カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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コロナで忙しいですが、続きです。

今回は、事件の導入編の回。

一部に不愉快な描写があるのでご注意ください。


第二十六話 Q、何かをする時にちゃんと物事の区別は出来ていますか?

  第二十六話 Q、何かをする時にちゃんと物事の区別は出来ていますか?

 

 

 自分がその一報を聞いたのは、神戸に戻り早々に母屋に帰る花蓮たちと別れ、自宅で寝ている凛と桜の顔を見てから葵や雫にお土産を渡しながら文香さんやジャネットも交えて話している時だった。

 

 

「取り敢えず、葵と雫には身を守るための指輪を渡しておくよ。

 これには、アガシオンと呼ばれている神戸セクターにある壺の中の精霊のような使い魔が入っているんだ。

 このルビーの宝石が有る方の方が葵ので、サファイアの方が雫のだよ。

 使い魔の名前も宝石と同じだから呼べば出てくるからね」

 

「綺麗。こんな貴重なものを頂けるなんて」

 

「ふわぁ~、あたしには大人すぎるんじゃないかなぁ」

 

 

 そう言うと、指輪ケースに入ったそれらを彼女たちに渡す。

 薬指の指輪を結婚指輪と付け直し頬を染めながらうっとりと微笑む葵、同じく薬指にはめてニコニコしながら早速呼び出して白いぬいぐるみのようなそれを抱きかかえている雫、二人とも喜んでくれたようで何よりである。

 その隣で早速、管狐のくだりを話して言い合いをジャネットとしている文香さんに話しかける。

 

 

「文香さんへのお土産の本は、また宅急便で届くから受け取っておいて。

 それから、自分は管狐と同じとか思っていないからね。

 ジャネットも言い過ぎないように」

 

「……ジャネットがそう言っているだけなのは解っています。

 喧嘩をしている訳ではありませんし、気にしていませんよ。

 ……それでは、この間手に入れた狐耳と尻尾の作り物を付けて夜にお見せしますね」

 

「どっからそんな知識をって、文香のことだから本からですよね。

 おまけに、マスターに無断でそんなものまで手に入れて」

 

「……大丈夫です。3人分揃えてありますのでバッチリです」

 

「私の分は無しですか」

 

 

 真っ赤になっている葵とニコニコしている雫、得意げな文香さんに悔しそうなジャネット。

 その狐耳尻尾と奥の壁に掛けられた高校の男性用学生服は気になるが、皆に尋ねないといけない事を思い出し話題を変える。

 

 

「なあ、葵に雫。文香さんはなし崩しだったけど、ジャネットまで夜に呼んでいいと聞いたんだけどどうしてだい?

 文香さんだけでも申し訳がないのに」

 

「あなた、今の月城家で覚醒した人の数は、親戚筋を切ったためうちにいるだけなんですよ。

 人の数は力です。

 今の時代には妾や愛人とかはおかしいかも知れませんが、この家を守るためには少しでも多くの高い力を持った家族が居ないと"また奪われる”かもしれないんです。

 わたしはこれ以上、家族が居なくなるのは嫌なんです」

 

「そうだよ。カズマさん。

 あたしも再来年の春に卒業したら、資格の勉強しながら子どもを産むつもりだし。

 確かに今の世の中的には変かもしれないけど、祭神さまも言っているの。

 『備えよ。増えよ』って」

 

「マスター、お願いですから一人だけ外に置かないで下さい。

 私は、マスターと伴にあるだけが全てなのですから」

 

「……私もジャネットが加わるのに反対はしません。

 それはそれとして、契約したモノとしては私が一番古参ですけど」

 

「分かった。ジャネットは信頼してるし、除け者にはしないから安心して。

 でも、世間体だってあるんだから程々にね」

 

 

 ニコニコしているジャネットに比べ、今の言葉を聞いて苦笑いのような微妙な笑みで、ちょうどかかって来た電話に合わせて用事を思い出したという風にこの場を後にする三人。

 これは、近所で自分がどんな風に言われているのか知るのが怖くなる。

 そこへ、電話に出ていた雫が聞いてきた。

 

 

「カズマさん。

 所長さんからで、白乃ちゃんがお昼を食べに行ったまま帰って来ていないらしいんだけど何か知らない?

 自宅にも居ないみたいで、こっちにも来ていないの」

 

「いや、何も。忍さんたちに連絡は? 警察に知らせた?」

 

「警察にはまだだけど、お母さんたちはまだ仕事中だよね?」

 

「こっちの携帯で掛けるから待ってて」

 

「うん。所長さん、明日も連絡が取れないなら警察に届けるからって」

 

 

 携帯を取り、神戸セクターに電話をする。 

 ちょうど、忍さんが出てくれた。

 

 

「はい、こちらはガイア人材派遣神戸支社です。

 ご要件は何でしょうか?」

 

「あ、忍さん。カズマです。先ほど、山梨から戻りました。

 白乃ちゃんがいなくなったらしいんですが何か知っていますか?」

 

「いえ、こちらには何も。

 何もなければいいのだけど、夫にも知らせてすぐ帰りますね」

 

 

 その日は心当たりの場所を手分けして探しても見つからず、翌日の夕方には警察に捜索願が出され結果を待つことになった。

 それからの数日は、近隣の異界攻略や心霊依頼の解決、後続の転生者たちの育成の付き添いなどをこなし、いつものように過ごすことになった。

 

 

 

 事態が動いたのが、それから五日後のことだった。

 

 白乃ちゃんは姓こそ立花だが戸籍上はうちの養子になっているため、警察から連絡があり恭也さんと忍さんが出向いた事が始めだった。

 

 コインパーキングの監視カメラが彼女の姿を捉えており、事務所から大通りへの近道だった路地を通っている途中に私服になっていた彼女がアジア人らしい男性グループの黒のワンボックスカーに連れ込まれて拐われる様子が写っていたそうである。

 その上、事情を尋ねに警察が立花家の実家を訪れたところ、近所の人から数日前に家族揃って車で出かけてから見ていないという事まで知らされたそうだ。

 昨今は地方でも死亡者や行方不明が多発しているので、県警でも本腰を入れて捜査を始めるので何かあれば連絡してくれと言われて戻ってきたと二人から聞かされた。

 

 問題なのは、それを聞いて山梨の占術のかなりの使い手に探してもらった所、誰かに妨害をされて弾かれたということだった。ただ、現在は山梨の方も自衛隊のゴトウ氏の退魔部隊との折衝中なので手が離せないという事だった。

 この間のような明らかに自分の手に負えない悪魔事件ならともかく、こういった悪魔絡みらしいトラブルのような今の状態では個人で出来るだけ何とかするしかないだろう。

 戦闘能力ならともかく事件調査など自分にも出来る力も宛もないので、神戸や近隣のガイア連合セクターに自腹で報酬を用意して捜索依頼として出すことにした。

 そして、依頼を出してから1時間と立たずに情報が来たのである。

 

 

 

 情報を知らせてくれたのは、ここのセクターに登録し仕事をしている3人組だった。

 以前の事件で自分が助けたメシア教のシスターたちであり他の連合員メンバーは距離を置いているが、全員レベル5以上ありハマとディアとジオを使いこなすため、真面目な上に胸の大きい金髪美女揃いと何も知らない一般の依頼者には現地民のチームでは高い評価のチームである。

 この依頼票を張り出してすぐに彼女たちが知らせたいことがあると言ってきたので、ジャネットと共に個室で話を聞くことにした。

 流石にシスター服でなく動きやすい格好ではあるようだが、改めて見ても3人とも姉妹ではないらしいがよく似た顔立ちである。背の高さや肉付きまで似ているため自分は髪型で基本的に判別しているが、肩までの長さの子がマリー、腰までの長さでリボンで纏めている子がメアリ、ショートでやや童顔の子がモイラである。

 リーダーらしいマリーから話し出した。

 

 

「カズマさん、話を聞いてくださってありがとうございます。

 他の方には距離を取られているので、いつも仕事の際にもお付き合いして頂いているのは感謝しているんですよ。ね、メアリ?」

 

「だから、今回のこともすぐにお知らせしようと思ったんです。ね、モイラ?」

 

「そうですよ。シスターギャビーより私たちの方が役に立つと証明したいんです。

 だから、ほらマリー、早く」

 

「すまないけど、早くしてくれないかな? 身内が拐われているんだ」

 

 

 そういうと慌ててマリーはバッグを取り出し、中から折りたたんだメモを出してきた。

 それからメモの方を見て読み上げ始めた。

 

 

「『閉館した兵庫県A市の国際会館に出入りする人物あり。調査せよ』。

 大阪と神戸の間にある高級住宅街の山手に、数年前に閉鎖したアメリカの事業家が資金を出して作った国際会館があるんです。

 最近、そこに出入りする人がいるらしくてわたし達に上から調査に行くように言われていたんですが、そこに出入りしている車の種類がこの依頼票のと似ているんです。

 そうよね、メアリ?」

 

「はい。ナンバーまでは判りませんが、車の種類が特徴的ですので警察もすぐに所有者を割り出すと思います。

 ですが、この間のリゾートホテルの件で面子を潰されたと考えた関西方面の司教がシスターギャビーに早期の解決を言ったらしくて。ね、モイラ?」

 

「そうなんです。シスターギャビーとは折り合いの悪い人らしくてあげつらうように言われたとカリカリしてて。

 その調査の手助けに来て欲しいと相談しながら来たら、これが張り出してあったんです」

 

「しかし、それは機密に当たるんじゃないのかい? 話して良かったのかな?」

 

「3人だけで行って、また捕まってあんな事があったりするのは嫌です。

 それなら、あまり偏見の目で見ずに接してくれるカズマさんに頼ります」

 

 

 マリーはそう言うと、他の二人と少し赤い顔をして頷いている。

 それを見てジャネットが脇腹に肘をぶつけて来るが、出身が出身だから他の人たちとは孤立していて一般の依頼人も来ることがある仕事上の関係だからこそ、彼女たちとは普通に接していただけなんだがなぁ。

 ただ、この情報はかなり重要だし、人手も多い方がいいだろう。

 その建物は地上二階地下一階の木造で、約三百坪というから小学校の体育館と同じくらいと考えるとかなり大きい。

 時間を見ると、まだ夕方である。

 

 

「分かった。

 こっちの準備が整い次第すぐに出るから、準備しておいて。それじゃ」

 

「「「はい!」」」

 

 

 相手の人数がわからないのが痛いが、すぐに動けるメンバーで行くことにする。

 準備をするためにジャネットとも別れ個室を出て総当たりで連絡するが、動けるのは自分とジャネット、花蓮とクーフーリン、そしてあの三人だけだった。

 葵に今夜は仕事になるとメールを打ち、音無さんに詳細とこれから出ることを伝えて個室でいつものサバゲー装備一式を整え車庫に向かう。

 そこには、アームターミナルと鋼鉄の錫杖を持ちいつもの青いドレス鎧を着たジャネット、着慣れた呪殺無効の赤いコートを着て怒りに燃えている花蓮、新調したばかりの槍と革の防具を身につけたクーフーリン、霊装らしいシスター服に着替えこちらのメンバーの装備を見て驚いている彼女たちがいた。

 一番大きい大型のバンに乗り込みながら声をかける。

 

 

「花蓮、準備はいいか?」

 

「白乃を助けれるかもしれないのでしょう。すぐに行きましょう」

 

「クーフーリン」

 

「おう、問題なしだ。嬢ちゃ…「花蓮、ですわ」花蓮の嬢ちゃんは任せな」

 

「ジャネット」

 

「アイテム類も全て異常なし。何時でもいけます」

 

「マリーさん、案内を頼みます。メアリーさんとモイラさんもよろしく」

 

「はい、任されましたわ!」

 

 

 全員の返事を聞き、車を車庫から出し助手席に乗せたマリーさんの案内で目的の建物へと向かったのだった。

 

 

 

 神戸から車で移動すること数時間、案内に沿って高級住宅街を過ぎ湖の側を通り湖畔にある目的の建物の近くに来た。近くに車を止めて歩いていくと、施設に近づくための道路は近隣住民によって閉鎖されているようだがそのための障害物が倒されており、タイヤの溝が何本も残っているのが見えた。

 そこで女性陣にここで待つように言い、クーフーリンと数十メートル先にあるそこに忍び寄る。

 

 そこは教えられた通りの古い二階建ての木造建築であり、板が打ち付けてあった思わしき正面玄関の片側が剥がされており、奥の庭の方には黒の大型車が二台ありその側にアジア人男性が二人ほどたむろしておりバンの方を見ながら分からない言葉で話しているのが見える。

 クーフーリンとこいつらから話を聞いてみようと決める。

 

『ABSORB DEVIL』『FUSION GIRL』

 

 マーメイドに姿を変え、小脇に抱えてクーフーリンに近くの茂みまで運んでもらう。そして、片腕で胸を隠すようにし上半身だけ見せるように茂みから出し身をくねらせる。

 

 

「おにーさんたち、ちょっとお話し聞かせて。【セクシーダンス】」

 

 

 魅了が効いたのかふらふらと頬骨が特徴的なのが二人ともやって来た。自分も含めて男ってバカだなぁと思いつつ話しかけてみる。

 

 

「おにーさん、日本語分かる?」

 

「#$%&…分かる。お前、いくらだ?」

 

「値段は後で。あの車の中で何をしているの?」

 

「あの男から貰ったおこぼれの女で仲間と楽しんでる。お前も後で行く」

 

「その女の子って、栗色の長い髪の若い女の子?」

 

「違う。近くで捕まえた若い女。お前とも楽しむぞ」

 

「そ。もういいぞ、クーフーリン」

 

 

 茂みから飛び出したクーフーリンが、反応も出来ない男たちの頭を二つとも掴み地面に叩きつけ無力化する。そして、その男たちはそのままリピートバンドで拘束し茂みの奥に放置する。

 

 次は、車の中である。

 ユキジョロウに姿を変えて忍び寄ると、車の軋む音と男達の怒声、くぐもった女性の声が聞こえる。

 しつこく姿が見えない位置からノックすると、一人顔を出したので【ドルミナー】で眠らせる。そのままその男が崩れ落ちて地面に落ちたため、中にいた残り二人の男たちが驚いて出てきたが一人はクーフーリンが無力化し、もう一人の方は首を掴んで引きずり出した。

 中にいた女性はドルミナーで眠らし、男たちは拘束して部分的に凍らせながら尋ねるとこいつらは中東人の男に金で雇われたことが分かった。

 建物の中の様子を聞いても、非覚醒なのも相まって怖くて分からないとしか答えない。

 仕方ないので残りもドルミナーで眠らせ、バンドで拘束して全員同じ場所に置いてくることにした。

 

 姿を戻して戻ると、クーフーリンが呼びに行っていた女性陣が男たちから剥いだ衣服で体を拭き被害者の女性を手当していた。

 クーフーリンは視線を外すように建物の方を警戒している。

 こちらに戻ったのを見た花蓮たちが話しかけてきた。

 

 

「お兄様、これをしたクズどもはどこにいるのです?」

 

「そこの茂みの奥に刃物でも切れないバンドで両手足を拘束して置いてあるよ。

 あいつらは終わるまで放置するよ。

 それと、マリーさんたちはその女性を連れて自分たちのバンで待機していて」

 

「それではお役に立てません」

 

「いいかい、これは重要なことだからね。

 今の時刻は、もうすぐ22時だ。これから自分たちが建物に入って夜が明けても出てこなかったら、神戸セクターに応援を呼んでくれ。頼んだよ」

 

 

 自分と被害者の女性を見比べ逡巡していた彼女たちは、結局その女性を運んで車の方に戻って行った。残ったいつものメンバーが寄って来る。

 

 

「マスター、彼女たちはあのままでよろしいんですか?」

 

「ああ。やっぱり手の内はできるだけ見せたくないし、彼女たちは3人揃っていないと実力が落ちるのが心配だ。

 あの男たちも『中東人の男に雇われた』と言っていたからな」

 

「確かに治療と攻撃魔法も使えますけど、単独だと不安ですわね。

 それにしても、また中東人の男ですか?」

 

「前の実力と厄介さを考えると、この4人だけの方がまだやり易いんだ。

 じゃあ、行こうか」

 

 

 それに答えて、準備をし行動し始める三人。

 自分も安価な不味いMP回復ドリンクを飲んで入り口に向かって行った。

 




あとがきと設定解説


・アメリカの事業家が資金を出して作った国際会館

実際にあったが既に取り壊されて無くなったいわくつきの廃墟がモデルです。
現実では、閉鎖後に買い取られましたがこちらではそのまま閉鎖されています。


次回は、建物に侵入してからの話。

もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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