第一話 Q、あなたはまた死にたいですか?
第一話 Q、あなたはまた死にたいですか?
それをぼんやりと自覚したのはいつだっただろうか?たぶん、6歳頃だったと思う。
なぜ、自分はいい年をして子どもたちとお遊戯や文字の勉強をしているのだろう?
なぜ、自分は日本人のはずなのに英語をペラペラと話しているのだろう?
なぜ、周囲にいるのが白人や黒人やヒスパニックの子だけなのだろう?
なぜ、地元の小さい教会を仕切っているノリスと呼ばれるこの白人のおっさん神父が父親で、乳飲み子を抱いた銀髪ショートのユキカと呼ばれるこのエロい女性が母親なのだろう?
自分の最後の記憶は、仕事帰りで疲れからフラフラと歩道を歩いていた所に、スマホを見ながら運転する茶髪のおばさんの車がハイビームのまま突っ込んでくるところで終わっている。
夜、自分の部屋で窓ガラスに映るそこそこ整ったそこだけは変わらない目の死んだ黒髪の男の子どもの顔を見ながら、そこまで考えた所で、生前の癒やしやうるおいのためによく読んでいた小説のような生まれ変わりだと考えついた。
その時は自分が自分でないような感覚はあったが、せっかくの第2の人生で生前よりも環境も悪くない生活だし今回は上手くやろうと深く考えず、安いマンションの薄い壁の向こうから聞こえる母の嬌声を無視して眠りについてしまっていた。
それをはっきりと自覚したのは10歳の頃だったと思う。
確か、教会の仕事に忙しい両親に代わり妹の相手をしながら見ていたテレビの、佳境に入っていた大統領選挙の放送が熱をかなり帯びている年だった。
東海岸から伝播してきた一神教の新宗派が父の教会を接収する話が来て断る話をするために他の司祭と出かけた父が、焦点の合わない目をしながら「ハレルヤ」と言いつつ帰ってきたのが始まりだった。
そこからの母の行動は素早かった。あの時の行動と判断の速さは、今考えても我が母親ながらすごすぎると、妹共々にしみじみと素晴らしいと思い返している。
人が変わったように新しく来る新司祭の素晴らしさを語り自分たちにも会うように強く勧める父を宥めすかし、最低限の家族の荷物をまとめ父のいない内に賃貸に引っ越した上で、弁護士を雇い離婚調停を進めつつ日本の母の実家に逃げる段取りまで付けていたのだから知ったときは唖然としたものである。
当然、薄気味悪く思っていたので妹も素直に一緒に脱出し、有能だった弁護士のおかげで、離婚もこちらのやや有責ではあったが親権を母が獲得して書類が受理され、明後日には日本への機上の人となれるため空港の近くのモーテルに泊まっていた時にそれは起こった。
夕食を食べそろそろ寝ようかという時間に、外の入口に近い駐車場で悲鳴や爆発音と共に、神と天使を高らかに謳い上げる父の声が鳴り響いた。
母の判断は早く妹を抱き上げ、持っている最低限の手荷物のリュックを身につけると逃げるために部屋を出た。そして、運が悪かったのだろう。
廊下で小型端末を手に持った悪鬼のような狂信者の顔をした父と、白い貫頭衣と白い翼を身に着け宙に浮かぶ白人男性と出会ったのだから。
「どこに行こうとしてるのかね、ユキカ?
子どもたちまで連れていなくなるだなんてひどいじゃないか。
せっかく、家族で素晴らしい神の家に行こうと言っただけなのに。
こうして、御使い様にも来て頂いたのだよ、ユキカ」
「連絡は弁護士を通してと言っていたでしょう?
それに離婚も成立して、あなたとは他人になっています。
そもそも、『御使い様』って誰のことです?」
訝しげに見つめる母に、やれやれと首を振りつつ答える父と『御使い様』。
「やはり、真に目覚めないと尊きお言葉は聞こえないのですね。
我が妻ながら悲しい者です、御使い様」
「我が使徒、ノリスよ。こうすればよいのです。 【ドルミナー】」
たちまち意識を失い、崩れ落ちる母。庇うように、前に立つ自分。
「さてこれで連れていけますね、使徒ノリスよ。
妻と娘はよいマリア候補に、息子もよい使徒にと……おや?
わたしが見えているとは、何たる良き才能!
テンプルナイトにもなれるかもしれませんね、我が使徒の息子は」
「お褒めに預かり、光栄です。偉大なる『メシア教』の御使い様!
さあ、お前も来るの……?」
(『メシア教』?メシア教??女神転生に出てくる極悪カルトのメシア教?)
前世の知識が一気に吹き出しくらくらするが、自分の中にいた自分にそっくりな「何か」が成り代わり、一気に駆け出して持っていた木のバットを常人からは外れた力で天使の脳天に叩きつける。
「何をッ、ウゴッ!止めるので、ウグッ!この【ドルミ……、ぐほっ!
誰だと思って、……おごっ!やめっ、……うげっ!
頼むからやめ、……ぐっ!神よ、助け、……あがっ」
自分も無我夢中だったためはっきり憶えていないが、あとから聞いた話だがあの時に妹も覚醒し一部始終を母の側で見ていたようだ。
並外れた速さで跳躍し、持っていたバットを脳天に叩きつけたあと天使が消えてしまうまで殴り続けたらしい。別れ際にバットをくれた親友だった野球少年のマイケルくんには、感謝してしきれない思いだ。
そして、後に残ったのは天使が傷を癒やすために生命力を吸いつくされ気絶した父と叩き壊した【COMP】らしき端末、そして家族たちだけだった。
それからはもう語ることはそんなに多くない。
警察が到着し、父は逮捕後心の病院に行き、そして母と自分たちは無事機上の人となり日本へ渡った。神戸の母の実家に着き、生活環境を整え、日本の生活に慣れていった。
あんな化け物がいるならと鍛えるために妹と異界に踏み込んだり、母の仕事相手の会社にアルバイトとして雇われ全国を渡り歩いたり、高校では気配を消して無難に過ごしたり、地元に「見える」関係の友人が出来たりといろいろな事があった。
そして、あの事件から9年。高校を卒業から1年後、念願の一人暮らしと原付きバイクを手に入れ、次のバイトのシフトを確認していた夏のある日、アパートの自分のところへ血相を変えて息も絶え絶えの妹の花蓮がやって来た。
「あのカズマお兄様?前世の記憶を持った転生者の方が大勢いる、女神転生や悪魔の話題を出している掲示板を見つけたのですが?」
「オーマイファッキンゴッド」
花蓮からアドレスのメモを貰い、これまた大金を張って買ったデスクトップを動かし入力して暫し待つ。
「『★転生者雑談スレ その24』。これかぁ」
「ああ、やっぱりあったのですね、これ」
自分たちを転生させた神様がいるのなら、こう言いたい。
「もう一度死にたくないが、それはそれとして一発殴らせろ」、と。
あとがきと設定解説
・間藤カズマ(まとう かずま) 開始時19歳 この話の主人公
中肉中背で黒髪のモブ顔。
前世は、大卒で就職に失敗し独身のまま派遣で働きながら50間際で交通事故死。
オタクとしては、雑食でおっぱい星人だった。
覚醒時のスキルは、「外道 ドッペルゲンガー」に変身する「デビルシフター」。
・間藤花蓮(まとう かれん) 開始時15歳
主人公の実妹。
ロシア人クォーターのため銀髪でスタイルが良いが、胸がやや小さいのが悩み。
前世も女性(享年27)で、ブラック社畜の過労死で乙女ゲーが唯一の癒やしだった。
主人公に鍛えられ、ニフラム(ハマ)、ヒャド(ブフ)、ホイミ(ディア)、ザメハ(パトラ)が使える。
勢いで設定をもりもり作り、勢いで人生で初投下してしまいました。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
あと、続けるかどうかは未定です。