ユダの黙示録   作:神代リナ

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第四十四話 とある人形術師とタイムリミット

 僕は……元々、ただ人形師の父に憧れただけの少年だった。

 もし、僕が6才の時に魔術師の適性が見つからなかったら……こんなことにはならなかっただろう。

 

 十数年前

 Side:瑠衣(ルイ)

 

「僕が親衛隊、ですか」

 

 松代臨時司令部にあるこじんまりとした面接室。

 そこで、机を挟んで黒髪の少女……日本連合皇国が保有している3柱の魔女の1柱である13番目の魔女と相対していた。

 

 秋風武装学園から卒業する寸前に、松代臨時大本営に来るよう本州連合政府から急に呼び出された時は、思わず何をされるのか怖くなったがまさか親衛隊への勧誘とは……。

 

「えぇ、そうですよ。松山瑠衣(まつやまるい)さんは、秋風武装学園のAクラスの中でもかなり優秀な魔術師でしたし。それに、()()()()だと就職先に困るでしょうし」

 

「ッ! ……そりゃ、知ってますよね。魔術師適性を調べてるのは貴女ですもんね」

 

 一瞬、自分の適合魔術である無属性魔術"人形操作(ドールズ・ダンス)"を指摘されたことに反射的に驚いてしまったが、すぐに冷静に考えて魔女が知らない訳ないかと思い至る。

 

「はい。人間社会において、異端であるのはフリであると思います。でも、(わたくし)の親衛隊にそれを気にする人は居ませんよ」

 

 そもそも、変な人達ばっかりですからね。と、戯けながら彼女は言う。

 実際、自分の魔術のせいで就職活動の成果は芳しくない。

 自分の成績と技量から通ると思っていた宮廷魔術師も落ちてしまった……。

 

 そんな中、今回提示された魔女の親衛隊への参加。

 正直、かなりいい。

 だから、僕は……。

 

「魔女様、良ければ僕を親衛隊へ入れてください。お願いします」

 

 彼女の親衛隊に入ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2022年 5月4日 04:57 D-3地区未攻略地域

 Side:宵月瑠奈

 

「氷華、残念だけど時間ね」

 

 私は、携帯端末で時計を見ながらそう言う。

 前回の作戦で言われた通り、このD-3地区の原初派支配領域では行き帰り全て含めて3時間しか活動出来ない。

 

 ……まだ、今日行く予定だったところまで辿り着いていないが仕方ない。

 帰ったら、色々考え直さないとね……ペース配分とか警戒度合いとか。

 

「……そうですか。今日の目標地点まで辿り着いていませんが……呪いのせいなら仕方ありませんね」

 

「ま、帰ったら色々考え直そっか」

 

「分かりました。明日こそ目標を達成したいですね」

 

「そうだね……うん? 気のせいかな」

 

 少し、魔力反応が前方からした気がするんだけど……。

 誰もいないし、気のせいかな?

 

 些細な疑問はすぐに消え失せ、私たちは元来た道を戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 同時刻・同地区

 Side:???

 

「兄さん、今がちょうどいいんじゃないかな?」

 

 10m先にいる少女たちを倒れたビルの残骸の影から見ていた俺の後ろから、少々高めの男性の声が聞こえる。

 振り向くとそこには、茶髪の幼い男の子……俺の10歳下の弟が純粋無垢な笑顔を浮かべながら俺が見ていた2人の少女を指差していた。

 

 ちょうど、こっちに背を向けた所だしな。

 確かに、ちょっかいを掛けるにはちょうどいいタイミングだろう。

 

「そうだな……よし、俺が魔術を発動したら」

 

 そこまで言ったところで、後ろから魔術師の気配を感じた。

 発動しかかっていた魔術を解除し、また後ろを振り返る。

 

「……誰だ?」

 

アタシの友達(瑠奈)に手を出そうとは良くない人だねぇ、君」

 

 そこには、秋風武装学園の制服を着た赤髪の少女と

 

「東ア全体主義同盟の親衛隊員ですね? これ以上、仲間(日本人)同士で足を引っ張り合うのはやめてください! これは本州連合魔法省からの通達です」

 

 同じ制服を着た黒髪の少女だった。

 

 ……本州連合魔法省からの通達、要するに13番目の魔女の代弁ってことか。

 チッ、流石にやりすぎて魔女が出てくるのはまずいな。

 

「……引くぞ」

 

「はーい。……つまんないなぁ」

 

「そう言うな」

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