今回は、星晶神社でのいろいろと神戸に帰るお話。
今回から、人数が増えるので「ハーレム」タグを追加します。
第十九話 Q、超人なら多少の正気度が減少しても大丈夫だと思っていませんか?
花蓮に飲酒させた件について一言言うつもりで千川さんを探していたら、事務室の奥の方で騒ぎが起こっていた。
『ショタオジ率いる精鋭チームが直接に現地へ出向き重大な発見をした』との事だった。
ついで、続報が『ショタオジが半日ほど療養に入る』である。
これはちょっと朗報と飲酒の件よりこの情報の真偽を知るべく、手近な男性事務員に尋ねると意外と落ち着いてる様子で答えてきた。
「すみません。今、ショタオジに何かあったと騒いでいたようですが大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫ですよ。
前にも仮病で仕事を抜け出そうとしたので、またそれでしょう。
あのショタオジが童貞は拗らせても、死ぬような怪我するわけないじゃないですか」
「いや、とりあえず千川さん呼び出しかけてもらっていいですか?
飲酒の件で月城カズマが探していると」
「ああ、はいはい。
心配する必要はないと思いますがねぇ。
じゃあ、そこのソファに座って待っていて下さい」
言われるままソファに座って待っていると、
『既婚男性の月城様が飲酒の件で千川さんをお探しです。問題になる前に早く事務室受付まで来て下さい』
と、あまり洒落にならない放送が流れ、すっ飛んできた千川さんにさっきの男性事務員が襟首を絞められている。
「おう、何しとんじゃワレ。冗談にもならんじゃろが?」
「この方が早く来てくれるでしょう。ほら、早く謝って下さい」
「何でわたしの方が仕出かしたと考えるんですかねぇ?」
「千川さん、千川さん。周りが見てるんでその辺で」
「コホン、失礼。
ちょうど探していたんですよ、月城さん」
男性から手を話し居住まいを正してこちらに向き直る千川さん。
そして、わりと平気な顔で立ち去る男性事務員。頑丈だなぁ。
とりあえず、こちらへと相談用の個室に移る。
お互いに椅子に座って話し始める。
「気持ちの整理もついた様なので感謝はしますけど、一応、花蓮は今は未成年なので酒の席は勘弁して下さい。
『前と合わせたらどうせアラフォーよ』、じゃないんで」
「酒を持ち込んだ人には厳罰にしておきますのですいません。
こっちで主催する合コンにしばらく出禁にすれば反省するでしょうし」
「ああ、噂に聞いた女性転生者のシキガミ以外の恋愛成就率を聞くとそれは厳罰ですね。
こちらの件はもうそれでいいです。
ショタオジの方は大丈夫ですか?」
「あの人が怪我なんてするはずありませんよ。
精鋭チーム揃えてすごい気合い入れてた外出から戻ったら、珍しく疲れたと言ってふて寝してるだけですよ。
あと、神戸に関する件でガイアグループあてに大口の依頼が来たから処理するように指示が来てますね」
「指示ですか?
神戸セクターにも何かあります?」
そう聞くと、持っていた書類入れから千川さんがこちらに渡してくる。
それは、例の書類の中にあったサブカルチャーの購入代理事業のこちら側の計画書である。
それによると、輸送や購入の実務はガイアグループの系列企業で、受け取り手の窓口は『田中カンパニー』、こちらの管理業務は『ガイア人材派遣神戸支社内事業所』になっていた。
今はただでさえ人数がぎりぎりで、事務手続きも遅れているのに仕事を増やす気かな?
自分なんか手伝うと仕事が増えるから、確認の印鑑だけ持っていてくれと言われているのに。
「目は通されました?
確認されたら、末尾の欄にサインして下さい。
帰られる時に、そちらのレンタルルームを一つお借りして事業所の事務室にするので代表の者を同行させますね。
それで、住居などの目処が立ったら追加の事務員も送りますので」
「手が空いている時は、こちらの事務の手伝いもお願いできたりは……」
「全員、後方勤務希望の転生者ですから大丈夫ですよ」
よし、これで音無さんたちに愚痴を通り越して嫌味を言われるのが減るぞ。
仕事が増えるのとリア充爆発とかの両方の意味で。
喜んでサインして渡し、明日帰る際に同行すると言うので了承する。
明日帰ることと仕事の同行者が帰る時にいると花蓮と氷室さんにメールすると、花蓮からは『了解、今デート中。連絡不可』と返って来た。
氷室さんは、『明日に伸びたのならもう一度試験倉庫まで来て欲しい』とあった。
昨日もやったプロマイドのセット撮影も兼ねた環境試験だろう。
向かうことにする。
少し歩いたところにある試験倉庫に着くともう用意が整っていた。
海を模した巨大な水槽があるので、昨日全員の姿に変わったが一番露出度が高いマーメイドに変わって欲しいのだろう。
男性陣の視線は気味が悪いが、自分もそうなので気持ちは分かる。
真面目に試験を行おうとする氷室さん達女性陣と、高性能カメラを用意した男性陣に分かれているのはいかにも【俺ら】らしい。
男性陣を睨みつけながら、氷室さんが話しかけてくる。
「カメラだらけでごめんね、支部長。止めさせる?」
「いや、プロマイドを出した時の取り分あるので大丈夫ですよ。
おい、お前ら。出来るだけ、エロく泳ぐからしっかり"健全に”撮れよ!」
「「「「おおう、任しとけ!」」」」
「ほんとにコイツラは。
ねえ、その機械、昨日も長時間、冷凍庫や水中にいたけど大丈夫?」
「説明書には『完全環境対応。物理的には壊れません』らしいし、異常はないね」
「そう、じゃ始めようか」
水槽の端に立ち、ケースから取り出して服は着てても大丈夫なのでそのまま左腕に付ける。
ハートマークのプレートを取り出し、装着。
『ABSORB DEVIL』
【鬼女マーメイド】のカードをスリットに入れ、飛び込む。
『FUSION GIRL』
緑色の髪をした儚げな容姿の人魚に変わり、水の抵抗をあまり感じずに水中を泳ぎ回る。
この姿のままだと、水中でも呼吸が出来るのは【悪魔変身】スキルの力だろう。
それにしても、このシステム音声はどっかのマダオなどでとても聞き覚えがある。
説明書には、『システム音声もオリジナルを完全再現』とあるのでどうにかしたのだろう。
なお、後にシステム音声のオンオフを希望するもロマンがないと却下されている。
ここ星晶神社にいると地獄の訓練で貰ったトラウマで前を思い出して気分が悪くなるが、だんだんマーメイドの気分になり、氷室さんの指示を聞きながら夕方まで泳ぎ続けてとても気分がスッキリした。
変わっている間は視線は気にならないし、ときどき【セクシーダンス】も混ぜて泳いでいたので男性陣にはとても好評だった。
ただ、陸に上がって機械を拭いた後に変身を解くと、あからさまに「ああっ」とため息をつくのは止めて欲しい。
もう時間が時間なので、別れを告げ宿泊施設に帰ることにする。
歩いて行くには面倒な距離なので、【モー・ショボー】に変わり飛んでいく。
これもここの検査で試して分かったが、飛び方は飛行機のそれでなくヘリコプターに近い。
かなり自在に浮遊や急停止などが出来て、最高速度は原付きよりは出せそうである。
真○ッターのジグザグ飛びも再現しようとしたが、気持ち悪くなり失敗した。
面倒なので、そのまま部屋まで入ってゆく。
さすが山梨セクター、モー・ショボーのままなのに誰も騒いでいない。
むしろ、「ショボたんがいる」とか言って携帯で撮影するのはどうかと思う。
花蓮は帰っているのかどうかは無粋なので確かめなかった。
ただ、クーフーリンの無事を祈るばかりである。
翌朝、不機嫌な花蓮と安堵の表情のクーフーリンを見て察したが、あえて触れるのは止めて帰りの支度に専念した。買ったものは宅配便で送ったため手荷物だけの花蓮たちはいいとして、氷室さんが親しげに話しかけている男性は同行者の人だろうか?
こちらに気づくと、30歳前後くらいの男性が話しかけてくる。
「どうも初めまして、最近ここに来た元商社に勤めていた【赤羽根】と申します。
一応、覚醒してますが、覚えたのが【クロスディ】だったので気にしないで下さい。
事業所の代表として、事務の統括と事業面からの監視をしますのでお願いします」
「こちらへはどうして希望されたんです?」
「悪魔事件で会社が潰れてそれでやっと気づいて掲示板を見つけて来たのですが、戦うのは無理なので後方を希望していたらこちらからの話がありまして来ました。
取引先がとんでもないのは聞かされていますので、直接はそちらにお願いします」
「戦いは無理でも交渉なら得意なんですよね。
出来ればメシア教との交渉の補佐を……」
「お断りします。業務外です」
「ですよね」
一礼して握手をし、連れ立って移動を開始する。
帰ってからああするこうすると話している花蓮とクーフーリン、甲斐甲斐しく赤羽根さんのお世話とお話をしている氷室さん、それぞれ忙しそうなので帰り際に渡された書類を見る。
それは、一昨日の撮影の前に各々の姿で採取した口内細胞と血液の比較が書いてある。
やっぱり姿が変わった後では、元々の自分のものと血液型やDNA配列にかなりの差異が見られたそうであるが、『受肉した悪魔』など他にいないので比較のしようもないのが現状だ。
変身先の彼女らを信頼してはいるが、こういうフィクションものでは人間に戻れない例が多くあるので不安といえば不安である。
妹は頼りになりそうな相手も見つけたし、いま一番自分の大事な二人を思い出して会いたくなる。
そして、半日かけて夕方頃、ようやく神戸に到着した。
神戸セクター内で氷室さんと争うように音無さんが赤羽根さんを案内しているのでそちらは任せ、花蓮は花蓮でクーフーリンと攻略に行く異界の情報を見るというので別れ、月城邸に急いで帰り着く。
そこには、会うのを切望していた二人がいた。
「おかえりなさい、カズマく…いえ、あなた。
お夕飯、これから作りますね」
「おかえりなさい、カズマさん。
あの日は一日、あたし大変だったんだよ。少しは手加減してよね」
「……お帰りなさいませ、カズマ様。置いてきぼりはひどいと思います」
そういえば、文香さんの封魔管は葵に預けて出かけていたな。
ご機嫌を取るのも約束だけしてそのままだったのは悪かったなぁ。
土産代わりに選んだ本は、宅配便で頼んだからまだ来ていないしどうしよう。
そう考えていると、ズイ、と文香さんが近づいて話し出す。
「文香さん、山梨で手に入れた興味を引きそうな本とかは数日中に届くから勘弁して欲しいな。
あと、気になるお店があるなら4人で出かけようか?」
「……そちらはありがとうございます。でもですね、カズマ様?
……葵さんに預けられていましたが懐妊されていますので、マグネタイトをあまり吸うのは悪いのでまともに顕現出来なかったんですよ。
事務の間は節約して何とか出来ましたが、文車妖妃なのに本がまともに読めませんでした。
……ですので、待遇の改善を要求します」
「待遇の改善?」
「……存分に長時間読書が楽しめられるだけのマグネタイトを要求します」
マグネタイトと言われても、それらしい手持ちはマッカや魔石ぐらいしかない。
けれど、それで顕現が賄えるとは聞いたことがない。
そこに、文香さんが書物を出して得意げに語る。
「……これです。『真言立川詠天流解説ノ書』。
とある好事家から譲って戴きました。これがあれば大丈夫です。
……充分なマグネタイトも手に入れられます」
「すごい嫌な響きの本を手に入れたね、文香さん!?
ねぇ、葵、雫、助けて下さい」
「複雑ですけど、わたしはまだ安定期に入っていないのでお相手できませんし。
文香さんはあなたと契約した使い魔という身内でもあるので、尚更、労使契約はしっかりしないといけませんよ」
「正直、カズマさんの相手をするのはとてもいいんだけど、最近どんどん急激に強くなったみたいで、あたし一人だと精神的にも体力的にも限界なんだよね。
特に、この間みたいに暴走気味で本気を出されるともうダメ。
その本のやり方なら、なんか突破口が開けるらしいし」
なんか前に見たような展開になってきたぞ。
そういえば、人の気配がここにしかない。
「……ご両親は空気を読んで逢引へ、お手伝いの白乃さんは一両日はお休みです。
そして、妹様にはすでに連絡して、向こうも決める気だそうなので情報と引き換えに快諾を頂いています。
……お二人と祭神様には、書物の実践内容を伝授する契約で快諾されました」
ちょっと待とう。でも、明日は山梨帰りだからみんな仕事をお休みするのは知っている。
しかも、まだ夏休みだし、根回し済みか!
「ごめんなさい、あなた。
音無さんから見せていただいた本の中に、閨のこともたくさんあって試してみたくなっちゃって。
せめて、お夕飯は冷凍ですけど国産のうな重を用意していますからね」
「明日の分の勉強とお風呂を済ませたら、お姉ちゃんと合流するから文香さんよろしくね」
「……御任せ下さい。かわりに今日は私が主にお相手しますので」
3人とも語尾に可愛くハートマークを付けないで。ああ、連れて行かないで。
身内に淫魔はいないはずなんだがなぁ。あ、文香さんは悪魔だったな。
その日と翌日、何があったのかは4人とも黙して語らないことにし、勝ち負けは問題ではなく危険すぎるため書物は祭神様の祠に封印することにした。
あとがきと設定解説
・マーメイドの露出度
真・女神転生5の日めくり悪魔動画のマーメイドを御覧ください。
・【システム音声】
ブレイドやダブルのアイテム音声のあの人。
円場博士が苦労して再現した。
ちなみに、趣味で他の音声もいくつか再現済み。
・【凶鳥モー・ショボー】
赤城の趣味の入りまくった悪魔カードの一つ。
レベルは17。耐性は、銃弱点、電撃弱点、衝撃耐性。
スキルは、ガルーラ・チャームディ・ウィンドブレス・衝撃ブースタ・銃耐性・電撃耐性
・『真言立川詠天流解説ノ書』
某作品の月の裏側で地球を変なことに使うラスボスをしていた女僧の流派の書。
夜の指南書でもあるが、素人には大変危険なブツ。
ハーレムの定義は、「3人以上の相手と関係を持つ」で良かったはず。
次回は、神戸側での面倒事いろいろ。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。