カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、伏線になったいたある男の話。

伏線にちゃんと出来ていたかな?


第二十七話 Q、顧みられなかった者の気持ちは分かると思いますか?

  第二十七話 Q、顧みられなかった者の気持ちは分かると思いますか?

 

 

「マスター、来ます」

 

 

 鉄杖を構えたジャネットが警告する。

 花蓮、クーフーリンといつもの陣形になり振り返ると、先ほど拘束していたはずの男たちがグルグルと唸りながら茂みから出てきた。

 その姿は、皮膚の色が緑色に変わり、全身の筋肉が一回り膨れてボロボロになったズボン以外身につけていない。瞳が赤くなった目で、舐めるようにジャネットと花蓮を見ている。

 城跡に出来た異界で木乃伊と死体を悪魔に変えた中東人の男が持っていた黒い本と、ホテルの地下の異界で魔法陣の中心にいた中東人の男を悪魔に変えた黒い本の事を思い出す。

 

「嫌な予感が当たったよ。

 ここ最近の事あったからなぁ。

 【中東人の男】が雇っていたとか、ただの非覚醒者なワケがないよな!ジャネット!」

 

「アナライズ。レベル10、【外道フーリガン】? 耐性は氷結と衝撃が弱点です!」

 

 

 五体のフーリガンは、かぎ爪の付いた両手を構え牙の生えた口からよだれを垂らし襲いかかってきた。

 鏡を見て姿を変え、左横から回り込もうとした二体の前に立って迎え撃つ。

 何かの毒液らしい液体を滴らせた爪で殴るも反射され、手傷を負う二体。

 右側で「くっ」と声がする。横目に見ると、槍の長さをうまく使い近寄らせないクーフーリンの向こうで、一体と相対していたジャネットが怪我を負い動きが鈍り膝をつく。

 後ろで霊木バットの【ミスターマイケル】を構えていた花蓮が走り寄って叫ぶ。

 

 

「ジャネット! 【ディアムリタ】」

 

「すみません、花蓮。このぉっ!」

 

「良い判断だぜ、嬢ちゃん!【突撃】!」

 

「皆、頭を下げて!『FUSION GIRL』ユキジョロウ、【マハブフーラ】」

 

 

 弱点の全体氷結魔法がフーリガン達を襲い、自分の側の二体が凍りつきクーフーリンが手傷を負わした一体が倒れる。動きの鈍った相手を屈んでいたジャネットは、下から鉄杖の先を間抜けに開けていた口の中に突っ込むと引っ掛けるように地面に叩きつけると、鉄の防具の付いた足で頭を蹴り飛ばして黙らせた。

 クーフーリンの前にいたもう一体は、大きく払った槍に邪魔をされ近づけない。

 花蓮がそのフーリガンにこの一年で成長し覚えた【ブフーラ】を撃ちジャネットとクーフーリンの攻撃が沈め、残りの凍結していた二体にもそのままタコ殴りにして倒すことに成功した。

 

 ユキジョロウのまま、マグネタイトになり消えていくフーリガン達を見つつ考える。

 こいつらは何時から、ただの人間から悪魔になっていた?

 やはり、どこかおかしかった。魅了を受けた時も普通に受け答えをしていたし、魔法で眠らした時も普通に寝ているだけだった。しかし、話していた時の内容はただの覚醒していないチンピラに過ぎなかった。

 もしかして、術の使い方が上手くなった? 何か特別なものを手に入れた?

 ホテルの事件の時の記録は卑劣ニキや自分たちが報告書を上げたが、魔法陣や黒い本を含めて詳細は不明のままで分からないままだ。

 考えても分からないが、嫌な予感は続いている。

 こちらを見ていた花蓮たちに話しかける。

 

 

「花蓮、音無さんと赤羽根さんにメールを打っておいて。

 『前と同じ術を持つかもしれない中東人の男がいるらしい。念のため、後詰めの用意を』、って」

 

「後詰めって何です? 缶詰?」

 

「増援のことですよ、花蓮さん」

 

「わ、分かりましたわよ。そ、それで、シスターたちはどうしますの?」

 

「現状維持。今のままだと足手まといになるし」

 

 

 花蓮にメールを頼み、姿をドッペルゲンガーに戻し気分を落ち着ける。

 アブゾーバーを一年以上使い続けているが、最近、少女悪魔の姿になっていると気分が高揚して好戦的になってきている上に、変わっている間は嗜好が引っ張られている気もする。

 その上、長時間使用して帰った後は反動からか女性を激しく求める衝動が出るようになっており、相手に文香さんやジャネットがいるか多人数でないと治まらない事があるのも含めて問題である。

 一度、円場博士やショタオジに聞いてみたが悪魔変身能力そのものが希少すぎてデータが無いので解らないと返答された。だがかと言って、これが無いと攻撃力がガタ落ちするため使わないという選択肢も早々に選べないだろう。

 今は解決が先だと考え、入り口に向かう。

 

 

「じゃあ、行こうか。多分、もう来ていることはバレているから気をつけて行こう」

 

「そんじゃ、俺と白の嬢ちゃんが前で、旦那が最後尾だな。それでいいかい?」

 

「ああ。花蓮は術で援護してくれ。ジャネット、アームターミナルは任せる」

 

「分かりましたわ」

 

「了解です」

 

 

 今度こそ、落ち着いて入り口をくぐる。中は荒れ果てた木造の廃墟のはずが、古い木造の校舎のようになっていた。道は廊下になっており、左が窓で右側が教室になって真っ直ぐ続いている。廊下の窓の先の風景は、見たことのない夜の森であり空に赤い満月が光っている。

 通り過ぎるたびに教室の中から話し声がするが、窓は磨りガラスになっており開けても声が止み誰もいないか引き戸は開かないのでそのまま進むしかなかった。

 

 

 

 エネミーソナーにも反応が無いまま30分くらい歩いただろうか、それは突然にエネミーソナーと百太郎が激しく反応し起こった。

 今までハニービーではマップに表示の無かった開かない扉が勢いよく開けられ、大量の悪魔の群れが廊下を埋め尽くす勢いで突進してきたのである。

 

 姿もとんでもない物が多く、ラバーマスクで顔を覆った下着だけの男や全身をラバー系のマスクと服で締め上げた男、赤い革製のボディコンを着込んだ男達の群れに紫色の肌の見慣れた【幽鬼ガキ】が混じっているという相手にしたくない群れだった。

 引きつった表情のジャネットに導かれ、誰もいない空き教室に逃げ込む一同。そして、後ろの扉を花蓮とクーフーリンが立ち、教壇のある方に自分とジャネットが立って塞ぎ防戦することになった。

 

 

「くっ、ジャネット、こいつらはなんだか分かるか? うおっ、肌がおかしいからゾンビか?」

 

「直視したくないんですけど、アナライズ。革マスク全裸男がレベル1の【屍鬼フェイスバインド】で、全身ボンテージ男がレベル11の【屍鬼パドロック】、女装男がレベル4の【屍鬼ドラッグクイーン】です。呪殺無効は分かるけど火炎耐性がある屍鬼って何なのっ?」

 

「花蓮、聞こえたか? 一番レベルが高いパドロックに【ハマ】を、ジャネットは【天罰】を順次掛けてくれ。

 うおっ、クーフーリン、そっちは任せた!」

 

「おうさ、おらよ【ヒートウェイブ】!」

 

 

 狭い入り口で数を限定して戦えたのが功を奏して、パドロックが麻痺魔法と【アギ】を使い、ドラッグクイーンが【ブフ】を使うのと見た目のため苦戦したが、地力で勝っていたためMP回復アイテムをほとんど使い切って一時間近くかかってようやく全て倒し終えることが出来たのだった。 

 周囲に散らばった魔石やマッカを拾う余裕もなく、座り込む花蓮と自分。シキガミの二人は息こそ乱れているが、外の警戒を続けている。

 

 

「はあはあはあ、姿を変える暇もなかったぞ。花蓮、無事かぁ?」

 

「体力はギリギリですけど、大丈夫ですわ。MPドリンク、頂けます?」

 

「ほら、これだよ。

 ドロップの飴状にするのを惜しんで砂糖も抜いて瓶詰めしただけの【チャクラドリンク】とか、誰が考えたのやら」

 

「あー、不味いですわね。安いのは確かに助かりますわ。

 効果がランダムな【マッスルドリンコ】はもう飲みたくありませんし」

 

「【HAPPY】になった花蓮と麻痺して動けなくなった自分とか、ジャネットがいなかったら社会的と尊厳的にやばかったなぁ。

 安全な場所での試飲だからと油断していたよ」

 

「思い出させないでくださいます、お兄様! 黒歴史ですわ、黒歴史」

 

「元気は出たようですね、マスター、花蓮。

 おや、今のでレベルアップしていますね。

 花蓮が18で、マスターは30を超えましたね。

 色々と拾い終わりましたし、敵も途切れたようなので進みましょう」

 

 

 苦笑いを浮かべて立ち上がり先程と同じ並び方で通路を進む自分たちだが、右側の教室が途切れ上に続く階段が現れた。

 登り出した他の皆に遅れずに踏み出そうとした途端、足元の床が無くなりジャネットの「マスター!?」という声を最後に下の方へと落ちていった。

 

 

 

 体感で数階分だろうか落下し、足に少し怪我を負ったが着地する。 

 振り向く間もなく後ろから銃声がしたが「ガッ」という悲鳴が聞こえたので振り返ると、そこには高級そうなスーツを着込んだ若い男が立っていた。右手にリボルバーを持ち、さっきの反射した銃弾で怪我を負ったのか肩の所が赤く滲んでいる。

 かなり大きい広間の端に立ったその男はこちらを睨みながら、銃を突きつけ吐き捨てるように話し出す。

 

 

「銃弾を反射するなんて馬鹿げた力を持っているようだな、馬の骨。

 殴られたら跳ね返すのは知っていたが、どうせ何かの呪具でも持っているんだろう?

 おもちゃの銃を打ち合うような格好の上に、馬鹿なデザインの玩具を左腕に付けているときた。

 凡俗の出のくせに、俺が妻にすべき葵や義妹になる雫にも関係を持っているとは許しがたいにも程がある。

 さあ、這いつくばって命乞いでもするがいい!」

 

「……?? 誰だ、あんたは?」

 

「この神戸を守る霊能組織やすつきの筆頭分家の当主、立花時忠だ!

 顔も知らないとはどういうことだ、無礼だろう!?」

 

 

 名前を聞いて、この怒りに顔を赤くしている男について思い出す。

 結婚前にさんざん嫌がらせをした上に月城家自体から絶縁されて、うちに来た依頼を勝手に引き受け失敗し大怪我してからは何もして来なくなったので忘れていた。

 右腕をグルグルと回し、肩を叩きながら呆れるように話しかけた。

 

 

「『筆頭分家』ってもう組織のやすつきはガイア連合に吸収されたし、忍さんたちから法的にも絶縁食らっているのに何を言っているんだ、お前は。そもそも会ったこともないだろう?」

 

「結納の時に家族総出で参加しようとしたら、警備員に警察を呼ばして排除したのは貴様だろう!

 その後に家の若いのが連れ立って説得に行った時も、話しも聞かずに警察に持ち帰らせたのは無礼だろうが! 

 そもそも、お前の方から頭を下げに来るべきだろう!

 しかも、俺が警察を辞めさせられて怪我の治療と再就職で苦労している間に、子供まで産ませたなどと死んで詫びろ!」

 

「そんなことはどうでもいいから、白乃ちゃんはどうしたんだ?

 確か、お前の実の妹だろう?」

 

「人の話を聞かない無礼なやつだな、お前は!

 そんなにあの出来損ないが大事なのか? 好色家め!

 我々に素晴らしい力を捧げた外国人の男にくれてやったぞ。残念だったな!」

 

「それだけ聞ければ充分だ」

 

 

 そう言って殴り掛かるために走り寄るが、男はニヤリと笑うと距離を離し【ドルミナー】を唱えてくる。強い眠気に襲われ前のめりに倒れそうになるが、とっさに変身を解除し倒れるのを回避する。

 また、怒りに震え今度はもう一度銃を撃ってくる。今は変身していないため避けようとするが避けきれず、脇にかすめて怪我を負わされてしまった。

 それを見ていた男は何かに気づいたように笑い出した。

 

 

「わかったぞ。お前、今、眠らされるのを防ぐために呪具か何か入れ替えたな?

 さては、攻撃を跳ね返すのと防ぐのは同時に出来ないんだろう?

 はははは、種さえ分かればお前を殺してすべて奪うのも簡単だな!」

 

「ちっ」

 

 

 そう叫ぶと、男は距離を開けながら銃を撃ち続けてくる。レベルはこちらが上なのだろうが、素早さは向こうがかなり上のようで弾を補充するときでも追いつけない。

 プライドが高いだけの抜けたやつなのに、何でこういう事にだけは鋭いんだ。

 確かに、素の状態でいれば【精神異常無効】のスキルで眠らされることはないが攻撃は受けてしまう。逆に、ドッペルゲンガーになれば銃は効かないが眠らされてしまう危険がある。

 そしてドッペルゲンガーの変身解除は一瞬だが、変わるには立ち止まって一手、必要になる。

 それならと使うのに少し躊躇いがあるが、アブゾーバーで姿を変えて魔法を放つ。

 

 

「『FUSION GIRL』ナジャ、いくぞ、【ガルダイン】!」

 

「何だそれはぁ、がああっ」

 

 

 少女の姿に変わったのは意外だったのかまともに衝撃魔法を喰らい、吹き飛ぶ男。 

 この隙に、MPの回復アイテムがもう少ないので魔石で体力を回復する。

 単体衝撃魔法で一番強い魔法を喰らったせいか、男はボロボロになりながらも立ち上がって喚き始めた。

 

 

「何なんだ、なんなんだそれはぁ、子どもの女悪魔に姿を変えて魔法を放つなんて聞いていないぞぉ!

 顔も上気させやがって、この変態野郎めぇ!」

 

「うるさい、もう一度か二度喰らったら死ぬぞ。

 死にたくなかったら、その外国人の男のところまで案内しろ」

 

「ちぃっ!これでも喰らえ!」

 

 

 口うるさく罵っていた男は舌打ちすると、懐から石を取り出し投げつけてきた。

 すると、石が砕け広範囲に電撃が広がり喰らってしまって麻痺状態になってしまった。

 動けなくなった自分を見てその男は、奥の壁のところに行くと喚きながら叩き始めた。

 

 

「おい、ここを開けろ!

 オレは選ばれたエリートなんだぞ、助けるのは当然だろう!

 あの出来損ないをくれてやったんだぞ! 早くしろ!」

 

「じゃあ、死になさいよ。【爆砕拳】」

 

「あえ?」

 

 

 壁が両開きの扉に変わり、その扉を粉々に吹き飛ばす勢いで突き出された剣が男を貫き細切れの肉片へと変えてしまった。

 

 

 

 

 

 視界が開けるとそこにいたのは、裸身の白乃ちゃんであった。

 しかし、肌は青白くなり自慢だと言っていた栗色の長髪は金髪に変わって体の要所を隠し、右手に剣を持ち金の冠を付け両腕に金の腕輪をしている姿だった。

 向こう側の部屋には魔法陣があり、中央には内側が輝いている二つに割れた岩が転がっていた。

 男が変わった肉片を何度も何度も踏みにじり、こちらを向いて赤い瞳の目の光が消えた笑顔で話しかけてきた。

 

 

「ねぇ、お嬢ちゃん。カズマさんの声が聞こえた気がしたんだけど、どこにいるの?

 たくさん、話したいことがあるんだ。

 歯牙にも掛けられなかったわたしが、生まれ変わった姿を見て欲しいの。

 ねぇ、ど・こ・に・い・る・の・か・な?」

 




あとがきと設定解説


・【外道フーリガン】

レベル10。耐性は、銃耐性、氷結弱点、電撃耐性、衝撃弱点。
スキルは、狂乱針、毒針。

・【屍鬼フェイスバインド】

レベル1.耐性は、火炎耐性、破魔弱点、呪殺無効。
スキルは、引っかき。

・【屍鬼ドラッグクイーン】

レベル4。耐性は、火炎耐性、破魔弱点、呪殺無効。
スキルは、ブフ、高揚の歌。

・【屍鬼パドロック】

レベル11。耐性は、火炎耐性、破魔弱点、呪殺無効。
スキルは、シバブー、ラクンダ、アギ。

・【立花時忠】

悪魔【外道ナイトストーカー】に変わり果てていた。
レベルは、22。耐性は、破魔弱点。
スキルは、ダマスカスクロー、ドルミナー、道具の知恵・攻。


次回は、今回の事件の大詰めの話。

もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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