ノンケウマ娘を狂わせるウマ娘(トレーナー)の日々   作:樽薫る

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第1章【トレーナー始めました!】
第1話【終わりから始める!】


 ―――ヤバい。

 

 語彙が死んだ。というより私のトレーナーとしての人生。否、ウマ生も死ぬかもしれない。

 

「お姉さま……?」

 

 かわいいかよ……。

 

 二人しかいない夕方の電気が点いていない更衣室。

 上の方にのみ存在する小窓から差し込む茜色の光。

 

 ロッカーを背に座り込んでいる私の足の間に膝立ちしている“ライスシャワー”。

 

 体勢のせいか、いつもと違い彼女の顔が高い位置にある。

 

「お姉さま……私の、お姉さま……」

 

 ―――ああぁぁ! 落とされりゅ! 好きに! 好きにされるぅ!

 

「お姉さまが悪いんだよ?」

 

 私が悪いのかもしれないっ! ライスが言うんだから間違いないかもしれない!

 

「そんな下品なおっぱいして」

 

 私のライスはそんなこと言わない! 

 

「お姉さま、ジッと、してて?」

 

 ライスの顔が近づいてくるぅ!?

 ひぇっ! 整った顔、綺麗な瞳、良い香り、ダメだ! 考えれば考えるほどダメだ!

 

 瞬間、私の顔の横に手が……やさしぃ~壁ドンだぁ。

 

「お姉さま……めっ、だよ?」

「ひゃ、ひゃぃ」

 

 もう片方の手が、私の顎に添えられる。

 そして、ライスの顔が徐々に近づいて……。

 

「たわけぇ!」

 

 空気がビリビリと震えるような怒号と共に、更衣室の扉が蹴破られた。

 

 鉄製の扉が回転しながら、私の真横に―――突き刺さる。

 

「ひっ、ひゃぁ~」

 

 ちょっと漏れたかもしれない。

 

「たわけぇ……たわけ!」

 

 怒号の主ことエアグルーヴがめっちゃ怒ってる……こわい。

 

「たたた、たわけぇ!」

 

 語彙死んでるエアグルーヴが更衣室に入ってくる。

 

 さらに、エアグルーヴの背後から入ってくるのは、私の担当してる子……以外もおる!!?

 

「たわけぇ!」

「トレーナーくぅ~ん……」

「タイマンか!?」

 

 あ~もう、どうしてこうなった……。

 

 私のトレセン学園トレーナー道は、もっとこう……あるだろぉ。

 

「なにやっとんねん!? トレセン学園は婚活会場とちゃうねんぞ!?」

 

 それな!

 

「どけ、ウチは家族やぞ!?」

 

 存在しない記憶―――って、どうしてこうなった!?

 

 トレセンきたころはもっとこう、キラキラしてたというか……いやしてたか?

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 トレセン学園―――正式名称は“日本ウマ娘トレーニングセンター学園”。

 栄光のトゥインクル・シリーズを目指して走るウマ娘たちが集い、仲間たちと切磋琢磨し、努力・友情・勝利を共に青春を……。

 

「私にそんな時期があっただろうか……」

 

 舞い散る桜と共に、私の心も散る寸前なわけです。

 

 そう、私はここ東京府中のトレセン学園に通っていた元生徒である。

 そしてそんな私が母校に帰ってきたわけです……ウマ娘を育てるトレーナーという立場で!

 

「あ~……セルフでへこむ」

 

 ともかくトレセン学園は、すごいウマ娘を育成するすごい学校で、それまたすごいURAという団体が運営するすごい……。

 

「え、私ここに通ってたけどすごいウマ娘じゃなかったんですが」

 

 メイクデビューは良かった。しかしまぁそのあとが酷いのなんの……。

 

「ていうか、なんでなんの成果も出して無い私がトレーナーに……」

 

 紆余曲折あったのだ。それはもう色々と……何回『再訪!』とか言われたかわからない。

 

「はぁ……」

「どうしたんですか、中庭でため息なんてついて?」

「ひゃわぁっ!?」

 

 しまった! 私としたことがデカい声出した!

 

「た、たづなさん……」

「はい、たづなですよ~」

 

 駿川たづな。学園長秘書でありここ数ヶ月ですっかり見飽きげふん、見慣れた顔。

 まぁいかんせん美人なので目の保養には良いかなぁ。

 ……いや、私にそっちのケは無いけどね!

 

「担当ウマ娘、見つかりました?」

「あっ、いや、全然です……」

 

 そもそも陰キャの私には学生に声かけてスカウトとか無理なんっすよ!

 

「頑張ってくださいね。理事長も期待してますからっ♪」

「うっ……はい」

 

 頷いておく。ダメだ。担当ウマ娘を持てるビジョンが見えない!

 

「ダメならそうですね……」

 

 クビか!? クビなのか!? ちくしょう! その前に寿退社してやらぁ!

 

 イケメン高身長とは言わないから優しそうで安定感ある人!

 そもそも私が172あるし身長は不問!

 一戸建てで子供は二人で、孫に囲まれて穏やかに死んでいくんだい!

 

「ダメなら……私のお嫁さんにきてもらいましょうか!」

 

 ―――トレーナー頑張るゾイ!

 

 とか思っていたら、たづなさんが私に耳を貸してほしそうにするので、だいぶかがんで頭の上の耳が届くようにする。

 慣れない状態に、私の黒い毛の耳はたづなさんの方に向いているだろう。

 

「そういえば、UMA細胞というので同性同士でも子供ができるらしいですよ」

「ひぇっ」

 

 めっちゃ頑張る!

 

「頑張ってくださいね、クロネさん!」

 

 そう愛称で呼ばれ、私は胸のネクタイをひきしめて頷く。

 

「は、はいっ……!」

「スーツが可哀想なぐらい下品な身体ですね」

 

 理事長秘書がそんなこと言いますぅ!?

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 そうして私は、トレセン学園へと帰ってきた。

 

 青春の日々を取り返すためじゃない。

 

 あの日々が無駄じゃなかったことの証明。

 

 それと……私の大切な子たちを、幸せにするためだ。

 

 

 ―――幸せの方向性が違う気もするけど。

 

 

 




あとがき

始めましてなウマ娘小説
比較的明るめでキャッチーな感じにしたいな

終わりから始まりってのもまぁよくあるよくある
主人公の細かい容姿とかは次にでもー

それではまた次回をお楽しみいただければー
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