ユダの黙示録   作:神代リナ

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第36.5話 君の戦う理由

 ……大変だった。

 

 歓迎会の始まりを恵梨香から宣言されたあと、取り皿に食べたい料理を控えめにとって、さーて食べようとなった瞬間。

 たくさんの生徒が私のところへと話しに来たのであった。

 

 宵月家に顔を覚えて欲しい者や将来宵月家に資金援助をして欲しい者、単純に私に憧れている新入生などなど。

 ……まぁ、最後の生徒たちに関しては純粋に嬉しかったけど。

 

 それはそうと、知り合いは逃げるし、私はそもそもあまり大多数の人と話すのは苦手なので、この人々をとりあえず恵梨香に押し付けて、部屋の隅に1人立って飲み物をチビチビと飲んでいる氷華の元へと行く。

 

「……あ、宵月先輩。あの人たちは、良いんですか?」

 

「良いんだよ、恵梨香に押しつけて来たから。あの子だって、桜木家次期当主にして、Aクラスなんだから」

 

 ……実際、恵梨香は容姿端麗で魔術師としての腕も高いから、彼女を慕っている後輩も多い。

 まぁ、それはさておき。

 

「貴女、ジュース飲んでるの?」

 

「はい、アルコールは苦手なので……宵月先輩はワインですか?」

 

「うん、成人は15才になったしね。あんま酔わないし」

 

 私は、ゆっくりと赤ワインを飲む。

 はぁ、酒を飲まずにはやってられないわ。

 

「ふふっ、似合っていますね。ドレスを着た宵月先輩がワインを飲んでいる姿は?」

 

「そう? なんか、学生が背伸びしてる服に見えちゃうのよねぇ、私自身は」

 

 そう、グラスに映った自分の姿を見て呟く。

 

「意外と自虐的ですよね、宵月先輩って。もっと自信を持っていいと思うのですが……」

 

「無理だよ……だって、私は……」

 

「空っぽだから、ですか? 戦う理由もないのに、戦ってる魔術師だから……ですか」

 

「……ッ! ……えぇ、そうよ。滑稽でしょ、そんな魔術師は」

 

 そう言い捨てながら、壁にもたれかかる。

 はぁ、挙げ句の果てには他人の剣技に追いつくのを無理やり戦う理由に当てはめてる……それは戦う理由にはなり得ないのにね。

 

「ほんとに……ほんとに……そうでしょうか」

 

「……うん?」

 

「宵月先輩、好きなことはなんですか?」

 

 好きなこと……好きなことか。

 魔術は……義務感だし……うーん、あっ。

 

「えっと……平和な事、かな。第三次大戦がもし起きなかったら……ってよく考えるし。でも、それは戦う理由にはならないと思うけど」

 

 というか、どうしようもない。

 こんだけ荒廃し切ってしまった世界に平和なんて訪れる訳がない。

 

「……それはどうですかね?」

 

「……貴女は、何を知ってるの?」

 

 氷華は……蒼山氷華という人間は……

 何者なんだ?

 

「それは……ひ・み・つ、です」

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