<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-のweb版原作第七章九十五話まで読了推奨です。
【飛将軍】リーフが『完全』と呼ばれる前、彼女とクランメンバーがとあるクエストに挑むお話です。
それは、何度も何度も繰り返される光景。
教室の黒板には、大きな『送別会』『さようなら』『ありがとう』の文字。
そしてこの会の主役の名前……双葉・ミグラトリーの名前が中央に書かれている。
双葉を中心にクラスメートが輪になって別れを告げ、寄せ書きと花束を渡し、またメールするねと話しかける。
「短い間ではありましたが、大変楽しい時間でした! みなさん、本当にありがとうございました!」
双葉が感謝を述べると、クラスメートも口々にそれに応える。
「双葉ちゃん、ありがとう!」
「少しの間しか遊べなかったけど、楽しかったよ!」
「またいつか会おうね!」
「元気でね!」
何度目だろう。
寄せ書きも、花束も、何度も貰った。
感謝や別れの言葉も、幾度となく交わしてきた。
得られなかったのは、真に心通わす友人、ただそれだけだった。
「それではみなさん、双葉さんに最後のお別れをしてください」
担任の教師が会の終わりを告げる。
クラスメートの中には、涙ぐんで別れを惜しむ者もいた。
双葉はこの数ヶ月間、確かにクラスメートたちと友人関係を育んでいた。
しかし今、双葉に向けられる言葉が、彼女の築き上げてきた関係が崩れる音となって彼女の心に突き刺さる。
あぁ、私はまた独りになるのですね
せっかくできた友人と離れ離れになりたくない。
もっと一緒に居たい。
人として当たり前の欲求に、彼女は人一倍正直だった。
そんな彼女の状況が変わったのは、<Infinite Dendrogram>というゲームを始めてからのことだった。
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「はっ! なんだか懐かしい夢を見ていた気がします!」
双葉は自室で目覚めて、目を擦りながらカーテンを開ける。
外にはコンドミニアムと呼ばれる高層共同住宅が見え、遠くには市街地が見えた。
「さて、この週末はクランでの長期クエストでしたね! 朝の支度を済ませてログインしましょう!」
双葉はそう言うなり意気揚々と自室を出て行ったのだった。
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「ねぇ、知ってる〜?」
穏やかな陽の光が差し込むその部屋には、数人の人間が居た。
その中でも最も背丈が小さく、十代半ばほどで黒色のコートを着た少年が、そう問うた。
「はい! 何でしょう!」
明るい声で答えたのは、少年よりも少し年上に見える女性だ。
厚着の少年とは対照的に、肌を露出した民族衣装のような服を纏っている。
「現実世界の全飛行生物の中でもトップクラスの飛行能力を持っているのは、実はトンボらしいんだよー」
「何故でしょうか! ハヤブサやタカの方が速く飛べると思います!」
少女は体育会系の明るいテンションで反論するが、一方の少年はダウナーな口調で諭すように話す。
「もちろん速さでいうと猛禽類を含む鳥類が抜きん出ているけれど、旋回性能や上下の運動も含めると、トンボの能力がずば抜けて高いんだよねー」
少年は、人差し指を立てて上下左右に動かして見せながら返答した。
「確かに『蜻蛉返り』とも言いますからね! そうなのかもしれません!」
少女は先ほどの反論を忘れたかのように態度を変え、ぽんと手を叩いたところで、部屋にいる人間が笑みをこぼす。
一見すれば和やかな休日の朝のような雰囲気であり、これから
物資の空輸や要人の護送などで資金を得るという、ある意味で会社とも言えるクランが存在する。
その名は、<ウェルキン・アライアンス>
少年はクランオーナー、ケイデンスであり、少女の方はこの時点ではまだ一般のクランメンバーであるリーフである。
同じ部屋には、リーフと同じく招集された他のクランメンバー……フォール、七眼、そしてスライドの三人がいた。
彼らがいるのは、上空二〇〇〇メテルにあるクランの拠点、<ターミナル・クラウド>である。
クランとして受注したクエストの知らせを受け、今回のメンバーが招集されたのだった。
「それじゃあ、今回のクエストの概要を説明するよー。まず、依頼主は王国の東方にあるアジャニ伯爵領の商人、タイガ・コルドー氏。依頼内容は要人護送が一名だねー」
この時期の<ウェルキン・アライアンス>は既に幾度も依頼をこなしており、王国内でもその業務への信頼度はかなり高まっていた。
今回のようなティアンからの依頼も珍しい話ではない。
「護送対象は氏の娘さんで、護送先はカルディナ東方にある氏の別荘。簡単に言えば、娘さんの疎開のお手伝いかなー」
今、王国と皇国は一触即発の状態にある。
停戦が続いてはいるが、いつ戦争が再開するかは不透明であり、王国ティアンの不安は高まる一方である。
そのため、自らの親族を他国にある別荘などに疎開させることも、財力を持つティアンの中ではままあることであった。
「これまでも何度かこなした種類の依頼ですね。メンバーはここにいる五人ということですか?」
フォールがオーナーであるケイデンスへと尋ねる。
しかし、ケイデンスは首を横に振る。
「いやー。今回は僕を除いた君たち四人に行ってもらおうかなー。君たちの実力もついてきたし、僕が居なくてもクエストを回せる方が利益を出しやすくなるからねー。何事も経験だよー」
ケイデンスは超級職【嵐王】に就いており、クラン内でもその戦力は頭ひとつ飛び抜けている。
しかし、ケイデンスがいなければクエストをこなすことができないとなると、<ウェルキン・アライアンス>の会社としての収益は、当然制限されてくるだろう。
今回のような取り組みは、いつかは挑戦しなければならない試練のようなものだった。
「アジャニ伯爵領からカルディナであればそこまで危険なモンスターはいないはずですし、距離もそれほど遠くはないので可能だとは思いますが……ただ、その間の留守をオーナーに任せることになりそうです。よろしかったですか?」
「うんー。宿直はもう慣れたものだよー。安心して行ってきていいからねー」
オーナーであるケイデンスは、他のメンバーが不在の際に拠点を防衛する役割を進んで引き受けていた。
今回も例に漏れず、空の上での留守番である。
「それじゃ、各自準備に取り掛かるようにー」
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リーフ、七眼、スライドの三人が部屋を出ていき、ケイデンスとフォールの二人が残された。
「今回の依頼はティアンの護送だからねー。クランのイメージ向上のために、明るくて人懐っこいリーフは必須なんだよねー」
ケイデンスが一人ごちると、フォールもそれに反応する。
「遊戯派であることを理由に、ティアンに対して冷めた態度を取るメンバーも少なくないですからね……。彼女のような存在は貴重です」
「それに、今回の護送対象はリーフと年が近いみたいだからねー。仲良くしてくれると嬉しいかなー」
そこでふとフォールはケイデンスのほうを向き、改まって話し始める。
「そういえば、この間話していた、彼女のビルドの件はどうなりましたか?」
「順調だよー。彼女、性格が真っ直ぐだから頭を使いながら戦うには向いてないんだよねー。レジェンダリアで短弓も準備してもらったし、天地にクエストに行った時にジョブについてもらって、レベル上げも進んでるはずだよー」
ケイデンスは、ブラインド越しに外の景色を眺めながら淡々と話す。
「了解です。でしたら、今回の依頼も難なくこなせそうですね」
「もし何かあればクランのブランドに関わるからねー。気を抜かずに頑張ってねー。」
「はい。オーナーもお気をつけて」
「了解ー」
そうしてフォールもクエストの準備のために部屋を出て行き、残されたのはケイデンスのみとなった。
「さて、僕も準備を始めようかな」
ケイデンスはぽつりと独り言をしたのちに、自らの目的のために行動を開始したのだった。
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翌日。
リーフ、フォール、七眼、スライドの四人は、依頼主であるコルドー氏を訪問するべく、氏の邸宅があるアジャニ伯爵領の中心都市、アジャニへと赴いた。
コルドー氏の邸宅は街の中心地に近い場所にあった。
<ウェルキン・アライアンス>一行が門番に身分と用件を話すと、使用人が四人を客間へと案内したのだった。
室内に入ると、そこにはすでに一人の男性の姿があった。
「お待ちしておりました。私がタイガ・コルドーと申します。この度は依頼を受けてくださったこと、誠に感謝しています」
タイガ氏は長身かつ細身の男性で、実直な人物であることがその腰の低い態度から伝わってきた。
四人は自己紹介を済ませ、クエストの内容について改めて確認を行う。
明日の朝にアジャニを出発し、カルディナにある別荘まで空路で移動する。
オアシスでの一泊を挟み、二日目には別荘に到着する予定である。
ちなみに、こういった事務的かつ会社として重要な業務はフォールの役割で、そういった方面には向いていないリーフは素直に相槌を打つのみであった。
「それで、今回護送する娘さんというのは」
このクエストにおいて最も重要と言っても過言ではない人物、タイガ氏の娘についてフォールは質問する。
「皆さんにご紹介しますね。アリー、入っておいで」
タイガ氏が招くと、客間の扉を開けて一人の少女が入ってきた。
歳の頃は十代半ばほどで、可愛らしい三つ編みを下げている。
アリーと呼ばれた少女は、俯き気味に四人の前に歩いてきた。
「こちらがアリソン……今回、皆さんに護送していただく私の一人娘です」
「初めまして。アリソン・コルドーです」
アリソンは恭しく礼をする。
彼女に真っ先に自己紹介を返したのは、リーフだった。
「初めまして! 私の名前はリーフと言います! アリソンちゃんは『アリー』と呼ばれているのですね! 差し支えなければ私もそのようにお呼びしたいです!」
「え……っと、構いません、が」
「ありがとうございます! アリーちゃん、宜しくお願いします!」
突然の申し出に少々面を食らったように見えるアリソンだったが、リーフから差し出された握手に、
「こちらこそよろしくお願いします、リーフさん」
そう言って笑顔で答えたのだった。
その後、メンバー各々が自己紹介を済ませ、その場は解散となった。
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今回のクエストでは、<ウェルキン・アライアンス>の四人はアジャニにある宿に一泊したのち、明朝に出発する予定となっている。
「空輸クランとしての楽しみの一つは訪れる街々の観光ですね! アジャニにはどのようなものがあるのでしょうか!」
夕食までの時間を持て余したリーフは、アジャニの街並みを観光するべく散歩に出かけたのであった。
アジャニ伯爵領は、カルディナに近接していることを理由に交易が盛んな領地である。
王国東方の資源やカルディナの交易品がここに集結しているため、王国の村落の中でも比較的裕福な土地であると言えるだろう。
街の東側には<クルエラ山岳地帯>が聳え立ち、そこから吹き下ろす風が頬を撫でる。
昼下がりの暖かい陽射しが心地よく、散歩をするには満点の天候であった。
「おや?」
いざ街に出かけようとしたその時、彼女はとある人物を見かけた。
「アリーちゃん! こんにちは!」
その人物とは、今回のクエストでの護衛対象である、アリソン・コルドーであった。
「リーフさん、でしたね。こんにちは」
広場に面するように配置されたベンチに座るアリソンは、リーフに対して恭しく挨拶を返した。
「アリーちゃんはどうしてここにいたのでしょうか!」
リーフはアリソンの隣に座り、明るく話しかける。
「少しばかり、考え事をしていました。明日、このアジャニを離れると考えるといてもたってもいられなくて……」
このアジャニの街は、彼女にとって生まれ育った故郷であり、親しい人々とのかけがえのない時間を過ごした思い出の土地である。
アリソンは、その故郷を離れることへの寂しさや悲しさを抱えていた。
「昨日、この街の学校での友人たちが、お別れの会を催してくれました。明日でみんなともお別れかと思うと……」
声を震わせて話すアリソンは、俯き、その目元を見られまいとする。
しかし、その頬に伝う涙が、なによりも彼女の心情を表していた。
王国と皇国の戦争がどうなるか、誰にも分からない。
今回はあくまで『疎開』であり、事態が好転すればもちろんまたアジャニへと戻ってくることができるだろう。
しかし、その保証は何処にもない。
もしかしたら、もうこの故郷に戻って来れないかも知れない。
もしかしたら、親しい家族や友人との今生の別れになるかも知れない。
幼い彼女の思考は、いつしか暗いことばかりを考えてしまっていた。
そして旅立ちが翌日に迫った今日、ついにその堰が崩れたのだった。
アリソンは俯いたまま、静かに、啜り泣く。
「大丈夫です! また会えますよ!」
そんな彼女に、リーフは底なしの明るさで応える。
「生きてさえいればきっと何度でも会うことが出来るはずです!」
「それに! 次回の戦争には私も参加します! アリーちゃんがお友達やご両親ともう一度会えるよう、私とペリュトンも頑張ります!」
「それにそれに! 離れていても、文通なら想いを通じ合わせることができます!」
リーフは、別れを寂しく思うアリソンの姿に、自らを重ねていた。
文通のアドバイスは、リーフのリアルである双葉が、転校のたびに友人とメアドを交換してその後も関係を保とうとする彼女からの、彼女なりのアドバイスである。
「お手紙を出すときは私たちに言ってください! 空を飛んで届けます!」
リーフが胸を張ってそう言うと、アリソンは少し明るくなった表情で、
「……ふふっ。確かに、文通なら離れていてもお互いの気持ちを知ることができますね。その時には、是非またあなた方のお力を借りたいと思います」
そう微笑んで話したのだった。
その後もしばらくの間楽しく会話を交わしたニ人であったが、
「はっ! そういえばこの街を観光しようと思って宿を出たのでした! よければこの街を案内して頂けませんか!」
というリーフの発案により、ニ人はアジャニの街へと歩き出したのだった。
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アジャニの街並は、<クルエラ山岳地帯>の山がちで坂のある地形を活かすように作られている。
山の斜面を用いた果樹栽培が盛んであり、街の有名なカフェや、表通りに店を構える屋台では果物の加工品やスイーツが所狭しとラインナップされている。
「アジャニの果物は王国でも随一の品物なんです。カルディナの商人にも評判で、毎日多くの商人がこの街を訪れるんですよ」
アリソンは街の紹介をしながら、観光客であるリーフを案内して回る。
「凄いです! どのスイーツも美味しそうでどれを食べるか迷います!」
リーフは目に入るスイーツ全てに目を輝かせ、屋台やカフェに入ってスイーツを購入し、手が空けば買い足す、といったことを繰り返していた。
「うーん! どれも大変に美味しいです!」
「なんたってアジャニはわたしの自慢の故郷ですから! 満足していただけているようで、私も嬉しいです」
満面の笑みでスイーツを頬張るリーフを見て、アリソンも満足げに胸を張る。
「そういえば、リーフさんはこの後の夕食までの時間を観光で過ごす予定でしたんですよね。 ……そんなにスイーツを食べていて、大丈夫ですか?」
アリソンが心配げにリーフを覗き込むと、
「はっ! すっかり夕食のことを忘れていました!」
リーフははっとした顔でアリソンを見つめ返す。
するとアリソンは自然と笑みをこぼし、それに釣られてリーフも笑い始める。
二人の間を流れる時間は、和やかに過ぎていった。
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陽が傾き、民家から炊事の煙が立ち上り始めた頃。
楽しかった観光の時間も、終わりを告げようとしていた。
「そろそろ程よい頃合いですね! 私は宿に戻ろうと思いますが、アリーちゃんはどうしますか!」
「あっ、そうだ……。わたし、旅立つ前に山の高台からの夕陽を見ておきたかったんです。けれど、リーフさんと過ごす時間が楽しく、うっかり忘れてしまっていました……。今から歩いて登ると太陽が沈んでしまいますし……諦めるしか、ないようですね」
そう話すアリソンは、残念そうに街の方を眺める。
「アリーちゃんにとって、高台からの夕日は大事なものなのですか!」
リーフがそう問うと、アリソンは街を見つめたまま目を細めて、返答する。
「はい、高台からはアジャニの街が一望できて、夕陽を浴びて橙色に輝く石造りの街並みが、わたしは大好きなんです」
それを聞いたリーフは、いつも通りの明るい声音で言い放つ。
「ならば! 行きましょう!」
「でも、自分の足で歩けばもう間に合わないのでは……」
「大丈夫です! おいで、ペリュトン!」
リーフは左手から自らの相棒を呼び出し、その背中に飛び乗った。
呆気に取られているアリソンに、リーフはその手を差し伸べる。
「自分の足では難しくとも、翼ならば可能です! 陸でできないことを空でやるために、私たちがいるのですから!」
屈託のない笑顔を浮かべてそう話しかけるリーフに、アリソンはその瞳に僅かに涙を浮かべて、
「本当に……リーフさんにはお礼をしてもしきれませんね」
そう言ってリーフの手を取り、ペリュトンに乗せられて空へと飛び立ったのだった。
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「凄い……本当に空を飛んでる……」
ティアンであるアリソンは、もちろん空を飛んだ経験などない。
二人と一匹は、少しずつ夕日に染まりゆくアジャニの街を見下しながら、ゆっくりと飛行を続けている。
「私、空の上からの景色が好きなんです! 色んな人が見えて、色んな生活が見えます! 私以外にもこの世界には人が沢山いるってわかるから、私は空の上が大好きです!」
そこでリーフはふとアリソンの方を向き、目を見て語りかける。
「アリーちゃんがこれから行く場所にも、きっと色んな人がいて、アリーちゃんは色んな人と友達になれると思います!」
「ふふふ……たしかに、リーフさんの言う通りかもしれません。きっとわたしには、色々な出会いが待ち受けているのでしょう。その一つ一つを楽しみにするのも悪くない、ですね」
「はい! きっとアリーちゃんなら大丈夫です!」
そうして夕陽がその橙色を最も濃くする頃、ニ人は街の高台へと到着したのだった。
そこから見える景色は、端的に表すのならば、『絶景』であった。
視界の全てが橙色に染め上げられ、眩しくも輝かしい陽光が街を優しく照らしている。
リーフとアリソンのニ人は、言葉を交わすことなくその景色を見つめている。
そうしてしばしの時が過ぎ、アリソンが話し始める。
「最後にここからの景色を眺めることができて、良かったです」
「こちらこそ、こんなに素晴らしい景色を紹介していただていてありがとうございます! 私もアリーちゃんと一緒に見ることができて嬉しいです!」
「とても素晴らしい思い出になりました。わたしからも……お礼を言わせてください」
「いえいえ! 友達として当然のことをしたまでです!」
「ふふっ……そうですね! わたしたちはもうお友達でした」
お互いにこやかに見つめ合う二人を、斜陽が暖かく照らしている。
明るく輝き続ける夕陽を、ニ人は日没まで見送ったのだった。
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翌朝、アジャニの広場には多くの人が集まっていた。
その内訳は、コルドー家を始めとして、邸宅に勤める使用人や、アリソンの友人たちである。
アリソンは両親とハグをしたのちにしばしの別れを告げ、再会を誓う。
そして、<ウェルキン・アライアンス>一行の待つ方へと歩みを進める。
振り返ると、自分の親しい人たちが笑顔で手を振ってくれている。
ならば自分も笑顔で旅立とう。
そう決めたアリソンは、数人の従者と共に飛行移動用に特注された竜車に乗り込み、窓から彼等に向かって手を振る。
涙は、見せない。
「離陸します。揺れにお気をつけください」
フォールが出発を告げる。
フォールの乗る怪鳥に紐づけられた竜車がふわりと浮き、少しずつ上昇してゆく。
それに追随してスライドと七眼が乗るガルグイユ、リーフが乗るペリュトンも空へと飛び立ってゆく。
彼らはあっという間に小さくなり、<クルエラ山岳地帯>の向こう側へと姿を隠したのであった。
次回、中編を一時間後に投稿します。
読んでいただけると幸いです。