「……ここよ」
そう言いながら、私は目の前にあるおおよそ日本にあるのが場違いな感じのする西洋風のかなり大きめな屋敷を指差す。
私たちが、学生寮から歩いて15分ほどで着いたこここそが……。
目的地の、私の実家である。
「うわぁ、凄いですね。財閥令嬢の実家なだけあって、やっぱり立派です!」
「ハハ、まぁ別に私が凄い訳じゃないけどね。ちょっと待ってて」
かなりはしゃぎ気味の氷華を横目に、敷地への正面入り口前にある巨大な門、その横にあるインターホンを押す。
ピンポーンと言う、どこの家でもあまり変わらない音が鳴り、少々謎の安心感を感じていると。
「どちら様でしょうか?」
という若めの女性の声が聞こえる。
この声は……聞いた事ないな。
新しく雇った使用人さんかな?
「えっと……宵月瑠奈です。あと、連れが1人います。危険な人ではないので入れてください」
「あ、養子の……はい、電子ロックは外しておきました」
養子の。
そう、私は本当の宵月の娘ではない。
ただただ……たまたま拾われて……たまたま私に魔術師としての才能があって……。
たまたま、彼らの本物の子供たちに宮廷魔術師や魔導親衛隊まで登り詰めるだけの才能がなかっただけ。
私には……魔導兵器としてのあり方しか望まなかった。
「……ありがとうございます」
目を伏せながら、そう言って氷華の元へと戻る。
「氷華、入るよ」
「あっ、はい……宵月先輩、どうしたんですか? 何やら暗い顔をしていますが……」
……気づいたか。
でも、後輩に心配はかけたくないし……。
「ちょっと、色々あって……ただ、もう大丈夫だから! 行こ?」
無理矢理笑顔を作ってなんとかやり過ごす。
「分かり……ました」
煮え切らないような感じを覚えてはいるのだろうが、とりあえずは納得してくれた。
良かった。
門を開けて、屋敷の中に向かっていく。
館までの道の左右には綺麗な庭が広がっているが、いつも通り私は特に眺める事もなく進んで行く。
はぁ、やっと屋敷の中へと通じる扉の前まで来た。
左右両方のドアノブに手を掛ける。
そして、扉を開く。
その扉は……私にだけはとても重いものに感じた。
「お帰りなさいませ、宵月瑠奈様。お隣の方が連れの方ですか」
そこには、メイド服を着ているピンク髪の少女が居た。
……ふむ、私がここに居た頃には見たことがない顔だ。
やはり、寮生活をしているうちに新しく雇われたのだろうか?
「えぇ、そう。この子が私の連れの蒼山氷華。そして、こんばんは。突然、押しかけて悪かったわね」
「いえいえ、問題ありませんよ。ただ、瑠奈様は家に帰って来ただけなのですから」
そう、微笑みながら言う。
なんか……ちょっと救われた気分だ。
「蒼山氷華です。これから少しだけお邪魔させていただきます」
そう言って、氷華も自己紹介をして頭を下げる。
「ご丁寧にありがとうございます、氷華様。わたくしは、
ふーん、やっぱり知らない名前だ。
まぁ、それは今はいい。
自室に行かないと。
「じゃあ、私たちは私の部屋に行くわ」
「分かりました。ごゆっくりお過ごしください」
私たちは、目の前に広がっている赤い絨毯の敷かれた階段を上がる。
私の部屋は、確か二階だ。