カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、難産だったボス戦闘回。
やっぱり、戦闘描写は難しい。


第十五話 Q、現実も敵を倒して終わりになってくれないかなとか思っていませんか?

  第十五話 Q、現実も敵を倒して終わりになってくれないかなとか思っていませんか?

 

 

 最上階のベランダに飛び道具用の窓があり、中を覗いて誰も居ないことを確認して体を滑り込ませるようにして潜り込んだ。

 

 それにしても、この少女の体はすばしっこいくせにやたらと柔軟性があり、元の自分では絶対に出来ない両足を体が付くほど開いて前に伏せるポーズも出来るのだろう。

 後日、本当にやって出来た。ちなみに、同じ様に忍さんと雫が出来たのには驚かされた。

 花蓮や音無さんたちも挑戦したらしいが、妊娠中でやらなかった葵以外は腰を痛めただけに終わったらしい。

 年上の忍さんに出来たのなら自分にだってと、思ったとか思わなかったとか。

 

 

 入ってすぐの内側は廊下になっているようだが奥から聞こえる人の声以外は何も聞こえず、そちらの方に足音を殺して近づいていく。

 普通なら、雑魚の悪魔が湧いて周辺にいるものなのに一体も見かけない。

 こちらとしてはありがたいが、ますますこの異界がおかしく感じる。

 同じような廊下が続くが、角を曲がった時に扉を見つけそっと覗いてみる。

 

 扉の内側の廊下は吹き抜けの通路に続いているもので、下の様子を見ることが出来た。

 部屋の中央に魔法陣があり、陣の中央には鎧兜を付けた木乃伊がありその足元には干からびた神父服の死体が2つ転がっている。

 また、近くにはこの儀式を主導しているだろう中東の人種らしい男性が何か母国語でそれをなじっている。

 

 陣の近くの壁際には、裸になった金髪の女性が3人とも後ろ手に鎖に繋がれて転がされている。

 乱暴はされた形跡があるが、全員が虚ろな目をしており薬か何かされているのだろう。

 

 こちらに気づいている様子はないし、一階は大広間のようで魔法陣と反対側の扉を開ければ外の仲間も入れるだろう。

 ただし、常人では動かせないような大きさの閂(かんぬき)をどうにか出来ればだが。

 日の本の国に来たのだから、日の本言葉でしゃべればもっといろいろと分かったろうに。

 

 男のほうが大声で叫びながら、鎖を外すためか右手に鍵を持って女性たちの方へ移動し始めた。

 これ以上、訳の分からない儀式を進めてもまずいだろうと考え、3階の高さはあるが飛び降りて、女性に当たらないように頭上から男に【ガルダイン】を叩き込んだ。

 放った衝撃でうまく着地もでき、結果はどうかと男の方を見ると男は案の定四散していた。

 

 ただ問題なのは、どこかに飛んでいった鎖の鍵はどうにでもなるが、男が脇に持っていた黒い本が魔法陣の近くに落ち、そのまま塵になって舞い足元の死体も一緒に木乃伊が取り込んだことである。

 あ、やばいと思うも既に遅く、木乃伊が変化し異形の怪物になってしまった。

 

 体長は2mを越えている体躯で、顔の中央に大きい一つ目があり、草のような箕を体にまとい腰で紐を結ぶタイプの赤茶色の布のズボンを履いている。そして、もっとも嫌なのはこちらを見て股間が大きく膨れている点である。

 後ろの裸の女性たちだろうなと思い、視線を避けるように横に移動するも焦点はこちらである。

 

 こっちを見て、欲・情・す・る・んじゃねぇ!

 

 ジリジリと入口の方に下がるも、怪物は笑いを浮かべながら、前傾姿勢のままジリジリとこちらに来る。

 このままこちらに来れないといいなと思うも、さして抵抗もなく消え去る魔法陣。使えねぇ。

 カードを交換しようにも、視線を外したら一気に襲ってくるだろう。

 胸と腰をガン見してくるのが、こんなに気持ち悪いとは思わなかった。

 前の怪物を見て、後ろの扉を見る。いちかばちかやるしかないなと覚悟を決める。

 

 

 首元の服を引っ張り胸元を見せて、舌を出す。 

 ニンマリと笑みを浮かべ【ガル】とこちらの足に向けて放ってくるが、今は【衝撃無効】であるので効果はない。驚くそいつに今度はこちらが【ガルダイン】を叩き込む。

 全身を切り裂かれ、怒りに震えて突進して来るそいつに合わせて入り口を背に立つ。

 【暴れまくり】。

 こちらの手足をへし折りそうな拳打を連続してくる。

 躱しきれずにいいのをもらったが、扉ごと外に吹き飛ばしてくれて上手くいった。

 こちらを見て驚いている面々がいる。

 声をかけると、真っ直ぐ突っ込んでゆくレスラーニキとクーフーリン。

 

 

「お兄様!怪我が!」

 

「大丈夫、要救助者3人が中に!攻撃して!」

 

「おうさ!」

 

「おうとも!うおりゃー!」

 

 

 そのまま地面に落ち、転がるように着地する。

 治癒魔法をかけようとする花蓮に、自分で回復すると告げて立ち上がる。

 すると、二人の攻撃を振り払うように怪物が魔法を使う。

 

 

「おで、男いらない。【マハガル】」

 

「ぐお」

 

「ぬう」

 

「きゃあ」

 

 

 怪物が全体衝撃魔法を放つが、花蓮を庇った自分は【衝撃無効】であり前の二人も耐性があるためそれは悪手だろうだと思ったが、二人の様子がおかしい。

 怪物を視た花蓮が驚いた声を上げる。

 

 

「【アナライズ】、……【妖鬼ヤマワロ】。

 スキルは、【暴れまくり】【ガル】【マハガル】ですわ。

 データではレベル24のはずなのに、32もあるなんて!」

 

「【ディアラマ】。花蓮、弱点は?」

 

「破魔と呪殺です。お兄様?」

 

「レベルのステータス差で3人でも長い時間は無理だから、花蓮の【ハマ】が頼りだ。

 攻撃は引き付けるから掛けるんだ。頼むぞ」

 

 

 物理耐性持ちの二人でもレベル差で傷が増えていく。

 並のメンバーだったらもう殺されているだろう。

 二人の横に駆け出し、ヤマワロからMPを吸い魔法で援護に入る。

 

 

「【吸魔】。クーフーリン、大丈夫か? 【ディアラマ】」

 

「すまねぇ、旦那。クソ硬てぇなコイツ!」

 

「これはきついぞ。ええい、【牙折り】!」

 

 

 レスラーニキが攻撃力を下げるが、まだキツイ。

 近づいた花蓮が魔法を掛ける。

 体を震えさせるが、効いていないヤマワロ。

 

 

「【ハマ】! 弱点なのに、何で効きませんの!? もう一度…」

 

「おで、飽きた。【暴れまくり】」

 

「がは」

 

「ぐう」

 

「きゃあ」

 

 

 怪力の拳打が複数回、またこちらを襲う。

 レスラーニキが膝を付き、花蓮を庇ったクーフーリンは【食いしばり】で虫の息だ。

 自分も最後の攻撃を避けそこない、両腕ごと胴体を掴まれてしまう。

 抜け出し魔法で攻撃しようとするが、ミシミシと指で締め付けられる上に、親指の腹で胸の感触を楽しんでいるのに気づき気持ち悪さで硬直してしまった。

 ニンマリと笑みを浮かべ、ヤマワロが言う。

 

 

「おで、女、犯して喰う。男、いらない。

 たくさん、たくさんある。でも、足りない。

 おで、外に出て、もっと犯して喰う!

 昔の頭領みたい。お前ら、邪魔」

 

 

 ヤマワロの前に、唯一、行動可能な花蓮が泣きながら立ち上がる。

 空を見上げ、叫びだす。

 

 

「あんたみたいな悪魔なんかに食われてたまるもんですか!

 仮にも見ていると言うのなら、悪魔ばかりでなくこっちにも力を貸しなさいよ!

 そんなんで、造物主を気取るな!バカ!

 神様なら、みんなを助けなさいよ!【ハマ…オン】!」

 

 

 花蓮から出た光が周囲を包み、光に触れたヤマワロが粒子となって消えていく。

 ヤマワロが呆気にとられた表情のまま消え地面に落ちる自分だが、【デビルズアブゾーバー】がバチバチと火花が出て動きを止め、元の姿に戻ってしまった。

 そして、周囲が振動し、崩壊が始まる異界。

 皆、顔を見合わせ、救助者と拾えるものは拾って走って脱出したのだった。

 

 

 

 それからも、帰るまで大変だった。

 運びきれないので、電話で教会の車を呼び布で巻いた3人の女性を引き取ってもらう。

 運転して来た茂部神父とスタッフに彼女らは回収されていった。

 神父は礼を言い後日会いましょうと去って行ったが、車の中に隠れていたはずの花蓮を見ていたので目をつけられたかもしれない。

 そして、レスラーニキも含め車でぎゅうぎゅう詰めになりながら帰り、そのまま全員セクターの宿泊施設のベッドへ倒れてしまった。

 

 そして、翌日の朝。

 それぞれに別行動の他の人とは違い、自分は地下の研究室で六堂さんと氷室さんに、貰って早々に昨日壊してしまった例のものを直せないか見てもらっていた。

 カード類と蓋を外して中を調べる二人は、苦々しげに言った。

 

 

「わたしはこういうのは専門外だからあまり言えないけど、少なくともこのカードは今のガイア連合で作るのは難しいし、データベースにある悪魔と容姿もスキルも違っているくらいしか分からないよ。

 氷室の方はどう?」

 

「研修から逃げた元医師の六堂とは違って、アタシは理系畑の人間だけどさ。

 一見、玩具にしか見えないのに、こんな事ができるようになるなんて信じられないよ。

 少なくとも、こいつはアタシには直せない。

 支部長の知り合いの贈り物だか知らないけど、こんなもの作れるなんて常人じゃないよ。

 悪いけど、調べるだけ調べて山梨へ報告させてもらうよ」

 

「終わるのにどれくらいかかる?」

 

「本当ならこれをそのまま送りたいけど、支部長の私物を勝手にするわけにもいかないからね。

 構造は単純だから、もう調べ終わるよ。

 ただ、基盤がいかれているんで中身は分からないけどね」

 

「直せないなら、現物を持って直接訪ねに行くことにするよ。ありがとう」

 

「気をつけなよ。その【人類娯楽史研究所】って、ガイア連合の調査リストにも上がっていたはずだからね」

 

 

 

 

 

 受け取って、ケースに収め地上に上がる。

 このまま二人の嫁の所に戻って溺れたい気分だが、そうもいかない。

 そして、自分は原付きに乗り、田中さんの会社に向かうのだった。

 




あとがきと設定解説


・【幻魔ナジャ】

赤城の趣味の入りまくった悪魔カードの一つ。
レベルは23。耐性は、氷結弱点、衝撃無効、破魔無効。
スキルは、ガルダイン、吸魔、ディアラマ、ポズムディ、回復ブースタ、氷結耐性。


次回は、いよいよ伏線を張りまくっていた相手の登場。

もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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