カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、星晶神社での出来事と主人公の心境についての話。

主人公の心境の変化がうまく表現するのが難しい。


第十八話 Q、今の大切なものを想わずに昔のことに拘り過ぎていませんか?

 第十八話 Q、今の大切なものを想わずに昔のことに拘り過ぎていませんか?

 

 

 ふと気づくと周りは暗闇で、自分が座っているパイプ椅子のところだけにスポットライトが当たっている。

 確か花蓮たちや氷室さんと山梨に向かうため、半日かけて電車で移動中だったはずだ。

 憶えているのは、周りが話し込んでいる間に新しいデビルズアブゾーバーの説明書を読んでいたはずである。

 

 周りを見ると、それぞれ別の形の椅子に座った彼女たちがライトに当たって姿を現す。

 円陣を組むように変身用カードに描かれた少女たちが、右側に【モー・ショボー】と人魚が、左側に【ナジャ】と【ユキジョロウ】が座っている。そして、自分と向かい合うようにひときわ豪華な椅子がある。

 とりあえず、新規の人魚の子に話しかける。

 

 

「これは自分の精神世界とか夢みたいなものかな?

 人魚の君は新しい子だね。

 とりあえず、みんな初めまして力を貸して貰っている月城カズマだ。

 話したいことがあるなら話して欲しい」

 

「…【鬼女マーメイド】、よろしく。

 お兄さんは私たちが怖くないの?」

 

「円場博士が嘘を言っていないなら、あの機械を通して君たちとは契約しているのだろう?

 他の子は体を奪い取りにも来なかったし、君もしないだろう?」

 

 

 首を上下に振って答えるマーメイド。

 皆を代表してか、ナジャが話しかけてくる。

 

 

「アタシたちはおにーさんに力を貸すって契約したからここにいるのに、体を奪い取ろうなんてしたらあの怖そうなおじさん達に消されちゃうよ。

 特に、奥の方で見ていた一番怖そうな金髪のお姉さんとか」

 

「そのお姉さん、頭の両方に白い小さな角の飾りがなかったかい?」

 

「付いていたよ。知っている人?」

 

「直接の面識は無いけど、『あの方』ってやっぱり南極のあのヒトだったか。

 あのヒトはね、あそこで一番偉い人で、何か隠していても聞かないで言われたことに素直に驚いてあげると喜んでくれるんだよ。

 あと、姿を現さない時は気づいても気づかないふりをしてあげてね」

 

「うん、わかったよ」

 

 

 素直でいい子達である。

 話しかけられたり特定の話題で空き缶が飛んでくるから、嫌な予感がしたので余計なことは言わないでいて正解だった。

 直接関わり合いになるのはゴメンなので、そこはオーナーに頑張って欲しい。

 今度はモー・ショボーが話してくる。

 

 

「あたしたちは悪魔で契約だからこうしてここにいるのに、ニンゲンのあなたがどうしてこの機械を受け取ったの?

 あたしだったら逃げているのに、どうして?」

 

「君の逸話みたいに脳を啜らせろとかいうのだったら、さすがに拒否していたけどね。

 判りやすく『力をやるから、こちらの娯楽のために動いてくれ』、でしょう。

 こっちも既に守りたいものがあるから生き残るために力が得られるし、全部の事は言っていないだろうけど自分に騙す価値はないだろうから受け取ったんだよ」

 

「こっちをいつでも消せるようなヤツもいるのに?」

 

 

 心底、不思議そうな顔で聞いてくる。

 他の子も同様のようだ。

 星晶神社に近づくと思い出すようになった昔をはっきり思い出して、両腕を膝の上に置き話し出す。

 

 

「敵対する時ははっきりと直接襲ってくるし、やって欲しいことをはっきり言ってくれるからありがたいし、約束はわりと守ってくれるんだから人間よりむしろ君たちの方がつき合いやすいんだ。

 周りの空気を察して動けとか、気安く訊くなというのに勝手にやるなとか、理由もなく気に入らないだけで排除するとか、グループ内独自の暗黙の了解を守れとか、清潔感とかいう謎指標なんか悪魔にはあまりないしね。

 ルールの裏をかくのはあるかもしれないけど契約を遵守してくれるだけでも嬉しいんだ」

 

「今までどんな所にいたのよ、それ?」

 

「今の場所に来る前だけど、何も得られずに長時間人生をすり減らして死ぬようなところかな」

 

 

 答えた途端、ドン引きしている。

 そういう前世だったので、嘘は言っていないのだが。

 今まで黙っていたユキジョロウが何か決意を込めた顔で言う。

 

 

「わたしの逸話の通り、あなたが違えないならわたし達は約束を守るわ。

 そこの空いている椅子に座る最後の子にも守らせる。

 だから、ここでは生きなさい、サマナー。

 わたし達の姿の時は、わたし達は貴方なのだから」

 

「ああ、わかった。

 これからも、よろしく」

 

 

 彼女と握手をすると景色がぼやけてくる。

 目が覚めるのかなと思っていると、花蓮に揺さぶられているのに気づく。

 新幹線が目的の駅に到着したようだ。

 

 

「起きて下さい、お兄様。目的の駅に着きましたわ」

 

「いつの間にか寝ていたみたいだな。昨日、頑張りすぎたせいだな、うん」

 

「バカなことは言っていないで、行きますわよ」

 

 

 荷物をまとめ、電車を乗り換える。そして、最寄りの駅で車に乗り換えてようやく半日がかりで到着である。

 もともと泊りがけのつもりだったので部屋をまず確保し、花蓮とクーフーリンは相談者を探すというので千川さんのところへ行った。

 自分と氷室さんは事前に連絡していた通りに部屋に通され、そこにはショタオジ、霊視ニキ、白いスーツでメガネを掛けた小太りの男性もいた。

 挨拶もそこそこに、ショタオジには例の書類を、霊視ニキと制作班の人だというスーツの人には氷室さんが出掛けまでまとめていた報告書と現物のアブゾーバーのケースを渡し、検分が終わるのを座って待つ。

 書類を読み終わったショタオジがチベットスナギツネの顔でこちらに話し出す。

 

 

「これは、何かの仕返しかと、思いたいくらいの情報だね、【TSマスオニキ】。

 君の持ってきたこの情報はすごい爆弾だよ。

 爆弾なのに書類の全部が、親善の手紙と、『仲良くしましょう』って内容のガバガバの契約書と、【GUMP】の仕様説明書と、サブカルチャーの物品購入に関する事業提案書、そして変身アイテムの仕様書だけな訳?

 その場に行動の不明だった聖書の大悪魔たちがいたんでしょ?

 なのに行動方針が、『天使たちの行動は気に入らないけど、物見遊山と娯楽追求優先』とか何を企んでいるの?

 変身アイテムを使用する際の契約条項も、研究所への攻撃の禁止とデータ取りと点検の関することだけとか完全にうちで作った無害な趣味アイテムと同じなんだけど?」

 

 

 そんな顔で聞かれても、事実そうなのだから自分としては答えようがない。

 彼らにとっては、【終末】などサブカルチャーが失われるかどうかにしか興味が無いのだろう。

 アブゾーバーを調べていた面々も終わったようで、難しい表情の氷室さんが話し出す。

 

 

「これ、ケースが普通の鉄やステンレスじゃないですよ。

 今度は専用工具じゃないと開けれないネジで締めてありますし、プレートやカードも一見、やっぱり玩具にしか見えないのにかなり頑丈なものだという他は、構造としては仕様書以上に分かることはありません」

 

 眼鏡を外しこめかみを揉んでいるスーツの男性こと【少佐】も結果を話し出す。

 一緒に視ていた霊視ニキも目を揉んでいる。

 

 

「わたしの【サイコメトリー】で本体を視てみたがね。

 大音量のBGMメドレーと一緒に口ずさむ壮年男性の声しか聞こえんのだが。

 それにカードの方は、威厳のある老年の男性と若い男性が興奮しながら悪魔合体を繰り返していると思わしき声と、少女悪魔の苦情の声が聞こえるのだよ。

 まあ、割りと悪ノリに乗り切ったうちの開発現場でも時々見るのと似ているな。

 霊視ニキはどうだね?」

 

「呪いとか悪意のあるものは視えないが、強い力で護られて彼専用にされているのは分かる。

 ただ、視るたびにランダムで特撮物の主題歌が脳裏に流れて妨害してくるのは技術の無駄遣いだとしか思えん」

 

「確かにその点は同意する。

 しかも、無駄にOPサイズに編集された勢いの良いものを選んで今も脳裏に残るようにしているのは製作者の趣味だろう」

 

 

 割りと趣味に走った碌でもない霊的妨害装置が付いてたのはどうなんだろう?

 どちらにしろ、ここではこれ以上結論は出ずに会議をした上で決定することになった。

 

 会議が終わるまではそれなりに掛かると言うので、その間に変身した際の戦闘能力の検査をするのでと場所を移し模擬戦をいくつかすることになった。

 ただ、途中で制作班主催の美少女撮影会になったのは【俺ら】らしいと言えばらしいだろう。もちろん個人情報は伏せた上での健全な内容で、プロマイドの売り上げの5%は取り分とされた。

 まあ後々、腕の機械の部分は加工して消されていたが他にこんな能力の持ち主はいないので簡単に特定されて、撮影を頼まれるようになったり、ショタオジの差し金で【TSマスオニキ】の通称が定着したのは売り上げの金額に比べれば些細な問題と考えるようになった。

 

 

 

 そして、夕食の時間までずれ込んだため大急ぎで宿泊施設に戻るが花蓮はいなかった。

 かわりに伝言が届いており、『相談に乗ってくれた女性たちと話し込んだのでこちらに泊まる』とのことだった。

 自分では明確に花蓮の問題をなんとかしてやれないのは複雑ではあるが、上手くいくことを願ってその日は寝ることにした。

 

 明くる日、クーフーリンが二日酔いになった花蓮を背負って戻ってきた。

 ホテルの部屋に寝かせると、クーフーリンから詳細を聞くことにした。

 

 なんでも、千川さんの呼びかけでいま山梨にいる花蓮と同じ問題を抱えた人やファッションやコスプレでシスターの格好をしている人たちを10数人集め、鬱憤晴らしも兼ねての女子会を開いたのだそうだ。

 

 当然、途中で酒が入り、クーフーリンは途中で部屋の外に他のシキガミと退避したそうで中での途中の会話は聞き取れなかったそうである。

 次に部屋に入ったのはしばらくして中でシュプレヒコールしていたときで、その後に動けなくなったパートナー達を他の無事だったシキガミと協力して引き上げてきたとのことだ。

 

 会議の結果はまだ届いていなかったので、自分は花蓮をクーフーリンに任せ、制作班に頼まれていたプロマイドのセット撮影に行くことにする。

 

 そして、お昼ごろに帰ると花蓮は復活していたので詳しく聞くことにした。

 

 

「それで、もう大丈夫なのか?」

 

「ええ、大丈夫ですわ。

 このたび、スキルが変化して【リカーム】を覚え、ディアとパトラが【ディアムリタ】になっていたので自分にかけてスッキリです」

 

「体調は見れば分かるから、結論の方だよ」

 

「諸先輩方から薫陶や経験談を聞き、具体的な数字を見てようやく覚醒めましたの!」

 

「何に?」

 

「『ファッションやコスプレならともかくそんな物に構っていたら男が逃げる』、と!

 そして、『せっかく男前のシキガミがいるんだから喪女になる前に行動しなさい』、と!

 そうです。思い出は思い出として信仰なんかに拘らずに忘れなければいいのです」

 

「……ええぇ?」

 

 

 何を諸先輩方の女子の皆様から吹き込まれたのだろうか?

 隣を見ると、呆然とした顔のクーフーリンがいた。

 うん、これは彼に任せよう。

 結論はついたようだし、もともと花蓮の面倒をみさせる目的もあって彼には来てもらったのだから。

 未成年の妹に酒を飲ませた苦情も入れないといけないので、彼の肩をたたいて後は任せることにする。

 

 

「後は任せた。頑張れ」

 

「旦那!?」

 

「さあ、まずは服を買いに行きますわ。

 ここにはスポットが多くありますので出かけますわよ。クーフーリン」

 

 

 彼には悪いが、部屋を大急ぎで離脱した。

 事務の方へ行き飲酒の件にクレームを入れていると、こんな知らせがあった。

 

 

 

 

 

 ショタオジ率いる精鋭チームが直接交渉に現地へ出向き交渉をまとめた、と。

 




あとがきと設定解説


・【少佐】

初出は、オリジナル様の某所。
後続の転生者で、作成班の一人。
某作品の大隊指揮官殿にそっくり。

・【鬼女マーメイド】

赤城の趣味の入りまくった悪魔カードの一つ。
レベルは12。耐性は、氷結耐性、雷撃弱点、衝撃耐性。
スキルは、嵐からの歌声、ウィンドブレス、メディア、セクシーダンス、ブフーラ、無限のチャクラ。


次回もまだ、星晶神社で続きます。

もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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