ノンケウマ娘を狂わせるウマ娘(トレーナー)の日々   作:樽薫る

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第25話【パーティーですよイヴの夜!(後編)】

 

 つまり、事の顛末はこう。

 

 私ことクロげふんクロネが一人でくつろいでたトレーナー室にカフェとタキオンが来て、ブルボンも少し遅れてやってくると、私とブルボンが隣、カフェとタキオンが向かいで座っていた。

 クリスマスパーティーに参加するという話しをすると、ブルボンも『マスターが参加するのであれば、私も参加します』とか可愛いことを言ったので、朝と同じく私はドヤ顔で胸を張って、ボタンが飛んだ。

 三個が飛んで、一つはカフェの額に直撃、もう一つは跳弾の如くテーブルを跳ねてタキオンへ、もう一つは天井にぶつかりブルボンの手に……。

 

 

「―――ということなんだけど」

「無理あらへんか?」

「いや事実なんだって!」

 

 とりあえずワイシャツからジャージに着替えて、私はシャツにボタンを縫っていく。

 本日二度目。

 

「間違ってないね、その通りだよ。いや~凄いなぁトレーナー君は!」

「嬉しくない……」

「すみませんクロネさん、私が守護らねばなのに」

 

 どゆこと?

 

「ていうか三発撃って三発なにかしら起こすってどうなってんねん」

「三発撃ったって言い方やめてくれる!?」

「かなり高水準な命中率です」

「冷静に判断しないでよ!?」

 

 そうツッコミを入れて、遅れて先ほどやってきたブライアンとライスの方へと視線を向ける。

 

「見たかった」

「やめてくれる!?」

「お姉さま、さすがだねっ」

「かわいいけど全然嬉しくないっ」

 

 かわいいけど! ライスかわいいけど!

 

「やっぱりそういうことしちゃうお姉さまが、悪いんだよ……?」

 

 ライスが言うならそうかもしれない!

 

「もう一個大きいサイズのシャツ買うしかないかぁ」

「とんでもないよー!」

「お、お姉さまは少し小さいぐらいが、良いんじゃないかなっ……こ、恋人とかもっ」

「おいライス……まぁ服はそのサイズで良いな」

 

 え~意外と今のが好評。なんで?

 

「こいつら欲望に忠実やなぁ」

「タマモちゃん、クロネは昔から周りからこう言われて育ってきたのよ」

「そりゃ変わらんわな」

 

 タマちゃんとマルゼンスキーが小声で話しをしている。案外仲良くなっているようでお姉さん的には安心。

 まぁなにはともあれ、私が今やるべきミッションは一つ!

 

「……寿退社だっけ」

「なんや知らんけど違うやろ!?」

「クロネ、少し……大胆だな」

「なに顔赤らめてんねんブライアン!? 勘違いしとんな色々と!」

 

 違ったらしい。いや、違うに決まってるのだけれどなんかノリと勢いで余計なことを言ってしまった。気を取り直して、私が今やるべきミッションは一つ!

 

「クリスマスパーティー……」

「深刻な顔して言うことかい!?」

 

 この中でクリスマスパーティーに耐性があるのはブライアンとマルゼンスキーのみ。ライス、ブルボン、カフェ、タキオンはおそらく無い。

 

「タマちゃんは?」

「え、別に普通やけど……」

 

 タマちゃんもそっち側か!

 

「……こう、ローカルルールとかない? 初めて行ったまぜそばの店みたいな」

「別にないやろ、新入生も来るんやし」

「いやでも新入生なら許されるけど、わ、私みてぇな大人がしたら恥ずかしいミスとかあるやん!?」

「なんで関西弁やねん、てか……あ~わかったわかった」

 

 そう言うと、タマちゃんがスマホを出して誰かに電話をかけた。

 

「え、どしたの? 業者呼ぶの?」

「なんのや……ちゃうわ、プロやプロ」

「戦闘のプロ? 涙を流さない?」

「ダダッダー……ちゃうわ!」

 

 ―――じゃあ、プロって?

 

 

 

 ということで、タマちゃんの電話で呼び出されたその道の“プロ”こと陽の極み乙女。激マブなパツキンのチャンネー、100年に一度の美少女ウマ娘で雑誌でモデルもこなす光り輝くシャイニングな闇属性にはお辛い相手。

 ……ともあれ良い娘。光が強すぎて闇が深くなってしまうだけ。

 ということでゴールドシチーちゃんがやってきたわけです。

 

「え、タマモ先輩に呼ばれてきたけどなにこの大所帯?」

「いやなシチー、クリスマスパーティーなんやけど」

「今日の?」

「そう、今日の、なん、だけど……」

 

 くっ、タマちゃんったらシチーちゃんに頼むたぁ中々なことをしてくれる!

 

「なんかこう、ローカルルールというか」

「別に、なにもないですけど……」

「え、ないの!?」

「だから言ったやんけ」

 

 バカなっ、本当に!?

 

「た、たしなみ的なものは?」

「ないですよ。クロネ先輩心配しすぎ……え、タマモ先輩、私ってこの確認のために呼ばれました?」

「まぁせやけど」

「えぇ……どういうことですか」

 

 騙された! いや騙されてなかった!

 

「よかったぁ~これで安心してパーティー出れるよ。ドレスなんて一着しかないし、たぶん入りはするけど」

「ドレスなんて持ってたんか!?」

「まぁ一回も公の場で袖通したことないけど」

 

 既に呪いのドレスと化していてもおかしくはない。そうなったらカフェにどうにかしてもらおうそうしよう、なんて……冗談はともかく、ドレスなんて今更着れないよなぁ……いやでもイベントとかあるし、どうしよう着ることになる!?

 ま、まぁ嫌なわけじゃないけど、恥ずかしいよね。

 

「ドレスなんかで行ったらなにかイベントかと思われますよ」

「私が主催でイベントなんて遊戯王大会ぐらいしか開けないよ」

「そうはならんやろ」

 

 なるんだよ! こう、他にもゲームとかぐらいしかできない! 婚活パーティーとか主催してみてぇ!

 

「くっ、こんなんじゃ……満足できねぇ、ぜ」

「クロネー!」

「うっさいわブライアン! ノリノリか!?」

「フッ、姉貴と昔遊んでいた頃を思い出す」

「どこ見てなに笑ろてんねん!」

「あの、私帰っていいですか?」

 

 お待ちになってシャイニングビヨンドゴールドシチー先輩!

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ―――トレセン学園に存在する寮は二棟。美浦寮と栗東寮。

 

 そして、寮長は生徒であるウマ娘が担当をしており、一人は栗東寮のフジキセキ。もう一人が美浦寮のアタシ、ヒシアマゾンだ。

 なにかと催しがある度に忙しくはなるが、そのぶんやりがいもあるしなにも必ず一人でなくみんなで協力したりもするんだけど、今日に至っては他のウマ娘の協力が得られない。

 そう、クリスマスの恒例行事、寮長サンタの出番……すべてのウマ娘にクリスマスプレゼントを渡して、または置いて回る日。

 てことで、あとは……。

 

「手伝いとかほしいけどねぇ、これも明日のあの娘らの笑顔を見るだめだし」

「手伝い、か……そういえば同じウマ娘の彼女はどうだい。最近、君と付き合いがある。クロネトレーナー、だったかな?」

 

 なるほど、同じウマ娘なら問題ないってことだね。トレーナーでもアタシらが許可すればいいわけだけど……。

 

「やっぱ嫌がるポニーちゃんたちもいそうかな?」

「クロ公の担当ウマ娘と、同室の娘たちぐらいなら良いんじゃ……」

 

 ふと、そこで止まるアタシはとても偉い。

 

「……クロ公が、担当ウマ娘の部屋に……一人で、サンタクロースで」

「ん?」

 

 サンタの格好のクロ公の時点でヤバい、スケベが過ぎる。想像するだけでヤバいとわかる。あのトレーナー、スケベすぎる。それにそんなクロ公を担当ウマ娘の部屋に一人で突っ込ませるだって……? 腹空かせたライオンの前に肉を持ってくようなもんだ。所謂、据え膳。

 タイマンか? タイマンが始まるのか!?

 

「ダメだね!」

「え、そうかい? 中々良い案だと思ったんだけどねぇ、ポニーちゃんたちが寝てても起きてても喜ぶだろうし」

 

 むしろクロ公が悦ぶというか悦ばされる。寮内でそんな案件はごめんだね!

 

「でもクロ公のサンタは見てみたいかも」

「え?」

 

 しまったアタシとしたことが! こうなりゃタイマンだクロ公!

 

 

 ―――後にアタシは後悔する。サンタコスクロ公とタイマンする唯一のチャンスを無下にしたという事実を……。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 時刻は19時を回った頃、“私たち”は会場へと入る扉前にいた。しっかりとボタンを縫ったシャツ、ジャケットを身に纏い、スーツ姿でそこに立つ。後ろにはタマちゃん、ブライアン、ライス、ブルボン、タキオン、カフェ。そしてウルティメイトシャイニングゴールドシチー大先生。帰ろうとしてたので全力で一緒に行ってもらうことにした。

 そっと後ろに下がると、タマちゃんの方を向く。

 

「あ、開けて……」

「なんでや」

「カウントするから!」

 

 バンジーの如く。と思えばタマちゃんは思ったより無表情。

 これで緊張しないってどういう心臓してるの、中からめっちゃ優雅な音楽とか楽しそうな声聞こえるよ?

 

「いやいらんけど」

(トレース)(ドゥオ)(ウーヌス)……」

「なんでラテン語なんだい?」

「最近ゲームで聞いたから……」

 

 なんとなくやってみたらタキオンが食いついた。するとブライアンが。

 

「もっとASMRっぽく」

「ブライアン!?」

「しょうがないなぁ」

「やるんかい!?」

 

 私も変なテンションになっているせいでノリノリで始める。とりあえずブライアンの耳元に口を寄せる。

 

(トレース)……♥ (ドゥオ)……♥ (ウーヌス)……♥」

 

 紅くなるブライアン。え、なにその反応、かわいいんですけど……。

 

(ニーヒル)……♥ (ニーヒル)……♥ (ニーヒル)……♥♥」

「ぐぅっ!」

 

 膝をつくブライアン。なにこのかわいい反応。耳の耐性なしなの?

 

「ふふふっ、ブライアンの弱点見つけって痛ぁ! タマちゃんが脛蹴ったぁ!」

「入場前に全滅させる気か!?」

「ちょっとした茶目っ気なのにぃ〜」

「それでウマ娘は死ぬんや……そして狂うんや」

 

 ちょっと何言ってるかわかんない。

 

「とりあえず行くで」

「ブライアン行くよ?」

「わ、私は良い、先に行け……」

 

 それ一回は言ってみたいよね。

 

「それじゃ遠慮なく、ね。お姉さま」

「えっ、あ、うん」

 

 ライスが意外と冷静で、私の手を持って引く。後ろを見ればタキオンがまた私に飛びつこうとしてるけど、カフェが首根っこを掴んでるようだった。

 別に良いけどね。恥ずかしいことしなきゃ、おっぱい揉んだり髪に埋もれたり首噛んだりする場合は、私も然るべき対応をとるけど、ブレーンバスターとか。

 

「よっし、じゃあカウントダウン」

「ええから行くで」

「タマモ先輩、慣れてるなぁ」

「ちょ、心の準備!」

 

 瞬間、扉が開かれる。

 

「……ほわぁ」

 

 アホっぽい声が思わず出てしまう。過去二回のクリスマスパーティーと比べてもレベルが違った。それほどに煌びやかに装飾された会場、大きなツリーも中心に設置してあり、他にもクリスマスらしい小物が散りばめられており、BGMもクリスマスのそれ。思わず、料理の匂いに喉を鳴らす。

 タマちゃんとシチーちゃんが先に入っていくので、私もライスと共に遅れて歩き出すとブルボンも私の隣を歩き出した。

 

「ホント、すごいねぇ」

「御飯もいっぱい……」

「食べ放題だから沢山食べて良いらしいですよ」

 

 えっ、と私は思わずシチーちゃんの方を向く。

 

「た、食べ放題……所謂ぶっ、びゅっへ、ぶっふぇ……」

「ビュッフェやろ」

「そうそう、バイキング」

「最初からそっちで言わんかい!」

 

 普段あんま喋らないから舌が回らない。ライスと繋いでいた手を離して、軽く周囲を見回せばどこもかしこも、クリスマスの雰囲気になっているようでプレゼント交換までしている娘もいる。ちなみに私は用意していない。まるで考えてなかった。

 くっ、人付き合いをあまりしてこなかった弊害がここにっ!

 

「なんだ、こんなもんかぁ……」

「あ、そういえばダンスが」

「なんて!!?」

「ちょっ、く、クロネ先輩!?」

「なんて言ったダークネスゴールドシチー後輩!?」

「どゆこと!?」

 

 だだだ、ダンス!? いやダメだって! 私そういう行事とは距離を取ってここまで人生送らせていただいてるわけよ!?

 

「だ、大丈夫だから。全員参加じゃ、ないしさ」

「どどど、どういう状況にっ」

「お、落ち着いてお姉さま、ダンスならっ……ら、ライスがエスコートしてっ」

 

 かわいいな! てかライスがダンスのエスコートなんてギャップ萌え!

 

「ま、まぁまぁ、いつやるかはわからないですけど誘うか誘われるかしないなら良いじゃないですか」

「そ、そうだよね!」

 

 タキオンとカフェを見るが、首を横に振る。遅れてきたブライアンは片手を上げてそのままルドルフたちの方へと向かい、ブルボンを見ると。

 

「スキル『ダンス』は習得していません」

「あ、うん」

 

 ロボットダンスとかいかがだろうか? いや完全に偏見ですけども!

 

「まぁまぁ、見るだけでも結構楽しいし」

「そういうもん?」

「うん、私もこういうとこでするダンスは苦手だし」

 

 シチーちゃんの言葉に頷いて、私はとりあえず見渡してみるが知り合いがちょくちょく参加しているのが見えた。樫本先輩もしっかりビターグラッセ、リトルココンと共にいる。葵ちゃんもハッピーミークと共にいるようだ。

 てかオグリめっちゃ食ってる! 蓋空けたら立食パーティーみたいなもんか、行ったことないけど。

 

「こう、私が参加した2回とはだいぶ違うなぁ」

「まぁなにはともあれ、いくでクロネ」

「もちろん」

 

 ご飯食べてないし……デザートもだ!

 

 

 

 皿一杯に好き放題御飯を取って食べるのは私。その隣でライスも中々な量を食べる。ちなみにタマちゃんは普通より少し少ないぐらいで、ブルボン、カフェ、タキオンは普通ぐらい。シチーちゃんは……。

 

「え、めっちゃヘルシーな感じだ」

「そりゃ、モデルだし」

 

 はい。そうですよね、努力なしにそうはならないよね! さすがっす!

 

「へへ、私はいつまでたってもぽっちゃりですよ……」

「お姉さま、ライスは……好き、だよ?」

「ライスぅ!」

 

 ウチの妹がかわいいんですが!? なんだよもぉ! お姉ちゃん幸せ太りしちゃうよぉ……。ライスったらそんな可愛いことばっか言ってると悪いオオカミさんに食べられちゃうぞ!?

 

「でも、ダイエットしようかなぁ」

「ダイエットなんてとんでもないよ!」

「うおっ!?」

 

 殺人スライディングタキオンが目の前に現れる。

 

「トレーナー君は今のトレーナー君で良いのさ……そのドスケベボディで」

「ドスコイボディ!?」

「言ってないけど」

「賛同ッ! アグネスタキオンの言うことはもっともだな!」

「理事長!?」

 

 なぜか現れたロリ、じゃなくて秋川やよい理事長。

 

「卑猥ッ! 体型をキープだな!」

「私煽り散らかされてるの!?」

 

 なぜ太ってると暗に言われてキープを迫られるのか、これがわからない。いやわかりたくもない……くっ、スリーサイズを握られているから余計なことは言えない!

 そんな理事長(メスガキ)を前に私はあまりにも無力である。これが社会の闇、権力、ゴヨウガーディアン。大人しく引きこもってゲーム実況で一山当てたい人生だった。

 

「うぅ~タマちゃんみんながいじめる~」

「いやなんつーかウチの胃の方が痛くなってくるんやけど」

 

 なんでさ。

 私はむしゃくしゃしたのでむしゃむしゃ皿の上の料理を平らげる。

 

「ごちそうさまでした」

「注意! そろそろ時間だぞクロネトレーナー」

「え、なにがですか?」

「無論、クリスマスパーティーの注目イベント」

 

 ……いやいや、私関係ございませんことよ。と思いきや会場に流れてた定番クリスマスソングから、優雅なメロディ、心洗われる曲でございますので、私これでお暇させていただき思う所存で―――。

 

「豪華絢爛だろう? クロネくん、楽しんでくれてるかな」

「楽しかったよ!?」

 

 今までな! エンカウントルドルフ回り込まれた逃げられない!

 

「お、オグリ!」

「ん、どうした?」

 

 呼べば応えるハツラツちゃん!

 

「か、会長さんとダンスを踊るのはいかが? スケートはないけど」

「なぜスケート?」

「なぜスケートなんだい?」

 

 二人して詰めるんじゃないよ。

 

「な、なにはともあれ私あれ、ダンスは生理的に受け付けないっていうか……」

「お姉さま、ウイニングライブできるよね?」

「まぁ、うん」

 

 ライスなぜ!

 

「まぁルドルフがどうしてもというなら仕方ない……カサマツ音頭でお相手しよう」

「カサ……?」

 

 戸惑うルドルフ。そりゃそうだと私は頷きながら、クマと睨み合うが如くちょっとずつ距離を取っていく、優雅な洋楽の中でなぜかカセットデッキを持ち出して音頭を流すオグリ。いやどこから出したカセットデッキと思ったけど……そして二つの曲が合わさり不協和音。私は離脱成功。

 二人一組で踊っている他の生徒たちやトレーナーも戸惑っているようだ。

 

「……うん、ダンスパーティーだね」

「なんでオグリあの中心で音頭踊れんねん……!」

「まったく会長の誘いを無下にするとは、たわけ」

「あ、エアグルーヴちゃん、だって私踊れないし……」

 

 ルドルフに恥をかかせるわけにはいかないし、ということでオグリを呼んだらもっと大変なことになった。私の予想では踊れると思ったんだけどなぁ。いや踊れてはいるんだけど……スケートだと良しって私の内なるハイヤーセルフが言ってた気がする。

 トレーナーたる私が覚える必要はあるのだろうかという疑問もあるのだけれど、担当ウマ娘と踊ってるトレーナーもいた。

 

「なんかお酒ほしいなぁ」

「そうですね」

「たづなさんっ、ど、どこから」

 

 なぜか隣に現れたたづなさん。てかライスとブルボンは……あっちでダンス見てる。ライスは憧れの目で見てるようで、やっぱりこういうことには憧れがあるみたいだ。

 カフェはいたけどタキオンはどこかに消えてる。私の周りにはタマちゃん、シチーちゃん、エアグルーヴちゃん、たづなさん。

 

「担当の娘に夢中のようですね」

「え、まぁ……私の愛バですから」

 

 フッ、と自然と笑みが零れる。

 

「……それについて、ホテルで朝まで語り明かしませんか?」

「しませんけど」

「ふふ、つれない態度もまた」

 

 なんか悦に浸って語っているのでスルーすることにしたのは、私なりの優しさだ。私もそういう時があるけどじっくり聞かれたくはないし、ということでエアグルーヴちゃんの方に視線を向けるとその視線は私の顔の少し下……。

 胸? またボタン飛んでる!? いや、大丈夫そう。

 

「どしたの?」

「ん゛っ!? い、いやなんでもない……今度、ダンスを教えてやろう」

「え、別に踊る機会なんて」

「トレセンでトレーナーをするんだ。知らなくても問題はないが、知っていて損でもない」

「まぁ、ごもっとも……じゃあ、軽くお願いしよう、かな?」

 

 そう応えると、エアグルーヴちゃんは一瞬目を見開いてから目を瞑ってどこか嬉しそうに頷く。なんかかわいいな。

 

「ふ、ふんっ……私は厳しいぞ、たわけっ」

 

 厳しいのはやだなぁ、ゆとりをもって育ててほしい。なんて思っていると、嬉しそうに頷きながらエアグルーヴちゃんは人ごみに消えていく……え、どゆこと?

 残ったのは結局タマちゃん、シチーちゃん、私。

 

「帰ろうかな」

「結局途中退場かいな」

「まぁ学園だから人酔いはないけど……なんか落ち着かなくって」

「わからんでもないけど」

 

 苦笑しながらタマちゃんは私の方を向く。せっかく連れてきてくれたのにと、シチーちゃんに申し訳なく思ってそちらを見ると、シチーちゃんは私の気持ちを察してかおかしそうに笑った。

 

「私も出よっかな、おもしろいものも見れたし。誘ってくれてありがとねクロネ先輩」

「天使じゃん、好きになっちゃうわ」

「ちょ、ちょっとクロネ先輩っ!?」

「あはは、ごめんごめん」

 

 モデルさんにこんな話し方できる私、成長したなぁ。お母さんも喜んでくれてるよね……いやご存命ですけど。

 

「クロネぇ、あんまそういうことやめぇや」

「へ、なにが?」

「そうやって狂わせてきたんか」

 

 ちょっと何言ってるかわかんない。

 

「あ、そうだせっかくだし帰る前に写真だけ撮っとかない?」

「写真か、別にええけど」

「も、モデルさんと写真かぁ、え、SNSとかには」

「もちろんプライベート用」

 

 そりゃ一安心、私みたいなのを公共の電波に乗せようものなら、というよりシチーちゃんの隣で公開しようものなら大惨事。

 折れる……私の心が! 心という器はひとたび、ひとたび、ひびが入れば二度とは……二度とは……。

 

「クロネ、なんて顔しとんねん」

「ハッ、撮られた!?」

「まだやけど、シチーがマネージャーに撮るの頼むって言うてるから外行くで」

「あ、うん」

 

 タマちゃんが人ごみの中、先を行こうとする。私はといえば少しばかり戸惑っていて、それに気づいたタマちゃんが少し戻ってきて私の手を握って、引く。軽く声を出してタマちゃんは道を開き、私は連れられてその後を行く―――人ごみから出て、扉を開いてタマちゃんは私を外に連れ出してくれる。

 

「あ、ありがと、タマちゃん……」

「ん、ほんま世話焼けるやっちゃな」

 

 笑うタマちゃんに、私も笑って返す。

 

「あれ、雪?」

「ほんまやな……もうちょっと楽しむ余裕あったらよかったけどな」

「ごもっともで」

 

 しんしんと降る雪の中、タマちゃんに手を引かれるままにシチーちゃんの元へと向かうと、メガネをかけた女の人がそこにはいて……その人がたぶんマネージャーなんだろう。さすがだなぁ一流モデル。

 軽くマネージャーさんに挨拶をすると、少し離れてスマホを構えてくれる。私とシチーちゃんが並ぶけれど、たぶんタマちゃんと私を入れるとかなり縦長になるんだろう。そこで私はふと思いついて、タマちゃんと“繋ぎっぱなしだった”手を離して、そっとタマちゃんの脇に手を差し込んでぐっと持ち上げる。

 

「軽っ」

「なっ、なにすんねん!? ウチは赤ちゃんちゃうで!」

「なぜに赤ちゃん、ていうかほらこれで頭の位置そこそこ揃うから」

 

 マネージャーさんがグッとサムズアップするので、そのまま撮ってもらう。タマちゃんは不満そうだけど……切り替えて笑顔を浮かべる。

 私もなるべく笑顔を浮かべて、そのまま数枚を撮ってもらうとマネージャーさんはシチーちゃんにスマホを渡した。

 

「はぁ~緊張する」

「写真ぐらいでなにを言うて……てかはよ下ろせ!」

 

 両手を上げて抗議するタマちゃんを、私は苦笑を浮かべながら下ろす。

 

「ったく……すまんシチー、あと一つ」

「ん、どしたのタマモ先輩」

 

 そっとスマホをシチーちゃんに渡すタマちゃん、それを受け取ったシチーちゃんが笑って頷くと距離を取る。そしてスマホを構えたところで疎い私もようやく理解してタマちゃんの方を見るとどうするかと悩んでる様子だったけど、私はそっと腰を下ろしてしゃがむ。

 少し驚いた様子のタマちゃん。

 

「よ、よし、苦手な写真だけど頑張るよ」

「いや二回目なんやし慣れぇや」

 

 無理なもんは無理。

 でもこうして担当ウマ娘と、トレーナーとして一緒に写真を撮る機会があるなんて思わなかったなぁ。良い思い出として後々見返せるようになると、お姉さんとしてはとても嬉しいと思う。

 雪の中、私とタマちゃんは自然な笑顔でシチーちゃんの方へと向く。

 

「はい撮……あ、クロネ先輩」

「んー?」

「パンツ見えてる」

「ふぁっ!?」

 

 

 ―――しんみり締める予定だったんですけど!?

 

 

 




あとがき

結構な長さになったけどまぁまぁ
やりたいこと詰め込んだらこんなことに……

まぁ何気ないとこを伏線にしてみたりとかやりたい

それでは次回もお楽しみいただければ僥倖ですー
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