを見ていた。
手に握っている眼帯の紐が微風で靡く。
「あっ」
宵月先輩が吹き飛ばされたところで、思わず声が出る。
まさかあの宵月先輩が……。
確かに、恵梨香さんもAクラスに入ってるだけあって強いのだけど……だとしても、こんな事になるなんて。
「よかった……」
……だが、流石は私の憧れの人。
すぐに立ち直し、恵梨香さんを逆に気絶させてしまった。
それにしても、まさか宵月先輩が二重属性持ちで、さらに私と同じ氷属性だとは思わなかった。
あ、そう言えば昨日の……。
なるほど。
宵月先輩も氷属性が適合属性だから、昨日私が間違えて氷属性の術式を書いてしまったのを指摘できたのか。
おかしいとは少し思っていた。
普通、自分の適合属性以外の術式を把握してる人なんていないから。
一つ疑問がはれたところで、私は屋上を去ろうとする。
すると、横から声を掛けられた。
「意外とその目、使いこなしてるんだね。氷華君」
「……いつからいらっしゃったのですか、学園長様?」
横を見てみれば、学園長の姿があった。
私を無理矢理宵月先輩のバディにしてくれた人だから恩人ではある……が、警戒しなければならないと本能が訴えかけてくる人でもある。
「いやぁ、最初からだとも。そもそも、君のその目を監視するように国防軍司令部と管理局の連中からも言われている……と、初日に説明したはずだ」
「……別に覚えてますよ。まさか、物理的に監視しているとは思わなかっただけで」
私は、眼帯を付け直しながらそう言う。
「ま、私もここらで去るさ。別に普段は、魔術を使って監視してるからね。……一応、警告しておく。その目は、人の身には過ぎたものだ。あまり使い過ぎない方がいい」
「……警告ありがとうございます。では、お先に失礼いたします」
私は、今度こそ屋上を後にする。
「……本当に分かってるのかねぇ。ま、後は宵月瑠奈に任せるが」
「待たせたね、胡桃。それで、聞きたい事って何?」
お手洗いにある水道と鏡、そして私の火属性魔術を駆使してなんとか自分の汚れた制服をある程度綺麗にして来た私は、保健室に戻って来た。
ちなみに、髪の毛は手櫛でできる範囲でなんとかして来た。多少はねている箇所があるが許して欲しい。
チラッとベッドの方を見る。
恵梨香はまだ寝ているらしい。
毛布にくるまって寝ている。
休み時間が終わるまでに起きればいいけど。
「……宵月さん、本当のことを教えてください。何故、あなたは今日、その剣を使わなかった……いや、使えなかったのですか?」
胡桃は、私の腰に差してある剣を見ながらそう言う。
……やっぱり、それか。
仕方ない、少しばかり答えるとしよう。
「ねぇ、胡桃」
「なんでしょうか?」
「2年前の事件、覚えてるかしら?」
「……えぇ、もちろん。あの原初派による学園強襲、ですね。私はあの時別の任務についていたので詳しくは知りませんけど。軍事機密に指定されてますし」
「あの時、私はね……流星を見たのよ。一閃の、美しくも儚い、流星を」
私は、前髪の先を指先で弄りながら、2年前の事件を語り出した。