世界に魔法を、心に歌を。 作:RHC
「あぁー……とりあえず」
【逃げるぞ響ッ!】
俺は手に持ったビニール袋内にある割とお高めなケーキがある事を忘れ走り出した。
その直後背後では大きな物音が響き、思わず振り向いたら先ほどまで立ってた場所がまるで何か凄く重い物に押しつぶされたかのようにクレーターが出来ていた。うん、後少し遅かったらどうなってかは想像に難くないね。やべぇ、冗談抜きに死ぬぅ!!!
「なんじゃありゃぁぁぁぁあ!!!」
【あたしもわっかんねぇよ! 何だアレぇ!!!】
久しぶりの全力疾走は徒競走とかではなく死の間際で逃げ足の為に使うとは――――人生何があるかわっかんねぇなぁ。
「タバネさん! アレって貴方と同じ超常の存在でしょ! 何か心当たりとか絶対あるでしょぉぉぉおお!!!」
何で知らないって嘘つくんですか!! アレか! 昨日あなたの楽しみにしていたプリンを間違って食べた事が原因ですか!
【だからあたしもわっかんね……え、魔力の反応がある。マジでぇ?】
ホラあった!!
隠れるのにうってつけな隙間を見つけるとざざぁっと音がするほどの急停止。その後そこに隠れた俺は肩に下げたタバネさんを振り回す。ほらぁ!さっさと情報を吐くんだよぉ!
【振るな振るな! 目が回るから振るなぁ!!】
「だったら情報をさっさと吐き出すんだよッ!」
【このままだと別の物が出ちまうから振るなぁ!】
前に自分はコピーされたプログラムだかなんだか言ってたけど妙に人間クセェよなぁ……この人。
一通り振り回した後、俺は再度肩に提げ直した。
【ハァハァ、恐らくアレは魔法生物か何かだ】
「魔法生物?」
【そうだッ!】
どっかから聞こえる派手な破砕音。何故か俺達を探して破壊の限りを尽くしているのが直感で分かる。まぁあ、何故追いかけて来てるのかは不明だけどな。
「んなファンタジーな」
【あたしが存在する時点で十分ファンタジーだろ!】
「……確かに」
言われてみれば確かに。喋る本って十分ファンタジーな道具だな、こりゃ。
袋の中から一緒に買った棒付きキャンディーをパクリと食べて糖分補給。アレだ、多分これから頭をフル回転させる案件だと思うから。
「……それで、俺は何をしたらいい? どうせタバネさんの事だ、打開策の一つぐらいはあるんだろ?」
【もちろん!】
タバネさんは単なる喋る本じゃねぇ。ガチのピンチの時には必ず解決策を提示してくれる頼りに出来る俺の相棒だ。
肩さげするために本を固定している自力で器具を解くとタバネさんはパラパラと若干の光出しながらページが捲れ、あるページで固定される。
そこに書かれるは楽譜。そしてそのタイトルは――――撃槍・ガングニール。
「コレが、打開策か?」
この楽譜がどうしたんだよ。ってかタバネさんの中にまともに書かれたページあったのかよ。前に確認した時は真っ白な純白な白ばかりだったからてっきり何も書かれてないと思ったぞ。
【そうだ、コレが――――】
ページから金色に眩い光が溢れ出すと、ページから何かが出現する。
【――――マスターが数年前、私と契約した事により手に入れていた力だ】
一見するとそれは綺麗な金色とも見える黄色のビー玉。しかし、何故か底知れ合い何かを感じるビー玉は自然と出ていた俺の手の平に収まる。
「……力?」
そういえばそんな事は話してたようなぁー話してなかったようなぁー
【ハァ…やっぱり覚えて無いか。良いか、この力はなぁ――――】
そうタバネが語ろうとしたその時、俺は何かを感じて咄嗟にゲームでよく見るローリングの如くその場を離れる。その直後、俺が先ほどまで背にしていた壁が文字道理爆散した。
【「あ、アブねぇ……」】
自然と重なる俺達の声に視線の先で沸き立つ土煙。そしてその奥に見えるは月光で反射された赤色の二つの瞳がハッキリとコチラを睨み付けていた……アハハ、大ぴーんち。やべぇ死ぬぅやべぇの三連コンボだドーン!
「細かい事は後! 使い方説明!」
ケーキが入った袋をログアウト。流石にケーキの重さと命の重さは比べようもないから仕方ないね。それに再度死ぬのは絶対に嫌だし、何より明日発売予定の予約したゲームの為に覚悟を完了させる。
【前に教えた呪文だ、あたしに合わせろ!】
呪文? あぁー、数年前に一緒に考えた中二病の産物ね、了解。俺は手にある金色のビー玉を掲げ叫んた。
【「勇気の風、黄金の拳」】
記憶を頼りにそう叫んだ瞬間、世界は一変する。
【「我が纏うは神殺しの槍ッ!」】
光だ。先ほどまで本から出ていた光が俺の周りを包み込み、足元には見た事も無い巨大な魔法陣。まさしくファンタジーな事象が俺の中心に巻き起こる。
【Standby ready】
等々掲げているビー玉からも流暢な英語音声が聞えて来て、現実離れしたこの現状に更に疑問が追加されるがそれは後。今はこの命の危機を脱するの事が先決だからな。
【「ガングニール、セェットアップッ!!!」】
瞬間、こちらへと耳障りな鳴き声をあげながら襲い掛かって来たのがスローモーションで見える。だけど、俺はそんな状態であるにも関わらず謎の安心感が心を支配していた。
『GAAAAAAA!!!』
そして、その状態で俺は――――モーションはシンプルにしてスムーズに。拳を、その巨大な顔面に叩きつけた。
派手な文字道理鳴き声をあげながら、周りの建物を巻き込んでぶっとぶ巨大ネズミ。そして俺の拳には篭手が、身体には鎧が、耳にはヘッドホンが装着される。不思議とその鎧に違和感は一切なくまるで生まれた頃から身に着けて居るかのような、そんな感覚に陥るほど体に合っていた。
【System allgreen】
【モード03、ガングニール!】
「エンゲージッ!」
装着を完了させた俺は体の動くまま足に力を込めて飛翔。生身では考えられないほどの高さ飛んだ俺はさらに空中を蹴って空を飛び続けるとぶっ飛んだネズミへ再度拳を叩き込むため、星々の満点な夜空を飛んだのだった。
……ん? ちょっと待って、何で格闘経験が一切ない俺がこんな動きが出来て何故にヘッドホンなんだ???