ノンケウマ娘を狂わせるウマ娘(トレーナー)の日々   作:樽薫る

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第13話【踏んだり蹴ったりクロネさん!】

 夜、日本トレーニングセンター学園、トレーニングコース。

 生徒たちも帰ったであろう時間、タマモちゃんのメイクデビューが合った日の夜。

 誰もいない静寂につつまれたターフの上。

 

 私は―――古きウマ娘は一人、ここにいた。

 

 上は体操着、下はジャージ。

 昔使っていたけど、整備は怠っていないその靴のつま先で、ターフを軽く蹴って状態を確認。

 髪を後ろで束ね、ポニーテールにする。

 

「ふぅ~……」

 

 らしくないことをしている。自覚はある。

 

「……いけるかなぁ」

 

 自宅での柔軟とかはしてるし、ストレッチだってしてる。

 たまにジムだっていってるし……。

 学生時代とスタイルは変わってないはず……たぶん。

 

「っし……!」

 

 両足を地につけて腰を落とす。

 体が、脚が疼く……自然と、口元が綻ぶ。

 

「ハッ―――!」

 

 喉から自然に出るのは乾ききった笑い。

 久しい感覚。

 古きウマ娘だとしても―――本能がソレを求める。

 

「―――ッッ!!」

 

 そして、地を蹴る。

 

 体にかかる、数年間は感じていなかったGと風。

 心地良いそれを身に浴び、あの走ることのなかった2000メートルを再現するように……。

 

 右脚で強く、地を踏みしめて―――加速。そして!

 

 

 

 ―――はい、クロネ。脚をやりました。

 

「調子乗ったなぁ……」

 

 やはり慣れないことはするもんじゃないなぁ……。

 

 昨夜の怪我というか、挫跖を起こしたらしい……。

 

 トレーナー室の椅子の上、天井を見上げていると、自然とため息が出る。

 暑いんでジャケットを脱いで椅子の背もたれにかけて、ネクタイを適当に放った。

 

「うぅ~恥ずかしい、死にたぃ、この自惚れ屋さんを誰か処してぇ」

 

 ワイシャツのボタンを上からいくつか外すが、まぁ私一人だし問題なし!

 

「ふぇ~すずしぃ~」

 

 ついでにエアコンでもつけたろうか!

 

「どうしよっか―――」

 

 なんて思ってると、ノックの音が響く。

 どうせ身内でしょ……別に問題ないかぁ。

 

「開いてるから入って~」

 

 あれ、このパターン前にも……?

 

 ガチャリとドアが開いて、入ってきたのは褐色の少女―――美浦寮の寮長ことヒシアマゾンことアマさん。

 ブライアン関係で何度か会話したことがあった。

 こっちを見ることもなく扉を閉めてからこちらを向き……。

 

 ああもう、まさかこんなことになるとは……まぁ、私がわるいんですけどね!?

 

「ブライアンを、さ、が……し、て……」

「あっ、えと、そのっ……!」

 

 あわてて立とうとするが、右足を上げたままなのでバランスを崩す。

 危なっと思って、手を伸ばしてソファの端を掴む。

 胸を張るような形になった。その瞬間―――。

 

「あっ、またボタンっ!」

 

 ボタンが跳んだ。

 そして、アマさんの額に直撃―――衝撃のせいかアマさんは上を向く。

 ついでに私は、ソファの上に顔だけ真っ直ぐ向けて、仰向けに倒れることに……。

 

「ひぇっ」

「いったぁっ! なんだぁっ!? タイマ―――」

 

 上を向いたアマさんが、前を向こうとしたその時―――扉が再び開く。

 しかもかなり、勢いよくだ。

 そんな扉にぶつかった衝撃により、横に軽く跳んで倒れるアマさん。

 

「なんでぇっ!?」

「アマさんが来たか!? くっ、やはりクロネがドスケベ状態ッ! 見られるわけには……」

「ドスコイ言うな!」

「言ってない」

「てかそのアマさん、いまブライアンが!」

 

 倒れてるよ! 気づけ!

 

「アマさん……!」

 

 気づいた! もう遅いけど!

 

「すまないアマさん……!」

「……こ、このトレーナー……スケベ、すぎる」

「禿げ上がるほど同意だ!」

 

「なんの話してるかわかんないけど、ちょっと起き上がるの手伝って!」

 

 そうです。全部私のせいですね、はい。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 生徒会室の扉を開ければ、そこにはエアグルーヴ、シービー。

 そして、昨晩私と共に、地方から帰ってきたマルゼンスキーがいた。

 少しばかりの雑務を終えて、軽く手を上げて生徒会長たる私の席に着く。

 

「会長、此度の遠征についての報告書ですが……」

 

 エアグルーヴの話を聞きながら、ブライアンの姿を探す。

 “彼女”と深く関わっているウマ娘。

 

「……」

「会長?」

「ああ、すまない」

 

 ぼうっとしてしまった。まずいな……。

 エアグルーヴの報告を聞いてから、対処を頼んでマルゼンスキーへと視線を動かす。

 そういえば先ほど聞いたあれを確認してみようか……。

 

「マルゼンスキー、昨晩か今朝にトレーニングコースを走ったかい?」

「ん、どうしたの藪からスティックに」

「いや、タマモクロスが躓いたという話を聞いてな」

「なにに?」

「君の足跡とクロネくんが言っていたらしい」

 

 違った? しかし彼女がそんな嘘を、いや……なるほど、そういうことか?

 

「あ~そうそう! ついつい本気で走っちゃった♪」

「マルゼンの本気ね……」

 

 シービーが食いついたが、いや……マルゼンスキーの反応からしてあれは……。

 

「フッ、クロ―――か」

「会長、いまなんと?」

「……いや、なんでもない」

 

 つい、余計なことを言うところだった。

 一瞬だが、マルゼンスキーが珍しく怖い眼をしていた気がするが……。

 いずれわかることではあるとは思うが……隠すにしては彼女は、中心でありすぎる。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ソファに座った私は、隣のアマさんの頭に濡らしたハンカチを当てる。

 誰も悪くない悲しい事件だった……そう、誰も悪くはない。いいね?

 たとえ私が来客の確認を怠ったとしても、ダラしない恰好をしていても、ボタンを飛ばそうとも……。

 

「だ、大丈夫?」

「ああ、悪いねぇクロ公」

 

 向かいに座ったブライアンが、少し不服そうな顔をしてる。なぜに?

 時計を見れば昼休みも半ばである。

 ちなみにアマさんは、ブライアンが忘れて行った弁当を届けに来たそうで、教室に行ったら『トレーナー室じゃないか』という話を受けてこちらに……。

 

「ほらブライアン、さっさと食べちゃいな!」

「ん」

 

 そう言うと、アマさんが作った弁当箱を開けた。

 

「……おー、キャラ弁」

「いただきます」

 

 アニメキャラクターかなんかだけど、顔に容赦なく箸を突っ込んだ。

 

「人の心とかないんか?」

「なんで関西弁」

 

 黙々と食事を始めるブライアンに、私も腹の虫が鳴る。

 

「……」

「クロネ……大丈夫だ。私はそんなお前も嫌いじゃない」

「あ、ありがとぉ……」

「顔真っ赤」

 

 恥ずかしぃ……さすがの私もその程度の羞恥心がございます!

 ブライアンにフォローまでさせてしまった!

 

「クロ公のぶんも作ってくれば良かったかな」

「え、あ、アマさんがつ、作ってくれる感じ?」

「別にいいよ?」

「……た、たまにお願いしても?」

「ん、任せときな!」

 

 ニッと爽やかに笑うアマさん、私惚れてしまいます!

 ん、逆にアマさん、顔が赤くなっていきますが……?

 視線の先……はぅあっ!?

 

「あ、ボタン飛ばしてそのままだった」

「し、しっかりしときな」

「ご、ごめんねアマさんっ」

 

 うっ、ブラ見えちゃってたし。

 

「水色か」

「ちょっとブライアン」

 

 ―――なぁッ!?

 

「ほら、真っ赤になってんじゃないか」

「5000兆点だ」

「なにが!?」

「……まぁ、わからないでもないね」

 

 ―――アマさん!?

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 放課後、生徒会室のテーブルで書類に筆を走らせながら、私は思考する。

 

 クロネ―――フルネームは知らないが、ウマ娘でありトレーナーだ。

 なぜ名前を隠しているのか、有名どころならば顔を見ただけでわかる生徒がいてもおかしくない、それでもいないということは、現役時代に目立った戦績がないということだ。

 まぁウマ娘たちには人気があるようで……。

 

「エアグルーヴ?」

「ハッ! す、すみません会長」

 

 会長が目の前にいたことで、私は焦る。

 つい考えに耽ってしまった……監視すると意気込んだがまったくできていないのも原因だろう。

 タマモクロスとライスシャワーが心配だ。

 

「別に怒ってはいない、私達がいない間頑張ってくれていたようだし」

「いえ、それでご用件は?」

「少し出ようと思ってね、クロネくんの所に書類を」

「私が行きます!」

 

 そう言うが、会長は苦笑を浮かべる。

 

「個人的に話がしたくてね、すまないエアグルーヴ、ここは私に―――」

「会長すみません!」

 

 生徒が入ってきた。どうやらスタッフ研修生のようだが……。

 

「……仕方ない、残念だが今度にしよう。エアグルーヴ頼んだ」

「はい」

 

 まったくブライアンに続いて会長まで……クロネ。一体なんなのだヤツは!

 だらしなく猫背で! ボサついてる長い髪! さらに目は見えないものの弛んだ顔!

 あのトレーナーのなにが良いのか……!

 

 会長とスタッフ研修生の横を通って廊下を行く。

 

「副会長だ」

「すげぇ目つき……」

「めっちゃ怒ってらっしゃるな」

 

 ―――くっ! どこにいる。トレーナー室か!?

 

 

 

 階段を下りて、私はヤツのトレーナー室がある二階を歩く……。

 曲がり角を曲がればすぐなのだが、その曲がり角の手前に見知った影が壁を軽く蹴りながら、なにやらボヤいている。

 なにかと会長に突っかかるダービーウマ娘だ……。

 

「シリウスシンボリ……?」

 

 しかし、なぜここに?

 

「いや、別になんでもねぇだろ……そもそもなんつって……くそっ……」

 

 ゲシゲシ壁を蹴るシリウスの後ろを通って、私はヤツのトレーナー室へと向かう。

 シリウス……お前もか……。

 

「つうかそもそも、なんで私が……来るならテメェから……」

 

 さて、行こう。

 

 

 

 曲がり角でウダウダしているシリウス。

 道中でなにかを悩んでいる樫本理子トレーナー。

 何かを待っている様子のアグネスデジタル。

 

 数メートルの道が魔境。

 

「意味がわからん……」

 

 件の部屋の前、扉をノックする。

 

「どうぞ!」

 

 声が聞こえて扉を開けると、そこには―――。

 

「あ、エアグルーヴちゃん」

「……おう、元気しとったか」

 

 椅子に座っているヤツと、その隣にいるタマモクロス。

 普通だ……いや外が魔境すぎる。

 何事だ、この扉一枚隔てたら一体なにがあるという……。

 

「どうしたの?」

 

 そう言いながら、ヤツ……黒鹿毛のウマ娘ことクロネは別段変わりない。

 ボサッとした長い黒髪、眼は髪の隙間から時折除く程度で、いつも通りのスーツ姿、いやジャケットは脱いでいるようだが……。

 その大きな胸は机の上に置かれている……ブライアンの前で絶対やるなよ。

 

「会長から書類だ……」

 

 そう言って、机の前にいき向かいのクロネへと渡す。

 書類を受け取り軽く確認して、それを引出しへといれた。

 タマモクロスはクロネの横に立ったまま私を見る。

 

「ん?」

「エアグルーヴは……平気やな」

「なにがだ?」

「いや、平気ならええねん」

 

 なぜだか笑うタマモクロス。

 

「っし、ありがとうエアグルーヴちゃん……タマモちゃん、ブルボンたちのとこ行こう」

「了解や、ウチは?」

「併せをしようか、三人にも新しいこと教えたいし。ブルボンは一旦集中的なトレーニングしたいからタマモちゃんは二人とお願い」

「なるほどな、ハッ! あの二人に白い稲妻の凄さ見せたるわ!」

「北海道土産?」

「それは白い恋人やろ!」

 

 意外と、普通にトレーナーだな。

 

「ど、どうしたのエアグルーヴちゃん、じっと見て」

「いや、なんでもない」

 

 少し安心したと、息をつく。

 

「タマちゃん、ちょっと着替えるの手伝って」

「んぁ?」

 

 なに!?

 

「担当ウマ娘にセクハラか!?」

「ちょ、なぜ!?」

「なんだ着替えを手伝えとは、このたわけ!」

「たわけとは!?」

 

 少し安心した途端これだ!

 

「タマモクロス出ていろ、私がやる。コイツには倒錯的な性癖があるに違いない」

「なんで!?」

「え、そうなん?」

「違うでしょ!? 今までなに見てきたの!?」

 

 タマモクロスは考えるそぶりを見せるが……。

 

「えっと、言いにくいなぁ」

「ここでそれ!?」

「いや、せやけど」

「よしタマモクロス出ていろ、私がヤる!」

「じゃ、頼むわ。エアグルーヴなら安心やろ」

 

 そのまま出ていくタマモちゃん。

 

「ちょ、なっ……え、エアグルーヴちゃん、や、やめっ!」

「大人しくしていろすぐ終わる!」

 

「あ、あっ……アーッ!」

 

 

 

 ―――後に、エアグルーヴは語る。

 

 ええ、そうですね。最大にして最高のチャンスでしょう。

 

 今思えば、たわけは私でした……フッ。

 

 しかして忘れてはいないんですよあの感触を、あの感触から徐々に私の心は惹かれていたのかもしれません……。

 

 私には自慢の母も父もいるんですが……。

 しかしあの時、たわけの乳に母を感じてしまいました……ぐっ。

 

 い、いえ、自らのダジャレに心が蝕まれたのみです。

 

 なにはともあれ、これが意識してしまうきっかけというか……堕ちた要因の一つ、でしょうか。

 

 

 

 ―――着替えは終えた。

 

 タマモクロスに着替えさせてもらえなかったからか、半泣きのたわけをタマモクロスに引き渡した。

 私はトレーナー室の前で深く頷き、逆方向へと向かおうと踵を返した、のだが……。

 

「デジタル……」

 

 アグネスデジタルが鼻血を流しながら倒れていた―――いつも通りだ。

 どうせすぐに、起き上がることだろう。

 

 しかし、まぁ……。

 

「柔らかかったな……」

「でひゅぅ!」

「っ!?」

 

 で、デジタルが痙攣した……?

 

 自らの手の平を見つめて、脳裏に焼き付いた光景を思い出す。

 背中を駆ける妙な感覚に異様な背徳感を抱いたことに、嫌悪しながら首を振ってそれをかき消そうとするが、そうすればそうするほど、思い浮かべてしまう。

 自らの身体を抱き、髪の隙間から涙目で私を見る真っ赤な顔……。

 

「ぐっ、私はなにを!」

 

 いかん、すぐに生徒会室に戻って仕事を終わらせてよう。

 

「あのっ、エアグルーヴさん……」

「ん、チヨか……」

 

 サクラチヨノオー。

 マルゼンスキーに憧れているウマ娘だそうで、マルゼンもまた可愛がっている後輩だ。

 しかし、私に声をかけるとは珍しい。

 

「えっと、あのウマ娘のトレーナーさんなんですけど」

 

 お前もか!?

 

「フルネームって、知ってますか?」

「……そうか、そうか」

「なんだかほっとしてます?」

 

 そんなことはないと、軽く平手を向ける。

 

「いや、知らない……会長もマルゼンも教える気はないようだ」

「……その、私見たことある気がして」

「なに!?」

「あ、えと、えと……ま、マルゼンスキーさんのレースのどこかで、見た、気が……」

 

 あの二人は仲が良いように思えるが、そういうことか!

 

「でも、エアグルーヴさんも知らないんじゃ……」

「いや調べてみよう」

「え、でも、もしかしたら見間違いかもっ」

 

「いや、とりあえずその線でいく!」

 

 学園内は静かに走るべしという校則に従い、足早に生徒会室への道を行く。

 

 ―――別に知ったところで、なにもないというのに。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ―――トレーニングコースの端、松葉杖を右脇に挟みながらそれを支えに立つ。

 

 目の前には私の担当ウマ娘ことタマモちゃん、ブライアン、ライス、ブルボン。

 現在は今日の練習、タマモちゃんを入れて、ブルボンを一旦抜く話をしている。

 そうしたところで、ふとブライアンとライスの様子がおかしいことに気づく。

 

「……聞いてる?」

「ジャージ、やはり閉まらないんだな」

 

 ―――ブライアン!

 

「タマモちゃんもブルボンもスルーしてたじゃん!?」

「マスターの胸部の大きさからして、収納しきらないのは当然なので言う必要もないかと」

 

 ブルボン追撃!?

 

「エロだな」

「エロじゃないよ!」

 

 こんな陰ウマ娘一体誰がそんな目線で見るのさ!

 

「なんでもう一段大きいサイズ買わへんのかわからん」

「いけるかなって! やせたし!」

「何キロ」

「……1.3キロ」

「変わるかぁ! そもそも乳のサイズが変わるか!?」

「痩せたら変わるでしょ!?」

「それもう痩せて云々ちゃうやろ!」

 

 こんな大騒ぎしてると視線集めちゃうだろ!

 

「お、おね、お姉さまの、じゃ、ジャージから、お、おさ、おさまらら」

「あかんライスが壊れた!」

「なんで!?」

 

 ライス!?

 

「どどど、どしたのライス!?」

「お、お姉さま、は……」

「葛藤している。狭間でな」

 

 ブライアンがなにかわけわかんないこと言いだした!

 わかったよそこまで言うのなら!

 

 私は勢いよくベンチに腰を下ろす。

 

「ふっ……ぐぬぬっ!

「あかん! 無理矢理閉めよった!」

「デンジャー、ジャージが悲鳴を上げてます」

 

 言いたい放題か私の愛バ共!

 

「ぐっ、こ、これで……ど、どう?」

 

 めっちゃ苦しいんですけどっ!

 

「……むしろエロい」

 

 なんで!?

 

「お姉さま……」

「ん、んー?」

 

 苦しいけども、近づいてきたライスの方へと視線を向ける。

 ベンチに座ってるから目線の高さはそれほど変わらない、のだけれど……。

 ライスの手が、ゆっくり私の首元あたりに近づく。

 

「?」

「……!」

 

 ライスの眼が一瞬、青く光った気がする。

 それと共に、ジャージのチャックが勢いよく下ろされた。

 

「きゃっ!?」

 

 勢いよく、私の胸が解放された―――へへ、ライスったら私を心配して、優しいなぁ。

 

「エッ」

「ライス!?」

 

 なんか言って倒れるライスを、後ろから支えるブライアン。

 なんだかその表情はやけに優しい。

 

「さすがライスだ」

 

 気遣ってくれたからさすがだよね。

 

「そしてさすがクロネだ」

「なにが?」

「……ジャージのスポーティーさをすべて殺した上で、圧倒的な卑猥さ、エロスだ」

「なんも嬉しくねぇ!」

 

 助けを求めてタマモちゃんの方を向く。

 

「……いや、あんま否定できんわ」

「なんで!?」

 

 じゃあブルボン!

 

「これが、卑猥……」

 

 クソが! 誰が私の味方いないの!?

 

「クロネ~」

「マルゼンスキー!」

 

 パァッと表情が明るくなるのがわかる。

 

「昨日の夜トレーニングした私だけどぉ……ちょっとお話、いいかしらぁ?」

「ひぇっ」

 

 

 ―――四面楚歌です。はい。

 

 




あとがき

本筋、動いてないようで結構動いています
最初の方に重要そうな話持ってきた結果、薄れるよね
とりあえずちょっとずつ周囲との関係も変わってきて、動かしやすくなってきた

そろそろ投稿、遅れだしそうやけども

では、次回もお楽しみいただければと思いますー
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