今回は、会話中心の伏線回。
そろそろ、世界線が違うという独自色を出していかないと。
第十一話 Q、お話するだけで何事もなく帰れると思っていませんか?
第十一話 Q、お話するだけで何事もなく帰れると思っていませんか?
8月に入って暑い日が続くある日、久々に報告や相談したいことなどがあり、忙しいショタオジに事前に会うための予約を取って星晶神社の談話室で会った途端、こう切り出された。
「青森、ヒノエ島、東京、山梨第二含むガイア連合全国19か所の大型セクターの建設及び雇用の準備が完了したんだけど、どう思う?」
「むちゃくちゃ早くありません?
うちのセクターが建って、まだ半年ですよ?
もろもろの細かい報告書を出したの、GW前でしたよね?」
「いや、うん。ねぇ。
こっちとしてもはえーよとは思うんだけど、完了しちゃったんだよねぇ。
基本的にはいいことだしプラスになることだけど、かかったお金も財界の俺らがどうにでもしそうなんだよねぇ。株価も4万円越えたって言ってたし。
まあ、いつメシア教がやらかすか分からないから【終末前借り】したってのもあるし」
「【終末前借り】?」
「終末が来ることを見越してぇ、期限数十年ローンで莫大なお金を借りてぇ、終末の文明崩壊で無かったことにする借金だよ☆」
「割りとひどい。
自分なんか、この間ようやくクレジットの審査通ったのに。
そういえば、前の時も、バブルが弾けて超氷河期になって関西と関東で大地震とかひどかったなぁ」
「嫌なことを思い出させないでくれるかな」
そこまで言って、お互いに冷たいお茶を飲んで一息入れる。
この部屋は冷房が効いていて、外の暑さが嘘のように感じる。
この暑さの中でもかなりショタオジも忙しいようで、この面会は休憩も兼ねているようでニコニコしている。
部屋の入口にいる時計をチェックしているお世話係さんの方は、見ないようにしているが。
ちなみに花蓮も一緒に来ていたが、クーフーリンと一緒に施設の見学をすると言うので別れている。後で聞いたが、この時にこの半年で稼いだマッカを注ぎ込んでガチャで大爆死していたらしい。
ショタオジと提出した書類を見ながら、話し始める。
「かなり忙しいようですが、こちらでは何かありましたか?」
「この間、神奈川県の古墳にある異界に直接、話しをつけに行ったのが久しぶりの外出でよかったなぁ。
ヴィクトルやDrスリルといった技術者も雇えたし、いくつか潜んでいたのも潰せたのも大きかったよ。
そうだ。この【日本古代文明論】って知ってる?」
「知りませんね。何かの学説書ですか?」
「ああ、知らないならいいんだ。
あとは、財界の俺らがアメリカに行っていない【門倉】くんや【櫻井くん達】を大金を投資したガイア系の情報企業に引っ張り込んで雇っていたことで、あの情報都市計画自体が白紙になったのもあったかな?」
「聞いたことはないんですけど、有名な人たちなんですか?
業界で有名な技術者とか?」
「プログラマーとしては有能な人たちだよ。
これも知らないんだ。失礼だけど、前の時はどの【原作】をしていたの?」
「通勤中にやった携帯ゲーム機の南極のやつだけです。
他は、ネット上の創作をいくつかだけで」
「そっか。
修行優先で、座学はサラッと流す程度にしかしなかったのがいけないなのかなぁ。
まあ、いいや。それで、わざわざ来たのは何か話があるのかな?」
わりとがっかりとした表情のショタオジ。
何か悪いことをしたのかが分からないが、こちらの要件も言わないと。
居住まいを正し、懐から【母子手帳を持った葵さんと一緒に雫ちゃんが写る笑顔の写真】を見せて頭を下げる。
「妊娠3ヶ月だそうです。
子どもが出来たので、この間の【鬼ヶ島】の攻略参加の報奨も兼ねて機密を扱える事務員を下さい。
来る人が増えたのに、葵さんが産休に入るので手が足りないんです。
求人は身元の調査や面接をしている暇もないんです。
音無さんや部下の事務員さんたちに、ネチネチと嫌味にならない愚痴を聞かされるのは辛いんです」
「あー、それはおめでとう。
それじゃあ、君の分のシキガミはまだだったよね?
それでいいかな?」
「事務の方に今から予約だと、高級シキガミは半年は先だと聞きました。
割り込みは多すぎて認められないと」
「転生者の事務員の増員は……」
「支部がたくさん出来たばかりですよね?」
そこまで言うと、ショタオジは思案顔になり何か無かったかな?、と、お世話係さんからカバンを受け取りゴソゴソと探している。
何かの御札や書物や訳の分からない品を取り出しては考え込んでいたが、小さい紋章が刻まれた10cmくらいのストローのような蒼い金属筒を取り出すと、これだと言わんばかりに持ってきて蓋を開ける。
そうすると、黒い長い髪をした胸の大きい眼鏡を掛けた着物の美少女が現れた。
「……神主様、召喚に応じました。何か御用ですか?」
「この【マスオニ…ではなく、【月城カズマ】くんと仲魔として契約して。
仕事の内容は、秘書としての事務仕事だから」
「……わかりました。【鬼女 文車妖妃】です。
これからよろしくお願いします」
「待ってください。
説明して下さいよ、この女の子とその筒は何ですか?」
「この筒は【封魔管】。神道系の術で悪魔と契約して封印しておくための物だよ。
この娘は、江戸時代の頃の書物を運ぶための車の付喪神の妖怪。
以前、京都で仕事を受けたメンバーが貰ったらしいのだけど、シキガミがいるからいらないと預けていったんだ。
戦闘は得意じゃないが、書類仕事は得意だぞ」
こちらを不安げに見ている彼女。どうかな、と、こちらを見るショタオジ。
ショタオジが契約して提示した悪魔なら、まあ、大丈夫だろう。
葵さんが産休に入った場合、下手をすると忍さんも仕事を休みがちになるかもしれない。
その上、音無さんが休みの日はとても酷いことになるのだろうから、背に腹は代えられないし、人間でない仲魔は頼りになる増員となるだろう。
ショタオジから筒を受け取り挨拶をする。
「じゃあ、これからよろしく。
なんて呼べばいいのかな?」
「……どうぞ、お好きなように。
以前は、フグルマ、読子、栞子と呼ばれていました」
「似ているし、自分が知っている文学少女と言ったらこれしかないな。
香る文と書いて、【文香】で。
よろしく、文香さん」
「……素敵な命名、ありがとうございます。
よろしくお願いしますね。ご主人さま」
「いや、名前で呼んでね。いろいろとその呼び名は差し障りがあるから」
「……はい、カズマさま」
「いやー、上手くいったようで何より。
何しろ、カズマくんは大切な手ご…、人ばし…、幹部候補だからね。うん。
それじゃ、今日はこれでおしまいだね☆」
「時間です、次の仕事に移動します」
こちらが見ている前で、お世話係さんに笑顔のまま連行されてゆくショタオジ。
取り敢えず、ショタオジに両手で拝んで別れを告げることにする。
不思議そうに、こちらを見ている彼女に告げる。
「それじゃあ、行こうか。文香さん」
「……はい」
その後、合流した花蓮に紹介して「女を連れ帰るとは何事か」と怒鳴られ、筒から出し入れする事と仲魔だと説明をして時間をとることになり、一泊してから帰ることになった。
そして、翌日の帰りの移動の途中に駅のホームで、『先に終わった湾岸戦争において活躍したアメリカ軍パイロットの“空を飛ぶ聖女”メアリー・スー少尉が~」というニュースを携帯で見ていた自分に、雫ちゃんと話していた花蓮が驚いた声で告げてきた。
「神戸メシア教会のシスター・ギャビーという方からお話ししたいことがあると連絡があった」、と。
あとがきと設定解説
・鬼女 文車妖妃 (きじょ ふぐるまようひ)
作中で説明した通り、付喪神の妖怪。
レベルは12で、耐性は火炎耐性、氷結弱点、衝撃弱点。
スキルは、アギ、ドルミナー。
彼女の容姿は、鷺沢文香か読子・リードマン、お好きな方で想像して下さい。
次回は、神戸に戻ってからの話。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。