今回は、オーナー側の事情や主張と花蓮の回。
設定だらけでかなり長いです。
これは、ここ独自のものなのでふわっとこういうものだと思って下さい。
第十七話 Q、サブカルチャーとはそんなに万能だと思っているのですか?
「まず、言っておこう。
私の専門業務は財宝の蒐集と管理であって、造幣とあの方の相手は業務範囲外である!
造幣とあの方に関するクレームはその担当の私に言って欲しい!」
「急に立ち上がってどうしたんです?」
「なに、これは私なら言っておかねばならないのだ。
失礼した。話しを続けよう」
仕事があると言って阿賀さんと森さんが出ていった後に、おもむろにオーナーが立ち上がって大声で叫んでいる。
疑問に思って尋ねると、恥ずかしげに座って息を整え話を続けようとするオーナー。
後頭部にどこからか投げられた缶ビールの空き缶がぶつかるが無視している。
正直、こんなに気さくに話している魔王とか訳が分からないし、話と言われても情報が足りないので聞くことにする。
「そもそも何でこんな事をやっているのだとか、どうやってやっているのだとか、何で自分にこれを預けたのだとかいろいろ聞きたいのですが?」
「ふむ、では少し長くなるが話すとしよう。
最初に注目したのは、戦後のここの日本が他の世界に比べ異様にサブカルチャーの発展が著しかったことだ。
そこで、私が自分から派遣され、良い趣味を持っていて協力者となってくれた赤城くんといなくなってしまったが趣味への熱い激論を交わした友人と出会い、クソ天使どもの目を盗んでここに拠点を作り、人の姿を取るように言ってあの三人を呼び、田中くんを雇ってサブカルチャーの財宝蒐集を進めてもらって今に至るのだよ。
技術的なことは後で円場博士に頼むが、何故君に注目したのかは簡単だ。
たまたまそこにいたのと、君の体質と意思がちょうどよかったからだよ」
「ちょうどよかった?」
「そうだ。
赤城くんにもっと協力者を増やせないか探してもらった時に君を見つけたんだよ。
変わった能力、優れた素質と強運、子どもの頃から鍛えている特異性。
そして、中学生の頃に出会った近所の綺麗なお姉さんを助けたいという恋心と結婚まで持ち込んだその意思と行動力が……」
「あああああ、待って。分かりました。
充分に自分を選んだことは理解できましたので、ここの異界とこの機械についてどうぞ!」
顔から火が出る気分になり、早口で話題を変える。
少し残念そうであるが、円場博士に続きの説明を頼むオーナー。
満足気にこちらを見ていた博士が朗々と話し出す。
「わしの大元は、隠されたものや秘密に関する知識と工芸に関する優れた知識を持ち、人の姿を変化させることもできるという権能があってな。
わしは、その方面に専門化した分霊なのだよ。
さて、前提条件として我々の全ての技術は、【悪魔召喚プログラム】と【マグネタイトバッテリー】の技術があればこそだ。
まずこの『変身アイテム』についてだが、あの方が嫌がらせついでにアメリカから盗んできたものとあの方のコレクションらしい物の混合で出来た【悪魔召喚プログラム】の産物だ。
どうやって手に入れたか? 詳しく聞くな、"あの方だから"だよ」
どうやら、彼らの上司の「あの方」とはとてもフリーダムな人?らしい。
あまり、触れたくないような人のようだ。
今度は、博士の後頭部にどこからか投げられた缶ビールの空き缶がぶつかるが、同じ様に無視している。
まだ、博士の話は続く。
「そして、わしはオーナーのライブラリでは特撮が好きでな。
特に、ここではまだ放映されていないものも合わせて様々なギミックで戦う孤高の仮面の戦士たちが好きでなぁ。
君に重なるものを見たのだよ。
君のような悪魔変身能力者は、三種類有ってな。
【喰奴】は『アマ○ンズ』、【アウトサイダー】は『仮面戦士○騎』の戦士たち、【デビルシフター】は『仮面戦士電○』だとわしは思っとる。
君は三番目だな。
そこでこの【悪魔召喚プログラム】を積んだ【COMP】を安全性と趣味性で改造し、システムはカードを扱うのにベルトより腕のほうが良いと思ってあの形にしたのだ。
変身先についてはわしはとくに拘りはなかったので、オーナーと赤城くんに任せたら【悪魔合体】を心配になるほど繰り返してこのカード群になったのだ。
この壊れたやつは赤城くんが持ち出したものだが、より完成したここに新しいものがあるぞ。
名付けて、【デビルズアブゾーバー・マークⅡ】だ。持っていくといい」
そういうと、博士は新しい方をテーブルの上に置き古い方を手元に取った。
形状は殆ど変わっていないが、よく見ると所々プラスチックだった部分が金属製になり幾分か重くなったがかなり頑丈になっている。
そして、【モラクス】のカードを指さして言う。
「これを腕につけて変身している間、君は二つのスキルを得る。
調整済みの悪魔カードの対象に変わる【悪魔変身】と、倒した悪魔をカードにする【カードハント】だ。
そして、このカードは低確率にだが自動発動する【カードハント】により作られる。
君はこのカードの悪魔にはなれないが、わしに貰えれば臨時収入にはなるぞ。
もちろん、君がこれを自由にするのも構わん」
「このカードは何に使うんですか?」
「もちろん、合体材料だとも。
赤城くんたちがかなり使い込んだので、在庫が無くなりそうなのだ。
【悪魔全書】から引っ張ってくるのもマッカが足りんからな。
造幣局のオーナーは渋いからのぅ」
博士が横目でオーナーを見ているが、無視しているオーナー。
ため息を付き、冊子のより整った新しい説明書と新しい少女悪魔カードを渡してきた。
「使用法とカードの中身の詳しい内容はそれを見てくれたまえ。
ここまではよいかの?」
それらを受け取りうなづくと、一休みするようだ。
最近、発売されたばかりのペットボトルの緑茶を備え付けの冷蔵庫から出し、コップに注いで皆で飲むようだ。
ここまで来て警戒するのも何なので、自分も飲む。冷たくて美味い。
そして、不思議に思う。
冷蔵庫に電灯、奥の執務机には有線ケーブル付きのパソコンがあり、ここに来るまでの中の風景は元がホテルを改造したオフィスにしか見えなかった。
ここが異界なら、どうやって電気や電話線やネット回線を引き入れているのだろう?
周囲を見回していると、自慢したかったのだろう鼻息も荒くオーナーが話し出す。
「ここの様子が不思議に思ったかな?
クソ天使共からの隠蔽性と余計なマグネタイトの放出を抑えるには、どうしたら良いか自分も考えたのだがね。
答えは、サイエンスフィクションに有ったのだとも!
建物を窓ガラスも分厚く強いものにしたシェルターのようにし、ここをいわゆる結界と『ここが私の宝物庫だ』と私の権能で固定してビル全体を【マグネタイトバッテリー】のような状態にして異界化を制御した結果、こうして快適な現代生活が送れているのだよ」
「発想したのはオーナーだが、実現したのはわしを含めた他のメンバーだと忘れないで欲しいな、オーナー。
『見つかりにくい異界』と『電線やネットを繋げた快適な現代生活』を両立させるために、どれだけ苦労したかもな」
「すまんな、円場博士。もう後は、私が話すとしよう。
たしか、果実と侍の仮面戦士だったかの続きを見に行って構わんぞ」
「そうかそうか。では、失礼するとしよう。♪~」
ニコニコと何かの歌を口ずさみながら、円場博士も出ていった。
二人きりになり、雰囲気を変えて話し始めるオーナー。
「さて、話せることは大体話したかな?
では、こちらの目的はさっきも話した通り、『我々が天使共に邪魔されずにサブカルチャーに耽溺できる生活』だ。だから、他の娯楽も用意してあの方にも東京で暇つぶしをされないようにもお願いしている。
君のいるそちらの組織にお願いしたいのは、『できるだけ長く日本のサブカルチャーを護って欲しい』のと『買い付けに手が足りないからお金は払うので手を貸して欲しい』の二点だ。
このまま天使共に一人勝ちされて、全てを灰やガラクタにされてはたまらんからな」
「じゃあ、自分が田中さんの所でしていたアルバイトも?」
「もちろん、そのへんの信用も込で君を見込んでいる。
田中くんは堕天使の転生者で覚醒はしているが、余計なトラブルを回避するためにこちらの事情はあまり話していないのでね。
君が荷物を受け取りに行ってくれたのは大いに助かったとも」
「具体的に、自分は何をすればいいのですか?
ここのことをむやみに口外しないのは当然でしょうが」
そこまで言うと、オーナーはテーブルに二つの物を置く。
いくつかの書類も入っているらしい厚手の大型の封筒と、拳銃とパソコンが合体したような形の何かだ。
「君にやって欲しいのは、その変身アイテムはこちらが見返りの一つとしてテコ入れし続けるので、データ取りのためにも時々、持ってきて調整して欲しいのが一つ。
二つ目は、手紙と書類を直接君の上司、出来れば主導している人物に渡して欲しい。
三つ目は、君たちの組織に見返りとして譲渡する『完全に再現したGUMP』があることを、写真は書類の中にあるがしっかりと伝えて欲しい。
この三つだな」
「……分かりました。
書類はお預かりしてこちらで届けますね。
連絡は?」
「書類にあるここの固定電話番号で頼むと、伝えてくれ。
よろしく頼むぞ」
正直、もう自分で判断できないくらい疲れたので、これを持って行ってショタオジに投げることにする。
一礼すると、書類と変身機を入れたケースをカバンに入れ背負うと帰ることにした。
森さんがまた玄関まで案内してくれるようだ。
「終わったみたいね~。
どう? 上手く行きそう?」
「政事的なことは分かりませんよ。
しょせん、自分は戦うことが得意なだけですから」
「でも、往々にして運が悪いそういう人間がいろいろと巻き込まれるのよ。
ま、頑張りなさいな」
手をひらひらと振る森さんに別れを告げ、バイクでまた帰ることにする。
思いかけずに長時間いた為、昼を回っている。
電話に出た文香さんに連絡をして、どこかで食べてから戻ることにする。
バイクで走っていると、公園で普段着を着たクーフーリンと花蓮を見つけた。
デートかなと思ったが、花蓮の方が屋台のたいやきを大量に自棄食いしているので違うと思い近づいてみる。
「おーい、どうしたんだ?
クーフーリン、何かあったのか?」
「よう、旦那。
朝から出かけていたようだが用事は済んだのかい?」
「こっちは大丈夫だ。
で、これは?」
「あー、旦那が居ない間にちょっとあってな」
こちらに答えようとした花蓮が詰まらせて、慌てて自動販売機から買ってきたミネラルウォーターを飲ませてベンチに座って二人から話を聞く。
「苦しかったですわ。
はー、なかなかうまく行きませんわ、色々と」
「で?」
「今回のことで満足な槍働きも出来ないのに嫌気が差してね。
強くなろうと、一念発起して嬢ちゃん立ち会いで本霊に連絡したんだわ」
普段は外的干渉を潰されている高級シキガミが、自分を分霊として本霊に接触するのはかなりリスクを伴う行為であるはずだ。
しかも、本霊と言ったら女神転生でも有名なケルトの英雄である。
そこまで、今回のことを悔やんでいたのかと知らされる。
「詳細は省くが切り札を教えてもらったのは俺としちゃいいんだが、その時に本霊に嬢ちゃんの事を指摘されてね」
「何を言われんたんだ?」
「曰く、『お前の魔法は信仰によるものでなく、お前の素質に依るもんだ。いつまで勘違いをしている』ってな。
それを聞いて、こうして自棄食いしているんだわ」
「お兄様も知っている通り、そもそも私は幼い頃のまともだった父の唯一の思い出として神様を信仰していたんです。
でも、過去に天使が父をおかしくしたわ、お世話になっていた神父様もメシア教に追い出されるわでいい所がなかったんですが、今回の事件で魔法が強くなったのでやっと声が届いたのかと喜んでいたのですがこれですの。
思い出も何もどうしたらいいか、もう分かりませんわ」
ゴクゴクと水を飲み干し、ペットボトルを握りつぶすとゴミ箱に投げ入れる花蓮。
外れたので入れ直してくるクーフーリン。
何となく、熱気のこもる空を三人で見上げる。
「それでどうするんだ?」
「こっち側のことですもの母たちには言えませんし、月城家の皆さんに言うのは何か違う気がしますので山梨でどなたかに相談しますわ。
お兄様は今日はどちらにお出かけに?」
「あの機械の修理をしてもらって、そこの修理先からショタオジに手紙を預かったんで直接届けに行くんだよ。
昼を食べてないんで、余ったたいやき食べてもいいか?」
「どうぞ。今は夏休みですし善は急げで、明日にでも早速、山梨へ行きましょうか」
「むぐ。じゃ、そういうことでいいかな? クーフーリン」
「俺には反対する意見は無いわな」
そうして、皆に連絡し急遽、山梨へ行くことになった。
メシア教会からは、報酬は振り込んだが話したいことがあるのでと連絡があったが、後日にと返しておいた。
山梨には、自分と花蓮、クーフーリン、技術系の報告者として氷室さんが同行することになった。
文香さんの筒は、子どもが出来ることでレベルが上っていた葵に任せることにした。
音無さんとドウタンとかリバジライとか言っていたが、楽しそうだったので問題はないだろう。
今日は雫と同衾する日で、うっかり思い出したヤマワロの気持ち悪さを忘れるためにかなり攻めてしまい、翌日、起きられないと怒られるトラブルは有ったものの出発することが出来たのだった。
あとがきと設定解説
・円場博士の長い主張
あくまで、彼独自の理論展開と技術立証によるものです。
他の3人は、理論は分からないが結果的に成功しているからいいかと思っています。
・【あの方】
南極の見学に出かけるつもりの用意が無駄になって暇にしているあの方です。
次回は、再び星晶神社へ。
2部終了もあと少し。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。