Side:蒼山氷華(過去)
さて、10歳の少女にすぎない私は働き始めた訳だが……働けるところは少ない。
流石に労働関連法律はまだ存在するから。
だから、マトモな所では雇って貰えない。
つまり、違法なところに就職した。
魔術師である私が行くところは一つ……そう、非合法PMCだ。
あぁ、違法で女が働ける場所ところといえはアソコもあるが、まぁ流石にロリコン変態ジジイに身体を捧げるまではしたくなかったから選択肢になかった。
まぁ、それは置いておこう。
とにかく、そんな訳で私は人殺しをするようになった。
と言っても、敵の多くは非魔術師や最低ランク……Dランク魔術師。
推定(まだ、連合皇国政府指定の魔術学校を卒業しておらず正式ライセンスを貰っていないから正確には分からない)Bランク級魔術師である私の敵ではなかった。
正直、最初はそんな私自身が恐ろしかった。
ただの10歳の少女に過ぎないハズの私が、呪文を唱えればコロッと人を殺せる。
そんな私自身が恐ろしかったのだ。
ただ、何度も繰り返せば何事も慣れて行く。
それは、人殺しも同じだった。
だが、それがよくなかった。
そんな私は、油断してしまった。
だから……だからこそ、あの日の私は"逃げ"という選択肢を選ばなかったのだ。
2022年 5月3日 06:27 D-3地区前線基地
「……先輩、宵月先輩! 起きてください!」
氷華に身体を揺さぶられ、大声で呼ばれたことで、私の意識は覚醒する。
……ここは、軍用車の中だね。
あぁ、寝ちゃってたのか。
にしても、さっきまで何かを見ていたような。
ま、そう大して重要な事ではあるまい。
「おはよ、氷華」
「おはようございます、宵月先輩。D-3地区の前線基地に着きましたよ」
もう着いたのか。
寝てると、あっという間だなぁ。
私たちは、運転手の男に礼を言うとこの車から降りる。
外に出て、視界に入って来たのは多くの作業用車両や軍人の人たちが忙しなく歩いているいかにも急ピッチでとりあえずガワだけなんとか設営しましたと言った見た目の小規模基地だった。
生乾きのコンクリートで雑に舗装された地面に、耐久性や住み心地がかなり不安と言うしかないような仮設住宅、工事現場にありそうな薄汚れた仮説トイレ、一応置いてある感が半端ない軽迫撃砲。
「……大丈夫かしら、ここ」
「まぁ、大丈夫だと……信じるしかありませんよ」
「それもそうね」
はぁ、人類の希望を背負った魔術師ってヤツは本当に大変よ、まったく。
とりあえず、ここのトップと話しをしよう。多分……奥の方にある他と比べると比較的マシな見た目の建物にいるだろう。
「氷華、ここの上官に挨拶しに行くわよ」
「了解です」