今回は、出番の久しくなかった実の母親の話。
第二十三話 Q、家族の問題もちゃんと解決しようと思いませんか?
第二十三話 Q、家族の問題もちゃんと解決しようと思いませんか?
「お母さん、再婚しようと思うんだけどどう思う?」
その言葉を聞いたのは、年も開けしばらく立った頃だった。
葵が臨月になり入院し、月城家と封魔管は預かっているが文香さんも家の中の手伝いをして月城家が大忙しの時期にたまには息抜きをと言われ、花蓮と共に久々に間藤家の家族と外食をしているときの事だった。
相変わらず母の発言は悟ったような顔の祖父と吹き出しかけてむせている花蓮、自分も母さんのことだからと思っているので冷静に聞いてみることにした。
「また突然だけど、どうしたの?
誰かと付き合っていたとか聞いていないけど、花蓮は知っていた?」
「知るわけ無いですわ。
この所、自分のことで手一杯で時間も合わないのでろくに話も出来ていなかったのですから」
「いえね。私もまだ30代じゃない?
カズマはもう結婚して孫も生まれるし、花蓮も彼氏を捕まえたようだし私だってまだ恋愛してもいいかなと思ったの。
それでね、仕事先の紹介でお話が来ているの」
彼氏を捕まえたの部分で赤面している花蓮だが、当のクーフーリンは別席にて食事をしている。先のクリスマスに一線を越えるつもりだったらしいのだが、体のアップデートをもう一回と【性交】のスキルカードがないと出来ないことを失念していて失敗に終わったと安堵の表情の彼自身から聞いている。
そもそも彼自身は花蓮に対しては守護者としての意識が強く、本霊と交信したことで肉食系の女性が苦手になっているらしく花蓮のアプローチに大変困っているようである。
まあ個人的には、母とももうかなり親しげにしているし、高校を卒業する頃までには決着が付きそうなのでこのまま応援していたい。
花蓮のことはさておき、母の話を聞くことにしよう。
「それで相手って誰なんだ、母さん。
もう、挨拶とかしたの?」
「それなんだけどねぇ。ほら、今は私、税理士を仕事にしているでしょう?
この間、新規で契約を貰った外資系の会社の方からお話があったの。
お相手は、在日米軍予備役大尉のアンソン・スーさん。
今は横須賀基地で働いていて、パイロットをしている娘さんもいるそうよ」
「ま、待って下さい。お母さま、受ける気ですの?」
「そうだよ、母さん。成人の娘がいるなら高齢じゃないのか?」
「まだ、40代で真面目で温厚そうな人なんだけどね。
大丈夫よ。ほら、お父さんのこともあったじゃない?
何か嫌な予感がするので相手がいるとかでお断りしたいのだけど、誰か勤め先にいい方はいない?」
コース料理も食べ終わり食後のお茶を飲みながら、母をじっと見る。
間藤悠紀華、現在36歳。銀髪の髪をボブショートにして基本、スーツ姿。
二人の経産婦なのに、この歳で花蓮と並んで街を歩くと姉に見られる若々しさ。
スタイルもよく、しっかり者で税理士の資格を持つくらい頭もいい。
少し考え込み、母に許可をもらって写真を取り目当ての人物に『見合いをしてみない?』とメールを送る。
宵の口とは言え仕事もあるだろうに、5分とかからず乗り気の返信があった。
【レスラーニキ】こと関本さんである。
「母さん、いい人がいるんだけど会ってみる?
関西日本プロレスの選手で関本順一郎さんといって、年齢はほぼ同じでうちの人材派遣で時々副業として働いている人だよ。
身長が高くて強面だけど、真面目な人だよ」
「ああ、関本さんなら真面目で信用はできますけど、いいんですの?
最近、山梨の方にデザインをしきりに送っていたみたいですけど」
「本社からは要請が却下されていたからね。
それに、母さんは彼の好みの真ん中だし」
心配そうに聞いてくる花蓮に答えていると、不思議そうに聞いてくる母さん。
それに、ネットの団体のホームページに載っている彼の写真を携帯でいくつか見せて答える。
「怖そうだけど、仕事には真面目な方みたいね。
それで、山梨の本社に何を要請していたのかしら?」
「お見合いだよ、お見合い。
男やもめで、先方の都合が付かなくて通っていないみたいだから」
「そうね、では会ってみようかしら」
こうして、母親の見合いが急遽、決まることになった。
こちらとしても、メシア教の関係者とか変なのに引っかかるよりはいいので複雑ではあるが進めることになり、お互いに社会人でもあるので連絡を取り持った以外は順当に日時や場所も決まっていったのだった。
なお、祖父はそれを見ながら楽しそうに黙って過ごしていたのはさすがはあの母の親だなぁと感心してしまった。
当日は、月末の休日の夕方に行われることになった。
自分の方は懸念だった葵の出産が双子の子が産まれるというので予定日が伸び、後ろ髪を引かれるが参加する事になった。
場所はヒノエ島と淡路島の間にある瀬戸内の2番目に大きい島のホテルであり、参加者は関本さん側は一人で、こちらは自分と花蓮と母、そしてクーフーリンも妹の彼氏ということで参加している。
ただ、今日のホテルは人が多い。入り口の看板を見ると自分でも知っているそこそこ有名な女優のディナーショーがあり、参加する母より年上の女性の方々がたくさんいるようである。
そして、予約したレストランの個室には関本さんが既に来ていて待っていた。
いつもならラフな格好の彼が、筋肉にはち切れそうなスーツ姿でいるのは自分で紹介してなんだがそこまで気合をいれることなのかと思う。
ちなみに、母の方もめったに見ない気合の入った服装と化粧で別人になっている。
自分たちは一応、スーツと制服なので大丈夫だとは思う。
母が席に付き、関本さんに挨拶をする。
「今日は来てくれてありがとうございます。関本さん。
息子のカズマです」
「えーと、娘の花蓮です。よろしくお願いします」
「二人の母の悠紀華と申します。
こんな大きな子供のいるおばさんですみませんね」
「何を言われますか! まだ、若くてお美しいではありませんか!
支部長。複雑な立場ではあるが、今回の場を設けてくれてありがたいと思うぞ。
何しろ、生まれてこの方スポーツばかりでこういうのは初めてだからな!」
「自分たちを産んでくれた母ですから滅多な人では反対していましたが、ことここにいたっては、こういう場を設けるしかありませんでしたのでよろしくお願いします。
じゃあ、ここは二人きりということで自分たちはロビーにいるので頑張って下さい」
「ガンバですわ、関本さん」
「……え?」
そういうと3人で個室を離れ、外はもう暗くなったホテルロビーに移動する。
コース料理が運ばれながら会話を楽しむプログラムだが、高い料金を自腹で出したので上手く行って欲しい。
一泊はするつもりで、男性ニ人と女性ニ人の二部屋を予約もしている。
荷物を横に置きロビーの椅子に座ると、不満そうな顔の花蓮と飲み物を飲みながら話し始める。
「関本さんなら何度も一緒に戦っているので信用の出来る方だとは思いますが、上手くいったとして義理の父親と思えるんですの?
ああは言いましたが、急に言われても難しいですわ」
「自分たち【転生者】を二人も産んだ母さんだよ?
何故かあの『空を飛ぶ聖女』の父親と話が出るくらい注目されているのに、『終末を起こそうとしているメシア教に狙われています』とか正面からは言えないよ。
まだ、同じ転生者で信用のおける関本さんなら納得はできるし。
それにもし、一般人の母さんに【終末】が来るとか裏のことを話して嫌われたらどうするんだ?
今までのことだってそれらしい話でごまかしているのに、自分は前みたいに親不孝にはなりたくない」
「それを言ったら私だって嫌ですわ。
前みたいに、金を稼ぐ道具のように扱うような親ではないのに嫌われたくはありませんわ」
「おう、旦那、嬢ちゃん。
話し込んでるところを悪ぃが、ちぃとヤバげな雰囲気だぜ」
クーフーリンの声に振り向くと、上の方で爆発音が鳴り電気が消え、建物が揺れる。
あちこちで悲鳴がして人々が逃げ惑い始めたが、ホテル地下への階段の空気が次第に淀み死臭の漂う空間へと変わっていく。
そして、館内放送が鳴り響いた。
「メシア教を支援するぬくぬくと平和ボケした貴様らに、現実という名の我らの嘆きを教えてやる。
我らを教え導く者の名に於いて、聖戦を!」
念のために持ってきておいたデビルアブゾーバーを身に着け、地下から彷徨い出て来た死人の群れを見ながら花蓮たちに言う。
「あそこが異界の入り口のようだから行ってくる。
花蓮たちは支部や母さんたちと連絡したら、ここで溢れてくるのを防いでくれ」
「お兄様一人では危ないですわ。
ここで抑えて応援を待つ方が良いと思います」
「屍鬼や幽鬼なら物理だけだから相性がいいし、レベル差もある。
どちらにしろ、ここの入り口を封鎖できるのが装備がない二人にしか頼めない。
行ってくる」
そう言い残すと、自分は地下からふらふらと歩いてきていた死人を階段下に蹴り落とし変身しながら降りていった。
元々はホテルの従業員しか入れない地下通路だったのだろう非常灯が赤く照らす廊下を、元は守衛や従業員だったらしい群れがバイオ○ザードのように歩き回っている。
隠れながら周囲を見ても呪殺を撃ちそうな悪霊は見えないので、慎重に殴り倒して行く。案の定低レベルである上に、毒や麻痺を伴った噛みつきや引っかきが主らしく物理反射もあって一人でも比較的楽に倒せている。
ただ、流石にバットなどの武器もなく素手で殴り倒しているために感触が気持ち悪いのと、変身していたとしても染み付いた臭いなどで去年に買ったばかりのお高いスーツが駄目になるのがとても悲しかった。
地上への階段が見える範囲で地下一階を歩き回ってみたが、異界化で内部が変化したらしく明らかに広くなっている上に、一番奥の下に続く階段の前に縦横2、3mはある死体が組み合わさった蠢いている腐肉の塊がいて通れない。
曲がり角から覗き込んでいると、そいつが一定時間ごとに死人を吐き出しているのが分かった。長時間こいつを放置しているのは見るからにやばいだろうが、こういうタイプの敵は襲ってきた奴をかじるなり取り込むと体力が回復する手段がありそうだ。
問題は、その手段が物理の技なのかナジャの【吸魔】のスキルのように万能属性なのか分からないのと、レベルが自分に近い強さであろう点、弱点は破魔と火炎だと思うが今の自分だと氷結と衝撃系の技しかない点だろう。
奥を伺いながらどうしたものかとしばらく考えている時に、入り口の方角から二人の人影が歩いてくるので、物陰に隠れ様子を伺うと姿が見えて来る。
一人は黒い警察用に似たボディアーマーで目元以外隠している体格のいい男性で、二人目がこの場に似つかわしくない中世風の金属の防具がついた深い青の服を身に着けた金髪の少女であった。
自分のいた所を通り過ぎて肉塊の前に行き、それが反応する前に腰のポケットから米粒の入った袋を取り出し振りかけると悲鳴を上げて肉塊が消えていった。
終わるとこちらに二人とも振り向き話しかけてきた。
「神戸所属の【マスオニキ】だな?
連絡を受けて応援に来た【卑劣ニキ】だ。
それでこっちが本部からの預かりものだ、挨拶しろ」
「初めまして、マスター。
私は、ガイア連合試作造魔2号の【英傑ジャンヌ・ダルク】です。
データ試験後、貴方用のシキガミとして調整されこちらに来ました。よろしくお願いします」
「ジャンヌ・ダルク? 何で造魔で英傑が??」
「お前の関係先から来た技術と以前確保された市井の技術者が、ドリーカドモンとやらで技術部総出で実験やろうとしたら出来たらしい。
それで、試験が終わってコイツの引き取り先がモデルも相まって見つからなくてな。
神主の楽しそうな一言で、以前に採取されていたお前の血なんかを使ってシキガミと同様の契約処置をしてお前のところに来たそうだ。受け取れ」
「何故、FGOデザイン?」
「素体のデザインがこれだったんだと。
それとも、フランス国旗マントのデザインの方が良かったのか?
とりあえず、一度戻るぞ」
自分としてもいろいろと言いたいことはあったが、手が足りないのも事実であるのでジャンヌとシキガミとしての契約の確認作業をすると地上に戻ったのだった。
あとがきと設定解説
・階段前にいた肉塊
レベル18の【屍鬼コープス】。
スキルは、デスタッチ、仲間を呼ぶ、麻痺引っかきでした。
破魔弱点なので、アイテムの施餓鬼米であっさりやられました。
『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』、誰の策でしょう?
次回は、ホテル編の続き。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。