ノンケウマ娘を狂わせるウマ娘(トレーナー)の日々   作:樽薫る

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第2話【終わってる上層部!】

 冬の寒気が僅かに残る春の日。とかそれっぽい語りをしようと思ったけどそっちは才能はないのでやめておく。

 そっち“も”だろって? やかましい!

 

 

 

 さて、どうしようか……。

 

 たづなさんに『担当ウマ娘は見つかりましたか?』とか言われたけど、私にはやはり事前に決めてコミュニケーションを取っておくとか、そんなことができるはずがない!

 ここに通っていた時からあたしゃ陰気ウマ娘ですとも!

 

 ということでやはりここは数日後の『選抜レース』を頼りにすることにしよう!

 たづなさんが発破かけてくれたし、流石になにもしないってのも申し訳ないしね。

 

「とか思ってたら、落ち着かなくなっちゃったなぁ……」

 

 逸る気持ちのせいか、それともプレッシャーのせいか、おかしくなった私は都会に出た―――のだけれど即座に人酔いした。

 

 大逃げをかまして自宅の最寄り駅へ……元先行ウマ娘にあるまじきですよ。

 気づけば今借りているアパートの近くを歩いていた。ちなみに、トレーナー寮もあるのだが、私は落ち着かないので入ってない。サボれなさそうだし……。

 へへっ、あたしゃ根っからの陰の者ですよっ。

 

 落ち着いてきたけども、選抜レースを見たからって言って声かけれるとも限らないんだよなぁ~。

 

「確か、新人トレーナーって私以外も結構いたはずだよねぇ……」

 

 でも選抜を見に来るのは、ウマ娘を既に担当したことがあるベテラントレーナーさんも多いだろうし、私も選抜レースの後はそこそこの人数のウマ娘を担当してるベテラントレーナーさんとこ行ったっけ。

 それから、ほぼほぼ鳴かず飛ばずでチームにも居づらい雰囲気になっちゃって……。

 

「う゛……気持ち悪っ」

 

 やなこと思い出した。挙句人酔いと電車酔いもプラスで倍率どん! すげーオッズ!

 ゲロ出そう、ゲロインになりそう……。

 まぁヒロインでもないので、ただのゲロにしかならない……汚い話だなぁ。

 

「あ~しんど」

 

 考えれば考えるほど変なことを思い出してしまう!

 あ~黒歴史ぃ! やめて考えないで~! みんな結構優しかったなぁ~それが辛かったけどぉ~!

 結局、その時のメンバーの誰ひとりとも連絡取ってないのが私らしいなぁ。まぁ未だに走り続けてる娘ばっかなので取れない、の方が正しいか……。

 

「う゛ぅ゛~さいあくだぁ」

 

 食道に違和感、とりあえず立ち止まって電柱に手を当てて、しゃがみこむ。

 

「あ゛~」

「えっちょおあんた……大丈夫なんか?」

「え゛、あ、す、すみません……」

 

 なんか通りすがりの人に心配されてしまった……これまた最悪だ。

 

「きゅ、救急車とか呼ぶか?」

「だ、大丈夫です。見ての通り元気なんで……!」

「見ての通りダメそうやんけ!」

 

 キレキレのツッコミ、好きなタイプだ。陰には嬉しいタイプ。

 

「ちょ、ちょっと色々ごじゃいまして、な、なんていうか、心因性というか……」

「あ~まぁウマ娘は色々あるしなぁ……」

「う゛ぅ゛……過去は、バラバラにしてやっても、石の下からミミズのようにはい出てくるというか……」

「ディアボロか! 自分思ったより余裕やな!?」

「そんなことぁ、うぷっ……」

「ああもぉ、あ、ちょっと待っとりぃ」

 

 駆けていく音が聞こえる……音が良い。

 このテンポは、おそらく走り慣れてる……ウマ娘?

 

 小銭の音と、ガコンとなにかが落ちる音……さーせん。

 

「ほれ、水や……」

「ごべん゛だざぃ゛」

「きったない声やなぁ」

 

 うっせぇわ。

 

「んくっ、んっ……」

 

 水を一気に半分ほど飲んで、大きく深呼吸をする。

 

「ふぅ……あーちょっと良くなってきた気がする」

「そらなによりやけど、お姉さんどないしたん?」

「えっとぉ。よっと」

 

 水のキャップを閉めてから、立ち上がって―――恩人の方を向く。

 

 ―――やっぱりウマ娘。

 

 芦毛の少女が、そこにはいた。身長は小さく140センチぐらい?

 身長差から……ずいぶん、見下ろすことになる。

 

 まぁ、それよりも気になるのがその少女が―――トレセンの制服を着ているということだ。

 

「その、えっと……あ、ありがとうございます」

 

 まずはペコリと頭を下げる。

 

「お、おう……大丈夫なん?」

「あ、はいおかげさまで」

 

 くっ、会話の前に『あ』ってつけちゃう!

 

「お姉さん、どないしたん? っていうか、ん~どっかで見たこと」

「あ、あり金出すんで勘弁してもらっても良いですか?」

「カツアゲみたいになるやろ!?」

「と、とりあえず見逃していただいて……」

 

 目の前の学生は怪しいものを視る目をしてる。

 いやぁ、さすがにトレーナーが道端でゲロゲロしてたのはバレたくないというか何と言うか……。

 

「……わかったトレーナーや」

「ゲェーッ!」

「キン肉マンの驚き方!」

 

 さっそくバレたぁ……もうダメだ、おしまいだぁ……。

 

「確か今年、一人だけウマ娘のトレーナーおったなぁ」

「そ、そこをなんとかしていただけないでしょぉか」

「なにが?」

「記憶を消してもらえれば」

「なんで?」

 

 なんでって!!?

 

「新人トレーナーが道端でゲロゲロしてたなんて担当ウマ娘つかなくなるじゃないですかぁ!」

「いや別に言わんし」

「……え、ほんと?」

 

 こんなに嬉しいことはない! ララァもわかってくれる!

 

「ほんとやって……ウチやってもう高等部やしそこらはわきまえて」

「え、中等部じゃなくて?」

「言いふらしたろうかな」

「御堪忍を!」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ウチ、タマモクロスの目の前のトレーナーへの第一印象は―――デカい。

 身長(タッパ)もせやけど、体のライン出にくそうな服やのに胸が、クリークよりデカいんちゃうかコイツ……?

 というか全体的に、野暮ったい気もすんなぁ。

 猫背やし厚めの服やし膝下まであるロングスカートで、やっぱ色合いも全体的に地味やし……。

 

「……ん~」

「え、なんでジーっと見られてるの? ジーっトしててもドーにもならないけど、ジードなんですが……」

「ふむぅ……」

「え、えっと……な、なんかおかしいとこありましたでしょうか……」

 

 腰ぐらいまである黒鹿毛もちょっとボサッとしてて、目も前髪で隠れてる。

 なんとか下からなら見えるけど、それにオドオドした雰囲気もしとるし……。

 

「トレセン卒業したウマ娘ってもっとこう……」

「私が特殊なだけですが!?」

「うおっ!?」

「普通はキラキラしてんのよ!? ただね、こうね……」

 

 なんか知らんけど遠くを見だしおった……。

 

「まぁなんも言わんから安心しぃや」

「ほんと?」

「嘘言わんって……ほら、な?」

 

 もう哀愁溢れるその背中にウチはなにも言えんわ。ってことで、背中をポンポンと叩く。

 なんかちょっとだけ眼に光が戻ってきた気がして安心する。

 

 ―――なぁんか放っとけん感じすんなぁ。

 

「ウチはタマモクロス言うねん。これもなんかの縁やし、ルーキー同士お互い頑張ろな!」

「う、うんっ……あ、ありがとう……タマモクロス、ちゃんっ……」

 

 なんかむずがゆいなぁ!

 

「お、おう……ほなまた!」

 

 トレセン学園で会ったら挨拶ぐらいはするやろし、ってことでウチは軽く手を振ってから―――走る!

 チビたち待っとるかもやし!

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 私は、走り去っていくタマモクロスちゃんに手を振り見送って、姿が見えなくなってからポケットを探る。

 そこからメモを取り出して、挟んでいたボールペンで思ったことを頭で整理して書く。

 タマモクロスちゃんの速度、フォーム、勉強になるところが沢山あるように見えたから……。

 

 昔からの癖というかなんというか……。

 

「データ収集、役には立つよね……」

 

 結果、色々な走りを盗もうとしすぎてわけわかんなくなっちゃった私なわけですが……。

 

「私の担当する子には、自分の走り……しっかりさせてあげたいなぁ」

 

 空を見上げれば真っ白な雲。

 にしても、今日は成果はあったんじゃなかろうか!

 あんなザマを見られたから、たぶん担当にはなれないだろうけど生徒と交流を深められたと言っても過言では……過言か? いや、過言じゃない!

 

「ぼくは~青空に~なる~♪」

「重い荷物を枕にして深呼吸青空になってる場合じゃないですよ」

「ひぇっ」

 

 突然声が聞こえて、思わず変な声を出してビクッとする。そりゃそうだ。する! せざるをえない!

 

「たたた、たづなさん! どこにでも現れますね!?」

「今日はちょっと用があったんですよ」

 

 たづなさんがそこにいた。いつも通りの恰好で。

 

「ど、どうしたんですか?」

「クロネさんの部屋を下見に」

 

 変態だぁぁぁ!?

 

「っていうのは冗談で、理事長からの言伝が」

「ふぇあ!? あ、秋川理事長から?」

 

 トレセン学園、秋川やよい理事長。

 私をわざわざ訪ねてきたイカれげふん、猛者ですことよ。

 てか、クビですかぁ!? 早い! 早いよ! スレッガーさんかよ!

 

「明日、少し早めに来て理事長室に寄ってほしいって」

「……へ、それだけです?」

「はい、そうですよ?」

「そ、そうですかぁ」

 

 ホッと一息。

 

「クビかと思ったぁ」

「まさか、理事長はクロネさんに期待してるみたいですよ?」

「う゛ぇ、なんで私?」

 

 まぁウマ娘のトレーナーとか少ないけどさぁ……う~ん。

 ていうか、なんの成果も出して無いウマ娘トレーナーってどなんですか? 担当ウマ娘にめっちゃ舐められそうなんですけど! こわい! カツアゲこわい!

 

「ということで、私はこれで」

「あ、はい」

 

 頷くと、たづなさんニコニコしながらそのまま去っていくのだけれど……。

 

「え、わざわざ来る必要あった?」

 

 

 

 

 ―――で、翌日の朝……眠い。

 眠気眼を擦って、欠伸をしてから……ネクタイをしっかりと締めて、理事長室の扉をノックする。

 

「歓迎!」

 

 相変わらずの勢いで声が聞こえる。

 まぁ聞きなれたし見慣れたもんですよと、ドアノブを掴む。

 

「失礼しまぁ~す」

「おはようございます。クロネトレーナー」

 

 ガラじゃない。実にガラじゃあない。

 

「お、おはようございます」

 

 そう言って扉を閉めると、二人の前に行って軽く一礼。

 

「おはよう! クロネトレーナー!」

「あ、はい……にしてもどうしたんですか?」

「些事ッ! いかんせん手間取ってると聞いたのでな!」

「あ、あ~」

 

 言いたいことは理解できたし、心配してくれていることもわかる。

 いくら期待していても、担当ウマ娘を見つける可能性が低いともなればそりゃそうだ。私もそう思う。

 

「せ、選抜レースで見つけますから、普通そうですよねっ?」

「肯定ッ! しかし、あてはあるのか?」

「えへへ、心配かけちゃいましたけど、お任せくださいっ!」

 

 全然ねぇけど! 

 ……まぁとりあえず、そう言っておいて私は両腕をぐっとよせて大丈夫アピール。

 慣れてないけど作り笑いもしてみちゃう!

 

「ね?」

「……猥褻ッ!」

「ファッ!?」

 

 なにごと!?

 

「生徒にはほどほどにな!」

「セクハラ! 理事長がセクハラしてるよたづなさん!」

「下品ですね。そんなだらしねぇケツして……誘ってるんですか?」

「セクハラだってば!?」

 

 こんなところに一秒だっていられるか! 私はトレーナー室に戻る!

 

「微少ッ! 少しだけ揉ませてもらいたい!」

「やだよ!? 正気ですか!?」

「先っぽだけ! 先っぽだけですから!」

「一番ダメじゃん!」

 

 ぶっ壊れている。狂気の沙汰、発狂ゲージがすごい。私のせいじゃないよね? ね?

 とりあえず、私は勢いよく立ち上がった。

 

 ということで今回は私のこの一言で〆させていただきます!

 

「解散!」

「続行ッ!」

 

 なんでッ!?

 

 




あとがき

まだ序盤なので説明とか入れなきゃいけないからギャグ薄め
なのと下ネタが多いのも主人公周りというか、主人公がどういう感じなのかとかの説明半分込み込みなのでご了承くだしゃぁ

キャラ多くなってきたらもうちょっと勢い出るはずー

それでは次回もお楽しみいただければー
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