カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、幕間で世界線がズレたことに関するお話。
わりと、重要な伏線回。


第二十二話 幕間その五・とある地方の組織の幹部会議の記録

  第二十二話 幕間その五・とある地方の組織の幹部会議の記録

 

 

 ケース1:ガイア連合神戸セクターの会議

 

 

 さて【ガイア連合】に所属する自分も含めた【転生者】は、【終末】を生き残ろうという目的を持ちショタオジを中心として集まった個人主義の集団である。

 転生者は、三種類いると言われている。

 一つ目は、オカルトや終末が来ることなど信じない普通の生活を送る者。

 これには、非覚醒の一般人と変わらない者や自分からガイア連合に背を向けて【転生者】であることを考えないようにした者も含まれる。

 二つ目は、非覚醒、覚醒含めそれぞれの目的のために強くなろうと行動する者。

 これは、ほぼ一般の活動する連合員だろう。

 レベル上げや物欲のためにマッカ稼ぎをするために異界を巡り戦う者、技術を生かして何かを作る者、事務や医療などの組織を円滑に動かす後方勤務の者である。

 三つ目は、掲示板でも時々固有名で語られる幹部クラスも含まれるガチ勢である。

 組織運営の幹部に携わったり、危険な海外の戦地に渡ったり、一人で【タルタロス】に突っ込むような何かとがいる一般人ではなく逸般人の者たちである。

 自分はと言うと、二つ目から三つ目に片足を突っ込んだ位の者であろう。

 なお、ショタオジは堂々の規格外殿堂入りである。

 

 後に、4つ目として、金銭のために転生者のための特典を売り払う者や終末が迫り転生者であることを理由に連合に寄生する者が現れるが今は割愛する。

 

 そんな個人主義の集団でも組織であるなら会議やミーティングを行うものであり、ここ神戸セクターも例外ではない。

 今回、参加しているのは自分と小鳥さん、六堂さん、赤羽根さんである。

 暖房をつけると窓が曇るほど外はそろそろ寒くなり始めた三階の一室を、会議室として話し合っている。

 折りたたみ式の机とパイプ椅子があり、机の上には議題となる報告書や『★終末原因特定スレ part4』を始めとした掲示板のログ、写真などが挟まった書類などが並べてある。

 ちらりと音無さんの方を見た赤羽根さんが書類を持って話し始める。

 

 

「では、まずこちらから。

 現状、研究所との取り引きは依然として続いています。

 相変わらず新刊や新作を中心にしてサブカルチャーの買い取りは続いていますが、最近は絶版した物やキャラクターソングCD、ポスター、成り切り玩具、コンビニのコレクターアイテムまで更に幅広くなっています。

 注意してはいますが、依然としてサブカルチャー以外ではスナック菓子や酒類などの嗜好品のみでこれと言って怪しげなものは購入されていません」

 

「自分も時々、ご機嫌伺いの名目で何度か行っているけれど、入り口ロビーの来客用ソファで歓談するくらいで初日のあの時以来奥の部屋には通されていないなぁ。

 そういえば、赤城さんも今度はヨーロッパに行ったらしく顔も見ていない」

 

「赤いスーツの若い男性ですよね。

 田中さんと神戸市内の事務所で話している時にお会いしましたよ。

 聞いていた通り、胡散臭げな人でしたね」

 

「この間、電話があって『娘さんが生まれたらぜひ会わしてくれ』だとか『美少女に姿を変えた気分はどうだい?』とか『ぜひ写真を撮らしてくれ』とか言われたけど、またすぐに立つとかで忙しそうだったな」

 

「あの人もあそこに出入りしているんですよね?」

 

「基本的に趣味以外は真面目な人だけど、その事が分かった以上注意はした方がいいね」

 

「判りました」

 

 

 そう言って終わると、今度は六堂さんが話し出す。

 

 

「そこのログにもあるけど、少し前に連合員では確認される初めての死者が出た件に関することです。

 ショタオジが救助して、ちょうどシキガミのボディ専用の3Dプリンターが導入されていてふんだんに在庫があった女性シキガミのパーツと本人の資質もあって蘇生処置をした結果、その男性が【TS魔人ネキ】になって蘇った件が関係しているんだけれどね。

 それがシキガミパーツの人体への移植が可能になる事例になったおかげで、わたしの腕でもパーツがあれば、ここでも高級シキガミの四肢欠損までのダメージは治療できるようになったからね」

 

 

 その事を話すと、全員が「…性転換」とつぶやいてこっちを見てくる。

 ログの彼女?の様に性別が変わって喜んでいるんじゃないんだが。

 ゴホンと咳をして話題を戻して、六堂さんに話しかける。

 

 

「TSの事はいいから、治療の件はすごいですね。

 今までは、治療魔法か回復施設の自然治癒任せでダメージが酷いと難しかったのに」

 

「パーツをこちらにも少し分けてもらえるように説得したんですよ。

 ただ、花蓮ちゃんみたいな男性シキガミや女性型以外タイプのパーツはほとんどありませんけど」

 

「作っている人たちの趣味で、高性能の装備品もほとんど女性用しかないからね。

 女性用の防具というか、高性能の女性用服飾品防具は本当にバラエティ豊かなんだよな。

 防具の関係で仕方なく、女装している人もいるくらいだから」

 

「この間見かけた白い饅頭みたいな男性といた人たちとかですか?」

 

「そうそう、亀を持ったペルソナがスライムの人の友人さん。

 仲間が現地の友人で装備費の関係で仕方なくやっているんだって」

 

 

 彼とその仲間もしょうがなくしているのだから、音無さんも見なかったことにしてあげて欲しい。

 霊的装備品が工業化出来なくて職人のハンドメイドだけな上に、作れば売れるから製作者の趣味の品ばかりになるのはしょうがないのだろう。

 

 だからといって、「プロマイドを見ました」とかピッタリのサイズのものを送って来られても処理に困ってしまう。売ったりするには耐性付きなどの高価な品なので出来ずに困って、自宅に持ち帰り「将来の子供用」として取っておくことにした。 

 事情を話した時の葵や雫の「もう親ばかかな?」という視線は忘れたい。

 

 さて、次の話題が一番重いのだが、音無さんが資料を提示して話し始める。

 

 

「この資料にあるように、エジプトにおいてメシア教と戦っていた【多神連合】が敗れアフリカが落ちたようです。

 しかも、表向きにはアメリカ軍と現地武装勢力が争い、ピラミッドや首都を吹き飛ばす威力の大型爆弾やBC兵器が使われたとされていますが、実際はもっと酷い事になっているようで」

 

「もしかして、核とか?」

 

 

 赤羽根さんが深刻な顔で聞くが、首を振った音無さんは笑えないと言った顔で話す。

 

 

「戦いの最中にエジプト神話群の神々が勝手に損切りを考えて、敵味方関係無く病や呪殺の範囲攻撃を撃ち込んだそうです。

 しかも、他の陣営から来ていた一流の能力者をミイラやマミーにして死後の魂の所有権を主張して魔界にお持ち帰りして勝手に帰っていったのだそうで、首都まで瓦礫の山になって多神連合側もかなりの被害を受けて撤退したようなんです」

 

「メシア教側の被害はどうなんです?」

 

「不明ですけど、あのメシア教ですから補充はすぐに利くんじゃないでしょうか?」

 

 

 赤羽根さんや音無さん、六堂さんも難しい顔をしている。

 アメリカの生産力を手に入れて人道とか『無死』するメシア教の過激派を考えると、被害も時間が立てばすぐに微々たるものになるのは明白だろう。

 

 世界地図を頭に描く。

 中東も中東の一神教が強い地域であることを考えると、イギリスやアイルランド、北欧、インド付近まで戦線を押し込まれるだろう。そして、それぞれの勢力を各個撃破し、最後に日本を焼けば終末が来て大洪水の末に【神の千年王国】の樹立というのがアメリカのメシア教過激派のプランだろう。

 かといって、日本の一地方の霊能者にすぎない自分に何が出来るのだろうと考える。

 そして他の皆も驚くが、音無さんからもう一つの聞き逃がせない情報が出る。

 

 

「あともう一つ情報があります。

 メシア教の動きを探っていたら判明したんですが、南極のシュバルツバースを先に占拠して小粒サイズで固定封印に成功したようだと」

 

 

 ふと、オーナーと初めて会ったときを思い出す。

 

『南極のアレが御破算になって暇なの。あなた達を見て楽しむことにするわ。

 せいぜい、頑張って』

 

『だから、他の娯楽も用意してあの方にも東京で暇つぶしをされないようにもお願いしている』

 

 あの発言の内容と、情報が一致する。

 先日、自分の氏名が記録された【ブラックカード】が届いた。これは連合員として真っ当に活動しているほぼ全ての【転生者】に配られる会員カードの【ブラックカード】に、幹部用の権限が付加されたものである。

 幹部にだけ見られる情報と転生者掲示板のまとめを見比べると、我々の前の世代がいかに頑張っていたかがよく分かった。先を知っているだけに、原作の終末の原因になるものを尽く判ったものは潰していたようだ。

 先日のショタオジが言っていた話題の件とそれにより【ファントムソサエティ】が沈黙した事、【黄昏の羽根】が無い事、【ミロク経典】が戦後のメシア教の焚書で焼滅していると確認した事など、まだ霊地の活性化などいくつかは残っているがそこまでしていた事にショタオジや財界ニキたちを改めて尊敬する。

 黒いカードを眺めながら考えていると、恐る恐る音無さんが話しかけてくる。

 

 

「あの、まだ続きが。ショタオジからの伝言で、

 『エジプトの件で避難してきた【墓守の一族】の避難場所を瀬戸内の無人島にするから、代表のマナさんという方との交渉窓口よろ☆』、だそうです」

 

「何故、自分が担当に??」

 

「何でも、『嫁がいるなら【クレオパトラ】の転生体のハニトラにも引っかからないだろうし、【研究所】の事もあるんだし一つ位増えても、魅了や洗脳は効かないんだから大丈夫だと確信しているよ。何かあれば助けるから、ガンバ☆』、と。

 とても、にこやかに言っていたそうで」

 

 

 気の毒そうに見る皆の視線を気にしながら、自分は気分を落ち着けるため温くなった缶コーヒーを一気に飲み下した。

 

 

 

 ケース2:神戸メシア教会

 

 

 そこは神戸メシア教会本部の居住部の最奥、シスターギャビーの寝所である。

 執務を終え、沐浴が終わった彼女はガウンに着替え温かいココアを飲みながら、最近側仕えのシスターから良い気分転換になると教わり、読みふけっている小説を寝るまでの一時読んでいた。

 そこに、扉は開いていないが誰かの影が浮かび上がる。それは、黒い髪と翼、そして仮面で顔を覆う天使だった。

 それに気づいた彼女は不愉快そうに本を置き、慇懃な笑みを浮かべるそれに話しかける。

 

 

「久しぶりね。何の用向きかしら、マステマ?

 仮にも女性の寝所に、こんな時間に来るなんて失礼ではなくて?」

 

「いえいえ、単なるご機嫌伺いですよ。ガブ…いえ、シスターギャビー。

 それと、今のわたしの事は【マンセマット】とお呼びください。

 アメリカを脱出するのを手助けして以来ですか、お会いするのは?」

 

「そうね。

 依代を使った【大天使降臨計画】、あの日降臨した我々を襲った狙撃と依代の変異。

 そして、その後の内紛。変異を逃れたミカエルと変異を神罰とされ追われたわたし、逃げ出すのは本当に大変だったしあなたの手助けにも感謝しているわ。

 でも、忘れないで。あなたの手を借りたのはあくまでも【主の告知】があったから。

 信用しているとは思わないで」

 

 

 変わらず慇懃な笑みを浮かべたままそれは、彼女の手元の本と一角にある本棚を見て笑みを深くする。

 

 

「いえ、か弱き人の姿に変わり世俗を楽しんでいらっしゃるようですね、シスターギャビー。

 ハーレ○イン・○マンスですか?

 表題からすると、仕事のできるOLと年下の男性との後に男性上位になる恋愛物ですね。

 複数あるのは、相当に気に入れられたようで、クク」

 

「人の趣味をあざ笑うのは失礼でしょう?

 もともと階級社会の天使だからこそ、一番、趣味にあったのよ。

 だから、あなたは同じ天使にも堕天使にも信用されないのよ」

 

 

 真っ赤になって話すギャビーに視線をそらして笑っていたそれが、別の意味の慇懃な笑みを浮かべ話しかける。

 

 

「その様子を見ると、あなたの見初めた【ヨセフ候補】は見つかったのですね。

 時間を掛けてこの地を【ノドの地】や【方舟】とし、ミカエルから守るつもりですか?」

 

「そうよ。

 日本支部代表のあの娘が彼の組織の盟主と結ばれ、わたしはリリスが死ぬのを待ち力強き寿命も人を越える愛する彼と結ばれる。

 やがてガイア連合とメシア教穏健派は一つとなり、この地は新しい神の愛を世界に伝える真なる【カテドラル】となるのです。

 そして、あの娘の子どもやわたしの御子、彼の仲間たちと結ばれた教会の仲間の子どもたちが世界を神の愛に満ちる素晴らしいものへと変えていくことでしょう。

 だから、マンセマット。直接に、彼らに手を出すのは控えてちょうだい」

 

「わたしの目論見も諦めろと?」

 

「そうではないわ。

 こちらの障害にならないなら、あなたの【唄い手】を探すのは止めないわ。

 彼の周囲に手を出すのを控えてというだけよ」

 

 

 それは一旦喋るのを止め、考え込む。

 そしてニコリと嘲笑うと頭を下げ、姿を消す。

 

 

「分かりました。

 あなたの見初めた彼の周囲に、【直接に】手を出すのはしませんとも。

 それでは、あなたの計画が上手くいくように願っています。

 神のご加護があらんことを」

 

「ええ、あなたもね。神のご加護があらんことを」

 

 

 それが消えるのを見終えると、冷めてしまったココアを飲み干し眠るためにベッドに向かう。

 そこで彼女はふと疑問に思ったが、気にすること無く眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

「『今のわたしの事は【マンセマット】とお呼びください』?

 では、その前は、何と呼ばれていたのかしら?」

 




あとがきと設定解説


・ハーレ○イン・○マンス

1988年に日本でも販売され始めた女性向け小説のレーベル。
キャッチコピーは「あなたが探していた愛は、きっとここにある」「恋は、本屋さんに売っている」。
ちなみに、この頃に流行っていたトレンディドラマにもこの後にハマる事になる。


次回は、第三部開始の予定。

もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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